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「……道化師と、死神姫?」
『はい』
道化師……というと、ピエロという認識でいいのだろうか?
ピエロ、という単語に赤い髪をした男が脳裏に浮かんだ。
「だれの、こと?」
『お嬢様をここに導いたものと、その対戦者の名称です』
私を導いた……というと、本当にあの赤髪の男か。その対戦者……とは一体誰のことだろう。
『お嬢様がここにいる理由。……白雪姫がこの世界にいる理由。それは、彼らが戦っているからです』
「戦う? 戦争をしているの?」
『いいえ。彼らにとっては……チェスゲームのようなもの、とでも言えば良いのでしょうか』
――チェスゲーム……?
「どういうこと……?」
『つまり……彼らにとってあなたは、……チェスの駒のようなものだということです』
リオリムはぽつぽつと話し出した。
この世界は、乙女ゲームの世界。私はつまり、この世界での悪役と肉体を残したまま魂を交換したことになるそうだ。
それは白雪姫も同じ。この世界における主人公と、魂を交換した。
では、そもそもなぜそんなことをしたのだろうか?
その理由が、つまり。
私をここに導いたあの赤髪の男と、その対戦者――白雪姫をこの世界に導いた者との「お遊び」だった、らしい。
私が生き延びれば赤髪の男の勝ち。逆に私が死に、白雪姫がこの世界で望み通り恋愛を楽しんだのなら、対戦者の勝ち。
「つまり私は……彼らにとってその程度の価値しかない。別にあの赤髪の男が負けて私が死んだとしても、彼らにとっては構わないっていうこと?」
『……仰る、とおりでございます』
リオリムは言いにくそうに、そういう。
『……しかし、当然、負けるとしか思えない勝負を道化師が受けるとは思えません。それ故に、今のあなたが――つまり、七人の過去も、この世界のこともまったく知らないあなたが勝つ可能性はある。私は、そう思っています』
リオリムの言葉に、私は告げる言葉を失った。
……そんなもののために、私はここにいるのか。
『……お嬢様……』
うつむき、黙り込んだ私にリオリムが小さく呼びかけてきた。しかし今の私にそれに答えられるだけの余裕など微塵もなかった。
「………………しい」
『……お嬢様?』
私の声が聞き取れなかったのだろう。リオリムは控えめに問い返してきた。
それに答えるつもりでもなかったが、私は感情のままにベッドから立ち上がり、言葉を吐き出した。
「……っ悔しいーッッ!! なに、何なの!? ふざけてるの!? っていうか人のことを何だと思ってるわけ!? 馬鹿にするのも大概にしてよ!! 私はあともう少しで受験するところだったのに無理やりそれを覆されてこんな訳の判らないところにふっとばされたの!! その理由が「お遊び」!? 信じられない!!」
突然叫び始めた私にリオリムが驚いた様子で瞬きを繰り返していたが、それに構う余裕もない。
『お、お嬢様』
「もうこうなったら自棄やけになってやる! こんなところで死んでたまるものかっ! 何が何でも生き延びてあのふざけた男の顔面に一発……ううん、百発でも拳を叩き込んでやるんだから!! リオリム! 改めてよろしく!! 私があの男の顔面を殴るまで見届けてね!!」
私が一気にそう告げると、リオリムはしばし唖然とした表情で私を見ていたが、しかしくす、と破顔して、
『かしこまりました、お嬢様』
と、頭を下げたのだった。
その時の私は、考えもしなかった。
「……どう思うよ、あれ」
「警戒するまでもないんじゃナイ? あんまり頭は良さそうじゃないよネ☆」
「わたくしは主に従うのみでございます」
「律儀だよねぇ☆ キミはもう少し肩の力を抜いたラ?」
「貴殿はやや肩の力を抜きすぎているのではなかろうか?」
扉の外、部屋の前で、誰かが盗み聞きをしているなどということを――
『はい』
道化師……というと、ピエロという認識でいいのだろうか?
ピエロ、という単語に赤い髪をした男が脳裏に浮かんだ。
「だれの、こと?」
『お嬢様をここに導いたものと、その対戦者の名称です』
私を導いた……というと、本当にあの赤髪の男か。その対戦者……とは一体誰のことだろう。
『お嬢様がここにいる理由。……白雪姫がこの世界にいる理由。それは、彼らが戦っているからです』
「戦う? 戦争をしているの?」
『いいえ。彼らにとっては……チェスゲームのようなもの、とでも言えば良いのでしょうか』
――チェスゲーム……?
「どういうこと……?」
『つまり……彼らにとってあなたは、……チェスの駒のようなものだということです』
リオリムはぽつぽつと話し出した。
この世界は、乙女ゲームの世界。私はつまり、この世界での悪役と肉体を残したまま魂を交換したことになるそうだ。
それは白雪姫も同じ。この世界における主人公と、魂を交換した。
では、そもそもなぜそんなことをしたのだろうか?
その理由が、つまり。
私をここに導いたあの赤髪の男と、その対戦者――白雪姫をこの世界に導いた者との「お遊び」だった、らしい。
私が生き延びれば赤髪の男の勝ち。逆に私が死に、白雪姫がこの世界で望み通り恋愛を楽しんだのなら、対戦者の勝ち。
「つまり私は……彼らにとってその程度の価値しかない。別にあの赤髪の男が負けて私が死んだとしても、彼らにとっては構わないっていうこと?」
『……仰る、とおりでございます』
リオリムは言いにくそうに、そういう。
『……しかし、当然、負けるとしか思えない勝負を道化師が受けるとは思えません。それ故に、今のあなたが――つまり、七人の過去も、この世界のこともまったく知らないあなたが勝つ可能性はある。私は、そう思っています』
リオリムの言葉に、私は告げる言葉を失った。
……そんなもののために、私はここにいるのか。
『……お嬢様……』
うつむき、黙り込んだ私にリオリムが小さく呼びかけてきた。しかし今の私にそれに答えられるだけの余裕など微塵もなかった。
「………………しい」
『……お嬢様?』
私の声が聞き取れなかったのだろう。リオリムは控えめに問い返してきた。
それに答えるつもりでもなかったが、私は感情のままにベッドから立ち上がり、言葉を吐き出した。
「……っ悔しいーッッ!! なに、何なの!? ふざけてるの!? っていうか人のことを何だと思ってるわけ!? 馬鹿にするのも大概にしてよ!! 私はあともう少しで受験するところだったのに無理やりそれを覆されてこんな訳の判らないところにふっとばされたの!! その理由が「お遊び」!? 信じられない!!」
突然叫び始めた私にリオリムが驚いた様子で瞬きを繰り返していたが、それに構う余裕もない。
『お、お嬢様』
「もうこうなったら自棄やけになってやる! こんなところで死んでたまるものかっ! 何が何でも生き延びてあのふざけた男の顔面に一発……ううん、百発でも拳を叩き込んでやるんだから!! リオリム! 改めてよろしく!! 私があの男の顔面を殴るまで見届けてね!!」
私が一気にそう告げると、リオリムはしばし唖然とした表情で私を見ていたが、しかしくす、と破顔して、
『かしこまりました、お嬢様』
と、頭を下げたのだった。
その時の私は、考えもしなかった。
「……どう思うよ、あれ」
「警戒するまでもないんじゃナイ? あんまり頭は良さそうじゃないよネ☆」
「わたくしは主に従うのみでございます」
「律儀だよねぇ☆ キミはもう少し肩の力を抜いたラ?」
「貴殿はやや肩の力を抜きすぎているのではなかろうか?」
扉の外、部屋の前で、誰かが盗み聞きをしているなどということを――
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