転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第二章 街予定地の問題を解決しよう編

1 蒸気機関車が出来ました その②

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「着きましたよ、デミウルゴス」

 王都の外周部ギリギリにある出雲たちの工房を見上げながら、俺はデミウルゴスに言う。
 出雲たちの工房は、高さのある倉庫といった感じの建物だ。
 固められた剥き出しの地面を、ザックリと囲うようにして出来ている。
 規模の大きなコンテナハウス? そんな感じだ。

「では、行きましょう、デミウルゴス」
「う、うむ」

 嬉しさでほころびそうな表情かおを無理やり強張らせ、デミウルゴスは猫車から降りる。
 玄関まで一緒に行くと、

「リリスの勇者よ、その……隠れていたりした方が良いだろうか?」
「構わないと思いますけど、なんでです?」
「うむ、いや、驚かせてみたいというか、いきなり2人に逢うのは恥ずかしいというか……その、な」

 そわそわしながら、見た目渋いオッチャンがはにかむように言う。
 苦笑しそうになるのを抑えながら、俺が何か返そうとした、その瞬間だった。

「いらっしゃいませなのだ!」
「って、誰かと思ったら陽色じゃねぇか」

 玄関の扉が内側から先に開く。玄関前で話していて、中で聞こえて気付かれたのかもしれない。
 なんて、俺が思っている前で、2人は動きが止まり固まった。
 まじまじと視線がデミウルゴスに向かっている。

 そして、出雲は全力ダッシュで走り出す。
 向かう先はデミウルゴス。ぶつかるような勢いで、ぎゅっと抱き着いた。

 そこに居るのだと確かめるように抱きしめて、今度はペタペタと身体を触る。
 そして出雲は、パッと花が咲くように笑顔になると、

「デミウルゴスなのだ! なんで! なんでここに居るのだ! すごい! すごいっ!」

 喜びを溢れさせるように声を上げる。それは出雲も同じで、

「ホントにデミウルゴスじゃねぇか! なんでこっちにいんだよお前! うっそだろ! すげえっ!」

 デミウルゴスの背中をバシバシ叩きながら、満面の笑顔を浮かべていた。
 そんな2人に、デミウルゴスは感極まったかのように何も言葉を口に出来ないでいたが、

「あぁ……本当に、逢えた……」

 涙ぐみながら喜びを口にした。

「なに泣いてんだよ! せっかく逢えたんだ! 笑え笑え!」
「そうなのだ! 泣いちゃったらおかしいのだ! 私も笑うから、一緒に笑おうなのだ!」

 2人はそう言いながら、涙ぐんでる。

(よっぽど、嬉しかったんだな)

 そう思うと、見ているこっちも嬉しくなる。このまま、お喋りを重ねる3人をしばらく待って、俺は言った。

「好かったね、逢えて。見てるだけで、こっちも嬉しくなるよ」

 俺の言葉に視線を向けてくれた3人に続けて、

「このまま、3人だけにしてあげたいけど、ごめん。出来上がった蒸気機関車、見せてくれるかな?」

 蒸気機関車の出来えで、これからの行動を決めなきゃいけないので、頼んでみる。すると、

「おう! もちろんだ! むしろ悪かったな、待たせちまって」
「ありがとうなのだ! リリスに、頼んでくれて、嬉しいのだ。でも……そのせいでリリス、今こっちに居れないのは、ごめんなのだ」
「だな……リリスにも、礼を言っておいてくれ」

 デミウルゴスからリリスのことを聞いた2人が、申し訳なさそうに言うので、

「大丈夫、気にしないで。リリスと、ちゃんと話し合って決めた事だから。むしろ、そんなこと気にせず、喜んでくれた方が、リリスも俺も嬉しいよ」

 3人を安心させるように言う。すると3人は、泣き笑いのような表情で、

「そっか。じゃ、遠慮なく、喜ばせて貰うぜ! ありがとな!」
「陽色もリリスも、ありがとうなのだ!」
「ありがとう、リリスの勇者よ」

 俺の言葉を受け入れてくれた。それが嬉しくて、ちょっと照れる気持ちになった俺は、話を逸らすように再び頼む。

「どういたしまして。それじゃ、話を戻すけど、蒸気機関車、見せてくれるかな?」
「任せてくれなのだ!」
「おう! 満足できるぐらい、好いのが出来たぜ!」

 2人に勧められるままに、俺とデミウルゴスは工房へと入り、蒸気機関車を目にした。

「うわっ、デッカいな~」

 その大きさに、俺は思わず目を見張る。
 企画書で、大雑把な数値と設計図は見せて貰っていたけど、やっぱり実物を目の当たりにすると迫力が違う。

 それぐらい、目の前の蒸気機関車は大きかった。
 大人2人を縦に繋げてもなお余る高さは見上げるほどで、長さは、ちょっとした駆けっこが出来そうなぐらいある。
 なによりも凄いのは、その重量感。傍で見ているだけで、有無を言わせないほどの存在感が感じられた。

「どうだ? これが、こっちの世界の技術と俺達の居た世界の技術で作った、魔術混合式蒸気機関車『ビックボーイ』だ」

 誇らしげに名前を言う八雲の声を聞きながら、俺は目の前の蒸気機関車に見とれていた。
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