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第35話:ダルク様は心配性です
「アンジュ嬢、足が痛いのかい?見せてごらん?」
「いえ…私は…」
大丈夫です!と言おうとしたのだが、すぐに近くにあったベンチに座らせてくれたダルク様。
「これは酷いな、血が出ているではないか。すまない、私が長時間歩かせてしまったからだ」
「いえ、私も楽しくてつい。大したことないので、大丈夫ですわ。さあ、行きましょう」
そう言って立ち上がろうとしたのだが
「血が出ているのに、大したことない訳がないだろう」
そう言うと、真新しいハンカチを傷口に巻いてくれた。
「すまない、こんな手当しか出来ずに。とにかく、帰ろう」
そう言うと、ダルク様が私を抱きかかえ、歩き出したのだ。
「あの、ダルク様。私は1人で歩けますわ!それに私、重いでしょう」
「君は怪我をしているのだよ。じっとしていて。それにアンジュ嬢は、ちっとも重くなんてない。もっとたくさん食べた方がいい」
そう言ってほほ笑んでくれたのだ。ここから馬車までは、結構距離がある。さすがに申し訳なく思い
「あの、本当に私…」
「私は鍛えているからこれくらい大丈夫だ。今日はありがとう、とても楽しかったよ。アンジュ嬢と2人で、街に出られて。また一緒に街に出てくれるかい?」
「ええ、もちろんですわ。私でよろしければ、いつでも案内します」
「それは良かった、特にハンバーグが美味しかったな。あのお店、毎日でも通いたいくらいだ」
「毎日だなんて、ダルク様ったら」
よほどハンバーグが気に入ってくれた様だ。よかったわ、あのお店を紹介出来て。
「さあ、馬車に着いたよ」
いつの間にか馬車のところまで戻って来ていた様だ。どうやらダルク様は、私の気を紛らわすために、色々と話してくれていたみたい。やっぱりダルク様は、優しいわね。それにがっちりとした胸板…ダルク様も、男性なのね…
て、私は何を考えているのかしら?これじゃあまるで、私がダルク様の事を意識しているみたいじゃない。ダルク様は友達なのに…
「アンジュ嬢、少し顔が赤いね。まさか熱が」
「いえ、何でもありませんわ。夕焼けに照らされて、赤く見えるだけです。さあ、陛下も心配しているかもしれませんし、帰りましょう」
「そうかい?それならいいのだが…それじゃあ、帰ろうか」
どうしたのかしら?私…なんだか急に、ダルク様が男性に見えてしまった。て、元々男性なのだが…
とにかく、落ち着かないと!そう自分に言い聞かせ、王宮まで戻ってきた。
すると何を思ったのか、スッと私を抱きかかえるダルク様。
「あの、ダルク様、私は…」
「アンジュ嬢は怪我をしているのだよ。無理して歩いて、傷が残ったら大変だ。とにかく大人しくして」
優しく微笑んでくれている。この人、こんな顔も出来るのね…
て、感心している場合ではない。そもそも、王宮内に客人でもあるダルク様に抱っこされてはいるだなんて…
でも、既に王宮に入ってきているし、近くにいた使用人たちに指示をしている。すぐに近くの部屋に案内され、治療を受けた。
その時だった。
「アンジュ、怪我をしたと聞いたが、大丈夫か?」
やって来たのはお父様だ。
「スィークルン侯爵、私が傍に付いていながら、本当に申し訳ございませんでした」
なぜかダルク様が、お父様に頭を下げている。
「違うのですわ、お父様。ヒールの靴で行ったので、靴擦れをしてしまって。それでダルク様が心配して、ここまで運んでくださったのです。ダルク様、本当にありがとうございました」
急いで事情を説明するとともに、ダルク様にお礼を言った。
「何だ…靴擦れか…ダルク殿、わざわざ娘を運んでいただき、ありがとうございました」
「いえ…私はアンジュ嬢が怪我をしている事に、すぐに気づけませんでした。本当に申し訳ございません」
なぜかダルク様が申し訳なさそうにしている。
「本当に私、大丈夫ですのよ。治療も終わったようですし、私たちはそろそろお暇させていただきますわ。ダルク様、明日貴族学院でお待ちしておりますね」
そう伝え、お父様と帰ろうとしたのだが…
「治療が終わったとはいえ、君は怪我を負っているのだよ。私が馬車まで運ぼう。本当にすまない、私がもっと早く気が付いていればこんな事には」
すかさず私を抱き上げると、ダルク様がスタスタと歩き出した。だから大丈夫ですって!
