白雪姫の継母に転生しました。

天音 神珀

文字の大きさ
4 / 85
1.gift

3.apple

しおりを挟む
「……あの、鏡さん」
『はい、お嬢様』

 私がポケットの中の鏡に話し掛けると、小さな返答が返ってくる。

「……なんか、あの。……すっごい違和感があるんだよね」
『……私も、少々、その……私の勘違いでなければ……これは、おかしい、ですね』

 鏡さんは私の言葉に同意を示した。

「……何で……」

 疑問を問おうとした時だった。

『しっ! お嬢様、寝ているフリを、早く!』

 鏡さんが急に焦ったような声を出すので、私は慌てて目を閉じた。

 それから程なくして、ぱたぱたと廊下から複数の靴音が聞こえてきた。

 今の状況。

 小人にベッドに寝かしつけられ、そのまま放置、という状況です。

 そう、私は今現在「小人」のベッドに寝かしつけられている筈。

 なのに、どうして……

「失礼する」
「どうせまだ寝こけているんです、律儀に挨拶などする必要はありませんよ」

 そんな問答と共に、扉の開く音が聞こえた。
 複数のかなり重めの足音が近づいてくる。
 ……違和感しかない。絶対おかしい。

「……ひくちっ。……やっぱり、まだ眠ってるね」
「よっぽど疲れていたんじゃないかな」
「やー、女の子ってまともに見たのは初めてだなー。へー、可愛いんだね」
「どこがですか。こんなもの、厄介の種です」
「……おい、シルヴィス。それは仕舞え」

 は? ……仕舞え? 何の話……

「何故です? これで簡単に話がつきます」
「いやいやいやそれはやめよう。さすがに家の中でそれはダメだって」
「つまり外で的にしろと言うことですか?」

 ……まと?

「シルヴィス、収めろ。……しかし一向に目を覚まさんな」
「だからこれで片をつけようといっているんですよ。簡単です。ここに一発ぶち込めば万事解決です」

 と言う言葉と共に、額の真ん中に何か冷たいものが触れ……

 ……え?

 なん……なに、なにこれ。え、ぶち込むって……的にするって、あの、まさか、えっと……

「シルヴィス、あなたは銃が試したいだけだろう」

 やっぱり銃か!!

 内心冷汗をかきまくっている間にも、小人たちの会話は続く。

「別にいいでしょう。大体何故こんな女をわざわざ我々が助けてやらねばならないんです? 面倒なだけだ」
「あなたの気持ちはわかるつもりだ。だが彼女自身に罪は無いだろう」
「貴方は「似たもの同士」だからそう言うんでしょう? わたくしはどんな立場であれ彼らは全部憎いんですよ」

 ……?

 って、額に銃を突きつけられたまま寝たふりなんかできるかッ!!

「……うーん……」

 私は今しがた起きたばかりですといわんばかりに緩慢に目を開いてみた。
 そして。

「あっ、起きた!」

 そのまま、硬直した。

 …………いや、予想はしてました。

 何かおかしいなって。何かおかしいなって思ってた!!

 どう考えても私を抱き上げてたのって一人だけだったし、私が寝かしつけられたベッドも私の身長に普通に合ってたし、足音も小人って感じの音じゃなかったしね!! おかしいなって思ってましたよ!!

 でも、これじゃシナリオ狂うじゃない!?

「あれ、目が覚めた?」
「えっ、あの……えっと……」

 小人じゃありませんでした。

 ……七人全員、普通に大人でした!!

 いやおかしいでしょ!?

 白雪姫に出てくるのって小人だよね? 「白雪姫と七人の大人」じゃ、「だから何?」だよ、意味わかんないよ!!

 もしかして間違えた? 小人じゃなくて普通の大人の家に来ちゃったの私?
 だったら他を当らないとコレまずいんじゃ……いやでも鏡さんがここだって教えてくれてたし、どうなってるの。

 しかし全員無駄にイケメンですねなんか腹立つな!!

「あぁ、安心して欲しい。あなたに危害を加えようと思っているわけではない」

 銀の髪に紫の双眸を持つ青年が私に話し掛けてきた。

 ……でもね。額に銃を突きつけられているこの状況下でその言葉は普通に信用できません。

 視線を銀髪の青年から横にそらすと、私の額に銃を突きつけている青年――紺色の髪に金の双眸の青年が目に映る。

 視線が合うと、青年は形容しがたいほど美しく微笑んだ。しかしこの状況では逆に背筋が凍るような笑顔でしかない。

 私の顔が盛大に引き攣っているのを見てとった銀髪の青年は、再び紺の髪の青年をたしなめた。

「……シルヴィス。銃を仕舞え」
「……ふふ。起きているなら覚悟くらいできてるんでしょう?」
「いやシルヴィスやめよう、それはやめよう。ね」
「そうだよ、ひくち! 可哀想じゃん! ひくちっ」
「このベッド、ルーヴァスのだしねー。血でびしょ濡れになったらルーヴァスが可哀想だよね」

 庇う理由はそれですか?

 他の小人たちの言葉に、紺の髪の青年は銃を突きつけたまま微笑んで、私にこう言った。

「それで? コーネリアの貧乏くじを引いたお姫様がこんな辺鄙な場所に何の御用でしょう?」

 …………。

 記憶喪失のふりをしても意味がない!!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...