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1.misfortune
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凡人、というのはまったく、何とも損な役回りだと言わざるを得ない。
美人でもない、秀才でもない、何かしら特殊な技術などで特に秀でたところもなく、私は簡単に言えば、非常につまらない人間である。
そしてそのつまらない人間には、往々にして面倒事が降ってきた時に払いのけるだけの力がないものだ。
これは、ありもしない罪を着せられた女の、つまらない悲劇の物語である。
自分が転生者だということに気づいたのは、今からおおよそ七年前。まだ私が十になるかならないかの頃だった。
転生、と言うのは当然異世界へ生まれ変わることを言うわけだが、突然そんなことに気づいちゃった私の脳内と言ったらもう、酷かった。
私は転生者だ、と思う一方――何だこの妄想、自分はそろそろおかしくなり始めたのではないか、など十の子供らしからぬことを悩み続けていたものである。
はてさて、そんな面倒な脳内構造をしていた私がどこに転生したのかと言うと。
私の前世の世界で大ブレイクを起こしていた「百花繚乱、恋せよ乙女!」……とかいう、乙女ゲームだった。
内容は割合、ありきたりなものだ。とある学園に転校してきた主人公が、生徒会のイケメンたちとか教師とか他校の生徒からモテちゃってさぁ大変。あなたは誰と学園生活でラブライフを送る? ……そんな感じだったと思う。
最大の魅力として語られていたのは、最後に解放される逆ハールートが糖度満点、ということだった。
前世の私は乙女ゲームを好んでプレイしていた喪女だったが、実は数多の乙女ゲームをプレイした私も、この乙女ゲームに手を付けたことはなかった。
理由は単純明快。……何かとりあえず主人公のビジュアルが好きじゃなかった。
主人公の名前は白百合 ことり(名前のみ変更可能)。学力はそこそこだが、努力家で、天然。相手から好意を向けられても気づかず、これでもかと言うほど気付かず、好きと言われてやっと気づくものの「ほんとに好きなの……?」と延々悩むような性格らしい。
いやもう天然キャラがそもそも好きじゃなかったのだけれども、それよりも彼女の見た目――平凡を謳われていたはずだが、ただの美少女だ。
頭の中お花畑! 夢いっぱい! キラキラ! 輝いちゃってる私、超かわいい!
みたいなビジュアルだったので、何かもう、生理的にダメだった。
個人的に乙女ゲームは、攻略対象ももちろん魅力的じゃないと話にならないが、主人公と言う存在もなかなか大事だと思うのだ。
とりあえず、プレイヤーをイライラさせるような主人公はいかがなものかと思う。
事実レビューでは主人公へのクレームが殺到していたのをよく覚えている。内容はいいのだから、主人公をもっと何とかできなかったのか、と。逆にレビューでは悪役の子の方が可愛い、という話も上がっていたほどだ。
さて、では私は一体何の役回りに転生したのだろうか。
乙女ゲームに転生と言ったら、ヒロインか悪役に転生するのが典型だとは思うが、実はどちらでもない。
――悪役の取り巻きAである。
名前すらねえのかよ!というポジションだが、考えてみればある意味無難とも言えるのかもしれない。自分が完全な加害者として取り上げれられるわけじゃないのだから。いいポジションでないことは明らかだが、名前すらないということはほぼ出番がないということだ。取り巻きではあるものの、べつにヒロインに嫌がらせをすると決めつけられているわけではない。シナリオ上無関係ではないが、悪いが無関係でいさせてもらおう。弱みなんて作った方が負けなのだ。
そんなわけで、非常にマイナーな役割に転生した私だが、非常に厄介な事情が一つだけあった。
――私には、幼馴染がいる。
頭が良くて、綺麗な顔をしていて、背が高くて、運動神経も良くて。
人付き合いが上手で、いつも優しく笑ってて。
でも、わたしと居る時だけ、ほんの少しだけ意地悪なことも言ったりする、優しい彼。
私は彼が好きだった。
けれど、あんまりに「好物件」なことくらい、少し考えればわかったはずだ。
なんで彼がそんなにも完璧なのか。
――彼は紛うことなき、攻略対象、だったのだ。
私が可愛らしいヒロインに転生できたらよかったのだろうか。
