無実の罪で処刑されかけた元公爵令嬢は、絶体絶命の国王を守る為戦う事を決めました

Karamimi

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本編

第29話:最愛の娘シャーロット~ウィルソン公爵視点~

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「旦那様、もう食べられないのですか?」
メイドが悲しそうな顔をして聞いて来る。

「すまない、せっかく準備してくれたのに!食欲がどうしてもないんだ…」
最愛の娘、シャーロットが失踪してもう半年が経つ。魔術師の話では、もうこの世にはいない可能性が高いと言われている。魅了魔法の力とは言え、我が娘にしてしまった過ちは、決して許されることではない。

すまない、エリザベス。君が命を懸けて産んだ子を、私は不幸にしてしまった…



♢♢♢♢♢
~16年前~
「あなた、私のお腹に赤ちゃんがいるのよ。今妊娠3ヶ月ですって!」

嬉しそうに話すのは、私の妻のエリザベスだ。絶世の美女と言われたエリザベスは、自国のみならず、他国の王族からも求婚されるほど美しい女性だった。そんな女性を射止めたのは、公爵令息だった私だ。

エリザベスとの結婚を機に、父から公爵を受け継いだ。そして息子のオリヴァーも産まれ、幸せな日々を過ごしていた。

そんな中、妻からの第二子妊娠。もちろん、私も妻の手を取り喜んだ。しかし、妊娠した妻は明らかに顔色が悪い。オリヴァーの時もつわりがひどかったが、今回は少し様子がおかしい。

すぐに医者に見せた。

「大変申し上げにくいのですが、お腹の子の魔力が異常に強いです。その為、奥様の体への負担が大きいのでしょう。これからお腹の子はどんどん魔力を増していきます。そうなると、奥様のお命の保障はできません。こんなことは申し上げたくはないのですが、早急にご決断を!」

医者の言葉を聞き、頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。医師は遠回しに、子供は諦めろと言ったのだ!

正直私にとって、エリザベスが誰よりも大切だ。幼いオリヴァーから母親を奪うわけにもいかない。私は寝室で休んでいるエリザベスの元に行き、今回の状況を話した。


「エリザベス、残念だが今回は子供は諦め…」

「嫌よ!私のお腹で赤ちゃんは元気に育っているのよ!この子を諦めるなんて絶対に嫌!」

私の言葉を遮り、エリザベスが叫んだ。

「エリザベス、冷静になるんだ、私たちにはまだ幼いオリヴァーも居るんだぞ!君が居なくなったら、オリヴァーはどうなるんだ?オリヴァーの事も考えなさい!」

私の言葉に考え込むエリザベス。


「それでも、私はこの子を産みたい!もう私のお腹の中で、この子は生きているのよ。オリヴァーと同じように、この子だって私たちの子供よ!」
泣きながら訴えるエリザベス。

「それに、私が必ず命を落とすとは限らないのでしょう?ならば、私は産みたい!お腹の子にも、この世界で生きる喜びを感じてほしい。私はあなたが何と言おうと産みます!」

エリザベスの強い意志に、私はもう何も言えなかった。

不安の中、お腹の子供はどんどん大きくなり、それに伴い魔力も増していく。日に日に弱っていくエリザベスに、何も出来ない自分が歯がゆかった。

それでもエリザベスは、いつもニコニコしてオリヴァーの相手をしていた。

「オリヴァー。妹か弟が生まれたら、可愛がってあげてね」
何度も何度もそう言いながら、オリヴァーの頭を撫でていた。オリヴァーも

「うん、ぼく、ぜったいかわいがるよ。だって、おにいちゃんになるんだもん」

そう言って、エリザベスのお腹を撫でるオリヴァー。本来であれば、仲睦まじい親子の会話なのだが、私は無性に胸が締め付けられる思いだった。エリザベスはどんな気持ちで、オリヴァーに話しかけていたのだろう。



「ねえ、あなた。お腹の子はね、女の子だと思うの。名前はシャーロット。もう決めたのよ」

妊娠8ヶ月を迎えた頃、急にエリザベスがそんな事を言い出した。

「シャーロット、あと少しであなたに会えるのね」
ほとんど起き上がる事すらできなくなっていたエリザベスは、嬉しそうにお腹を撫でる。

そして、いよいよ出産の時を迎えた。かなりの魔力量を持った子供を出産するとあって、何人かの魔術師が待機する中、無事子供は誕生した。

エリザベスが言っていた通り、女の赤ちゃんだ。

「エリザベス、よく頑張ったな。元気な女の子だ」
私とオリヴァーはすぐにエリザベスの元へと駆け付けた。
魔術師によって魔力無力化リングを付けられたシャーロットが、エリザベスの横に寝かされている。

「あなた…オリヴァー…」
意識が朦朧とする中、エリザベスは何とか話をしている。良かった、エリザベスは生きている。でも、やはり出産時に無理をしたのか、真っ青な顔をしている。

「エリザベス、よく頑張ったね。さあ、ゆっくりお休み」
私は極力エリザベスに安心してもらえるよう、優しく声をかけた。

「あなた…オリヴァーと…シャーロットを…お願いします…二人を、どうか…」

そう言うと、ゆっくり瞼を閉じるエリザベス。

すぐに医者が飛んできた。

「エリザベス、しっかりするんだ!エリザベス!」
「ははうえ、ははうえ!」
私達の呼びかけに、それ以上答えることはなかった。

私はその場で、初めて声をあげて泣いた。人目もはばからず…
ひとしきり泣き終えた後、ふと、エリザベスが産んだ子供が目に入った。

エリザベスが命を懸けて産んだ子供は、エリザベスと同じ、銀色の髪に青い瞳をしていた。まるで、エリザベスがこの子に乗り移ったような、それくらいそっくりだった。


私はエリザベスにそっくりのシャーロットを初めて抱き上げ、何気なくシャーロットの頬に触れた。その時、シャーロットが私の指を小さな手で握りしめたのだ。その小さな手を見つめていたら、無性に愛おしく感じた。この子は何があっても幸せにしようと、その時心に決めた。

そして数日後、エリザベスの葬儀が行われた。エリザベスの親友でもある、王太子妃も出席していた。第一子でもある王子を3ヶ月前に産んだばかりの王太子妃。本来であれば、まだ王宮から出ることは許されない。

それでも親友の死を悼み悲しみに暮れる王太子妃を心配した王太子によって、出席が許された。

「ウィルソン公爵様、実はエリザベスが亡くなる一ヶ月前に、彼女から手紙を受け取っていたのです」

そう言うと、王太子妃が私に1通の手紙を渡してきた。そこには、自分はきっと今回の出産で命を落とすこと、自分が亡くなった後、オリヴァーとシャーロットを気に掛けてほしい旨が記載されていた。

「エリザベスはきっと、自分は出産に耐えられないということが分かっていたのね。それでも、シャーロットちゃんを産みたかった。エリザベスは自分が居なくなった後、妻と母を奪ったシャーロットちゃんに怒りが向かないか、心配していたみたいなの。でも、今のあなたを見ていると、そんな心配はなさそうね」

王太子妃は寂しそう笑った。

エリザベス、君はどこまでも子供たちの事を考えていたんだね。でも、大丈夫だよ。2人は私が立派に育て上げるから。いつか、あの世で君に会えた時、胸を張って言えるように!

だから、見守っていて欲しい。私の事、オリヴァーやシャーロットの事を!



「あの時、そう誓ったのに…結局最愛の娘でもあるシャーロットを傷つけ、今もまだ生死すら確認できていない。オリヴァーにも18歳という若さで、公爵の位を押し付けてしまった。本当に、私はダメな父親だな…」

エリザベス、きっと君は呆れているだろうな…
シャーロットも私を恨んでいるだろう。
もしかしたら、今頃天国で2人は私の悪口を言っているのかもしれないな…

なあ、エリザベス、シャーロット。私はもう生きることが辛くてたまらない…

我が儘なのはわかっている。でも…
許されるなら、私も2人の元にいきたい…

せめて夢で2人に会えたら、どんなに幸せだろう…
そう願いながら、ゆっくり瞼を閉じたのであった。
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