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番外編

地方に出張治療に行く事になりました【4】

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う~ん、なんだか周りが騒がしい。ゆっくりと目を開けると、見覚えのない天井が。そうだわ、患者の治療にあたっていたのだった。急いで飛び起きる。

「ほら、君が騒ぐからセリーナが起きてしまっただろう」

「ルークが“セリーナの寝顔は絶対見せない”とギャーギャ騒いだんだろう!人のせいにするな!」

「グレイスが休憩室に侵入して、セリーナに近付こうとしたからだろう!」

「俺はただ、食事をしに来ただけだ!人聞きの悪い事を言わないでくれ」

どうやらルーク様とグレイス様が言い合いをしている様だ。それにしても、どれくらい眠っていたのかしら。体も随分と楽になった。これならすぐにでも治療が出来そうね。とにかく、患者の元に戻ろう。

急いで休憩室から出て行こうとしたところで、ルーク様に呼び止められた。

「セリーナ、もう大丈夫なのかい?それじゃあ、僕も一緒に行くよ」

「それじゃあ、俺も」

「君はまだ休憩室に来たばかりだろう。もっとゆっくりしていけばいい」

「もう十分休んだから大丈夫だ。さあ、セリーナ嬢、行こうか」

グレイス様がなぜか私の手を掴みそうになったところで、ルーク様がすかさずグレイス様の手を振り払い、私の手を掴んだ。

「なんでグレイスがセリーナの手を掴むんだよ!彼女は僕の婚約者だ。気安く触れるな!」

「別に手くらいいいだろう!」

また言い合いが始まりそうだ。この2人に付き合っている暇はない。

「私は先に行きますので、どうぞ思う存分言い合いを続けてくださいね」

そう2人に伝え、急いで患者の元へ戻る。後ろで何か叫んでいたが、今はあの2人に構っている暇はない。とにかく急いで戻らないと!

患者たちの元に戻り、再び治癒魔法を掛けて行く。やはり少し休んだだけでは、完全に魔力を回復できていないが、それでも何人かの患者を治す事が出来た。

その後も仮眠と治癒魔法を繰り返しながら、何とか100人以上の患者を治す事が出来た。でも、まだまだ患者は沢山いる。そう言えば、病名の方はどうかしら?

患者たちに聞き取り調査をしている副院長の元へと向かった。

「副院長、患者たちからの聞き取り調査はどうですか?何かわかりましたか?」

「セリーナ先生!ああ、100人以上から聞き取り調査を行った結果、どうやらマンティーンググレッドと呼ばれる動物を食べた事で発症した可能性が高い。このマンティーンググレッドという動物の肉には、毒が含まれているのだが、その毒が今回の病気の原因かと」

そう言って医学書を見せてくれた副院長。確かに、先ほど副院長が言った通りの供述が書いてある。症状も同じだ。という事は、毒が原因だったのね。

「そう言えば1ヶ月ほど前から、異国から輸入したと言う動物の肉を手軽に食べさせてくれるお店がブームになっていたな。俺も発症前に、そこの店の肉料理を食べた」

「そうなると、そこのお店で取り扱っているお肉が原因の可能性がありますね。グレイス様、そちらの調査を行って頂いてもよろしいでしょうか?」

「ああ、任せておけ!」

急いで外に出て行くグレイス様。

「副院長、毒が原因という事は、解毒剤を作れば良さそうですね。それで、解毒剤は作れそうですか?」

「ああ、解毒剤は比較的簡単に作れそうだ。セリーナ先生も、解毒剤を作るのを手伝って貰えるだろうか?」

「もちろんです。解毒剤を作るのも、治癒師の立派な仕事ですから」

とは言ったものの、正直解毒剤を作った事は数えるくらいしか無い。正直不安だが、今はそんな事を言っている場合ではない。

早速医学書を見ながら、他の治癒師や副院長と一緒に、解毒剤を作っていく。副院長が言った通り、3種類の薬草を煮詰めるだけなので、非常に簡単だ。

早速出来上がった解毒剤を、患者たちに飲ませていく。ただ解毒剤の場合治癒魔法と違い、解毒されるまでに少し時間が掛かる。正直この解毒剤で治るのかどうか不安なまま、患者たちに飲ませていく。

その時だった。

「セリーナ嬢、店を調査した結果、やはりマンティーンググレッドと呼ばれる動物の肉が使われていた。すぐに営業を停止させたよ」

「グレイス様、ありがとうございます。とにかく、マンティーンググレッドの食肉としての販売は、中止した方がよさそうですね」

「そうだな、そうするよ。それで、そっちはどうだ?」

「今解毒剤を作って患者たちに飲ませています。ただ解毒剤の場合、徐々に効いて来る感じなので、まだ何とも言えませんわ」

「わかった、他に手伝う事があれば、何でも言ってくれ」

「それでしたらルーク様と一緒に、患者に解毒剤を飲ませてあげて頂けますか。とにかく数が多くて手が回らないのです」

解毒剤を飲ませなければいけない患者が、まだ大勢いる。全員に解毒剤を飲ませようと思うと、まだまだ時間が掛かるのだ。

「あの、先生!俺たちに出来る事があったら言ってくれ。俺たちも、街の皆を助けたい」

そう言ってくれたのは、今まで治療した元患者とその家族だ。

「ありがとうございます。それでは、この解毒剤を患者に飲ませて頂いてもよろしいでしょうか?」

「任せておけ!さあ皆、手分けして解毒剤を飲ませていこう」

沢山の街の人たちが手伝ってくれたおかげで、一気に解毒剤の処方が進む。そう言えば、最初に解毒剤を飲ませた人は、もう随分と時間が経っているはずだわ。そろそろ解毒剤が効いて来てもよさそうだ。

「副院長、一度最初に解毒剤を飲ませた患者の元に向かいましょう。解毒剤が効いていれば、そろそろ症状が改善され始めているはずですので。

「そうだな、行って見よう」

副院長と一緒に患者の元へと向かう。すると…

「先生、本当にありがとうございます!随分と体も楽になりましたし、湿疹も奇麗に消えましたわ」

患者が元気そうにベッドに座っていた。確かに顔の湿疹も奇麗に消えている。

「どうやら解毒剤が効いたようですわね。これで一気に皆元気になりますわ」

その後、全ての患者に解毒剤を飲ませ終わった。有難い事に個人差はあるものの、ほとんどの患者が無事完治する事が出来た。ただ、どうしても解毒剤では効きにくい人たちだけは、治癒魔法を使って治す事にした。

そしてシャディソン公爵領に来て5日目、最後の患者がこの施設から無事出る事が出来たのであった。
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