乙女ゲームに転生したけど報われない。だって

天音 神珀

文字の大きさ
2 / 7

1.misfortune

しおりを挟む
 凡人、というのはまったく、何とも損な役回りだと言わざるを得ない。

 美人でもない、秀才でもない、何かしら特殊な技術などで特に秀でたところもなく、私は簡単に言えば、非常につまらない人間である。

 そしてそのつまらない人間には、往々にして面倒事が降ってきた時に払いのけるだけの力がないものだ。

 これは、ありもしない罪を着せられた女の、つまらない悲劇の物語である。











 自分が転生者だということに気づいたのは、今からおおよそ七年前。まだ私が十になるかならないかの頃だった。

 転生、と言うのは当然異世界へ生まれ変わることを言うわけだが、突然そんなことに気づいちゃった私の脳内と言ったらもう、酷かった。
 私は転生者だ、と思う一方――何だこの妄想、自分はそろそろおかしくなり始めたのではないか、など十の子供らしからぬことを悩み続けていたものである。

 はてさて、そんな面倒な脳内構造をしていた私がどこに転生したのかと言うと。
 私の前世の世界で大ブレイクを起こしていた「百花繚乱、恋せよ乙女!」……とかいう、乙女ゲームだった。
 内容は割合、ありきたりなものだ。とある学園に転校してきた主人公が、生徒会のイケメンたちとか教師とか他校の生徒からモテちゃってさぁ大変。あなたは誰と学園生活でラブライフを送る? ……そんな感じだったと思う。
 最大の魅力として語られていたのは、最後に解放される逆ハールートが糖度満点、ということだった。

 前世の私は乙女ゲームを好んでプレイしていた喪女だったが、実は数多の乙女ゲームをプレイした私も、この乙女ゲームに手を付けたことはなかった。

 理由は単純明快。……何かとりあえず主人公のビジュアルが好きじゃなかった。

 主人公の名前は白百合 ことり(名前のみ変更可能)。学力はそこそこだが、努力家で、天然。相手から好意を向けられても気づかず、これでもかと言うほど気付かず、好きと言われてやっと気づくものの「ほんとに好きなの……?」と延々悩むような性格らしい。

 いやもう天然キャラがそもそも好きじゃなかったのだけれども、それよりも彼女の見た目――平凡を謳われていたはずだが、ただの美少女だ。

 頭の中お花畑! 夢いっぱい! キラキラ! 輝いちゃってる私、超かわいい!
 みたいなビジュアルだったので、何かもう、生理的にダメだった。

 個人的に乙女ゲームは、攻略対象ももちろん魅力的じゃないと話にならないが、主人公と言う存在もなかなか大事だと思うのだ。
 とりあえず、プレイヤーをイライラさせるような主人公はいかがなものかと思う。
 事実レビューでは主人公へのクレームが殺到していたのをよく覚えている。内容はいいのだから、主人公をもっと何とかできなかったのか、と。逆にレビューでは悪役の子の方が可愛い、という話も上がっていたほどだ。

 さて、では私は一体何の役回りに転生したのだろうか。

 乙女ゲームに転生と言ったら、ヒロインか悪役に転生するのが典型だとは思うが、実はどちらでもない。

 ――悪役の取り巻きAである。

 名前すらねえのかよ!というポジションだが、考えてみればある意味無難とも言えるのかもしれない。自分が完全な加害者として取り上げれられるわけじゃないのだから。いいポジションでないことは明らかだが、名前すらないということはほぼ出番がないということだ。取り巻きではあるものの、べつにヒロインに嫌がらせをすると決めつけられているわけではない。シナリオ上無関係ではないが、悪いが無関係でいさせてもらおう。弱みなんて作った方が負けなのだ。

 そんなわけで、非常にマイナーな役割に転生した私だが、非常に厄介な事情が一つだけあった。

 ――私には、幼馴染がいる。

 頭が良くて、綺麗な顔をしていて、背が高くて、運動神経も良くて。
 人付き合いが上手で、いつも優しく笑ってて。
 でも、わたしと居る時だけ、ほんの少しだけ意地悪なことも言ったりする、優しい彼。

 私は彼が好きだった。

 けれど、あんまりに「好物件」なことくらい、少し考えればわかったはずだ。

 なんで彼がそんなにも完璧なのか。




 ――彼は紛うことなき、攻略対象、だったのだ。











 私が可愛らしいヒロインに転生できたらよかったのだろうか。

 もしくは、したたかな悪役だったなら、未来は変わっただろうか。




 答えは、誰も知らない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。

ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・ 強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

処理中です...