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第50話:愚かな元婚約者とご対面です
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一気に怪我人たちを治療していく。
「聖女様のお陰で、一気に怪我が治ったぞ。ありがとうございます、聖女様」
次々とケガ人を治していく。その時だった。
「聖女様、どうかこの子を、この子を助けて下さい」
必死に訴えてくる修道女が抱いているのは…
「ハリー、ハリーじゃない!大丈夫?すぐに治してあげるから」
私がまだアーロン様の婚約者だった頃、慈悲活動の一環で行っていた孤児院の子供だったのだ。人懐っこくてとてもかわいい子だった。
どうやら魔物に襲われた様で、酷い怪我だ。一気に治癒魔法を掛け、治療を行う。すると…
「あれ、僕、どうしたんだっけ?あれ?ジャンティーヌお姉ちゃんだ!もしかして、お姉ちゃんが助けてくれたの?」
「ハリー、よかったわ。元気になったのね」
「ジャンティーヌお姉ちゃんですって…確かにあなた様は、ジャンティーヌ様ですわ。という事はもしかして、聖女様は公爵令嬢の、ジャンティーヌ様だったのですか?」
大きな声で修道女が叫んだ。
「公爵令嬢のジャンティーヌ様と言えば、確かかつて陛下の婚約者で、この国を滅ぼそうとして、国外追放になった人物ではないか?一体どういう事なんだ?」
「もしかして陛下は、自分が別の女性と結婚したいが為に、聖女でもあるジャンティーヌ様を、国外追放にしたのか?という事は、魔物たちが押し寄せてきたのは、陛下が原因?」
「もしそうなら、とんでもない事態だぞ!ご貴族様たち、本当にそうなのですか?」
近くにいた貴族たちを問い詰める平民たち。苦笑いする貴族たちを見て、全てを察した様だ。
「やっぱりそうだったのか!愚かな陛下だとは聞いていたが、ここまで愚かだなんて!」
平民たちが怒りを爆発させている。
「皆さん、落ち着いて下さい。その愚かな国王を、我々が今から引きずり下ろしに行きますので。とにかく、落ち着いて下さい」
貴族たちが怒る平民たちを必死に宥めだした。これでアーロン様は、平民たちを完全に敵に回した事になるだろう。
「さあ、そろそろ我々も王宮に向かおう。あの愚かな国王を、失脚させるために」
「既に全貴族に、王宮の大会議場に集まる様に伝えてあります。今回の件は、沢山の犠牲者が出ているのです。貴族の中にも、死者やケガ人が出たほど。ただで済ませる訳にはいきません。さあ、この国をぶっ潰しに行きましょう」
貴族たちから“この国をぶっ潰しに行きましょう”と言う声が聞こえるだなんて…でも、それだけアーロン様は許されない事をしたという訳だ。
皆で急いで王宮へと向かう。
「ジャンティーヌ、いよいよ君の元婚約者に会うのだね…」
私の腰をギュッと握り、自分の元に引き寄せるジルド様。これ以上離れるなと言わんばかりに、ガッチリ腰を掴んでいる。
「ジルド様、そんなに警戒しなくても、大丈夫ですわ。あなた様も会えばわかります。あの男が、どれほど愚かな男かが…」
そんな男の為に身を粉にして働いていた私も、大概愚かだったが…
と、都合の悪い事は、心の中でこっそり呟く。
数ヶ月ぶりに入る王宮。魔物に襲われたのか、かなりボロボロだ。ただ、既にあちらこちらで、魔法で修繕が行われている。
しばらく進むと…
「ジャンティーヌ、久しぶりだね。君があの魔物たちを倒してくれたのだろう?雲も晴れたし、本当によかったよ。あの時は追い出したりして、すまなかったね。どうやらマリアンの占いが間違っていた様だ。また王宮で暮らすことを許可するよ」
何やら訳の分からない事を呟きながら、こちらにやって来るのは、間違いない、アーロン様だ。後ろにはふてくされた顔の、マリアン様の姿も。
何を思ったのか、私を抱きしめようとしたのだ。ただその瞬間、すっとジルド様が私を抱きしめたのだ。
「お初にお目にかかります。あなた様がアーロン陛下ですね。私はグリーズン王国の国王、ジルドと申します。ジャンティーヌとは先日正式に婚約をし、貴族はもちろん民たちからも熱烈な歓迎を受けております。アーロン陛下、私の婚約者を呼び捨てにしたり、あろう事か触れようとするのはお控え願いたい」
いつも穏やかなジルド様、いつも通り笑顔だが、物凄い殺気を感じる。
「ああ、グリーズン王国の国王陛下でしたか。そう言えばジャンティーヌが、あなた様の国に居座っていた魔女を退治したそうですね。そのせいで我が国は大変な事になっているのです。もしかして、謝罪にいらしたのですか?」
この人、何を言っているの?何をどうしたら、ジルド様が謝罪に来たという発想になるの?そもそも、魔物たちは元居た場所に戻っただけ。結界を張っていなかったこの国が悪いのに…
さすがのアーロン様の無礼な発言に、皆固まっている。
「アーロン陛下、なんて事をおっしゃるのですか!ジルド陛下、本当に申し訳ございませんでした」
「いいや、私の事は気にしないでくれ。ただ…噂以上の人の様だな…」
必死に謝るクリスティル王国の貴族たちに対し、ジルド様がポツリと呟いた。アーロン様のあまりの頓珍漢ぶりに、ドン引きしているのだろう。それでも私を自分の腕の中から離すつもりはない様で、しっかり抱きしめられている。
