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第5話:僕は取り返しのつかない事をしてしまった~エイダン視点~
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サーラの部屋を後にした僕は、呆然としたまま夫婦の寝室に戻ってきた。5人は寝られるであろう大きなベッドに腰を下ろす。
本来なら今日、愛するサーラを抱いていたはずなのに…どうしてこんな事になってしまったのだろう…
初めてサーラに会った時の事を思い出す。少し恥ずかしそうに、それでも嬉しそうな笑顔を見た時、絶対にこの子を幸せにすると誓った。僕はサーラの笑顔が好きだった。それなのに僕は、一体どこで間違えてしまったのだろう…
思い返してみれば、サーラはいつの間にか笑わなくなった。いつも怯えた表情で僕を見つめ、顔色を伺っていた。それなのに僕は、そんなサーラの変化を見て見ぬふりをした。サーラが孤独になればなるほど、誰かがサーラの悪口を言えば言うほど、なぜだが安心した。
そうする事で、サーラは僕に依存し、離れないと思い込んでいた。でも…
サーラは僕が思っている以上に、心に深い傷を負ったのだろう。よく考えてみれば、毎日嫌味を言われ続ける相手を、誰が好きになるだろう…サーラにとって、僕は依存する対象ではなく、嫌悪感すら覚える相手になっていたのだ。現にさっき触ろうとした時、全力で拒否された。
サーラはきっと離宮で、たった1人で生きて行こうとしているのだろう。それが絶望の中彼女が見つけ出した、唯一の安らぎ…
あんな囚人が生活するような狭い部屋を出ようとしないなんて、よほどの事なのだろう。
「僕はなんて事をしてしまったんだ…あの本にも、やりすぎは禁物と書いてあったのに…」
そう、僕は完全にやりすぎたのだ。それでもサーラは僕の妻だ。きっと時間をかけ、必死に謝れば許してくれるはず。そうだ、母上にも謝罪させよう。いいや…きっともう母上の顔なんて見たくもないだろう。
二度と母上には会わせない様にしないと。
やたら広くて冷たいベッドに入った。本当なら今日は、僕にとって最高の1日になるはずだったのに…
気が付くと涙が流れていた。このままサーラが僕を受け入れてくれなかったら…そう考えると、どうしようもない恐怖と絶望感が襲う。
結局僕はいたたまれなくなり、自室に戻り1人で眠りに付いたのであった。
翌日、1人寂しく食堂に向かう。本当ならサーラと一緒に朝食を食べる予定だったのに…
食堂に向かうと、両親がいた。
「あの…エイダン、サーラさんは…」
僕に話しかけてきたのは母上だ。
「サーラは離宮にいますよ。母上が本宮には二度と入るなと言ったそうですね。彼女はその言いつけを守り、二度と本宮には入らないと言っています。あんな囚人が入るような部屋に押し込めるなんて、本当にあなたは鬼だ!もう二度と、サーラには近づかないでください。あなたのせいで、サーラはどれほど傷ついたか!」
「止めなさい、エイダン。確かに王妃がしたことは、最低な事だ。息子の妻になる人間に対し、このような仕打ちをするなんて。でも、お前はどうなんだ?散々サーラ嬢の事を悪口く言い、彼女の評価を著しく落とした。サーラ嬢が孤立する原因を作り、彼女の心を傷つけたお前が責められる事か」
「あなた、止めて。私が悪いのよ。エイダンが可愛くて、彼女の事を知りもしようとせず、一方的にサーラさんに強く当たってしまった私が。とにかく、今日サーラさんのところに行って謝って来るわ。どうか本宮で生活してくれる様に、頼んでくる。もしもの時は、侯爵に頼んでみるわ」
「そんな事をしたら、余計にサーラが傷つく。そもそも、彼女はもう母上の顔も、侯爵や夫人の顔も見たくないと言っているのです。とにかく、これ以上彼女を傷つけるようなことは止めてくれ」
これ以上母上なんかに会わせられない。謝罪すると言っているが、実際何を考えているか分からない。母上の事だ、謝罪するなんて言いつつ、サーラに文句を言うに違いない。とにかく、母上は絶対にサーラに近づかせないようにしないと。
朝食を食べると、早速サーラのいる離宮へと向かった。こんな場所にサーラを押し込むなんて、やっぱり母上は鬼だ!再び母上に対する怒りがこみ上げてくる。
すると、昨日サーラを離宮へと案内したメイドが、部屋から出てくるではないか。あの女、昨日クビだと宣言したのに、まだ図々しくサーラの部屋に出入りしているのか!
「お前は昨日クビにしたメイドではないか!どうしてお前がサーラの部屋から出てきたんだ。まさか、またサーラに酷い事をしたのか?これ以上サーラに酷い事をするなら、国家反逆罪の罪にかけるぞ」
「申し訳ございません。私はただ…サーラ様にお食事を運んだだけでございます。どうかお許しを」
「食事だって!まさか毒でも盛ったのではないだろうな?母上の息のかかったメイドなど、信用できない」
「滅相もございません。私は本当に…」
「この女を連れていけ!二度とサーラの部屋に近づかせるな」
近くに控えていた護衛騎士に指示を出す。その時だった。
「お止めください!エイダン様。彼女は昨日の事を謝罪し、私に食事を運んできてくださったのです。それを責め立てるなんて。そもそも彼女は私の専属メイドです。どうか、彼女に酷い事をするのはお止めください」
「サーラ様」
部屋から出てきたのは、サーラだ。昨日メイドから酷い仕打ちを受けたにも関わらず、そのメイドを庇うなんて。
「あなたもごめんなさい。これからも、よろしくね」
「はい、ありがとうございます。サーラ様。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「という事ですので、エイダン様。私の専属メイドを虐めるのはお止めください。それとも、私への当てつけですか?あなた様はいつも、遠回しに私を虐めるのがお好きでしたものね」
「そんなつもりはなかったんだ。君、さっきは悪かったね。これからも、サーラの事を頼むよ」
急いでメイドに謝罪した。
「それでは、私はこれで」
そう言うと、バタンと扉を閉めてしまったサーラ。結局それ以上、彼女に会う事は出来なかった。
本来なら今日、愛するサーラを抱いていたはずなのに…どうしてこんな事になってしまったのだろう…
初めてサーラに会った時の事を思い出す。少し恥ずかしそうに、それでも嬉しそうな笑顔を見た時、絶対にこの子を幸せにすると誓った。僕はサーラの笑顔が好きだった。それなのに僕は、一体どこで間違えてしまったのだろう…
思い返してみれば、サーラはいつの間にか笑わなくなった。いつも怯えた表情で僕を見つめ、顔色を伺っていた。それなのに僕は、そんなサーラの変化を見て見ぬふりをした。サーラが孤独になればなるほど、誰かがサーラの悪口を言えば言うほど、なぜだが安心した。
そうする事で、サーラは僕に依存し、離れないと思い込んでいた。でも…
サーラは僕が思っている以上に、心に深い傷を負ったのだろう。よく考えてみれば、毎日嫌味を言われ続ける相手を、誰が好きになるだろう…サーラにとって、僕は依存する対象ではなく、嫌悪感すら覚える相手になっていたのだ。現にさっき触ろうとした時、全力で拒否された。
サーラはきっと離宮で、たった1人で生きて行こうとしているのだろう。それが絶望の中彼女が見つけ出した、唯一の安らぎ…
あんな囚人が生活するような狭い部屋を出ようとしないなんて、よほどの事なのだろう。
「僕はなんて事をしてしまったんだ…あの本にも、やりすぎは禁物と書いてあったのに…」
そう、僕は完全にやりすぎたのだ。それでもサーラは僕の妻だ。きっと時間をかけ、必死に謝れば許してくれるはず。そうだ、母上にも謝罪させよう。いいや…きっともう母上の顔なんて見たくもないだろう。
二度と母上には会わせない様にしないと。
やたら広くて冷たいベッドに入った。本当なら今日は、僕にとって最高の1日になるはずだったのに…
気が付くと涙が流れていた。このままサーラが僕を受け入れてくれなかったら…そう考えると、どうしようもない恐怖と絶望感が襲う。
結局僕はいたたまれなくなり、自室に戻り1人で眠りに付いたのであった。
翌日、1人寂しく食堂に向かう。本当ならサーラと一緒に朝食を食べる予定だったのに…
