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第19話:ミリアが元気になって戻ってきました
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ミリアが病院に運ばれた翌日、いつもより元気のないダニー。
「ダニー、大丈夫よ。きっとミリアは元気になって戻って来るわ」
落ち込むダニーを抱きしめ、励ます。その時だった。
コンコン
「はい」
玄関を叩く音が聞こえたので慌てて扉を開けると、そこに立っていたのはリリアンの旦那さんだった。
「お父さん!」
嬉しそうに抱き着くダニー。
「ダニー、寂しい思いをさせて悪かったな。レティシアちゃん、今回の件、本当にありがとう。お陰様でミリアの手術は成功したよ。1週間ぐらい入院したら、帰ってこられそうだ」
「それは本当ですか!あぁ、良かった」
ミリアの手術が成功したと聞き、嬉しくて涙が出る。
「ただ、リリアンはそのままミリアに付いている予定だから、しばらくは男2人の生活になるがな」
そう言って笑った旦那さん。そうだわ。
「それなら、家事は私が引き受けますわ。いつもリリアンさんには、本当にお世話になっていますから」
「それは悪いよ。君には大金まで立て替えてもらったんだ。これ以上迷惑を掛ける訳には…」
「迷惑だなんて、とんでもありません。この村で楽しく過ごせているのも、全てリリアンさんのお陰なのです。お願いです、どうかここは私に甘えて下さい」
必死に頼み込んだ。今まで返しても返しきれないほどの恩を、リリアンさんから受けて来た。こんな時ぐらいは、甘えて欲しい。
「わかったよ。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
良かったわ。これで少しは、リリアンさんに恩返しが出来るわね。
それから1週間、ミリアとリリアンさんの帰りを待ちながら、2人の世話をする。リリアンさんの旦那さんは
「いつもありがとう。本当に助かるよ」
そう言ってくれる。こんな私でも誰かの役に立てている事が、物凄く嬉しくてたまらない。今までは、いつも誰かにしてもらってばかりだったものね。これからは、誰かの役に立つような生き方がしたい。そう強く思った。
そして待ちに待ったミリアとリリアンさんが帰ってくる日。この日は朝から村の女性陣達も駆け付けてくれ、皆でご馳走を作った。そして昼前、皆と一緒に家の前で2人の帰りを待つ。しばらく待っていると、1台の馬車がやって来た。
馬車が停車すると、飛び出して来たのはミリアだ。まっすぐ私の方に向かって走って来て、そのまま飛びついて来た。
「ミリア、お帰りなさい。元気になったのね。本当に良かったわ」
ミリアをギューッと抱きしめ、そう伝えた。
「レティシアおねえちゃん。ただいま。それと、ありがとう。おねえちゃんがミリアをたすけてくれたってママがいっていたわ」
そう言ってにっこり笑ったミリア。
「さあ、早く中に入りましょう。今日はご馳走を沢山作って待っていたのよ」
女性陣の1人が私たちに声を掛ける。沢山の料理に目を輝かせるミリア。早速パーティースタートだ。嬉しそうにご馳走を頬張るミリア含めた子供たち。その姿を微笑ましく見つめると、リリアンさんが話しかけて来た。
「レティシア、ミリアがこんなにも元気になったのはあなたのお陰よ。本当にありがとう」
深々と頭を下げるリリアンさん。
「気にしないで下さい。私はただ、ミリアを助けたかっただけですから。それに、リリアンさんが悲しむ顔も見たくなかったし」
「あなたって人は…本当にありがとう」
涙を流し、何度も頭を下げるリリアンさん。
「リリアンさん、頭を上げて下さい。とにかく、ミリアが元気になったのですから。ほら、ご馳走を食べましょう」
そう言って食事をリリアンさんに渡した。きっとリリアンさんの事だ。この1週間、ろくに食事もとらずに、ずっとミリアに付き添っていたのだろう。
結局この日は、夕方近くまでパーティーが開かれたのであった。
「やっと皆帰ったわね。子供たちももう寝たわ。レティシア、後片付けまで手伝ってくれてありがとう。お茶を入れたから、一息つきましょう」
私の為にお茶を入れてくれたリリアンさん。せっかくなので、頂く事にした。椅子に座ると、リリアンさんと旦那さんが背筋を伸ばし、真剣な表情で見つめて来た。
「レティシア、今回の件、本当にありがとう。これ、残ったお金よ。それにしてもあんな大金を持っているなんて驚いたわ。言いたくないのなら別に言わなくてもいいのよ。でも、もし話してもいいと思ってくれているのなら、どうしてあんな大金を持っていたのか、教えてくれるかしら?」
残ったお金が入ったカバンを机に置くと、真剣な表情で問いかけて来るリリアンさん。私の心はあの日、お金を渡した時に既に決まっている。
「あのお金は、私の父が残してくれたお金なのです」
「お父さんが?」
目を丸くするリリアンさんと旦那さん。私は2人に、自分の事をわかりやすく話した。パンドラ王国の元公爵令嬢だった事、王太子のリアム様と婚約をしていたが、権力者であった父が亡くなった事で、後ろ盾を亡くした事。リアム様が実は別の女性を愛していた事。
自ら国を出る事で、彼を解放した事を…
「そんな…それじゃああまりにもレティシアが可哀そうすぎるわ!」
そう言って涙を流すリリアンさん。
「私の為に泣いてくれてありがとうございます。でも、リアム様には感謝をしているのです。こんな私にも、優しくして下さったので。それに今は、この国で皆さんに囲まれ、幸せに暮らしていますし。ですから、私の事を可哀そうと思わないで下さい」
「あぁ、あなたって子は…」
そう言って私を抱きしめたリリアンさん。
「それから、ミリアの為に使ったお金は返して頂かなくて結構ですわ。どうせ使いきれないお金だったので。ミリアの為に使った事、きっと天国の父も喜んでいるはずです。父は、困った人がいたら手を差し伸べろと言う考えの人だったので」
「そんな訳には行かないわ!さすがにあんな大金…」
「いいえ、どうか気にしないで下さい。その代わり、これからも私と仲良くしてください。それだけで、十分私は幸せですので」
全てを失ったと思っていた私に、最初に手を差し伸べてくれたリリアンさん。私は彼女から受けた恩を、一生忘れないだろう。それくらい、彼女は私にとっての恩人なのだから…
「ありがとう、レティシア。もちろんよ。これからもずっと一緒よ。もしあなたが困った事があったら、必ず助けるわ」
そう言って笑ったリリアンさん。隣で旦那さんも頷いている。なんだかリリアンさんたちに全てを話したら、心が少し軽くなった。これからもこの地で、皆と一緒に生きて行こう。そう心に誓ったレティシアであった。
「ダニー、大丈夫よ。きっとミリアは元気になって戻って来るわ」
落ち込むダニーを抱きしめ、励ます。その時だった。
コンコン
「はい」
玄関を叩く音が聞こえたので慌てて扉を開けると、そこに立っていたのはリリアンの旦那さんだった。
「お父さん!」
嬉しそうに抱き着くダニー。
「ダニー、寂しい思いをさせて悪かったな。レティシアちゃん、今回の件、本当にありがとう。お陰様でミリアの手術は成功したよ。1週間ぐらい入院したら、帰ってこられそうだ」
「それは本当ですか!あぁ、良かった」
ミリアの手術が成功したと聞き、嬉しくて涙が出る。
「ただ、リリアンはそのままミリアに付いている予定だから、しばらくは男2人の生活になるがな」
そう言って笑った旦那さん。そうだわ。
「それなら、家事は私が引き受けますわ。いつもリリアンさんには、本当にお世話になっていますから」
「それは悪いよ。君には大金まで立て替えてもらったんだ。これ以上迷惑を掛ける訳には…」
「迷惑だなんて、とんでもありません。この村で楽しく過ごせているのも、全てリリアンさんのお陰なのです。お願いです、どうかここは私に甘えて下さい」
必死に頼み込んだ。今まで返しても返しきれないほどの恩を、リリアンさんから受けて来た。こんな時ぐらいは、甘えて欲しい。
「わかったよ。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
良かったわ。これで少しは、リリアンさんに恩返しが出来るわね。
それから1週間、ミリアとリリアンさんの帰りを待ちながら、2人の世話をする。リリアンさんの旦那さんは
「いつもありがとう。本当に助かるよ」
そう言ってくれる。こんな私でも誰かの役に立てている事が、物凄く嬉しくてたまらない。今までは、いつも誰かにしてもらってばかりだったものね。これからは、誰かの役に立つような生き方がしたい。そう強く思った。
そして待ちに待ったミリアとリリアンさんが帰ってくる日。この日は朝から村の女性陣達も駆け付けてくれ、皆でご馳走を作った。そして昼前、皆と一緒に家の前で2人の帰りを待つ。しばらく待っていると、1台の馬車がやって来た。
馬車が停車すると、飛び出して来たのはミリアだ。まっすぐ私の方に向かって走って来て、そのまま飛びついて来た。
「ミリア、お帰りなさい。元気になったのね。本当に良かったわ」
ミリアをギューッと抱きしめ、そう伝えた。
「レティシアおねえちゃん。ただいま。それと、ありがとう。おねえちゃんがミリアをたすけてくれたってママがいっていたわ」
そう言ってにっこり笑ったミリア。
「さあ、早く中に入りましょう。今日はご馳走を沢山作って待っていたのよ」
女性陣の1人が私たちに声を掛ける。沢山の料理に目を輝かせるミリア。早速パーティースタートだ。嬉しそうにご馳走を頬張るミリア含めた子供たち。その姿を微笑ましく見つめると、リリアンさんが話しかけて来た。
「レティシア、ミリアがこんなにも元気になったのはあなたのお陰よ。本当にありがとう」
深々と頭を下げるリリアンさん。
「気にしないで下さい。私はただ、ミリアを助けたかっただけですから。それに、リリアンさんが悲しむ顔も見たくなかったし」
「あなたって人は…本当にありがとう」
涙を流し、何度も頭を下げるリリアンさん。
「リリアンさん、頭を上げて下さい。とにかく、ミリアが元気になったのですから。ほら、ご馳走を食べましょう」
そう言って食事をリリアンさんに渡した。きっとリリアンさんの事だ。この1週間、ろくに食事もとらずに、ずっとミリアに付き添っていたのだろう。
結局この日は、夕方近くまでパーティーが開かれたのであった。
「やっと皆帰ったわね。子供たちももう寝たわ。レティシア、後片付けまで手伝ってくれてありがとう。お茶を入れたから、一息つきましょう」
私の為にお茶を入れてくれたリリアンさん。せっかくなので、頂く事にした。椅子に座ると、リリアンさんと旦那さんが背筋を伸ばし、真剣な表情で見つめて来た。
「レティシア、今回の件、本当にありがとう。これ、残ったお金よ。それにしてもあんな大金を持っているなんて驚いたわ。言いたくないのなら別に言わなくてもいいのよ。でも、もし話してもいいと思ってくれているのなら、どうしてあんな大金を持っていたのか、教えてくれるかしら?」
残ったお金が入ったカバンを机に置くと、真剣な表情で問いかけて来るリリアンさん。私の心はあの日、お金を渡した時に既に決まっている。
「あのお金は、私の父が残してくれたお金なのです」
「お父さんが?」
目を丸くするリリアンさんと旦那さん。私は2人に、自分の事をわかりやすく話した。パンドラ王国の元公爵令嬢だった事、王太子のリアム様と婚約をしていたが、権力者であった父が亡くなった事で、後ろ盾を亡くした事。リアム様が実は別の女性を愛していた事。
自ら国を出る事で、彼を解放した事を…
「そんな…それじゃああまりにもレティシアが可哀そうすぎるわ!」
そう言って涙を流すリリアンさん。
「私の為に泣いてくれてありがとうございます。でも、リアム様には感謝をしているのです。こんな私にも、優しくして下さったので。それに今は、この国で皆さんに囲まれ、幸せに暮らしていますし。ですから、私の事を可哀そうと思わないで下さい」
「あぁ、あなたって子は…」
そう言って私を抱きしめたリリアンさん。
「それから、ミリアの為に使ったお金は返して頂かなくて結構ですわ。どうせ使いきれないお金だったので。ミリアの為に使った事、きっと天国の父も喜んでいるはずです。父は、困った人がいたら手を差し伸べろと言う考えの人だったので」
「そんな訳には行かないわ!さすがにあんな大金…」
「いいえ、どうか気にしないで下さい。その代わり、これからも私と仲良くしてください。それだけで、十分私は幸せですので」
全てを失ったと思っていた私に、最初に手を差し伸べてくれたリリアンさん。私は彼女から受けた恩を、一生忘れないだろう。それくらい、彼女は私にとっての恩人なのだから…
「ありがとう、レティシア。もちろんよ。これからもずっと一緒よ。もしあなたが困った事があったら、必ず助けるわ」
そう言って笑ったリリアンさん。隣で旦那さんも頷いている。なんだかリリアンさんたちに全てを話したら、心が少し軽くなった。これからもこの地で、皆と一緒に生きて行こう。そう心に誓ったレティシアであった。
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