それにしても私、こんな男の為に婚約者として必死に頑張っていたのね。我ながら、悲しくなってきたわ…
「聖女様のお陰で、一気に怪我が治ったぞ。ありがとうございます、聖女様」
次々とケガ人を治していく。その時だった。
「聖女様、どうかこの子を、この子を助けて下さい」
必死に訴えてくる修道女が抱いているのは…
「ハリー、ハリーじゃない!大丈夫?すぐに治してあげるから」
私がまだアーロン様の婚約者だった頃、慈悲活動の一環で行っていた孤児院の子供だったのだ。人懐っこくてとてもかわいい子だった。
どうやら魔物に襲われた様で、酷い怪我だ。一気に治癒魔法を掛け、治療を行う。すると…
「あれ、僕、どうしたんだっけ?あれ?ジャンティーヌお姉ちゃんだ!もしかして、お姉ちゃんが助けてくれたの?」
「ハリー、よかったわ。元気になったのね」
「ジャンティーヌお姉ちゃんですって…確かにあなた様は、ジャンティーヌ様ですわ。という事はもしかして、聖女様は公爵令嬢の、ジャンティーヌ様だったのですか?」
大きな声で修道女が叫んだ。
「公爵令嬢のジャンティーヌ様と言えば、確かかつて陛下の婚約者で、この国を滅ぼそうとして、国外追放になった人物ではないか?一体どういう事なんだ?」
「もしかして陛下は、自分が別の女性と結婚したいが為に、聖女でもあるジャンティーヌ様を、国外追放にしたのか?という事は、魔物たちが押し寄せてきたのは、陛下が原因?」
「もしそうなら、とんでもない事態だぞ!ご貴族様たち、本当にそうなのですか?」
近くにいた貴族たちを問い詰める平民たち。苦笑いする貴族たちを見て、全てを察した様だ。
「やっぱりそうだったのか!愚かな陛下だとは聞いていたが、ここまで愚かだなんて!」
平民たちが怒りを爆発させている。
「皆さん、落ち着いて下さい。その愚かな国王を、我々が今から引きずり下ろしに行きますので。とにかく、落ち着いて下さい」
貴族たちが怒る平民たちを必死に宥めだした。これでアーロン様は、平民たちを完全に敵に回した事になるだろう。
「さあ、そろそろ我々も王宮に向かおう。あの愚かな国王を、失脚させるために」
「既に全貴族に、王宮の大会議場に集まる様に伝えてあります。今回の件は、沢山の犠牲者が出ているのです。貴族の中にも、死者やケガ人が出たほど。ただで済ませる訳にはいきません。さあ、この国をぶっ潰しに行きましょう」
貴族たちから“この国をぶっ潰しに行きましょう”と言う声が聞こえるだなんて…でも、それだけアーロン様は許されない事をしたという訳だ。
皆で急いで王宮へと向かう。
「ジャンティーヌ、いよいよ君の元婚約者に会うのだね…」
私の腰をギュッと握り、自分の元に引き寄せるジルド様。これ以上離れるなと言わんばかりに、ガッチリ腰を掴んでいる。
「ジルド様、そんなに警戒しなくても、大丈夫ですわ。あなた様も会えばわかります。あの男が、どれほど愚かな男かが…」
そんな男の為に身を粉にして働いていた私も、大概愚かだったが…
と、都合の悪い事は、心の中でこっそり呟く。
数ヶ月ぶりに入る王宮。魔物に襲われたのか、かなりボロボロだ。ただ、既にあちらこちらで、魔法で修繕が行われている。
しばらく進むと…
「ジャンティーヌ、久しぶりだね。君があの魔物たちを倒してくれたのだろう?雲も晴れたし、本当によかったよ。あの時は追い出したりして、すまなかったね。どうやらマリアンの占いが間違っていた様だ。また王宮で暮らすことを許可するよ」
何やら訳の分からない事を呟きながら、こちらにやって来るのは、間違いない、アーロン様だ。後ろにはふてくされた顔の、マリアン様の姿も。
何を思ったのか、私を抱きしめようとしたのだ。ただその瞬間、すっとジルド様が私を抱きしめたのだ。
「お初にお目にかかります。あなた様がアーロン陛下ですね。私はグリーズン王国の国王、ジルドと申します。ジャンティーヌとは先日正式に婚約をし、貴族はもちろん民たちからも熱烈な歓迎を受けております。アーロン陛下、私の婚約者を呼び捨てにしたり、あろう事か触れようとするのはお控え願いたい」
いつも穏やかなジルド様、いつも通り笑顔だが、物凄い殺気を感じる。
「ああ、グリーズン王国の国王陛下でしたか。そう言えばジャンティーヌが、あなた様の国に居座っていた魔女を退治したそうですね。そのせいで我が国は大変な事になっているのです。もしかして、謝罪にいらしたのですか?」
この人、何を言っているの?何をどうしたら、ジルド様が謝罪に来たという発想になるの?そもそも、魔物たちは元居た場所に戻っただけ。結界を張っていなかったこの国が悪いのに…
さすがのアーロン様の無礼な発言に、皆固まっている。
「アーロン陛下、なんて事をおっしゃるのですか!ジルド陛下、本当に申し訳ございませんでした」
「いいや、私の事は気にしないでくれ。ただ…噂以上の人の様だな…」
必死に謝るクリスティル王国の貴族たちに対し、ジルド様がポツリと呟いた。アーロン様のあまりの頓珍漢ぶりに、ドン引きしているのだろう。それでも私を自分の腕の中から離すつもりはない様で、しっかり抱きしめられている。
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