彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi

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第21話:クラスメートが私を支えてくれます

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令嬢の声が聞こえ、ゆっくりと振り向く。するとそこには、同じクラスの公爵令嬢、マリーゴールド様がハンカチを私に差し出してくれていたのだ。

「マリーゴールド様!」

急いで立ち上がる。

「アンリ様、あなた様の事は噂で聞いておりましたわ。大丈夫ですか?」

「お見苦しいところをお見せして、申し訳ございません。はい、大丈夫です」

必死に涙をぬぐい、そう答えた。

「その様に目をこすっては良くないですわ。このハンカチを使ってください。お返しいただかなくても大丈夫ですので」

「ありがとうございます」

お優しい微笑を浮かべ、ハンカチを渡してくれるマリーゴールド様。その微笑は、女神の様に美しい。今まであまりにも遠い存在で同じクラスでも話した事がなかったが、とてもお優しい方の様だ。

「それで、どうして泣いていらっしゃったのですか?よろしければ、私に話していただけないでしょうか?」

優しい微笑で語りかけて下さるマリーゴールド様。そんなお優しい微笑を向けられたら、答えないなんて選択肢はない。私は自分の気持ちを、マリーゴールド様に思いっきりぶつけた。途中から泣きじゃくる私の背中を、優しく撫でてくれるマリーゴールド様。

「お可哀そうに…アンリ様とグレイズ様の仲睦まじい姿は、私から見ても素敵だと感じていたのです。それなのに、無理やり権力を使って引き裂くだなんて…」

マリーゴールド様が私を慰めて下さる。自分よりずっと身分の低い私にも、こんな風にお優しく接してくださるだなんて。そういえばマリーゴールド様のお姉様は、王太子妃様だった。王太子殿下は王太子妃様を溺愛していると聞いたことがあるが、きっとマリーゴールド様のお姉様も、素敵な女性なのだろう。

マリーゴールド様自身も、公爵家の嫡男の元に嫁ぐことが決まっているし。

「マリーゴールド様、私の様な者のお話を聞いて下さり、ありがとうございました。なんだか心が軽くなりましたわ」

マリーゴールド様に頭を下げる。

「アンリ様、どうかそんなに落ち込まないで下さい。また何かありましたら、私が話を聞きますわ」

「ありがとうございます、そう言って頂けるだけで、幸せでございます」

「それじゃあ、私は先に教室に向かうわね。あなたはまだ目が少し赤いから、落ち着いたらいらっしゃい。エディソン様がいらしたら、適当にあしらっておくから」

そう言って笑顔で去っていくマリーゴールド様。なんて素敵な令嬢なのかしら。それもここは校舎裏だ。こんな場所にいらっしゃるなんて…

もしかしたら、私の姿を見て心配して付いて来てくださったのかもしれないわね。本当にお優しい方だわ。

マリーゴールド様の優しさに触れ、私の心も少しだけ軽くなった。

マリーゴールド様から借りたハンカチで目を冷やした後、急いで教室に向かう。すると

「アンリ、あなたどこにいたの?心配したのよ」

「よかった、今日は来たのね。アンリ、辛かったわね、可哀そうに」

私の周りを、仲の良いクラスメートたちが囲う。中には、私の為に涙を流してくれている令嬢の姿も。

「皆…ありがとう。私の為にこんなに心配してくれて…」

せっかく落ち着いた涙が、再び溢れ出す。

「当たり前じゃない。私達は友達なのよ。友達が困っているのに、笑っていられるほど薄情者ではないわ」

「そうよ、それにしてもエディソン様は何を考えているのかしら?あんなにアンリの事をあしらっていたのに、アンリとグレイズ様が婚約した途端に、アンリの家に圧力をかけて奪い取るだなんて。こんなの…ただの嫌がらせじゃない…」

「貴族社会は縦社会だけれど、こんな横暴な事がまかり通る何て…この国の未来もおしまいね」

ポツリと呟く令嬢たち。

「皆、私の為にありがとう。でも、そんな悲しい事を言わないで。私の事を心配してくださる高貴な身分の方もいらっしゃるし…それに私は大丈夫よ。だって私、ハイエナ令嬢といわれていたくらいなのですもの。どんな環境でも、逞しく生きていくわ」

そう言って笑顔を見せる。公爵令嬢という身分でありながら、私を心配してくれたマリーゴールド様。彼女の様な方がいらっしゃる限り、この国は捨てた物じゃないと私は思ったのだ。

「もう、アンリったら…私たちは何も出来ないけれど、あなたの味方だからね。もし何かあったら、何でも相談して。話くらいは聞けるから」

「ありがとう、皆がそう言ってくれるだけで、これほど心強い事はないわ。私、本当にあなた達と友達になれてよかったわ。きっかけを作ってくれたグレイズには、感謝しかないわね」

近くで様子を見ていたグレイズの方を見つめる。すると、悲しそうにこちらを見つめていたグレイズと目があった。

グレイズ、私にたくさんの友人を与えてくれて、ありがとう。
そっと心の中で呟いたのだった。
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