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2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」
76話:「大和、三人を悩殺する」
しおりを挟む大和たちが付いた席のテーブルには所狭しと色とりどりの料理が並べられ
他のテーブルにも同じように大量の食べ物が並んでいる。
事件が解決したということでバルバロの計らいで町を上げての宴が行われることになったのだ。
バルバロも事の経緯を知ってノームを責めようとしたが
ノーム本人の性格と何よりわざとやっていないという理由から水に流すことにしたようだ。
度量の大きい男である。
そして、今まさに代表者のバルバロの宣言により宴が開かれているといった状況だ。
彼の話ではこの町はもともと料理文化が発展した町であったため
余計に今回の呪いが町に大打撃を与える結果になってしまったのだが
呪いが解けたことにより町にかつての活気が戻ったようだった。
「ヤマト様、ちゃんと食べてますか?」
そう聞いてくるのは大和の隣に陣取るように座っているリナだ。
両手にはどこからもらってきたのかわからない骨付き肉を両手に持っている。
「お前はどこの原始人だ!」
そうツッコミを入れるとニコリと笑って手に持つ肉にかぶりつく。
年頃の女の子がする所作としては最悪だが相手がリナでは仕方がないと
大和もそれ以上彼女のテーブルマナーに口出ししないことにした。
「ヤマトさま、これ美味しいですよ食べてみてください!」
今度は反対の席から声を掛けられる。
こちらもまたさも当然と言わんばかりに大和の隣に陣取るエルノアが
自分が食べていた料理の皿を差し出しすすめてくる。
ちなみにマーリンはエルノアの隣に座ってリスのように料理を食べている。
大人の女性の雰囲気を携えた彼女の皿を差し出す所作は
まさに優雅で美しい女性のそれだ。
その姿に大和は目を細めながら口端を引き上げると
彼女がすすめてきた料理をスプーンですくい口に運んだ。
見たところビーフシチューのようだが口に入れた瞬間
濃厚な旨味が口の中に広がりなんの肉かはわからないが
口の中で溶けるように消え美味の一言に尽きる美味さであった。
「おおっ、確かにうまいなこれ!」
そう言ってエルノアを見ると少し顔が赤くなっていた。
特徴的なエルフ族の長く尖った耳も赤みを帯びてピクピクと動いている。
「どうした? 風邪でも引いたか?」
「いえっ、その・・・・それあたしが食べていた料理です・・・・・・」
「?」
大和はエルノアが何を言っているのか理解できなかったが
反対にいたリナが声を上げたことで彼女の言いたかったことを理解する。
「あああああ! 間接キッスだ!! エルノアさんずるいです。
私もヤマト様とキスするです!!!」
そう言って顔を近づけてくる愚か者に顔面チョップをお見舞いし粛清する。
それと同時にエルノアに向き直ると彼女にもやんわりと反論する。
「エルノア、同じ料理を食べたからと言って間接キスにはならないんじゃないか?
例えばお前が使っていたスプーンを俺が使ったら間接キスだが
お前が食べていた料理を俺が食べたからって間接キスにはならないと思うぞ?」
これはあくまで大和の自論だが、そもそもキスの定義はお互いの唾液
すなわち体液を交換するということであり、間接キスとは相手の唾液が付着しているものを
口に取り込むことでキスをしているのと同義の行為を指す言葉なのだ。
今回の場合エルノアが食べた料理を大和が食べたことで
料理に混入した彼女の唾液を取り込んだつまり間接キスになったと彼女は主張したかったようだが
その定義だと鍋はどうなるのだろうか?
複数人で食べる鍋ともなればその鍋を食べた全員が間接キスをした
ということになってしまうのではないだろうか?
あるいは一皿の料理を不特定多数の人間と共有した場合も
間接キスになり得てしまうのではないだろうか?
以上の点から鑑みても今回のエルノアの主張は間違っていると大和は結論付けた。
「そっそんな・・・・」
大和に正論を突き付けられがっくりとうな垂れるエルノア。
そんな彼女の頭に手を乗せ慰めるようにわしゃわしゃと撫でまわす大和。
元の世界にいた頃によく妹にしてやったように・・・・
そんなことをしていると大和はふと思い出してしまう。
元の世界にいる家族のことを。
厳しくも優しかった父、少しドジでほんわかした母。
しっかり者の祖母、そして可愛い妹。
そんな家族への愛が会いたいという気持ちが言葉となって漏れ出てしまう。
「俺・・・・元の世界に帰れるのかな?」
その心から漏れ出た言葉はほんのわずかな音量だったが
近くにいた人間の耳に届くには十分すぎる大きさだったわけで。
「やっヤマト様、寂しいのですか? なら私のこの自慢の胸で泣いてもいいのですよ?」
そう言って本当に自慢なのだろうなと思うほど胸を張るリナ。
彼女が胸を張ったことでその双丘がゆさゆさと揺れている。
「ちょっとリナさんなにを言っているんですかっ!
それならあたしの胸の方が大きいのですからヤマトさまが泣くのは
あなたの胸ではなくあたしの胸です。 ささっヤマトさま私の胸をお貸ししますので
どうぞ存分に泣いてくださいましっ!!」
まるですべてを包み込むという様相で両手を広げ大和を迎え入れようとする。
リナのように胸を張ることもなく落ち着いた雰囲気を持ちながら。
まるで母が子に接するが如くのような優しい印象を受けた。
「ならマーリンの胸で泣けばいいですのん!
たかだか数十年生きた程度ではヤマトさんを包み込んであげるには
幼なすぎるですのん。 ここは年長者としてヤマトさんを慰めるですのん!」
マーリンも二人に感化されたのか宴の雰囲気に当てられたのか
いつもは絶対に言わないようなことを言ってきた。
だが少し不安になっていたのは事実でありこの先の旅も
進めば進むほど強大な敵が待ち構えている。
大和は三人を見る。
先ほどの発言が発端となり大和を差し置いて三人による三つ巴の戦いが繰り広げられていた。
「エルノアさんのような大きい胸ではヤマト様が窒息してしまいます。
私の胸が一番なのです!!」
「いいえ! あなたの胸では巨乳好きのヤマトさまを満足させることはできません!!
あたしのような選ばれた胸でなければならないのです!!!」
(ちょっと待て!! いつから俺は巨乳好きになったんだ!?
まあ・・・・確かに大きいのは嫌いじゃないけど・・・・)
そう思いながらいがみ合う二人に割って入るマーリン。
「いつからヤマトさんが巨乳好きになったんですのん!!
やはりここは大人の女性として・・・・」
「「幼女は黙っとれ!!」」
「ふにゃああ!!」
割って入ろうとしたが完全に子供扱いされ相手にしてもらえないマーリン。
そんな三人の様子をぼんやりと眺めていると先ほどの抱いていた不安が
嘘のように緩和していく。
まだこの世界に来て数えるほどの時間しか経過していないが
過ごした時間が今まで経験してきたことがないほど濃密な時間だったと大和は理解する。
「ははははははは!」
三人の様子を見ていた大和が突然声を出して笑い出す。
何事かと今まで口論していた三人が大和の様子を窺ってくる。
「ヤマト様どうしたのです!?」
「何かございましたか?」
「おかしい事でもあったですのん?」
ひとしきり笑ったあと大和はこれ以上ないほどやさしい表情を浮かべ
これまたやさしい口調で答えた。
「俺・・・・お前らに出会えてよかった。
この世界に来ていきなり勇者だの魔王討伐だの
いろんなことが急に乗っかって来てさ、正直不安だった。
でもお前らと出会って過ごしてきた時間はまだ短いけど、これだけははっきり確信できる。
お前たちがいなかったら俺はここまで来れなかったんじゃないかってさ・・・・」
自分が今まで過ごしてきた世界から離別し自分の常識だったものが
通用しない世界に半ば強制的に来させられたのだ。
さらに勇者という重責を負わされ魔王討伐という使命まで押し付けられたとあっては
不安にならない方がおかしいことだろう。
この世界に来て不安になり目の前のことから逃げようとも思ったけれども
そんな俺を勇者と言ってくれたこと、仲間だと言ってこの旅に同行してくれたこと
それだけでただそれだけで俺がどれだけ救われたか計り知れない。
大和は三人の顔を順番に見回すと今まで見せたことがないような輝くような笑顔でこう言葉を締めくくった。
「俺みたいなどうしようもないいい加減な男に付いてきてくれて
ありがとな・・・・・・」
その言葉を言い終わると三人は急に後ろに倒れ込んだ。
「あっあれ!?」
大和が近寄ってみると三人とも気絶していたのだ。
リナに至っては鼻から血を噴出させていた。
「おっお前らどうしたんだ!?」
声を掛けたが三人に返事はなかった。
「返事がない、ただのしかばっ・・・・・・」
「それ言っちゃダメなやつだっぴゃ!!」
その声の主はノームだった。
精霊空間からひょっこりと顔を出し大和の言葉を遮る。
「ノーム、こいつら一体どうしたんだ? 急に倒れちまったんだ!!」
「全くヤマトは自分のことを何もわかってないだっぴゃね!!」
「????」
訳が分からないという顔をするとノームは呆れた様子で説明してくれた。
「この世界の美的センスはヤマトのもとの世界とは違うだっぴゃ」
「ああそれは聞いた」
「その美的センスで見ればヤマト! お前はこの世界では美青年だっぴゃ!!」
「おうそれも何となくだが理解している」
「つまりさっきヤマトはすごい綺麗な笑顔で三人に微笑んだだっぴゃ!
それが原因で三人は気絶したんだっぴゃ!!」
つまりノームの見解では
この世界にとって超絶イケメンの俺の輝かんばかりの悩殺笑顔を向けられて
それに耐えられなくなり意識を失ってしまったということらしい。
しかもいつも高圧的な態度を取っていた大和が
急にしおらしくなり悩殺笑顔で感謝の言葉まで述べてきたのだ。
そんなことをされて意識を失わない女はこの世界にはいないとノームは断言した。
「んな馬鹿な!!」
「ヤマトはもっと自分が美男子だと言うことを自覚すべきだっぴゃ!」
その後三人は担ぎ出されバルバロの厚意で用意された宿屋のベッドで朝まで起きてこなかった。
大和は今回の件を受けて改めて自分のイケメンぶりを再認識するのであった。
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