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第5話:何が何だかさっぱりわかりません
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ルミタン?結婚?この人は一体何を言っているのだろう。ただ…この人とこれ以上一緒にいてはいけない、それだけは直感的に理解できた。
「あ…あの、カルロス様。私は…」
「あぁ、俺のルミタンが名前を呼んでくれている。これはたまらないな…」
そう言うと、カルロス様がスッと立ち上がった。うっとりと私を見つめている。何なの、この人。恐怖でしかないのだけれど…
その時だった、急に馬車が停まったのだ。
「カルロス様、お屋敷に到着いたしましたよ。さあ、どうぞ」
絶妙なタイミングで、御者がドアを開けてくれたのだ。
「俺は家に送ってくれと頼んでいないぞ。もう少しルミタンと話がしたいんだ!俺の可愛いルミタンと…」
ヒィィィィ、何なのこの人、何がルミタンよ!気持ち悪い。ん?ルミタン?もしかして、あのぬいぐるみは…
「あの…カルロス様、あなた様が昨日抱きしめていたぬいぐるみは、もしかして…」
「ああ、これかい?俺の宝物のルミタンだよ。君をモデルにして作らせたんだ。昨日うっかりルミタンを裏庭に落としてしまって、必死に探していたのだよ。どうだい?君にそっくりだろう?」
そう言ってカルロス様がぬいぐるみを私に見せて来たのだ。よく見ると、金色の髪に青い瞳はもちろん、ほくろの位置や髪の毛の長さまで、今の私にそっくりだ。
「この子は10代目ルミタンだよ。現在の君により似せたくて、定期的に作り直させているからね。でも、やっぱり本物が一番可愛いね…」
うっとりと私を見つめ、再びカルロス様が近づいてくる。
ヒィィィィ、来ないで!とっさに身を縮こませると
「カルロス様、お嬢様はこの後用事がございます。申し訳ございませんが、そろそろ馬車から降りて頂けますでしょうか?」
御者が間に入ってくれたのだ。
「用事があったのかい?それで急いでいたのだね。分かったよ、それじゃあルミタン、また後で」
そう言うと、カルロス様が笑顔で馬車から降りて行った。
「お嬢様、大丈夫ですか?とにかく、屋敷に向かいましょう」
「ええ、助けてくれてありがとう」
御者がすぐに馬車を出してくれた。それにしても、カルロス様がまさか私を…それになぜかかなり私に執着している様だったし。私の事を“ルミタン”なんて呼んでいたし…
思い出しただけで、一気に鳥肌が立つ。ダメだわ、なんだか寒気がして来た。屋敷に戻ると、すぐに自室へと戻って来た。着替えを済ませ、ベッドに横になる。
「お嬢様、一体どうされたのですか?昨日は狂ったように笑い転げ、今日はこの世の終わりの様に真っ青な顔をされてベッドに横になられるだなんて。まさか何らかの病気にかかっているのでは!すぐに医者を呼びましょう」
ミリーが隣でギャーギャー騒いでいる。
「ミリー、私は病気ではないわ。ただ…今日は色々とあって、疲れてしまった様なの。少し休めば元気になるわ。とにかく、静かにしてくれるかしら?」
「分かりました。お嬢様、もし何かありましたら、すぐに呼んでくださいね」
心配そうな顔をして、その場を去っていくミリーを見送る。今日はあまりにも強烈な出来事が起こったのだ。まさかカルロス様が私の事を好きだったことだけでもびっくりなのに…あんな姿を見せられるだなんて…それも私の事を“ルミタン”と呼んで、私にそっくりなぬいぐるみまで作っていただなんて…
それにあのうっとりとした不気味な微笑。ダメだ、思い出しただけで、寒気がして来た。まさかカルロス様が、あんな変態だっただなんて…
さすがにドン引きだ。でも、カルロス様は令嬢に全く興味がなく、もしかして男性を好きなのではないか?なんて噂が出ていたくらいの人よ。という事は、私の事は別に好きではない?
…いいや、あの人が令嬢の私にそんな嘘を付くなんて考えられないし、そんな事をする必要もないだろう。という事は、やっぱり彼は私の事を。そして今まで浮いた話が全くなかったのも、もしかすると…
ヒィィィィ!
