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2.gift
白雪姫side.3
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「ちょっと! 話を聞いてるの!?」
「聞いてるわ。マカロンが美味しいという話でしょう?」
「馬鹿にしてんのあんた!? 時間を進めるとかなんとかできないのって聞いてるの!!」
甲高い声に、漆黒に身を染めた女は少しだけ眉をひそめた。とはいえ外套のフードを深くかぶっているせいで、表情など目の前の少女がまったく知る由もないのだが。
「アナタ、もう少し静かにできないのかしら」
「はぁ!? 誰がそんなことを言えって言ったのよ! 私が聞いてるのはねぇ……!」
少女が顔を歪めて文句を吐きつけようとした瞬間、黒装束の女はキセルを吹かして、その煙を少女の方へ吹きかけた。途端に少女が咳き込む。
「ちょっと、やめなさいよ!」
「なら少しは黙りなさいな。うるさい人間は好きじゃないわ」
女はそう言い、目の前に立つ絶世の美少女――白雪姫を無感情に見つめた。
「あんたが巻き込んだんでしょう!? 私がどれだけ待ってあげたと思ってるの!?」
「ここに来たいと言って選択したのはアナタよ。憶えてないわけはないでしょう? 選択の責任を取るのはいつだって選択した己。そんなこともわからないまま選択したのなら、アナタも相当な間抜けね」
「はああああ!?」
白雪姫は目を剥いて女に掴みかかった。
それに女は無表情のまま瞬きを一つ返す。
「私が選択したのは妖精たちが私に恋をする運命となる未来よ! どこの馬の骨とも知れないあんな平々凡々な顔の女が妖精と一緒に暮らすなんてお門違いもいいところじゃないのよ!」
「アナタ、文句を言っても何も変わらないことくらい理解したらどうかしら。大体その台詞、アナタ惨めにはならないの? それ、道化師にも言ったんでしょう。愚痴を言われたわよ。喧しくてケバケバしいお姫様に凄まれたって」
「誰がケバケバしいよ! 私は世界で一番可愛くて可憐で清楚で美しいのよ!!」
「ならその耳のピアスと顔に塗りたくった化粧をとったらどうかしら。美人はすっぴんでも良いはずだけれど」
白雪姫がぎゃあぎゃあとカラスの如く――いや、それではカラスに失礼だろうか――騒ぎ出したのを適当にいなしながら女――死神姫は目を細めた。
無論、自分もこのまま道化師に負ける気はない。
こちらもそろそろ何か一手を打たなければならないのは明白だ。
が、しかし、如何せん今回のゲームは手持ちの駒が悪い。
頭の悪い女を駒として使うのはまったくもって骨が折れる。
……こうまで壊れる予定はなかったのだが。
何にせよこんな女のせいで自分が負けるのは少し虚しい。
死神姫はいつまでもぎゃあぎゃあと騒ぐ白雪姫に再びキセルの煙を吐きかけた。彼女が再び噎せるのを見て、死神姫は口の端を釣り上げて小さく笑う。
「アナタ、色仕掛けは得意よね」
「何よその言い方!」
「事実でしょう? 怒ることないわ。数少ないアナタの特技じゃない。全く褒められたものではないけれど」
「はああ!?」
白雪姫が睨みつけてくる。が、全く怖くない。というか怖いわけがない。
彼女をこの世界に導き落としたのは死神姫自身なのだから。
「アナタが使ってるあの“男”。あれに色目を使える?」
「何言ってるのよあんた? あんなフード深々と被っててすっごい不気味な奴に甘えろって言うの?」
遠まわしにお前もフードを深々と被っていて不気味だ、と言われていることには気づいたが、死神姫にとってはかなりどうでもいいことなので放っておいた。
「だったらそのフードを外してみれば?」
「嫌よ! あのフード黒くてよくわからないけど絶対汚れてるわ。この前は血の匂いがしたもの!」
「そりゃあ彼がアナタに使われている理由の大元を考えれば血が服に付くくらい普通でしょう。まぁアナタのことだから理由も知らないで使ってるのでしょうけれど」
「私が甘えてあげてもいいのは攻略キャラだけよ! あとは、少し使えそうなら甘えてあげてもいいけど、あの男は私に仕えてるようなものなんだから今更甘えてあげることないじゃない」
「馬鹿ねぇ、アナタ」
死神姫は唇を三日月型に薄く開いて、低く、妖しく笑った。
