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第52話:アンジュは誰かに狙われている様だ~デイビッド視点~
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馬車に乗り込んだ瞬間、やはり言いようのない悔しさが溢れ出す。
「やっぱり俺がアンジュを守りたかったな…」
俺はアンジュを守りたいが為に、騎士団長を目指した。アンジュの気持ちを蔑ろにしてまで必死で稽古を続けて来たのに…結局俺は、騎士団長になる事が決まっても、アンジュを守れなかったのだ。
それもよりによって、恋敵にアンジュを守られるだなんて…
悔しくて悔しくて、どうしようもない気持ちになった。それにダルク殿、恋敵でもある俺が現地に戻れる様に、さりげなく誘導してくれていた。
彼の様に優しくて思いやりのある男の方が、アンジュは幸せになれるのでは…
そんな事すら考えてしまう。でももしアンジュがダルク殿を選んだら、俺はこれからどうやって生きて行けばいいのだろう。
分かっている、俺はいつも自分の事ばかりだ。でも…それでも俺はアンジュを諦める事だけは出来ない。アンジュがいなければ俺は、騎士団長になる意味すらないのだから…
溢れそうになる涙を必死に堪え、現場となった森へと向かう。森に着くと、既に生徒たちは帰っていた。
「騎士団長、申し訳ございませんでした」
指揮をとっていた騎士団長に頭を下げた。
「デイビッドか、怪我をした生徒の付き添いご苦労だった。それで、彼の怪我の様子はどうだった?」
「はい、矢がかすっただけだった様で、大したことはありませんでした。私はこの後、王宮に向かい、ダルク殿から改めて話を聞こうと思っております。あの場には、アンジュもおりましたので、彼に詳しい話を聞く事が出来ませんでしたから」
「怪我が大したことなくてよかった。目撃者の話では、どこからともなく真っすぐとアンジュ嬢に向かって、矢が飛んできたらしい。一部始終を目撃していた騎士団員が、矢の飛んできた方向に向かったそうだが、矢を放ったらしき人物は特定できなかったらしい。あの時、令息は皆弓矢を持っていたしな」
「という事は、やはり何者かがアンジュを狙った可能性が…」
「高いだろう」
アンジュが狙われた可能性が高い…アンジュは人から嫌われる様な人間ではない。一体誰が…
もしかして…
一瞬ある人物が頭をよぎった。いいや、いくら何でもそこまでするとは思えない。それに…
「とにかく、今回の件は騎士団長でもある私の不手際でもある。デイビッド、本当にすまなかった。なんとしてでも犯人を特定できる様、全力を尽くそう」
その後、騎士団長に矢が飛んできた方向などを詳しく教えてもらった。どうやらこの草むらから飛んできた様だ。人間の腰ほどの草が生えているこの場所なら、人が1人隠れる事が出来るだろう。
現に草が不自然に踏まれている。ここに誰かが隠れていたのだろう。
それに今日は、貴族学院の男子生徒たちは皆私服で来ている。知らない人間が紛れ込んでいても、気が付かれない可能性がある。
とにかく当事者でもあるダルク殿に話しを聞いてみないと!
そんな思いで騎士団長と一緒に王宮へと向かった。
「騎士団長殿、デイビッド殿、よく来てくださいました」
相変わらず真顔で迎えてくれるダルク殿。基本的に彼は、アンジュの前以外はあまり笑わない。
「ダルク殿、騎士団長でもある私が警護に当たっていながら、怪我をさせてしまい本当に申し訳ありませんでした。それで、怪我の具合は」
「大したことありませんので、どうかお気になさらないで下さい。それでお2人とも、今回の事件を受けていらしたのでしょう?早速本題に入りましょう」
既に状況を理解しているダルク殿。さすがだな…
「それでダルク殿、アンジュが襲われた状況を教えてもらえるかな?」
「ちょうど令息たちがクマに襲われているという連絡が入って、騎士団長殿たちが森の奥に入って行った時の事でした。アンジュ嬢が心配そうに森の奥の方を覗こうと皆の元から離れた瞬間、草むらから光るものが見えたのです。その光るものは、アンジュ嬢に向けられていて。それでとっさにアンジュ嬢を押し倒して事なきを得たのです」
「なるほど。光るものが見えたとは、矢の先でしょうな。でも、よくその様な物を見つけることが出来ましたね。我々騎士団の人間ですら、物陰に隠れている人間が放とうとしている矢を見つけるのは至難の業ですのに」
確かに騎士団長の言う通りだ。通常物陰から矢を放とうとしている人間を見つけるだなんて、そうそうできるものではない。
「私はミラージュ王国の王太子殿下の護衛も兼ねておりましたので。いつ何時命を狙われるかもわからない殿下を守るために、特殊部隊で訓練を受けた経験もあります。そのお陰でアンジュ嬢を守る事は出来ましたが、もう少し早く異変に気が付いていたら、アンジュ嬢に怖い思いをさせる事もありませんでしたし、犯人も捕まえる事が出来たはずです。それで、犯人は?」
「残念ながら、特定できませんでした」
「そうですか…」