食堂に向かうと、両親がいた。
「あの…エイダン、サーラさんは…」
僕に話しかけてきたのは母上だ。
「サーラは離宮にいますよ。母上が本宮には二度と入るなと言ったそうですね。彼女はその言いつけを守り、二度と本宮には入らないと言っています。あんな囚人が入るような部屋に押し込めるなんて、本当にあなたは鬼だ!もう二度と、サーラには近づかないでください。あなたのせいで、サーラはどれほど傷ついたか!」
「止めなさい、エイダン。確かに王妃がしたことは、最低な事だ。息子の妻になる人間に対し、このような仕打ちをするなんて。でも、お前はどうなんだ?散々サーラ嬢の事を悪口く言い、彼女の評価を著しく落とした。サーラ嬢が孤立する原因を作り、彼女の心を傷つけたお前が責められる事か」
「あなた、止めて。私が悪いのよ。エイダンが可愛くて、彼女の事を知りもしようとせず、一方的にサーラさんに強く当たってしまった私が。とにかく、今日サーラさんのところに行って謝って来るわ。どうか本宮で生活してくれる様に、頼んでくる。もしもの時は、侯爵に頼んでみるわ」
「そんな事をしたら、余計にサーラが傷つく。そもそも、彼女はもう母上の顔も、侯爵や夫人の顔も見たくないと言っているのです。とにかく、これ以上彼女を傷つけるようなことは止めてくれ」
これ以上母上なんかに会わせられない。謝罪すると言っているが、実際何を考えているか分からない。母上の事だ、謝罪するなんて言いつつ、サーラに文句を言うに違いない。とにかく、母上は絶対にサーラに近づかせないようにしないと。
朝食を食べると、早速サーラのいる離宮へと向かった。こんな場所にサーラを押し込むなんて、やっぱり母上は鬼だ!再び母上に対する怒りがこみ上げてくる。
すると、昨日サーラを離宮へと案内したメイドが、部屋から出てくるではないか。あの女、昨日クビだと宣言したのに、まだ図々しくサーラの部屋に出入りしているのか!
「お前は昨日クビにしたメイドではないか!どうしてお前がサーラの部屋から出てきたんだ。まさか、またサーラに酷い事をしたのか?これ以上サーラに酷い事をするなら、国家反逆罪の罪にかけるぞ」
「申し訳ございません。私はただ…サーラ様にお食事を運んだだけでございます。どうかお許しを」
「食事だって!まさか毒でも盛ったのではないだろうな?母上の息のかかったメイドなど、信用できない」
「滅相もございません。私は本当に…」
「この女を連れていけ!二度とサーラの部屋に近づかせるな」
近くに控えていた護衛騎士に指示を出す。その時だった。
「お止めください!エイダン様。彼女は昨日の事を謝罪し、私に食事を運んできてくださったのです。それを責め立てるなんて。そもそも彼女は私の専属メイドです。どうか、彼女に酷い事をするのはお止めください」
「サーラ様」
部屋から出てきたのは、サーラだ。昨日メイドから酷い仕打ちを受けたにも関わらず、そのメイドを庇うなんて。
「あなたもごめんなさい。これからも、よろしくね」
「はい、ありがとうございます。サーラ様。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「という事ですので、エイダン様。私の専属メイドを虐めるのはお止めください。それとも、私への当てつけですか?あなた様はいつも、遠回しに私を虐めるのがお好きでしたものね」
「そんなつもりはなかったんだ。君、さっきは悪かったね。これからも、サーラの事を頼むよ」
急いでメイドに謝罪した。
「それでは、私はこれで」
そう言うと、バタンと扉を閉めてしまったサーラ。結局それ以上、彼女に会う事は出来なかった。
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