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第22話:大事になってきました
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何とも言えない気持ちのまま、屋敷に着いた。
「ルミナス、今日はずいぶん遅かったわね。もしかしてカルロス様と出掛けていたの?」
お母様が不思議そうな顔をして尋ねて来た。
「いいえ、今日はマリーヌたちと一緒に、お茶をしていたの。カルロス様とはしばらく距離を置く事になって」
「何ですって!あんなにもあなたを大切にして下さっていたカルロス様と距離を置くですって!一体どういう事なの?とにかく、ドリトルを呼んできて頂戴。ルミナスが婚約破棄になるかもしれないわ」
「ちょっとお母様、落ち着いて…」
「これが落ち着いていられますか?一体どうしてそんな事になったの?だから言ったでしょう。いくらカルロス様があなたをとても大切にして下さっているからって、それに胡坐をかいていたらダメだって。本当にこの子は…」
「だから違う…」
「母上、ルミナスも。一体何があったんだ?婚約破棄とは一体どういう事だ!」
お兄様とお義姉様が血相を変えてやって来た。
「だから違うのですってば!」
興奮する家族に、今日の出来事を話した。
「なるほど、それでカルロス様はルミナスから距離を置く事にしたのね。でも、いくらアナリス殿下がしつこいからといって、わざわざ距離を置く必要があるのかしら?」
「お義母様の言う通りですわ。一体カルロス様は何を考えているのかしら?」
お母様とお義姉様が首をかしげている。
「アナリス殿下は、本当にしつこくて、人の話しを聞かないのです。それに私を食事中押したりと、なんと言いますか…ちょっと危険なタイプと言いますか…」
「アナリス殿下は、君たちが思っている様な生易しい人間ではないよ。カルロス殿が己の欲求を我慢してまでも、ルミナスとアナリス殿下を引き離そうとするのには、相当な理由があるんだよ」
急に真剣な顔をして話し始めたお兄様。一体どういう事なのかしら?
「ドリトル、一体どういう事なの?私達にもわかる様に説明して頂戴」
「今から5年ほど前、公爵家に泥棒が入ったという話は知っているだろう?ただ、カルロス殿によって取り押さえられ、大事にはならなかったが。でも実はあれは、泥棒ではなかったんだ」
「一体どういう事なの?」
「実はカルロス殿の部屋から侵入した男たちは、どうやらカルロス殿を誘拐しようとした様なんだ。ただ…当時のカルロス殿は既に強すぎて、逆に捕まったという訳だ。その時の誘拐事件の黒幕が、アナリス殿下だと言われている。彼女は自分に振り向いてくれないカルロス殿を誘拐して、自分の意のままにしようとしたみたいでね…公爵令息を誘拐すれば、一体どうなるかくらいわかると思うのだけれど…」
何と!
「でも、それならどうしてアナリス殿下は処罰を受けなかったの?それにそんな話、聞いたことがないわ」
「もちろん公爵家は激しく王家に抗議をしたそうだよ。ただ、陛下から泣きつかれた様でね。それでも公爵家の怒りは収まらず、逃げるような形でアナリス殿下を留学させたそうだ」
「そんな理由があったのね。それよりもどうしてドリトルがそんな事を知っているの?」
「それはかつての騎士団の同僚が教えてくれたんだよ。どうやらその時の事件を担当していた様でね。とにかくアナリス殿下は、手段を択ばない人間だ。ただ、きっと公爵家も黙っていないだろうし、5年前の事を蒸し返して陛下に強く訴えるかもしれない。一度俺からも公爵と話をしてみるよ。ルミナス、アナリス殿下は世間の評判とは裏腹に、手段を択ばない人間の様だ。十分気を付けるんだぞ」
気を付けろと言われても、私は一体どうすればいいのかしら?
「ドリトル、ルミナスが心配だわ。護衛を付けた方がいいかしら?」
「そうだね、明日からルミナスに護衛を付けよう。護衛たちには映像型撮影機を持たせるようにしよう。万が一アナリス殿下に何かされたとき、証拠を残せるように。それから、外の警備も強化しよう。とにかく、我が家も出来る事をしないと」
なんだか大事になって来たわ。それにしてもアナリス殿下が、カルロス様を誘拐しようとしただなんて。でも、誘拐してどうするつもりだったのかしら?
