転生してもノージョブでした!!

山本桐生

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お仕事頑張るぞ編

新しい従業員とまさかの事態

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 たまにはデコ出しも可愛いだろ。前髪を取り、顔の左側で三つ編みを作る。そして作った三つ編みを左耳の後ろへと流し、ピンで留める。
 男だった前世からでは考えられん。しかし16年も女の子をやっていれば、これぐらい簡単なのさ!!
 さて髪の毛も整えたし。
 今日も一日頑張るぞ、っと。

「いらっしゃいませ~」「ありがとうございました~」
 なんて、お店で接客していると……
 一人の男の子……いや、女の子か?
 黒に近い、濃い青色と灰色を混ぜたようなショートカット……なのだが、前髪で目が完全に隠れている。でも胸が少しあるな。女の子か。服装的にお客様ではない。まぁ、何て言うか……薄汚れてボロボロだし、服。うちのランタンが買えるとは思えない。
 自分でも場違いだと思ったのか、辺りを恐る恐ると伺っていた。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「あっ、あの、その、わ、私、メ、メイド協会の見て、あの」
「メイド協会……ああっ」
 メイド協会。
 至る所に支部を持つ協会。
 元々は清掃、洗濯、炊事などの家庭内労働を行う使用人を仲介、派遣していた。
 しかし今その幅はどんどんと広がり、果ては傭兵まで派遣してしまう。つまり様々な業種に対応した人材派遣協会なのである。
 うちも人手は必要なので、メイド協会を通して従業員を募集していた。
「従業員の募集で来たんですね?」
「そ、そうです、それで来ました、はい」
 彼女はコクコクと頷く。
「じゃあ、こっち来て。面接するから」
「あっ、はい、よろしくお願いします……」

 そんな感じで面接スタート。
 雇われた事の無かった俺が、雇う側へ……感慨深いもんがあんなぁ……
「えっと、まず名前と年齢かな」
「は、はい。名前はキオです。14歳です」
「私の二つ下なんだ~じゃあ、キオって呼んでも良い?」
「はい、大丈夫です。あ、あの……」
「シノブ。私の事はシノブお姉ちゃんって呼んで良いよ」
「えっ、でも、そんな……だって、こ、ここの経営者の方と聞いていますし……し、失礼ではないですか?」
「ああ~良いよ、良いよ、歳も近いんだし、実質の経営はお母さんだしね」
 そう……お母さん、想像以上のやり手でした。細かい事はお母さんに任せっきりである。もう俺はお飾りに……とは言え、たまにこうやって面接とかしてんだよ。
「で、では、シノブさんで……」
 話を聞くと、すでに両親は他界しているとの事。それからずっと一人。そしてなかなか仕事が長続きせず、各地を転々としながら、このエルフの町に流れ着いたと。
「何で仕事が長続きしなかったの?」
 これは聞いとかないと。問題児だと困る。
「あ、あの……実は……わ、私……これ……」
 キオは前髪を上げた。
「えっ、それ……」
 髪の毛に隠れて見えなかったが、包帯が巻かれていた。両目を完全に覆っている。
「……見えないの?」
「……はい。や、やっぱりダメでしょうか?」
「待って。でもお店に入って来た時、周りを見回していたでしょ?」
「あの、わ、私、目は見えないですけど、感覚と言いますか、不思議な力がありまして……その、何となく分かるんです……」
「分かるって……どういう事?」
「……シノブさんは……真っ白い綺麗な髪をしています。宝石みたいな赤い瞳です」
 いや待て、俺の容姿を事前に聞いている可能性がある。
「今日の私の髪形は?」
「ひ、額を出した三つ編み……です。三つ編みを耳の後ろに掛けてあります」
「……すげぇ」
 俺は頻繁に髪形を変えている。
「あ、あの……私、そ、そういうの……あの、みんな、その、気持ち悪いって……見えないのに、何でって……それですぐに仕事を辞めさせられて……もう、行く所も無くて……だから、お願いします……ここで働かせて下さい!!」
 キオは手をギュッと握り締めて、頭を下げる。
 確かに……目は塞がっている、なのに周囲が見えている……気持ち悪いと思う奴もいるのか。しかし俺だって唯一無二の能力を持っている。他に代わりのない能力を持つ奴だっているんだろ。
「うん。良いよ。見えるなら仕事に支障が無いだろうし」
「あ、ありがとうございます!!」
 お給料はこれくらいでと提示すると、キオは驚いた。いやいや、これくらい普通だと思うけど、今までどんだけ薄給で働かされていたのか……
「それと住む所はあるの?」
「無いです……け、けど、それは大丈夫です……何とかします……」
「それじゃ住み込みで良いよね?」
「でも、その……本当に良いんでしょうか? じょ、条件が良過ぎて申し訳ないです……」
「まぁ、そう思ってくれるなら、しっかり仕事で返してくれれば」
 俺はここを絶対にブラックにはしないぜ!! 前世で働いた事が無いから、実際のブラック企業とか知らないけどな!!