「あの“男”、その攻略キャラクターの家に継母と一緒に住んでいる男よ?」
「聞いてるわ。マカロンが美味しいという話でしょう?」
「馬鹿にしてんのあんた!? 時間を進めるとかなんとかできないのって聞いてるの!!」
甲高い声に、漆黒に身を染めた女は少しだけ眉をひそめた。とはいえ外套のフードを深くかぶっているせいで、表情など目の前の少女がまったく知る由もないのだが。
「アナタ、もう少し静かにできないのかしら」
「はぁ!? 誰がそんなことを言えって言ったのよ! 私が聞いてるのはねぇ……!」
少女が顔を歪めて文句を吐きつけようとした瞬間、黒装束の女はキセルを吹かして、その煙を少女の方へ吹きかけた。途端に少女が咳き込む。
「ちょっと、やめなさいよ!」
「なら少しは黙りなさいな。うるさい人間は好きじゃないわ」
女はそう言い、目の前に立つ絶世の美少女――白雪姫を無感情に見つめた。
「あんたが巻き込んだんでしょう!? 私がどれだけ待ってあげたと思ってるの!?」
「ここに来たいと言って選択したのはアナタよ。憶えてないわけはないでしょう? 選択の責任を取るのはいつだって選択した己。そんなこともわからないまま選択したのなら、アナタも相当な間抜けね」
「はああああ!?」
白雪姫は目を剥いて女に掴みかかった。
それに女は無表情のまま瞬きを一つ返す。
「私が選択したのは妖精たちが私に恋をする運命となる未来よ! どこの馬の骨とも知れないあんな平々凡々な顔の女が妖精と一緒に暮らすなんてお門違いもいいところじゃないのよ!」
「アナタ、文句を言っても何も変わらないことくらい理解したらどうかしら。大体その台詞、アナタ惨めにはならないの? それ、道化師にも言ったんでしょう。愚痴を言われたわよ。喧しくてケバケバしいお姫様に凄まれたって」
「誰がケバケバしいよ! 私は世界で一番可愛くて可憐で清楚で美しいのよ!!」
「ならその耳のピアスと顔に塗りたくった化粧をとったらどうかしら。美人はすっぴんでも良いはずだけれど」
白雪姫がぎゃあぎゃあとカラスの如く――いや、それではカラスに失礼だろうか――騒ぎ出したのを適当にいなしながら女――死神姫は目を細めた。
無論、自分もこのまま道化師に負ける気はない。
こちらもそろそろ何か一手を打たなければならないのは明白だ。
が、しかし、如何せん今回のゲームは手持ちの駒が悪い。
頭の悪い女を駒として使うのはまったくもって骨が折れる。
……こうまで壊れる予定はなかったのだが。
何にせよこんな女のせいで自分が負けるのは少し虚しい。
死神姫はいつまでもぎゃあぎゃあと騒ぐ白雪姫に再びキセルの煙を吐きかけた。彼女が再び噎せるのを見て、死神姫は口の端を釣り上げて小さく笑う。
「アナタ、色仕掛けは得意よね」
「何よその言い方!」
「事実でしょう? 怒ることないわ。数少ないアナタの特技じゃない。全く褒められたものではないけれど」
「はああ!?」
白雪姫が睨みつけてくる。が、全く怖くない。というか怖いわけがない。
彼女をこの世界に導き落としたのは死神姫自身なのだから。
「アナタが使ってるあの“男”。あれに色目を使える?」
「何言ってるのよあんた? あんなフード深々と被っててすっごい不気味な奴に甘えろって言うの?」
遠まわしにお前もフードを深々と被っていて不気味だ、と言われていることには気づいたが、死神姫にとってはかなりどうでもいいことなので放っておいた。
「だったらそのフードを外してみれば?」
「嫌よ! あのフード黒くてよくわからないけど絶対汚れてるわ。この前は血の匂いがしたもの!」
「そりゃあ彼がアナタに使われている理由の大元を考えれば血が服に付くくらい普通でしょう。まぁアナタのことだから理由も知らないで使ってるのでしょうけれど」
「私が甘えてあげてもいいのは攻略キャラだけよ! あとは、少し使えそうなら甘えてあげてもいいけど、あの男は私に仕えてるようなものなんだから今更甘えてあげることないじゃない」
「馬鹿ねぇ、アナタ」
死神姫は唇を三日月型に薄く開いて、低く、妖しく笑った。
「あの“男”、その攻略キャラクターの家に継母と一緒に住んでいる男よ?」
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