あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi

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第32話:シャーラ様が訪ねてきました

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「おはよう、カナリア。昨日は随分と疲れていた様だね。可哀そうに、あんなにも怖い目にあったのだから、当然だよね。今日は貴族学院は休みだし、王宮でゆっくり過ごそう」

 朝一番で我が家を訪ねてきたのは、アルト様だ。昨日の事件を受け、急遽今日から1週間、貴族学院は休みになったのだ。

 誘拐された場所が貴族学院という事もあり、セキュリティ面に関して徹底させるためにも、1週間の休みが設けられたらしい。

「アルト様、昨日は通信に出る事が出来ずに、申し訳ございませんでした。そのせいで、アルト様は我が家に足を運んでくださったとの事。アルト様も疲れていらっしゃったでしょうに、本当にごめんなさい」

 昨日の件を謝罪した。

「そんな事は気にしなくてもいいのだよ。カナリアがどうしても心配でね。やっぱりカナリアには、王宮で生活した方がいいのではないかと思って。何より僕が、カナリアと一秒だって離れたくはないしね」

 アルト様が私を強く抱きしめながら、そんな事を言っている。

「殿下、おはようございます。カナリアはまだ学生の身です。殿下に嫁ぐその日までは、我が公爵家で暮させますので。それよりも今日は、カナリアに昨日の件で話を聞きたいと、騎士団長たちが我が家にやってくる予定です。申し訳ございませんが、今日は王宮には行けませんので、殿下はお帰り下さい」

 玄関はあちらです!と言わんばかりに、お父様が笑顔でアルト様を送り出そうとしている。

「公爵、何をおっしゃっているのですか?その事情聴取、僕も参加しますよ。男どもにカナリアを会わせるだなんて心配だ。事情聴取とか言って、カナリアを口説くのかもしれないし!」

「アルト様、さすがにその様な事はしないかと…そもそも騎士団長様は、お義兄様のお父様ですよ」

 お姉様は騎士団長の息子に嫁いだのだ。ちなみに我が国では、何か犯罪が起こると、騎士団が色々と調査をする事になっている。その資料を基に、裁判長含めた裁判員が、判決を下すのだ。ちなみに騎士団長や副騎士団長、裁判長など国を取り仕切る人間は、皆侯爵以上の貴族たちで構成されている。

「たとえ君の義兄の父であっても、男は男。それに他の若い騎士団員も来るだろうし」

「…分かりましたわ。私もアルト様がいらっしゃった方が、安心できますので…」

 その後訪ねて来た騎士団長様や団員の方たちに、昨日の出来事を事細かに説明した。実際にさらわれた場所を案内したり、事件の現場となった倉庫にも足を運んだ。

 有難い事にアルト様がずっと傍で支えていてくれたので、恐怖心等もなく、無事事情聴取も終わった。

「カナリア嬢、アルト殿下、ご協力ありがとうございました。この後なのですが、アルト殿下にも色々と話を聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「僕は昨日の夜、ある程度話をしただろう?今日はカナリアと一緒にいたいから、また後日にして欲しい」

「何をおっしゃっていらっしゃるのですか、殿下。殿下は事件の第一発見者でしょう。それに、映像の分析にも協力して頂きたいのです。カナリア嬢を殺そうとした犯人が、憎くはないのですか?まずはそちらを片付けた後、存分にカナリア嬢との時間をお楽しみになればよろしいでしょう」

 騎士団長様が、アルト様を説得している。

「確かに僕の可愛いカナリアを、恐怖に陥れたあいつらは許せないな。分かったよ、まずはあいつらを徹底的に叩き潰そう。カナリア、僕はこのまま帰るけれど、今日は屋敷で大人しくしているのだよ。定期的に通信も入れるから」

「ええ、分かりましたわ。私は屋敷で大人しくしておりますので、どうかご安心を」

 心配そうなアルト様を見送ると、自室へと戻ってきた。それにしても、事情聴取はあんな感じで行われるのね。あちこち連れまわされたうえ、色々と聞かれて疲れたわ。少しゆっくりしよう。

 そう思っていた時だった。

「お嬢様、シャーラ様がお見えですが、どうなさいますか?」

「えっ?シャーラ様が?すぐに行くわ」

 シャーラ様が我が家に来るだなんて、一体どうしたのかしら?もしかして、私を事件に巻き込んでしまったら、謝罪に来たのかしら?そんな事、気にしなくてもいいのに。

 急いで客間に向かうと、確かにシャーラ様が待っていた。桃色の美しい髪を腰まで伸ばしたシャーラ様は、やっぱり美しい。彼女はやっぱりヒロインだと思うのだけれど…て、もうあれは私の勘違いだったのよね。

「シャーラ様、お待たせして申し訳ございません」

「いえ、こちらこそ急に押しかけて、申し訳ございませんでした。まずは、私のせいでカナリア様に怖い思いをさせてしまって、本当にごめんなさい」

 予想通り、シャーラ様が謝罪してきたのだ。

「どうか謝らないで下さい、シャーラ様は全く悪くはないのですから。それにしてもルミン様は、何を考えているのでしょうね。己の気持ちが受け入れられないからと言って、シャーラ様を亡き者にしようとするだなんて!」

 まるで小説に出てくる悪役令嬢みたいだった。

「彼女は悪役令嬢なので、仕方ありませんわ…」

 ポツリと呟いたシャーラ様。

 えっ?今なんて言った?悪役令嬢?
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