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第12話:彼女の存在が日に日に大きくなる~ジルド視点~

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彼女を変に意識してしまった瞬間、一気に鼓動が早くなるのを感じた。私は一体何を考えているのだ!とにかく冷静にならないと。極力冷静を装い、彼女を部屋に連れて行くと、なんだかいい匂いがするぞ。

彼女の部屋には、溢れんばかりの食べ物が。一体どういう事だ?訳が分からず固まる私に対し、姉上とジャンティーヌ嬢が話をしている。

どうやらジャンティーヌ嬢は、無実の罪で国を追い出されたらしい。そして彼女を心配した家族が、他国から大量の食糧を送って来てくれたとの事。その量が、半端ない。きっと彼女は、かなり高貴な身分の令嬢なのだろう。

優しい彼女は、私たちにも食べきれない程の食事を与えてくれた。

早速食事を頂いた。久しぶりに食べたステーキや具材たっぷりのスープ、フワフワのサンドウィッチは涙が出るほど美味しかった。家臣たちも嬉しそうに食べていた。

「ジャンティーヌさん、本当にいい子ね。あの子、元々クリスティル王国の王太子殿下の婚約者だったそうなのだけれど、殿下が別に好きな人が出来たのですって。それである事ないこと言われて国外追放にされたそうよ。笑顔で教えてくれたわ」

姉上がさらりとジャンティーヌ嬢がこの国に来た経緯を話してくれた。

「何なんですか!そんなあり得ない理由で、国を追い出されるだなんて。それじゃあ、あまりにもジャンティーヌ殿が気の毒だ!一体あの国の王太子殿下は、何を考えているのですか!」

「そんな事、私に怒っても仕方がないでしょう。ただ一つ言えることは、あの国の王太子殿下は愚かという事よね。ジャンティーヌさん、笑顔で軽く話してくれたけれど、きっと私たちが想像できない程大変な思いをしたのだと思うわ。ただ、家族が味方でいてくれてよかったわね。せっかく仲良くなれたのに、きっとジャンティーヌさん、家族の元に帰ってしまうわ…ジルド、残念ね」

姉上の言う通り、家族が他国で避難しているのなら、すぐにでも家族の元に帰るだろう。そう考えた途端、胸がチクリと痛んだ。

「ジルド、大丈夫?」

姉上が心配そうに私に声を掛けてきた。

「何が大丈夫なのですか?そもそもジャンティーヌ殿は、この国にいるべき人間ではないのです。家族が見つかってよかったですね。明日にでも彼女を家族の元に帰しましょう。それでいいのです。そう、それで…」

そう自分に言い聞かせた。そんな話をしていると、嬉しそうにジャンティーヌ殿が部屋から出てきたのだ。そして、まだたくさんの食糧があるから、別の場所に避難している人に配って欲しいと言って来たのだ。

それ自体はとても有難い申し出だったのだが、なぜか自分も配りに行くと言い出したのだ。あんな危険な場所に令嬢を連れて行く訳にはいかない!彼女はこの国とは縁もゆかりもない人間なんだ。食べ物を提供してくれるだけでも有難いのに!

そう思い、猛反対したのだが…

彼女は私の目を真っすぐ見つめ、このままこの地を離れるつもりはない!とはっきりと告げたのだ。その瞳からは、強い意志が感じ取れる。きっと彼女は何を言っても聞かないだろう。それでもジャンティーヌ殿を危険に晒したくはない。そう思ったのだが、姉上にうまく丸め込まれ、彼女の部屋から追い出されてしまった。

「姉上、一体何を考えているのですか?彼女はこの地に縁もゆかりもないのですよ。それなのに、ジャンティーヌ殿にもしものことがあったらどうするつもりですか?」

すぐに姉上に抗議の声を上げた。

「ジルド、あの子の瞳、見ていなかったの?全て覚悟の上の瞳をしていたわ。ジャンティーヌさんも言っていたけれど、きっと私たちが何を言っても聞かないわ。それに私、あの子ならあの魔女を倒せる気がするの!彼女は私達を助けてくれる聖女様だと、私は思っているのよ」

確かに姉上が言う様に、ジャンティーヌ殿の魔力は半端ない。それにあの温かくて心地いい魔力、まさに聖女様の様だ。ただ、たとえジャンティーヌ殿が聖女様だからといって、私は彼女を危険な目に合わせたくはないのだ。

「ジルド、よかったわね。これからもジャンティーヌさんと一緒に居られるわよ。あなた、ジャンティーヌさんの事が気になるのでしょう。彼女が義理の妹になってくれるなら、私は大歓迎よ」

「姉上、一体何をおっしゃっているのですか!私は別に…」

「はいはい、照れないの。それじゃあ、お休み」

「姉上、まだ話は終わっていませんよ!姉上!」

私の言葉を無視して、さっさと部屋に入って行ってしまった。姉上め!

でも…心のどこかで、ジャンティーヌ殿が残ってくれてホッとしている自分もいる。私は一体どうしてしまったのだ。とにかく今日は寝よう!

そう思い、眠りについたのだった。
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