そう呟くと、ダルク殿が俯いてしまった。顔は相変わらず真顔だが、拳を強く握っているところを見ると、きっと悔しいのだろう。俺も同じ気持ちだ。もしあの時俺が、自分の感情を抑えてあの場に残っていれば、犯人を特定できたかもしれないのに…
「やっぱり俺がアンジュを守りたかったな…」
俺はアンジュを守りたいが為に、騎士団長を目指した。アンジュの気持ちを蔑ろにしてまで必死で稽古を続けて来たのに…結局俺は、騎士団長になる事が決まっても、アンジュを守れなかったのだ。
それもよりによって、恋敵にアンジュを守られるだなんて…
悔しくて悔しくて、どうしようもない気持ちになった。それにダルク殿、恋敵でもある俺が現地に戻れる様に、さりげなく誘導してくれていた。
彼の様に優しくて思いやりのある男の方が、アンジュは幸せになれるのでは…
そんな事すら考えてしまう。でももしアンジュがダルク殿を選んだら、俺はこれからどうやって生きて行けばいいのだろう。
分かっている、俺はいつも自分の事ばかりだ。でも…それでも俺はアンジュを諦める事だけは出来ない。アンジュがいなければ俺は、騎士団長になる意味すらないのだから…
溢れそうになる涙を必死に堪え、現場となった森へと向かう。森に着くと、既に生徒たちは帰っていた。
「騎士団長、申し訳ございませんでした」
指揮をとっていた騎士団長に頭を下げた。
「デイビッドか、怪我をした生徒の付き添いご苦労だった。それで、彼の怪我の様子はどうだった?」
「はい、矢がかすっただけだった様で、大したことはありませんでした。私はこの後、王宮に向かい、ダルク殿から改めて話を聞こうと思っております。あの場には、アンジュもおりましたので、彼に詳しい話を聞く事が出来ませんでしたから」
「怪我が大したことなくてよかった。目撃者の話では、どこからともなく真っすぐとアンジュ嬢に向かって、矢が飛んできたらしい。一部始終を目撃していた騎士団員が、矢の飛んできた方向に向かったそうだが、矢を放ったらしき人物は特定できなかったらしい。あの時、令息は皆弓矢を持っていたしな」
「という事は、やはり何者かがアンジュを狙った可能性が…」
「高いだろう」
アンジュが狙われた可能性が高い…アンジュは人から嫌われる様な人間ではない。一体誰が…
もしかして…
一瞬ある人物が頭をよぎった。いいや、いくら何でもそこまでするとは思えない。それに…
「とにかく、今回の件は騎士団長でもある私の不手際でもある。デイビッド、本当にすまなかった。なんとしてでも犯人を特定できる様、全力を尽くそう」
その後、騎士団長に矢が飛んできた方向などを詳しく教えてもらった。どうやらこの草むらから飛んできた様だ。人間の腰ほどの草が生えているこの場所なら、人が1人隠れる事が出来るだろう。
現に草が不自然に踏まれている。ここに誰かが隠れていたのだろう。
それに今日は、貴族学院の男子生徒たちは皆私服で来ている。知らない人間が紛れ込んでいても、気が付かれない可能性がある。
とにかく当事者でもあるダルク殿に話しを聞いてみないと!
そんな思いで騎士団長と一緒に王宮へと向かった。
「騎士団長殿、デイビッド殿、よく来てくださいました」
相変わらず真顔で迎えてくれるダルク殿。基本的に彼は、アンジュの前以外はあまり笑わない。
「ダルク殿、騎士団長でもある私が警護に当たっていながら、怪我をさせてしまい本当に申し訳ありませんでした。それで、怪我の具合は」
「大したことありませんので、どうかお気になさらないで下さい。それでお2人とも、今回の事件を受けていらしたのでしょう?早速本題に入りましょう」
既に状況を理解しているダルク殿。さすがだな…
「それでダルク殿、アンジュが襲われた状況を教えてもらえるかな?」
「ちょうど令息たちがクマに襲われているという連絡が入って、騎士団長殿たちが森の奥に入って行った時の事でした。アンジュ嬢が心配そうに森の奥の方を覗こうと皆の元から離れた瞬間、草むらから光るものが見えたのです。その光るものは、アンジュ嬢に向けられていて。それでとっさにアンジュ嬢を押し倒して事なきを得たのです」
「なるほど。光るものが見えたとは、矢の先でしょうな。でも、よくその様な物を見つけることが出来ましたね。我々騎士団の人間ですら、物陰に隠れている人間が放とうとしている矢を見つけるのは至難の業ですのに」
確かに騎士団長の言う通りだ。通常物陰から矢を放とうとしている人間を見つけるだなんて、そうそうできるものではない。
「私はミラージュ王国の王太子殿下の護衛も兼ねておりましたので。いつ何時命を狙われるかもわからない殿下を守るために、特殊部隊で訓練を受けた経験もあります。そのお陰でアンジュ嬢を守る事は出来ましたが、もう少し早く異変に気が付いていたら、アンジュ嬢に怖い思いをさせる事もありませんでしたし、犯人も捕まえる事が出来たはずです。それで、犯人は?」
「残念ながら、特定できませんでした」
「そうですか…」
そう呟くと、ダルク殿が俯いてしまった。顔は相変わらず真顔だが、拳を強く握っているところを見ると、きっと悔しいのだろう。俺も同じ気持ちだ。もしあの時俺が、自分の感情を抑えてあの場に残っていれば、犯人を特定できたかもしれないのに…
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