考えただけで、なんだか恐ろしい…
「ルミナス、そんな顔をしなくても大丈夫だよ。今から使いを出して、公爵に時間を作ってもらおう。明日の昼間にでもどうするか話をしてみるよ」
「そうね、その方がいいわ。その話し合い、私も参加するわ。ルミナスは私の大切な娘だもの。あの人が亡くなった時、あの人の分まで私が子供たちを守ろうと決めたのよ。万が一ルミナスにもしもの事があったら…」
お母様が真っ青な顔をしている。
「母上、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。今頃クラッセル公爵家も陛下に話しに行っているだろう。さすがに一度ならず二度までも問題を起こせば、アナリス殿下も留学程度ではすまされなくなる。陛下もきっと、アナリス殿下を見張ってくれるだろうし」
お兄様がお母様を慰めている。なんだか大事になって来たわ。私が勿論気を付けないといけない事は分かる。でもそれ以上に、カルロス様が心配だわ。
※次回、カルロス視点です。
「ルミナス、今日はずいぶん遅かったわね。もしかしてカルロス様と出掛けていたの?」
お母様が不思議そうな顔をして尋ねて来た。
「いいえ、今日はマリーヌたちと一緒に、お茶をしていたの。カルロス様とはしばらく距離を置く事になって」
「何ですって!あんなにもあなたを大切にして下さっていたカルロス様と距離を置くですって!一体どういう事なの?とにかく、ドリトルを呼んできて頂戴。ルミナスが婚約破棄になるかもしれないわ」
「ちょっとお母様、落ち着いて…」
「これが落ち着いていられますか?一体どうしてそんな事になったの?だから言ったでしょう。いくらカルロス様があなたをとても大切にして下さっているからって、それに胡坐をかいていたらダメだって。本当にこの子は…」
「だから違う…」
「母上、ルミナスも。一体何があったんだ?婚約破棄とは一体どういう事だ!」
お兄様とお義姉様が血相を変えてやって来た。
「だから違うのですってば!」
興奮する家族に、今日の出来事を話した。
「なるほど、それでカルロス様はルミナスから距離を置く事にしたのね。でも、いくらアナリス殿下がしつこいからといって、わざわざ距離を置く必要があるのかしら?」
「お義母様の言う通りですわ。一体カルロス様は何を考えているのかしら?」
お母様とお義姉様が首をかしげている。
「アナリス殿下は、本当にしつこくて、人の話しを聞かないのです。それに私を食事中押したりと、なんと言いますか…ちょっと危険なタイプと言いますか…」
「アナリス殿下は、君たちが思っている様な生易しい人間ではないよ。カルロス殿が己の欲求を我慢してまでも、ルミナスとアナリス殿下を引き離そうとするのには、相当な理由があるんだよ」
急に真剣な顔をして話し始めたお兄様。一体どういう事なのかしら?
「ドリトル、一体どういう事なの?私達にもわかる様に説明して頂戴」
「今から5年ほど前、公爵家に泥棒が入ったという話は知っているだろう?ただ、カルロス殿によって取り押さえられ、大事にはならなかったが。でも実はあれは、泥棒ではなかったんだ」
「一体どういう事なの?」
「実はカルロス殿の部屋から侵入した男たちは、どうやらカルロス殿を誘拐しようとした様なんだ。ただ…当時のカルロス殿は既に強すぎて、逆に捕まったという訳だ。その時の誘拐事件の黒幕が、アナリス殿下だと言われている。彼女は自分に振り向いてくれないカルロス殿を誘拐して、自分の意のままにしようとしたみたいでね…公爵令息を誘拐すれば、一体どうなるかくらいわかると思うのだけれど…」
何と!
「でも、それならどうしてアナリス殿下は処罰を受けなかったの?それにそんな話、聞いたことがないわ」
「もちろん公爵家は激しく王家に抗議をしたそうだよ。ただ、陛下から泣きつかれた様でね。それでも公爵家の怒りは収まらず、逃げるような形でアナリス殿下を留学させたそうだ」
「そんな理由があったのね。それよりもどうしてドリトルがそんな事を知っているの?」
「それはかつての騎士団の同僚が教えてくれたんだよ。どうやらその時の事件を担当していた様でね。とにかくアナリス殿下は、手段を択ばない人間だ。ただ、きっと公爵家も黙っていないだろうし、5年前の事を蒸し返して陛下に強く訴えるかもしれない。一度俺からも公爵と話をしてみるよ。ルミナス、アナリス殿下は世間の評判とは裏腹に、手段を択ばない人間の様だ。十分気を付けるんだぞ」
気を付けろと言われても、私は一体どうすればいいのかしら?
「ドリトル、ルミナスが心配だわ。護衛を付けた方がいいかしら?」
「そうだね、明日からルミナスに護衛を付けよう。護衛たちには映像型撮影機を持たせるようにしよう。万が一アナリス殿下に何かされたとき、証拠を残せるように。それから、外の警備も強化しよう。とにかく、我が家も出来る事をしないと」
なんだか大事になって来たわ。それにしてもアナリス殿下が、カルロス様を誘拐しようとしただなんて。でも、誘拐してどうするつもりだったのかしら?
考えただけで、なんだか恐ろしい…
「ルミナス、そんな顔をしなくても大丈夫だよ。今から使いを出して、公爵に時間を作ってもらおう。明日の昼間にでもどうするか話をしてみるよ」
「そうね、その方がいいわ。その話し合い、私も参加するわ。ルミナスは私の大切な娘だもの。あの人が亡くなった時、あの人の分まで私が子供たちを守ろうと決めたのよ。万が一ルミナスにもしもの事があったら…」
お母様が真っ青な顔をしている。
「母上、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。今頃クラッセル公爵家も陛下に話しに行っているだろう。さすがに一度ならず二度までも問題を起こせば、アナリス殿下も留学程度ではすまされなくなる。陛下もきっと、アナリス殿下を見張ってくれるだろうし」
お兄様がお母様を慰めている。なんだか大事になって来たわ。私が勿論気を付けないといけない事は分かる。でもそれ以上に、カルロス様が心配だわ。
※次回、カルロス視点です。
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