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王妃
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「リオン王、ラミア王妃、可愛らしい姫の誕生を心よりお慶び申し上げます。」
次々に国の貴族が挨拶にくる。
もう少し姫が大きくなったら、ムーア大国にも挨拶へ行かなくてはならない。
ムーア大国は、こんな小国にわざわざ来ないので、祝辞と祝いの品だけだ。
だからこそ外的にはリオン王がラミア王妃に義務的で、カレン愛妾を真実愛していることが大国にバレずにすんでいるのだ。
何度も手紙で父に伝えようかと思った。
しかし公に姿を見せない、お金もかけられていない愛妾だ。
訴えた所で大国といえど、王が専用娼婦を確保する事は、種をばら蒔かない為にもおかしな事ではない 。ムーアの方が諸国に笑われるだろう。
それでも、いっそ大声で訴えてやろうか。
真っ黒な気持ちを抱えながら、
自分の娘の誕生パーティーだというのに心あらずな夫の隣で笑顔を張り付けていると、黒いローブの男が進み出てきた。
「お姫様の誕生を心よりお慶び申し上げます。」
「ありがとう。」
「王妃様。」
「?!はい?」
私に声をかけるなんて、なんの用だろうか?
「王妃様におかれましては、色々とお辛い事もおありの様子。」
「・・・なんのことでしょう?」
思い当たっても一国の王妃が認められるわけが無い。
「実は、私は魔法使いでしてね。可哀想な王妃様の為にこうしてやって来たわけです。」
「・・・」
「王妃様のお産みになられたお姫様にはぜひとも幸せになって頂きたい。王妃様、ご息女に世界一幸せになってもらいたくはありませんか?」
「・・・それは、母として当然ですが。」
「では、幸せになれる魔法をかけてもよろしいか?」
「ええ、出来るものならお願いするわ。」
「承りましたぞ。」
男の手から美しい赤の光が出て赤子を包み込んで消えた。
「これでこの姫は世界一の幸せ者となりました。王妃様もきっと幸せになるでしょう。それでは!」
男はそう言うとふっと消えた。
周りの人々がひそひそとしゃべるのが聞こえる。
―幻想的だったなあ!この小国の姫に世界一幸せな加護がつくなんて、この国も幸先いいな!
―さすが大国から来られた王妃様だ。あのような不思議な者にもギフトをもらうなんて凄いな!
―姫の成長が楽しみだ。きっと素敵な姫にお育ちになられるだろう。
周りの者が母子に好意的になっていくのがわかる。
今までは、愛する二人を引き裂いた傲慢な隣国の王族と思われていたのに・・・。
「その、王妃よ、感謝する。」
王からも突然労われた。
それほどまで、あの魔法使いがやったことは無視できないんだわ・・・。
本当にありがとうございます。
私にとって、本物の幸運の魔法使い様です。
姫は元気によくなく赤子で、乳母はへとへとになっていた。
しかし早くも笑うことを覚え、周りの者は私の赤子にメロメロだ。
「愛妾の赤子も女の子だったそうですが、余り泣かない大人しい子だそうです。まだ笑ったりしないそうで、王妃様のお姫様の方が可愛らしゅうございますね。」
「そうなの?」
とんとんとノックが聞こえリオン王が入ってきた。
「姫の機嫌はどうだ?」
きゃっきゃっと、王・・・父を見て姫は笑った。
「おお!可愛い娘だ!」
姫は国中で《幸運の姫》と呼ばれ、王も周りから誉められるので姫が特別に思えるようになったようだ。
そして姫自身が王を見て笑うので嬉しいらしい。
乳母がこっそり耳打ちする。
「王の関心も、愛妾から王妃様と姫様に移りつつあるようですよ?