考えただけで、一気に鳥肌が立ってきた。
ダメだ、とにかく今日は、休もう。寝れば少しは気持ちも落ち着くかもしれない。そうよ、こんな時は寝るのが一番だわ。眠ってしまえば、私の心の乱れも少しは落ち着くはず。
そう自分に言い聞かせ、必死に眠りにつくためギュッと目を閉じたのだった。
「あ…あの、カルロス様。私は…」
「あぁ、俺のルミタンが名前を呼んでくれている。これはたまらないな…」
そう言うと、カルロス様がスッと立ち上がった。うっとりと私を見つめている。何なの、この人。恐怖でしかないのだけれど…
その時だった、急に馬車が停まったのだ。
「カルロス様、お屋敷に到着いたしましたよ。さあ、どうぞ」
絶妙なタイミングで、御者がドアを開けてくれたのだ。
「俺は家に送ってくれと頼んでいないぞ。もう少しルミタンと話がしたいんだ!俺の可愛いルミタンと…」
ヒィィィィ、何なのこの人、何がルミタンよ!気持ち悪い。ん?ルミタン?もしかして、あのぬいぐるみは…
「あの…カルロス様、あなた様が昨日抱きしめていたぬいぐるみは、もしかして…」
「ああ、これかい?俺の宝物のルミタンだよ。君をモデルにして作らせたんだ。昨日うっかりルミタンを裏庭に落としてしまって、必死に探していたのだよ。どうだい?君にそっくりだろう?」
そう言ってカルロス様がぬいぐるみを私に見せて来たのだ。よく見ると、金色の髪に青い瞳はもちろん、ほくろの位置や髪の毛の長さまで、今の私にそっくりだ。
「この子は10代目ルミタンだよ。現在の君により似せたくて、定期的に作り直させているからね。でも、やっぱり本物が一番可愛いね…」
うっとりと私を見つめ、再びカルロス様が近づいてくる。
ヒィィィィ、来ないで!とっさに身を縮こませると
「カルロス様、お嬢様はこの後用事がございます。申し訳ございませんが、そろそろ馬車から降りて頂けますでしょうか?」
御者が間に入ってくれたのだ。
「用事があったのかい?それで急いでいたのだね。分かったよ、それじゃあルミタン、また後で」
そう言うと、カルロス様が笑顔で馬車から降りて行った。
「お嬢様、大丈夫ですか?とにかく、屋敷に向かいましょう」
「ええ、助けてくれてありがとう」
御者がすぐに馬車を出してくれた。それにしても、カルロス様がまさか私を…それになぜかかなり私に執着している様だったし。私の事を“ルミタン”なんて呼んでいたし…
思い出しただけで、一気に鳥肌が立つ。ダメだわ、なんだか寒気がして来た。屋敷に戻ると、すぐに自室へと戻って来た。着替えを済ませ、ベッドに横になる。
「お嬢様、一体どうされたのですか?昨日は狂ったように笑い転げ、今日はこの世の終わりの様に真っ青な顔をされてベッドに横になられるだなんて。まさか何らかの病気にかかっているのでは!すぐに医者を呼びましょう」
ミリーが隣でギャーギャー騒いでいる。
「ミリー、私は病気ではないわ。ただ…今日は色々とあって、疲れてしまった様なの。少し休めば元気になるわ。とにかく、静かにしてくれるかしら?」
「分かりました。お嬢様、もし何かありましたら、すぐに呼んでくださいね」
心配そうな顔をして、その場を去っていくミリーを見送る。今日はあまりにも強烈な出来事が起こったのだ。まさかカルロス様が私の事を好きだったことだけでもびっくりなのに…あんな姿を見せられるだなんて…それも私の事を“ルミタン”と呼んで、私にそっくりなぬいぐるみまで作っていただなんて…
それにあのうっとりとした不気味な微笑。ダメだ、思い出しただけで、寒気がして来た。まさかカルロス様が、あんな変態だっただなんて…
さすがにドン引きだ。でも、カルロス様は令嬢に全く興味がなく、もしかして男性を好きなのではないか?なんて噂が出ていたくらいの人よ。という事は、私の事は別に好きではない?
…いいや、あの人が令嬢の私にそんな嘘を付くなんて考えられないし、そんな事をする必要もないだろう。という事は、やっぱり彼は私の事を。そして今まで浮いた話が全くなかったのも、もしかすると…
ヒィィィィ!
考えただけで、一気に鳥肌が立ってきた。
ダメだ、とにかく今日は、休もう。寝れば少しは気持ちも落ち着くかもしれない。そうよ、こんな時は寝るのが一番だわ。眠ってしまえば、私の心の乱れも少しは落ち着くはず。
そう自分に言い聞かせ、必死に眠りにつくためギュッと目を閉じたのだった。
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