3 / 20
第3話:どうして彼女がいないんだ~エイダン視点~
しおりを挟む
無事卒業式も終え、明日はいよいよサーラとの結婚式の日。僕はこの日を待ち望んできた。やっと、僕の可愛いサーラを僕だけのものにできる。
思い返してみれば、初めてサーラに会った10歳の時から、彼女を手に入れるため、あえて孤立させてきた。それもこれも、結婚後僕に依存させるためだ。僕はサーラが大好きだ。
サーラが誰にも頼れない様に、皆にサーラの悪口を吹き込んできた。そのお陰か、サーラはずっと独りぼっちだった。でも、それも明日で終わりだ。明日の結婚式が終わったら、サーラを大切にしよう。
きっと今まで誰からも大切にされていなかったサーラの事だ。泣いて喜ぶだろう。そう思っていたのに…
翌日、僕は真っ白なタキシードに身を包み、サーラが来るのを待った。今日のウエディングドレスは、僕がサーラの為に選んだものだ。きっとよく似合っているだろう。
そして、サーラがやって来た。僕の予想以上に、よく似合っている。やっぱり僕のサーラは可愛いな!
僕はサーラに優しく話しかけた。
「サーラ、そのウエディングドレス、とてもよく似合っているよ。今日は僕たちの結婚式だ。これで僕たちは、晴れて夫婦だね」
今までとは別人の様に、それはそれは優しく。さあ、サーラはどんな表情を見せるかな?きっと嬉しそうに微笑むだろう。だって僕が優しくしているのだから。そう思っていたのに…
サーラは僕の方を一切見ず、表情を変えず“側室と愛し合ってください”そう言い放ったのだ。一体どういう事だ?一瞬にして、パニックになる。
サーラ、僕は側室なんて持つつもりはないよ。僕は君だけを愛しているのだから。そう言おうとしたのだが、ちょうど入場の時間になり、結局それ以上は話せなかった。
それでもサーラは、嬉しそうに皆に笑顔を振りまいていた。さっきのサーラはきっと、僕の気のせいだったんだ。もしかしたら、ちょっとサーラに辛く当たりすぎて、拗ねてしまったのかもしれない。とにかく、今日からは大切にしないと。そんな思いから、披露宴の時は、出来るだけサーラと一緒にいた。サーラも他の王族たちに、愛想を振りまいていた。
ただ、やはり我が国の貴族、特に令嬢たちがサーラの悪口を言っていた。さらに僕にすり寄り
「エイダン殿下、本当にお可哀そう。でも、私たちが側室として王家に輿入れいたしますので、ご安心ください。王妃様からもぜひと頼まれておりますので」
そう笑顔で迫られたのだ。母上め、令嬢たちになんて事を吹き込んでいるんだ。クソ、ちょっとサーラの事を悪く言いすぎたかな…僕は側室なんて、持つつもりはない。
明日にでも母上に、はっきりとそう告げないと!
そして、やっと披露宴が終わった。今日は初夜だ。僕は急いで自室に戻り、湯あみを済ませた。やっと今日、サーラを僕のものに出来る。きっとサーラは緊張しているだろうから、優しく優しく接しよう。
そんな思いで、夫婦の寝室に向かった。どうやらサーラはまだ来ていなかった。そうか、令嬢は準備に時間が掛かるもんな。
そう思い、サーラが来るのを待つ。でも、いつまでたってもサーラが来ない。一体どうなっているんだ!業を煮やした僕は、寝室と繋がっているサーラの部屋のドアを開けた。
「サーラ、どうしたんだい?恥ずかしがらなくてもいいんだよ」
そう声を掛けるが、部屋には誰もいなかった。と言うより、この部屋に誰かが入った形跡すらない。どういう事だ!体中から、怒りが沸き上がった。サーラは一体どこにいるんだ!
僕はすぐに外に出た。
「サーラがいない。今すぐサーラの為に付けたメイドをここに呼べ!」
「はい、かしこまりました!」
近くにいた護衛騎士に、すぐに指示を出す。すると、血相を変えてメイドが飛んできた。
「どうしてサーラが部屋にいないんだ。サーラをどこに連れて行った!」
メイドに強い口調で迫る。
「申し訳ございません…あの、王妃様の指示で…離宮にご案内しました…」
「離宮だと!どういう事だ。今すぐサーラの元に案内しろ!いいや、その前に母上だ!母上の元に行ってくる!」
完全に頭に血が上った僕は、そのまま母上の部屋に向かった。
「母上、一体どういうつもりですか!どうしてサーラを離宮に追いやったのですか?彼女は僕の大切な妻ですよ!」
「エイダン…一体どうしたの?そんな薄着で…だってあなた、あの女の事を嫌っていたじゃない。だから私は…」
「嫌いだって?僕がいつサーラを嫌いだと言いましたか?僕はサーラを誰よりも愛しています!」
「だってあなた…いつもあの子の事を、“我が儘で傲慢で本当に嫌になる”と言っていたじゃない…だから私は…」
「それはサーラを孤立させ、僕に依存させるために付いた嘘です!とにかくサーラにこれ以上酷い事をしないで下さい。これからは、サーラは僕の妻として、幸せに王宮で暮らすのですから」
「エイダン…あなた、何を言っているの?それじゃあ、サーラさんは…」
「あなたがサーラにした酷い仕打ち、僕は絶対に許さない!二度とサーラに近づかないで」
そう言い残し、母上の部屋を出た。
「さあ、今すぐサーラのいる場所に案内しろ!もちろん、一番いい部屋を提供しているのだろうな?」
「…それは…」
真っ青な顔をして立ち尽くすメイド。
「いいから早く案内してくれ!」
「かしこまりました。こちらです」
サーラ、今すぐ迎えに行くから待っていてくれ。
思い返してみれば、初めてサーラに会った10歳の時から、彼女を手に入れるため、あえて孤立させてきた。それもこれも、結婚後僕に依存させるためだ。僕はサーラが大好きだ。
サーラが誰にも頼れない様に、皆にサーラの悪口を吹き込んできた。そのお陰か、サーラはずっと独りぼっちだった。でも、それも明日で終わりだ。明日の結婚式が終わったら、サーラを大切にしよう。
きっと今まで誰からも大切にされていなかったサーラの事だ。泣いて喜ぶだろう。そう思っていたのに…
翌日、僕は真っ白なタキシードに身を包み、サーラが来るのを待った。今日のウエディングドレスは、僕がサーラの為に選んだものだ。きっとよく似合っているだろう。
そして、サーラがやって来た。僕の予想以上に、よく似合っている。やっぱり僕のサーラは可愛いな!