このあいだ、愛妾の赤子について、なぜこの子は笑わないのかと訪ねて、まだ生まれたばかりだからですと返されて空気が悪くなったとか。
そのあとも、愛妾の所に魔法使いは来ないのだなと家臣にこぼしていたとか・・・。」
乳母は悪い目をして笑った。
「このままいけば、王妃様が一番になられる日が来ますよ。」
次々に国の貴族が挨拶にくる。
もう少し姫が大きくなったら、ムーア大国にも挨拶へ行かなくてはならない。
ムーア大国は、こんな小国にわざわざ来ないので、祝辞と祝いの品だけだ。
だからこそ外的にはリオン王がラミア王妃に義務的で、カレン愛妾を真実愛していることが大国にバレずにすんでいるのだ。
何度も手紙で父に伝えようかと思った。
しかし公に姿を見せない、お金もかけられていない愛妾だ。
訴えた所で大国といえど、王が専用娼婦を確保する事は、種をばら蒔かない為にもおかしな事ではない 。ムーアの方が諸国に笑われるだろう。
それでも、いっそ大声で訴えてやろうか。
真っ黒な気持ちを抱えながら、
自分の娘の誕生パーティーだというのに心あらずな夫の隣で笑顔を張り付けていると、黒いローブの男が進み出てきた。
「お姫様の誕生を心よりお慶び申し上げます。」
「ありがとう。」
「王妃様。」
「?!はい?」
私に声をかけるなんて、なんの用だろうか?
「王妃様におかれましては、色々とお辛い事もおありの様子。」
「・・・なんのことでしょう?」
思い当たっても一国の王妃が認められるわけが無い。
「実は、私は魔法使いでしてね。可哀想な王妃様の為にこうしてやって来たわけです。」
「・・・」
「王妃様のお産みになられたお姫様にはぜひとも幸せになって頂きたい。王妃様、ご息女に世界一幸せになってもらいたくはありませんか?」
「・・・それは、母として当然ですが。」
「では、幸せになれる魔法をかけてもよろしいか?」
「ええ、出来るものならお願いするわ。」
「承りましたぞ。」
男の手から美しい赤の光が出て赤子を包み込んで消えた。
「これでこの姫は世界一の幸せ者となりました。王妃様もきっと幸せになるでしょう。それでは!」
男はそう言うとふっと消えた。
周りの人々がひそひそとしゃべるのが聞こえる。
―幻想的だったなあ!この小国の姫に世界一幸せな加護がつくなんて、この国も幸先いいな!
―さすが大国から来られた王妃様だ。あのような不思議な者にもギフトをもらうなんて凄いな!
―姫の成長が楽しみだ。きっと素敵な姫にお育ちになられるだろう。
周りの者が母子に好意的になっていくのがわかる。
今までは、愛する二人を引き裂いた傲慢な隣国の王族と思われていたのに・・・。
「その、王妃よ、感謝する。」
王からも突然労われた。
それほどまで、あの魔法使いがやったことは無視できないんだわ・・・。
本当にありがとうございます。
私にとって、本物の幸運の魔法使い様です。
姫は元気によくなく赤子で、乳母はへとへとになっていた。
しかし早くも笑うことを覚え、周りの者は私の赤子にメロメロだ。
「愛妾の赤子も女の子だったそうですが、余り泣かない大人しい子だそうです。まだ笑ったりしないそうで、王妃様のお姫様の方が可愛らしゅうございますね。」
「そうなの?」
とんとんとノックが聞こえリオン王が入ってきた。
「姫の機嫌はどうだ?」
きゃっきゃっと、王・・・父を見て姫は笑った。
「おお!可愛い娘だ!」
姫は国中で《幸運の姫》と呼ばれ、王も周りから誉められるので姫が特別に思えるようになったようだ。
そして姫自身が王を見て笑うので嬉しいらしい。
乳母がこっそり耳打ちする。
「王の関心も、愛妾から王妃様と姫様に移りつつあるようですよ?
このあいだ、愛妾の赤子について、なぜこの子は笑わないのかと訪ねて、まだ生まれたばかりだからですと返されて空気が悪くなったとか。
そのあとも、愛妾の所に魔法使いは来ないのだなと家臣にこぼしていたとか・・・。」
乳母は悪い目をして笑った。
「このままいけば、王妃様が一番になられる日が来ますよ。」
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