 と新しい従業員を雇ったわけだが……
「い、いらっしゃいませ」
 人見知りで引っ込み思案な面もあるが、とにかくキオは真面目によく働く。
 いやねぇ、俺は思うんですよ。人ってのはねぇ、勤務時間いっぱい動けるようには出来ていないんですよ。所々で手を抜いて、動くべき時に動けば良いんですよ。
 ……と、思っているのだが、キオは一日中動いていた。少しでも手が空けば細かい仕事を終わらせていく。掃除も行き届き、うちの店、いつも埃一つ落ちてないぜ。
 しかし……これで本当に目が見えていないんだろうか……

★★★

「これがガララント石とパル鉄鋼を使ったランタンですね?」
 一人の男性が来店した。
「そうですよ。ちょっとお値段は張りますけど、それに見合う良い物です」
 ニコッと、俺は営業スマイル。
 どや!! 俺、可愛いやろ!!
「色々と種類があって……少し店の中を見せて頂きますね」
「はい。もし何かありましたら気兼ねなく店員に話し掛けて下さいね」
 他のお客さんと変わらない……俺はそう思ったけど……
「あ、あの……シノブさん……」
「どうしたの、キオ?」
「……今のお客さんなんですけど……」
「ん? もしかして知り合い?」
「そ、そうじゃないんですけど……あの、ちょっと気になって……」
「どういう事?」
「……説明が難しいですけど、その、ちょっと変な感じがして……わ、私の勘違いなら申し訳ないんですけど……」
 うん。分からん。
「ねぇ、レオさん」
「はい、何でしょうか?」
 基本的に店内は俺とレオさん、キオの三人で営業をしている。そして扱っている物がそこそこ高価なので警備員としてヴォルが後ろに控えていた。
「今、入って来たお客さんなんだけど、レオさんが見てどう思う?」
 レオは人を見る眼が鋭い。
 来店したお客さんがどういうお客さんか……冷やかしなのか、買物に来ているのか、来ているのならどの程度の物を求めているのか、その辺りを見極めるのが上手い。
「……買うつもりは無いようですが……特におかしい所は何も感じられません。彼がどうかしましたか?」
「ご、ごめんなさい……変な事を言って……」
 そう言ってキオは深く頭を下げた。
 ……とりあえずヴォルには男の匂いを覚えてもらっとこ。

 それから数日後。
「いらっしゃいませ~」
 店内に一人の女性が来店。特に気になる様子も無かったんだけど……
 キオが落ち着き無く、ソワソワしている。チラッチラッと視線を向ける先には今来店した女性。知り合いか? いや、そんな感じじゃない。
 先日の男性客が来店した時と同じような反応。
 ……アニメや漫画だとこういう反応を見逃して、何か事態が酷い方に進んだりするんだよな。
「シノブ」
 ヴォルフラムだ。店の奥から俺を呼ぶ。
「どうしたの?」
「前に男の匂いを覚えさせただろう? 同じ匂いがあの女からする」
「つまりオカマ!!?」
「そういう事じゃない。多分、いつも一緒にいるんだと思う」
「夫婦とか恋人同士とか、そういう感じ?」
「そう」
 ……男性が下見に来て、財布を握る女性が買いに来たとか?
 気になると言えば気になるけど、レオが問題視していないし大丈夫だと思う。

★★★

 なんて楽観的に考えていたんだが、やっぱりこういう時は事態が酷い方に進むんだな……まさかの事態。
 日が暮れて、そろそろ閉店。
「いらっしゃいませ~」
 お客さんが来店……お客さん?
 視線を向けるとそこには口元を布で覆う複数の人。顔を隠していた。
 店の奥からヴォルフラムが飛び出すのと、レオが動くのはほぼ同時。
 レオが一人の腕を取ると、投げ飛ばし、そのまま腕を捻り上げ制圧する。老人とは思えない流れるような動き。やっぱり只者じゃない。
「動くな」
 それは男の声。その声は俺のすぐ背後からだった。そしてその俺の首元にはナイフ。
 もちろん俺だけなら問題は無い。
 しかし……
「みんな。動かないで」
 俺は言う。
 キオにもナイフが突き付けられていた。
 
 強盗である。

「ヴォル、下がって。レオさんは言う通りに」
 レオは強盗に従い、売上金を渡した。保管していた数日分の売上。相当の金額になるが、売上より安全。逆らう事はしない。
「人質は私だけで充分でしょう? 彼女は離してあげて下さい」
「シノブさん……」
 俺だけならどうにでもなる。しかしキオが拘束されていてはその行動が制限される。そして何よりも怖いはず。なるべく早く解放させてやりたい。
 しかし男は俺の言葉に答えない。
「少しでも動けば、女達は殺す」
 男はそう言い、俺とキオはそのまま店の外へと連れ出された。そこに用意されていたのは荷馬車。うちが商品の移動で使う荷馬車と全く同じもんだ……突発的で無計画な強盗じゃない……これ、ちゃんと用意周到に準備されていた強盗じゃね?
 俺とキオはそのまま荷馬車に押し込まれるのだった。
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