僕はサーラに優しく話しかけた。
「サーラ、そのウエディングドレス、とてもよく似合っているよ。今日は僕たちの結婚式だ。これで僕たちは、晴れて夫婦だね」
今までとは別人の様に、それはそれは優しく。さあ、サーラはどんな表情を見せるかな?きっと嬉しそうに微笑むだろう。だって僕が優しくしているのだから。そう思っていたのに…
サーラは僕の方を一切見ず、表情を変えず“側室と愛し合ってください”そう言い放ったのだ。一体どういう事だ?一瞬にして、パニックになる。
サーラ、僕は側室なんて持つつもりはないよ。僕は君だけを愛しているのだから。そう言おうとしたのだが、ちょうど入場の時間になり、結局それ以上は話せなかった。
それでもサーラは、嬉しそうに皆に笑顔を振りまいていた。さっきのサーラはきっと、僕の気のせいだったんだ。もしかしたら、ちょっとサーラに辛く当たりすぎて、拗ねてしまったのかもしれない。とにかく、今日からは大切にしないと。そんな思いから、披露宴の時は、出来るだけサーラと一緒にいた。サーラも他の王族たちに、愛想を振りまいていた。
ただ、やはり我が国の貴族、特に令嬢たちがサーラの悪口を言っていた。さらに僕にすり寄り
「エイダン殿下、本当にお可哀そう。でも、私たちが側室として王家に輿入れいたしますので、ご安心ください。王妃様からもぜひと頼まれておりますので」
そう笑顔で迫られたのだ。母上め、令嬢たちになんて事を吹き込んでいるんだ。クソ、ちょっとサーラの事を悪く言いすぎたかな…僕は側室なんて、持つつもりはない。
明日にでも母上に、はっきりとそう告げないと!
そして、やっと披露宴が終わった。今日は初夜だ。僕は急いで自室に戻り、湯あみを済ませた。やっと今日、サーラを僕のものに出来る。きっとサーラは緊張しているだろうから、優しく優しく接しよう。
そんな思いで、夫婦の寝室に向かった。どうやらサーラはまだ来ていなかった。そうか、令嬢は準備に時間が掛かるもんな。
そう思い、サーラが来るのを待つ。でも、いつまでたってもサーラが来ない。一体どうなっているんだ!業を煮やした僕は、寝室と繋がっているサーラの部屋のドアを開けた。
「サーラ、どうしたんだい?恥ずかしがらなくてもいいんだよ」
そう声を掛けるが、部屋には誰もいなかった。と言うより、この部屋に誰かが入った形跡すらない。どういう事だ!体中から、怒りが沸き上がった。サーラは一体どこにいるんだ!
僕はすぐに外に出た。
「サーラがいない。今すぐサーラの為に付けたメイドをここに呼べ!」
「はい、かしこまりました!」
近くにいた護衛騎士に、すぐに指示を出す。すると、血相を変えてメイドが飛んできた。
「どうしてサーラが部屋にいないんだ。サーラをどこに連れて行った!」
メイドに強い口調で迫る。
「申し訳ございません…あの、王妃様の指示で…離宮にご案内しました…」
「離宮だと!どういう事だ。今すぐサーラの元に案内しろ!いいや、その前に母上だ!母上の元に行ってくる!」
完全に頭に血が上った僕は、そのまま母上の部屋に向かった。
「母上、一体どういうつもりですか!どうしてサーラを離宮に追いやったのですか?彼女は僕の大切な妻ですよ!」
「エイダン…一体どうしたの?そんな薄着で…だってあなた、あの女の事を嫌っていたじゃない。だから私は…」
「嫌いだって?僕がいつサーラを嫌いだと言いましたか?僕はサーラを誰よりも愛しています!」
「だってあなた…いつもあの子の事を、“我が儘で傲慢で本当に嫌になる”と言っていたじゃない…だから私は…」
「それはサーラを孤立させ、僕に依存させるために付いた嘘です!とにかくサーラにこれ以上酷い事をしないで下さい。これからは、サーラは僕の妻として、幸せに王宮で暮らすのですから」
「エイダン…あなた、何を言っているの?それじゃあ、サーラさんは…」
「あなたがサーラにした酷い仕打ち、僕は絶対に許さない!二度とサーラに近づかないで」
そう言い残し、母上の部屋を出た。
「さあ、今すぐサーラのいる場所に案内しろ!もちろん、一番いい部屋を提供しているのだろうな?」
「…それは…」
真っ青な顔をして立ち尽くすメイド。
「いいから早く案内してくれ!」
「かしこまりました。こちらです」
サーラ、今すぐ迎えに行くから待っていてくれ。
71
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
あなたの言うことが、すべて正しかったです
Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」
名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。
絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。
そして、運命の五年後。
リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。
*小説家になろうでも投稿中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる