60 / 82
第60話:楽しい思い出を作りたいのに
しおりを挟む
昼食の後、ホテルのロビーに集合し、各自参加するツアーの前に集まる。思ったよりも皆何かに参加したかった様で、ほとんどの人が、何らかのツアーに申し込んでいた。
ちなみに私が参加するツアーは、真珠やサンゴなどの加工工場&アクセサリー作り体験だ。レオナルド様も同じツアーに参加しようとしていたが、何分参加者は皆令嬢だったため、必死に頼んで別のツアーにしてもらった。
最後まで“オリビアを1人にするのは心配だ!”と言って一緒に参加しようとしていたが、結局クリス様にうまく丸め込まれ、船で漁に出る体験にした様だ。
「オリビア、いいかい?令嬢ばかリだからと言って安心してはいけないよ。もしかしたら、誘拐犯が紛れ込んでいるかもしれない!あぁ、やっぱり心配だ」
レオナルド様が私の隣で騒いでいる。
「レオナルド、いい加減にしろ!それじゃあ俺たちは行くから」
クリス様に連れられ、こちらをチラチラ見ながら去っていくレオナルド様。なんだか最近、お父様の口調に似て来た気がするのだが、気のせいかしら…
「レオナルド様は、本当にオリビアが大好きなのね…」
一部始終を見ていたメアリーがそう言って笑っていた。でも、なぜだろう。なんだか悲しそうに見えるのは、私だけだろうか…
「さあ、私たちも行きましょう。私、加工工場を見るの、初めてなの」
私の手を引き、歩き出したメアリー。他にも20人程度の令嬢たちと引率の先生と一緒に、加工工場へと向かう。
女性たちが丁寧に作業を行っている。どうやら貝殻などの加工も行っている様で、こっちでは丁寧に磨いていた。その隣では真珠などを大きさ別に選別を行っている様だ。
一通り見学をした後は、アクセサリーを作る体験をさせてもらった。真珠を始め、サンゴや貝殻など、色々なアイテムが並んでいる。
せっかくなので、レオナルド様と私の分を作ろう。そうね、ネックレスがいいわ。この真珠、本当にキラキラしていて綺麗だ。間にサンゴを入れても綺麗よね。
どうせなら同じデザインがいい。色合いを考えながら、何度も通しては外し、通しては外しを繰り返していく。
2時間かかり、なんとか完成した。
「オリビアのネックレス、とても素敵ね。もしかして、1つはレオナルド様にあげるの?」
「ありがとう、メアリーのも素敵よ。ええ、レオナルド様にはいつも貰ってばかりだから、私も何かあげたくて…」
「あら、素敵じゃない。きっとレオナルド様、喜んでくれると思うわ。そろそろホテルに戻る時間の様ね。この後はパーティーがあるから、急いで戻りましょう」
優しく微笑むメアリー。さっき悲しそうな顔をしていた様な気がしたけれど、きっと私の気のせいだったのね。
メアリーと手を繋ぎ、他の令嬢たちも一緒にホテルに戻る。すると
「オリビア、よかった。帰ってくるのが遅かったから、心配していたんだ」
レオナルド様が、ギューッと抱きしめてくれた。私の事を待っていてくれたのね。嬉しいわ。
「わざわざ待っていてくれたのね。そうだわ、これ。私が作ったネックレスなの。私とお揃いよ」
早速作りたてほやほやのネックレスを渡した。
「これを僕にかい。オリビアが作ってくれたネックレスか!こんなに嬉しいプレゼントはない。僕の宝物にするよ!そうだ、オリビアが僕の首に付けてくれるかい?」
嬉しそうにレオナルド様が後ろを向いた。つけやすい様に、少ししゃがんでくれる。そっとレオナルド様の首にネックレスを付けた。あまりレオナルド様の頭ってみた事がなかったけれど、サラサラの美しい金髪をしているのね。
「ありがとう、オリビア。本当に嬉しいよ」
首に付いたネックレスに触れながら、本当に嬉しそうに笑ってくれる。その顔を見た時、私も嬉しくてつい頬が緩んだ。
「そんなに喜んで貰えてよかったわ。それ作るの、結構苦労したのよ」
「そうだったんだね。僕の為に、ありがとう」
ギュッとレオナルド様が抱きしめてくれる。
「レオナルド、オリビア殿下もそろそろ着替えないと間に合わないぞ」
あきれ顔のクリス様に言われ、急いで部屋へと戻った。残念ながら、レオナルド様とは建屋が違う。部屋に戻ると、クリアが待ち構えていた。そして、ドレスに着替えさせてくれる。
ちなみに部屋は1人部屋、メイドを1人だけ連れてきていい事になっているのだ。この国に来る前から私のお世話をしてくれているクリアが、今回来てくれた。やっぱり彼女が一番信頼できるのだ。
「出来ましたよ。今日の殿下も、とてもお美しいですわ。さあ、そろそろお時間です。気を付けて行ってらっしゃいませ」
「いつもありがとう。クリア。行ってくるわね」
クリアに見送られ、今日の舞台でもあるホールへと向かう。きっとレオナルド様がどこかで待っているはずだけれど、どこで待っているのかしら?
キョロキョロとしながら、ホールを目指す。するとホールの入り口に、レオナルド様の姿が。
「レオ…」
声を掛けようとした瞬間、レオナルド様がメアリーと楽しそうに話しをしている姿が目に入る。メアリーは聡明で美しい。ああやってしていると、2人はお似合いだ…
そんな事は考えたくはないのに、どうしても考えてしまう。それによく見ると、メアリーのドレス、レオナルド様の瞳の色でもある、青色だわ…
それってもしかして…
その場から動く事が出来ず、ただ2人を見つめる事しかできない。と、次の瞬間、レオナルド様が私に気が付き、走ってこっちにやって来た。
「オリビア、随分と遅かったね。メアリー嬢ももう来ているよ。さあ、行こうか」
いつも通りの笑顔を向けてくれるレオナルド様。でも…
お願い、メアリーの名前を呼ばないで…
レオナルド様は、私の婚約者なのに…
メアリーに対する醜い嫉妬心が出てしまう。
「オリビア、大丈夫?あなた少し顔色が悪いわよ」
私達の元にやって来たメアリーが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。こんなにも優しい友人に、醜い嫉妬心を向けてしまうなんて…
とにかく、平然を装わないと。
「何でもないわ。さあ、今日は目いっぱい楽しみましょう」
必死に笑顔を作り、3人でホールに入って行く。正直言って、この後の事はあまりよく覚えていない。ただレオナルド様とメアリーが2人きりにならない様に、必死に2人の様子を伺っていた。
とても楽しみにしていた宿泊研修なのに、私ったら一体何をしているのかしら…
ちなみに私が参加するツアーは、真珠やサンゴなどの加工工場&アクセサリー作り体験だ。レオナルド様も同じツアーに参加しようとしていたが、何分参加者は皆令嬢だったため、必死に頼んで別のツアーにしてもらった。
最後まで“オリビアを1人にするのは心配だ!”と言って一緒に参加しようとしていたが、結局クリス様にうまく丸め込まれ、船で漁に出る体験にした様だ。
「オリビア、いいかい?令嬢ばかリだからと言って安心してはいけないよ。もしかしたら、誘拐犯が紛れ込んでいるかもしれない!あぁ、やっぱり心配だ」
レオナルド様が私の隣で騒いでいる。
「レオナルド、いい加減にしろ!それじゃあ俺たちは行くから」
クリス様に連れられ、こちらをチラチラ見ながら去っていくレオナルド様。なんだか最近、お父様の口調に似て来た気がするのだが、気のせいかしら…
「レオナルド様は、本当にオリビアが大好きなのね…」
一部始終を見ていたメアリーがそう言って笑っていた。でも、なぜだろう。なんだか悲しそうに見えるのは、私だけだろうか…
「さあ、私たちも行きましょう。私、加工工場を見るの、初めてなの」
私の手を引き、歩き出したメアリー。他にも20人程度の令嬢たちと引率の先生と一緒に、加工工場へと向かう。
女性たちが丁寧に作業を行っている。どうやら貝殻などの加工も行っている様で、こっちでは丁寧に磨いていた。その隣では真珠などを大きさ別に選別を行っている様だ。
一通り見学をした後は、アクセサリーを作る体験をさせてもらった。真珠を始め、サンゴや貝殻など、色々なアイテムが並んでいる。
せっかくなので、レオナルド様と私の分を作ろう。そうね、ネックレスがいいわ。この真珠、本当にキラキラしていて綺麗だ。間にサンゴを入れても綺麗よね。
どうせなら同じデザインがいい。色合いを考えながら、何度も通しては外し、通しては外しを繰り返していく。
2時間かかり、なんとか完成した。
「オリビアのネックレス、とても素敵ね。もしかして、1つはレオナルド様にあげるの?」
「ありがとう、メアリーのも素敵よ。ええ、レオナルド様にはいつも貰ってばかりだから、私も何かあげたくて…」
「あら、素敵じゃない。きっとレオナルド様、喜んでくれると思うわ。そろそろホテルに戻る時間の様ね。この後はパーティーがあるから、急いで戻りましょう」
優しく微笑むメアリー。さっき悲しそうな顔をしていた様な気がしたけれど、きっと私の気のせいだったのね。
メアリーと手を繋ぎ、他の令嬢たちも一緒にホテルに戻る。すると
「オリビア、よかった。帰ってくるのが遅かったから、心配していたんだ」
レオナルド様が、ギューッと抱きしめてくれた。私の事を待っていてくれたのね。嬉しいわ。
「わざわざ待っていてくれたのね。そうだわ、これ。私が作ったネックレスなの。私とお揃いよ」
早速作りたてほやほやのネックレスを渡した。
「これを僕にかい。オリビアが作ってくれたネックレスか!こんなに嬉しいプレゼントはない。僕の宝物にするよ!そうだ、オリビアが僕の首に付けてくれるかい?」
嬉しそうにレオナルド様が後ろを向いた。つけやすい様に、少ししゃがんでくれる。そっとレオナルド様の首にネックレスを付けた。あまりレオナルド様の頭ってみた事がなかったけれど、サラサラの美しい金髪をしているのね。