もしくは、したたかな悪役だったなら、未来は変わっただろうか。
答えは、誰も知らない。
美人でもない、秀才でもない、何かしら特殊な技術などで特に秀でたところもなく、私は簡単に言えば、非常につまらない人間である。
そしてそのつまらない人間には、往々にして面倒事が降ってきた時に払いのけるだけの力がないものだ。
これは、ありもしない罪を着せられた女の、つまらない悲劇の物語である。
自分が転生者だということに気づいたのは、今からおおよそ七年前。まだ私が十になるかならないかの頃だった。
転生、と言うのは当然異世界へ生まれ変わることを言うわけだが、突然そんなことに気づいちゃった私の脳内と言ったらもう、酷かった。
私は転生者だ、と思う一方――何だこの妄想、自分はそろそろおかしくなり始めたのではないか、など十の子供らしからぬことを悩み続けていたものである。
はてさて、そんな面倒な脳内構造をしていた私がどこに転生したのかと言うと。
私の前世の世界で大ブレイクを起こしていた「百花繚乱、恋せよ乙女!」……とかいう、乙女ゲームだった。
内容は割合、ありきたりなものだ。とある学園に転校してきた主人公が、生徒会のイケメンたちとか教師とか他校の生徒からモテちゃってさぁ大変。あなたは誰と学園生活でラブライフを送る? ……そんな感じだったと思う。
最大の魅力として語られていたのは、最後に解放される逆ハールートが糖度満点、ということだった。
前世の私は乙女ゲームを好んでプレイしていた喪女だったが、実は数多の乙女ゲームをプレイした私も、この乙女ゲームに手を付けたことはなかった。
理由は単純明快。……何かとりあえず主人公のビジュアルが好きじゃなかった。
主人公の名前は白百合 ことり(名前のみ変更可能)。学力はそこそこだが、努力家で、天然。相手から好意を向けられても気づかず、これでもかと言うほど気付かず、好きと言われてやっと気づくものの「ほんとに好きなの……?」と延々悩むような性格らしい。
いやもう天然キャラがそもそも好きじゃなかったのだけれども、それよりも彼女の見た目――平凡を謳われていたはずだが、ただの美少女だ。
頭の中お花畑! 夢いっぱい! キラキラ! 輝いちゃってる私、超かわいい!
みたいなビジュアルだったので、何かもう、生理的にダメだった。
個人的に乙女ゲームは、攻略対象ももちろん魅力的じゃないと話にならないが、主人公と言う存在もなかなか大事だと思うのだ。
とりあえず、プレイヤーをイライラさせるような主人公はいかがなものかと思う。
事実レビューでは主人公へのクレームが殺到していたのをよく覚えている。内容はいいのだから、主人公をもっと何とかできなかったのか、と。逆にレビューでは悪役の子の方が可愛い、という話も上がっていたほどだ。
さて、では私は一体何の役回りに転生したのだろうか。
乙女ゲームに転生と言ったら、ヒロインか悪役に転生するのが典型だとは思うが、実はどちらでもない。
――悪役の取り巻きAである。
名前すらねえのかよ!というポジションだが、考えてみればある意味無難とも言えるのかもしれない。自分が完全な加害者として取り上げれられるわけじゃないのだから。いいポジションでないことは明らかだが、名前すらないということはほぼ出番がないということだ。取り巻きではあるものの、べつにヒロインに嫌がらせをすると決めつけられているわけではない。シナリオ上無関係ではないが、悪いが無関係でいさせてもらおう。弱みなんて作った方が負けなのだ。
そんなわけで、非常にマイナーな役割に転生した私だが、非常に厄介な事情が一つだけあった。
――私には、幼馴染がいる。
頭が良くて、綺麗な顔をしていて、背が高くて、運動神経も良くて。
人付き合いが上手で、いつも優しく笑ってて。
でも、わたしと居る時だけ、ほんの少しだけ意地悪なことも言ったりする、優しい彼。
私は彼が好きだった。
けれど、あんまりに「好物件」なことくらい、少し考えればわかったはずだ。
なんで彼がそんなにも完璧なのか。
――彼は紛うことなき、攻略対象、だったのだ。
私が可愛らしいヒロインに転生できたらよかったのだろうか。
もしくは、したたかな悪役だったなら、未来は変わっただろうか。
答えは、誰も知らない。
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