そう伝える間に、足が長いダルク様はあっという間に馬車の停まっている門までやって来て、馬車に乗せてくれた。
「アンジュ嬢、今日はありがとう。とても楽しかったよ。それから怪我の件、本当にすまなかった。それじゃあ、また明日」
「もう、ダルク様ったら。本当に大したことないのですよ。でも、ありがとうございます。はい、また明日」
ダルク様と入れ違いに、お父様が馬車に入って来た。いつの間にか、陛下や王妃殿下も出てきている。たかだか侯爵家の人間が帰るくらいで、王族に見送って頂くなんて…そう思いつつも、笑顔で手を振ってくれるダルク様に、私も手を振り返した。
今日は疲れたけれど、楽しかったわ。またダルク様と一緒に、街に行けたら嬉しいな。
※次回、ダルク視点です。
よろしくお願いいたします。
「いえ…私は…」
大丈夫です!と言おうとしたのだが、すぐに近くにあったベンチに座らせてくれたダルク様。
「これは酷いな、血が出ているではないか。すまない、私が長時間歩かせてしまったからだ」
「いえ、私も楽しくてつい。大したことないので、大丈夫ですわ。さあ、行きましょう」
そう言って立ち上がろうとしたのだが
「血が出ているのに、大したことない訳がないだろう」
そう言うと、真新しいハンカチを傷口に巻いてくれた。
「すまない、こんな手当しか出来ずに。とにかく、帰ろう」
そう言うと、ダルク様が私を抱きかかえ、歩き出したのだ。
「あの、ダルク様。私は1人で歩けますわ!それに私、重いでしょう」
「君は怪我をしているのだよ。じっとしていて。それにアンジュ嬢は、ちっとも重くなんてない。もっとたくさん食べた方がいい」
そう言ってほほ笑んでくれたのだ。ここから馬車までは、結構距離がある。さすがに申し訳なく思い
「あの、本当に私…」
「私は鍛えているからこれくらい大丈夫だ。今日はありがとう、とても楽しかったよ。アンジュ嬢と2人で、街に出られて。また一緒に街に出てくれるかい?」
「ええ、もちろんですわ。私でよろしければ、いつでも案内します」
「それは良かった、特にハンバーグが美味しかったな。あのお店、毎日でも通いたいくらいだ」
「毎日だなんて、ダルク様ったら」
よほどハンバーグが気に入ってくれた様だ。よかったわ、あのお店を紹介出来て。
「さあ、馬車に着いたよ」
いつの間にか馬車のところまで戻って来ていた様だ。どうやらダルク様は、私の気を紛らわすために、色々と話してくれていたみたい。やっぱりダルク様は、優しいわね。それにがっちりとした胸板…ダルク様も、男性なのね…
て、私は何を考えているのかしら?これじゃあまるで、私がダルク様の事を意識しているみたいじゃない。ダルク様は友達なのに…
「アンジュ嬢、少し顔が赤いね。まさか熱が」
「いえ、何でもありませんわ。夕焼けに照らされて、赤く見えるだけです。さあ、陛下も心配しているかもしれませんし、帰りましょう」
「そうかい?それならいいのだが…それじゃあ、帰ろうか」
どうしたのかしら?私…なんだか急に、ダルク様が男性に見えてしまった。て、元々男性なのだが…
とにかく、落ち着かないと!そう自分に言い聞かせ、王宮まで戻ってきた。
すると何を思ったのか、スッと私を抱きかかえるダルク様。
「あの、ダルク様、私は…」
「アンジュ嬢は怪我をしているのだよ。無理して歩いて、傷が残ったら大変だ。とにかく大人しくして」
優しく微笑んでくれている。この人、こんな顔も出来るのね…
て、感心している場合ではない。そもそも、王宮内に客人でもあるダルク様に抱っこされてはいるだなんて…
でも、既に王宮に入ってきているし、近くにいた使用人たちに指示をしている。すぐに近くの部屋に案内され、治療を受けた。
その時だった。
「アンジュ、怪我をしたと聞いたが、大丈夫か?」
やって来たのはお父様だ。
「スィークルン侯爵、私が傍に付いていながら、本当に申し訳ございませんでした」
なぜかダルク様が、お父様に頭を下げている。
「違うのですわ、お父様。ヒールの靴で行ったので、靴擦れをしてしまって。それでダルク様が心配して、ここまで運んでくださったのです。ダルク様、本当にありがとうございました」
急いで事情を説明するとともに、ダルク様にお礼を言った。
「何だ…靴擦れか…ダルク殿、わざわざ娘を運んでいただき、ありがとうございました」
「いえ…私はアンジュ嬢が怪我をしている事に、すぐに気づけませんでした。本当に申し訳ございません」
なぜかダルク様が申し訳なさそうにしている。
「本当に私、大丈夫ですのよ。治療も終わったようですし、私たちはそろそろお暇させていただきますわ。ダルク様、明日貴族学院でお待ちしておりますね」
そう伝え、お父様と帰ろうとしたのだが…
「治療が終わったとはいえ、君は怪我を負っているのだよ。私が馬車まで運ぼう。本当にすまない、私がもっと早く気が付いていればこんな事には」
すかさず私を抱き上げると、ダルク様がスタスタと歩き出した。だから大丈夫ですって!
そう伝える間に、足が長いダルク様はあっという間に馬車の停まっている門までやって来て、馬車に乗せてくれた。
「アンジュ嬢、今日はありがとう。とても楽しかったよ。それから怪我の件、本当にすまなかった。それじゃあ、また明日」
「もう、ダルク様ったら。本当に大したことないのですよ。でも、ありがとうございます。はい、また明日」
ダルク様と入れ違いに、お父様が馬車に入って来た。いつの間にか、陛下や王妃殿下も出てきている。たかだか侯爵家の人間が帰るくらいで、王族に見送って頂くなんて…そう思いつつも、笑顔で手を振ってくれるダルク様に、私も手を振り返した。
今日は疲れたけれど、楽しかったわ。またダルク様と一緒に、街に行けたら嬉しいな。
※次回、ダルク視点です。
よろしくお願いいたします。
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