「ありがとう、オリビア。本当に嬉しいよ」
首に付いたネックレスに触れながら、本当に嬉しそうに笑ってくれる。その顔を見た時、私も嬉しくてつい頬が緩んだ。
「そんなに喜んで貰えてよかったわ。それ作るの、結構苦労したのよ」
「そうだったんだね。僕の為に、ありがとう」
ギュッとレオナルド様が抱きしめてくれる。
「レオナルド、オリビア殿下もそろそろ着替えないと間に合わないぞ」
あきれ顔のクリス様に言われ、急いで部屋へと戻った。残念ながら、レオナルド様とは建屋が違う。部屋に戻ると、クリアが待ち構えていた。そして、ドレスに着替えさせてくれる。
ちなみに部屋は1人部屋、メイドを1人だけ連れてきていい事になっているのだ。この国に来る前から私のお世話をしてくれているクリアが、今回来てくれた。やっぱり彼女が一番信頼できるのだ。
「出来ましたよ。今日の殿下も、とてもお美しいですわ。さあ、そろそろお時間です。気を付けて行ってらっしゃいませ」
「いつもありがとう。クリア。行ってくるわね」
クリアに見送られ、今日の舞台でもあるホールへと向かう。きっとレオナルド様がどこかで待っているはずだけれど、どこで待っているのかしら?
キョロキョロとしながら、ホールを目指す。するとホールの入り口に、レオナルド様の姿が。
「レオ…」
声を掛けようとした瞬間、レオナルド様がメアリーと楽しそうに話しをしている姿が目に入る。メアリーは聡明で美しい。ああやってしていると、2人はお似合いだ…
そんな事は考えたくはないのに、どうしても考えてしまう。それによく見ると、メアリーのドレス、レオナルド様の瞳の色でもある、青色だわ…
それってもしかして…
その場から動く事が出来ず、ただ2人を見つめる事しかできない。と、次の瞬間、レオナルド様が私に気が付き、走ってこっちにやって来た。
「オリビア、随分と遅かったね。メアリー嬢ももう来ているよ。さあ、行こうか」
いつも通りの笑顔を向けてくれるレオナルド様。でも…
お願い、メアリーの名前を呼ばないで…
レオナルド様は、私の婚約者なのに…
メアリーに対する醜い嫉妬心が出てしまう。
「オリビア、大丈夫?あなた少し顔色が悪いわよ」
私達の元にやって来たメアリーが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。こんなにも優しい友人に、醜い嫉妬心を向けてしまうなんて…
とにかく、平然を装わないと。
「何でもないわ。さあ、今日は目いっぱい楽しみましょう」
必死に笑顔を作り、3人でホールに入って行く。正直言って、この後の事はあまりよく覚えていない。ただレオナルド様とメアリーが2人きりにならない様に、必死に2人の様子を伺っていた。
とても楽しみにしていた宿泊研修なのに、私ったら一体何をしているのかしら…
11
あなたにおすすめの小説
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。
秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。
「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」
第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。
着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。
「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。
行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。
「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」
「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」
氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。
一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。
慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。
しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。
「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」
これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる