オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章:パーティーができあがるまで

18話:「異世界生活、朝の出来事」

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前章のあらすじ


どこにでもいる平凡な顔をしたしがないサラリーマンこと小橋大和
オンラインゲームをプレイ中突如異世界に転移してしまう
その世界で出会ったリナに連れられて神殿に行くと
ご神託の勇者だと告げられ困惑する

なんとかその場から逃げ出そうとしたが
突然魔族が襲来しこれを撃破することに成功した大和は
勘違いされたままご神託の勇者という称号を押し付けられてしまう





第2章【パーティができるまで】



幻獣ヴァルボロスが襲来した事件から3日が経とうとしていた
神殿のバイゼル司教のはからいにより一時的な住居を提供される
「私の部屋でいいじゃないですか?」というリナのよこしまな野望を阻止し
ちょうどリナの部屋の隣の住居が開いていたため現在そこを使わせてもらっている


この町一番の豪邸に住まわされそうになったが
それでは気を遣うため一般的な住居をお願いしたのだ



朝の陽ざしが窓から入り込み大和の顔を照らす
その心地よい光の眩しさに大和の瞼が開かれる
まだ起きたばかりなので急に目を開けると眩しいため
目をつむったまま両手を前に押し出しながら体を伸ばそうとしたとき
何か柔らかいものを両手が掴んだ


その正体がなんなのかわからなかったため
両手に力を入れその感触を確かめる
感想は「とても柔らかく生暖かい」だ


目が光に慣れてきたためゆっくりと目を開け
その柔らかさの正体を確認しようとする


そして目を開けた瞬間瞬時にそれが何なのか理解する
それは・・・女の子の二つの膨らみだった


「はあ!?」


自分の状況が理解できずに困惑していると
その大きくて柔らかい胸の持ち主が目を覚ます


「んっんんーー」



眠けまなこを擦りながら一人の少女が口を開く


「ああヤマト様、おはようございまっ・・・」


そう言いかけて彼女は自分の視線を体の下に落とす
自分が何をされているのか理解した彼女は
途端に例の【だらしない顔】を作り大和に問いかける


「やっやまとさま、なっなにしてるんですか・・・はぁはぁ」


普通のラブコメなら女の子が恥ずかしくなり
主人公をぶん殴っていることだろう
だが目の前にいる変態はそのようなことはしないむしろ



「別に寝込みを襲わなくても、
言ってくれればいつでも触らせてあげますよ」



発情したメスの顔でこちらを見つめながら話してくる変態
もし大和が女だったら感想としてはこうだ

【生理的に受け付けない】


自分が汚らわしい存在の胸を
揉んでしまったことに気付いた大和は
こう叫びながらリナをぶん殴った


「なに朝から気色悪いもの触らせてんだあああああ!!」


大和の放ったアッパーが見事にリナの顎を捉え
リナの体が空中に舞い上がる
触ったのは大和本人なのだがあまりにも気持ち悪かったため
理不尽ではあったがこうせざるを得なかった


「ぶべら!」


間の抜けた奇妙な声を発しそのまま床に激突するリナ
そして数秒間沈黙が続いたがむくっと起き上がった彼女が
大和の行動に対して抗議の声を上げる

戦い開始のゴングが打ち鳴らされる


「なにするんですか!痛いじゃないですか!!」



「それはこっちのセリフだ
なんでお前が俺の部屋のベッドに潜り込んできてやがるんだ!!
ここは俺の部屋だぞ!!!」


そうなのだ今二人がいるのは
大和がバイゼル司教にお願いして間借りしている部屋だ


間借りしているといっても家賃は払っていない
「ヤマト様から家賃などいただけません」というバイゼルの厚意で
タダで貸してもらうことになったのだ


当然最初は払うつもりでいたのだが
「払います」「いいえいただけません」という押し問答となり
結局大和が折れる形でタダで借りることになった


その大和が借りている部屋にリナがいるのは
当然のことながら不自然である


苦虫を噛みつぶしたような歪んだ表情を浮かべながら
リナが言い訳じみたことを言い始めた
(実際はただの逆ギレなのだが・・・)


「だってしょうがないじゃないですか!
ヤマト様なかなか夜這いに来てくれないし
私ずっと待ってたんですよ、全裸で!」



「全裸ってなんだよ!全裸って!!
いやそれよりもどうやってこの部屋に忍び込んだ
ちゃんと昨日は鍵を掛けて寝たはずだ!!」



そう問いかけるとリナは「ふふん」と鼻を鳴らしながら
誰が見ても苛立ちを覚えるドヤ顔で当然のように答えた



「そんなもの針金が2本あればどうとでもっ」



そう言い終わる寸前で大和の右回し蹴りが炸裂した
またしても体が空中に浮き床に叩きつけられる

女の子になんてひどいことをしているのかと思うだろうが
この3日間リナの熱烈なアプローチは留まることを知らず
大和はほとほと困り果てていた

女の子を殴るというのは男としては褒められた行為でないことは
大和も重々承知しているのだが

強く言っても聞かないし無視しても効果なし
ありとあらゆる方法を試した結果
”ぶん殴る”というのが最も効果的だという結論に至ったのだ


再びむくっと起き上がったリナに対し
強めの口調で大和は言った


「とにかく迷惑だもう二度とこんなことするなよ!!」



「ぶーーーー!」


頬を風船のように膨らませながら不貞腐ふてくされるリナ
不覚にも一瞬だがちょっと可愛いと思ってしまった


だがそれも一瞬の気の迷いだとわかっているため
大和は気にも留めなかった



一通りの漫才を終えるとリナは自分の部屋に戻る
大和の部屋を出ていく時
未練たらしく一度振り返り大和の顔を物欲しそうに見たが
右手で「シッシッ」というジェスチャーをすると
しげしげと部屋に戻っていった


「はあ~、別の鍵が必要だな・・・」



部屋着から普段着に着替えると
大和は外に出かけようとしたが
その判断は間違いだったと後悔することとなる
ドアの向こうにいたのは自分の住居の周りを取り囲んだ人々
その数は100人ほどだろうか

早朝なのにもかかわらずこれだけの人だかりになっているのは
当然理由があった


先日の魔族の一件で勇者が降臨したという噂が広まり
一目勇者の姿を見ようと連日大和の住居の周りを
町の人々が取り囲むという事態が頻発した


1日目2日目と出かける時間を早くしたのだが
どれだけ早く起きても人がいるため
3日目の時点であきらめて少し遅めに起きたのだ


「きゃー勇者様!!」「勇者様!!」
「この世界を救ってくれー」という黄色い声援が聞こえる


3日目ともなると慣れたもので
苦笑いを浮かべながらもその声援に応えるように手を振る


「はいはーーい、ちょっと通りますので道を開けてください」


そう言いながら人をかき分けて進む大和
通るときに体のあちこちを触られたが致し方ない


人ごみを抜け振り返ってまだ聞こえてくる声援に手を振る
そして目的地に向け歩を進める
その場所はこのジェスタの町一番の食事処である店だ


魔族を討伐したその日リナとマーリンの三人で
その店でお疲れ様会のようなものをしたときに
そこの料理の味が絶品だったため
日に一度は必ずその店を利用することにしたのだ



「今日は何を食べようかなーー」


独り言でそんなことを言っていたとき
その独り言に答える者がいた



「私ははちみつとラズベリーの朝食セットにします」



「俺はそうだな・・・って誰だ!?」



声のする方に視線を向けると
見知った顔がそこにはあった
先ほど朝からイラっとさせられた相手だ



「ヤマト様ー、私も一緒に行っていいですか?
というか一緒に行きます」



「なんだリナかよ・・・ふん、勝手にすれば!」



素っ気ない態度で答える大和
そんなことは意にも介さず話しかけてくるリナ



「ヤマト様の好きな食べ物ってなんですか?
ヤマト様の好きな色ってなんですか?
ヤマト様の好きな・・・」



という風に当りさわりのない問いに対し
当り障りのないように答えていく大和



そういうやり取りが幾回か行われた時
ようやく目的の場所に到着した
食事処だからだろうか清々しいそよ風に混じって
いい匂いが鼻を刺激する


食事処【輝く風車亭ふうしゃてい
良心的な値段で食事を提供してくれる
この町の住人御用達の食事処である


席に着き朝のメニューから
【ワイバーンの卵の目玉焼きセット】を注文する
続いてリナが注文をして朝食が来る間少し雑談をし
待つこと5分、注文した料理が運ばれてきた


運ばれてきた料理を一言も発せず口にする大和
それに比べ、大和にしゃべりながら食事をするリナ
食べてる時くらいは静かにしてほしいものだ


食事を終え代金を支払うと、そのまま店を後にした
他にやることもないため目的もなくふらふらと町を散策する


「なんでついてくるんだ?」


朝食を食べても付いてくるリナに対し
怪訝けげんな表情で問いかける大和
いつもの彼女なら朝食をとった後は真っすぐ神殿に行くのだ
それが今日は神殿に行く気配がない



「まさかクビになったんじゃっ」



そう言い終わる前にリナのツッコミがきた


「そんなわけないじゃないですか!!
今日はたまたま朝のお務めが休みなだけです」



「ふーん、ってそれって質問の答えになってねえだろ?」



「だから今日はヤマト様と一緒にいます・・・」


そう答えた彼女の頬は紅潮こうちょうし、大きくてつぶらな瞳は
上目遣いで大和の姿を捉えていた
【ロックオン】と言った方がこの場合は正しい表現だろう


その視線に一瞬心を奪われそうになるが
寸前のところでその思いを押し殺す
奴の幻術に騙されてはいかんのだ


かなりしつこいようだがリナという女の子は
見た目は超絶美少女なのだが中身が変態であるため
その見た目の良さがすべてチャラになってしまっている


ただ見た目だけ見れば彼女は
今まで大和が出会ってきた女性の中では
1、2を争うほどの美しさなのだ


そう”見た目”だけはだ!!
そんなことを考えながら町を歩いていると
男が声をかけてきた


「おはようございます、ヤマト様」


「ああどうも、えっと・・・」



誰だこの人?というのが顔に出ていたのだろう
その男が話を続ける



「失礼しました、神殿の者ですが
今日は非番のため神官服は着ておりません」



「ああ神殿の人でしたか、それで何か?」



そう言うとゴホンという
わざとらしい咳払いをした後男はこう話した


「バイゼル司教様がお呼びだそうです神殿にお越しください・・・」
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