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第1章 最弱の冒険者
11話
しおりを挟む「うーん……なーにがいけなかったんだろう?」
そう独り言ちるサヴァンは現在いつもの神殿に再召喚されていた。
だがもはや彼にとって蘇りなど日常茶飯事の出来事になってしまっているため
それに対しての感想は一切ない。
それを克明に物語っているのは彼の今の態度だ。
本来神聖な場であるはずの蘇りの祭壇に腕を組みながら仰向けに寝転んだ状態で片足を組みながら
物思いに耽っている様はふてぶてしいことこの上ない。
そこが神殿だという事も忘れサヴァンはひたすら先ほどの戦いの反省点を考えている。
意識外からその神殿の神官を務めるマーレが声を掛けているがそれにお構いなしに頭を巡らす。
まずウッドマッシュを相手に懐を取る修練を積み、三時間という時間をかけある程度攻撃のタイミングは
掴めるようになった。 これは間違いない。
そして、スライムを相手にしたときもウッドマッシュとの修練の成果が如実に表れていた。
だがそれでもサヴァンは敗北を喫してしまった。 何故なのか?
答えは至ってシンプルなものだった。
それは相手の攻撃を躱すことを怠ったことだ。
自分の攻撃を相手に命中させるのは大事なことだ。 冒険者として必要な能力とも言える。
だがそれと同じくらい大事なことは戦っている相手の攻撃を避けるという事。 これも大事な要素なのだ。
先のスライムとの戦いで、スライムに攻撃を当てることはできたものの、相手の反撃をほとんど受けてしまい
気付いた時には神殿にたどり着いていた。 それがスライムとの戦いで起きた事の顛末だった。
「そうか、こっちの攻撃を当てるだけじゃダメなんだな……」
「いい加減にしなさいっ!」
「ぼふっ」
サヴァンが物思いに耽っていると突然顔に重く柔らかな感触が伝わってくる。
何事かと思い顔に纏わりつく物を両手で左右から掴む。
「いやんっ、ちょちょっとサヴァン君? なっ何してるのかな――ひゃんっ」
「何って、突然柔らかいものが顔にくっついてきたんでそれを掴んでるだけですけど?」
「そっそれはわたしの……ですから」
突然襲ってきた謎の物体に戸惑いを隠せないサヴァンだったが彼の経験上それに該当する物が
ないため視界を塞がれたままそれを両手で揉んで確認する。
「それにしてもすごく柔らかいな、まるで女の人のおっぱいみたいだ……」
「きゃんっ、ちょちょっとサヴァン君、やめっやめて……」
「どうしたんですかマーレさん変な声が出てますけど?」
その一言でようやくサヴァンの顔にかかっていた重圧が無くなる。
それに伴い、サヴァンは自身の目をゆっくりと開ける。
そこに広がっていた光景は誰かの上半身の胸部だった。
それは一目でわかるように女性の胸部で自分がその胸を両手で挟み込んでいる形を取っていたのだ。
山のように聳える二つの双丘から顔がある方向に視線をずらすとそこには目の端に涙を溜めたマーレがこちらを睨みつけていた。
「サヴァン君、いつまでわたしの胸を触ってるのかな?」
「えっ、あ、ああっ、すみません!!」
慌てて両手で挟んでいた彼女の膨らみを離す。
だがまだ十歳であるサヴァンに名残惜しいという感情はこの時にはなかった。
感想としては柔らかかったが、彼にとってはただそれだけのことだった。
その後場に気まずい沈黙が流れるもそれを一つの質問でサヴァンは打ち破った。
「あ、あの、そろそろステータスの更新をお願いしたいのですが?」
サヴァンが声を掛けるまで何か呪文のようにぶつぶつと言っていたマーレが彼の声に反応し
祈りの儀の準備をするために移動をする。
ちなみにマーレがぶつぶつ言っていた内容は「初めて胸を揉まれました」とか「もうサヴァン君に嫁に貰ってもらうしか」という内容だったが、幸いというべきか不幸というべきかサヴァンの耳に届くことはなかったのであった。
祈りの儀を終え、サヴァンのステータスを確認したマーレは驚いた声を上げるとこちらに詰め寄ってきた。
「さささサヴァン君、あなた一体何をしたの?」
「えっ?」
そう言いながら彼のステータスが書かれた羊皮紙を差し出すをサヴァンはそれを受け取り内容を確認する。
そこに掛かれていたのは次の通りである。
体力 24 → 22
魔力 0 → 0
筋力 10 → 11
耐久力 7 → 8
俊敏力 11 → 20
知力 5 → 6
精神力 6 → 7
幸運力 15 → 20
「何ですかこれ? ステータスがかなり上昇してるじゃないですか?」
「それを聞きたいのはこっちだよ。 どんな手品を使ったんだい?」
「手品って、ただ僕……俺はウッドマッシュ相手に修練をしただけですよ?」
「どんな修練をやったの?」
サヴァンは包み隠さず、ウッドマッシュ相手に行った修練をマーレに話した。
その話を聞き終わると、胸を強調するかのように胸の下で腕を組みながら思案するマーレ。
これが他の男なら胸に目が釘付けになるだろうが、サヴァンは彼女の顔を見つめたまま彼女の言葉を待っていた。
「多分だけど、短期間に集中して修練したことで落ち込んでいたステータスを補強することが
できた結果じゃないかと思うんだ。 それが証拠に体力の項目は以前よりも落ちてるみたいだしね。
でもこの22っていう数値も補強された結果によるものだと思うから、今回の修練が無かったら
かなり落ち込んだ数値だったと思うよ」
通常死んでから復活した場合は肉体情報を再生するための対価として、肉体情報の劣化が起こり
ステータスの一部が下がった状態で復活するのだが、訓練やモンスターと戦うことで肉体の劣化を補完することができるのだ。
ただ今回のサヴァンのように三時間という短期間で数十回の蘇りをなかったことにするほどのステータスの上昇は
異例中の異例だった。 少なくとも数年に渡って神殿に務めてきたマーレにとって初めての出来事であった。
「あの、もう僕……俺行きますね。 それじゃマーレさんまた」
「え、あっ、サヴァン君ちょっと!」
マーレの呼びかけに答えることなくサヴァンは神殿を後にした。
サヴァンは今の自分に足りない物が相手の攻撃を避けることだと理解したため
早速回避率を上げるための修練に入ることにしたのだ。
まずやったことはスライムにやられた洞窟に再び赴き、スライムと対峙する。
ただし今回は討伐が目的ではなく、スライムの動きの観察だ。
相手の一挙手一投足を目を皿のようにして観察し、最初は何回も攻撃を受けたが回復アイテムを使用しながら
やられないようひたすらスライムの動きを回避すべく修練を続けた。
その後、二回ほどスライムの攻撃で神殿送りになったが、かなりの確率でスライムの攻撃を躱せるようになってきていた。
三回目の神殿送りで夕方を迎えたため今日はこれまでとし、夕飯を食べると汗をぬぐい落すため身体を拭き明日に備えて寝ることにした。
(待ってろよ、次こそは必ず倒すからな!)
次は必ずスライムに勝つと誓いながらサヴァンは意識を手放すのであった。
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