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第6話:離宮での生活は快適です
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翌日目が覚めると、昨日私をここに連れて来たメイドが待機していた。
「サーラ様、いいえ、王太子妃様、おはようございます。昨日は数々のご無礼、お詫び申し上げます。本当に、申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げるメイド。
「いいのよ、私はずっとこんな扱いを受けていたから。気にしないで。それに、王太子妃様だなんて、柄でもないわ。どうかサーラと呼んで頂戴」
メイドに向かってそう伝えた。散々メイドたちからも雑に扱われていたのだ。今更どうって事はない。そう思って伝えたのだが、なぜか大きく目を見開き固まっていた。でもすぐに我に返ったのか
「申し訳ございません。サーラ様。早速お着替えを」
そう言ってクローゼットを開けたメイド。
「申し訳ございません。今すぐドレスを準備させていただきます。少々お待ちください」
「あっ、いいのよ。ある服を着るから。そうね、今日はこのワンピースを着ようかしら?ごめんなさい、両親の目を盗んで持ってきた洋服だから、量が少なくて。でも、2~3着あるし、なんとかなるでしょう」
私は王妃としての役割を果たすつもりはない、いわば厄介者だ。最低限生きていけるものだけあればいい。贅沢は出来なくても、暴言を吐かれたり暴力を振るわれないだけ幸せだ。
またもや固まっているメイド。
「サーラ様は、お噂と全然違うのですね…て、大変失礼いたしました」
「いいのよ。私は皆から嫌われているのは事実ですもの。気にしないで」
そう、私は嫌われ者だ。どこに行っても暴言を吐かれ、皆から嫌な顔をされる。でも、ここにいれば、もうそんな辛い思いをしなくてもいい。それだけで、今は幸せなのだ。
着替えが終わると、すぐに食事を持ってきてくれた。
「ありがとう、あなたはこのまま私のお世話をしてくれるの?」
「はい、その予定でございます」
「そう、ごめんなさいね。嫌な役を押し付けられたのね。そうだわ、あなたの手を煩わせないためにも、着替えや体を洗い方などを教えてくれないかしら?そうすれば、あなたもここに来る回数を減らすことが出来る。それから、平民の暮らしや女性の仕事に関する本を図書館から借りてきて欲しいの。私、本宮への立ち入りは禁止されているでしょう…だから…その…」
さすがに色々と教えろ、本を借りてこいだなんて、ちょっと図々しかったかしら?そう思ったが、誰かに頼まないと仕方がない事だ。どうせ私は皆から嫌われている。今更もうどう思われようと、問題ない。
「嫌な役だなんて、そのような事はありませんわ!わかりました…図書館から本を借りて参ります。でも、あなた様のお世話はさせていただきますわ。それが私の仕事ですので」
仕事か…
「分かったわ…でも、本当に私には気を遣わなくていいのよ…」
「気など使っておりません。どうか、サーラ様こそお気遣いなく。それでは、まずは朝食のご準備をさせていただきます。その後、本を借りてきますね」
そう言うと、手際よくテーブルの上に並べてくれた。とても美味しそうなお料理だ。嫌われ者の私にも、こんな美味しそうなお料理を準備してくれるなんて。
「それでは私は、本を借りて参ります。どうかごゆっくりお食事をお召し上がりください」
ペコリと頭を下げ、部屋から出て行った。でも、なぜか部屋の外が騒がしい。一体どうしたのかしら?気になって覗いてみると、なんとメイドを取り押さえようとしているエイダン様の姿が。本当に開いた口が塞がらないとは、このことだ。
すぐにエイダン様に彼女を放す様伝えた。本当にこの男は、どうしようもない男ね。もういっその事、離縁してくれないかしら?
でも、離縁したらこの離宮から追い出される。もちろん、実家にも帰れない。という事は、野垂れ死ぬのか。それはちょっと嫌だわ…そのためにも、色々と勉強をしないとね。
コンコン
「サーラ様、本を借りて参りました。この様な本でよろしいでしょうか?」
早速メイドが本を持ってきてくれた。
「ありがとう。こんなに沢山の本を持ってきてくれたのね。重かったでしょう?本当にありがとう」
「いいえ、これくらい大したことはありません」
「そういえば、まだあなたの名前を聞いていなかったわね。名前、教えてもらってもいいかしら?」
「はい、リサと申します。どうぞお見知りおきを」
「リサね。沢山の本をありがとう。もう下がっていいわよ」
「わかりました。何かありましたら、すぐにお呼びください」
そう言うと、リサは去って行った。彼女、とてもいい人ね。まさか王宮に来て、あんな素敵なメイドが付くなんて。もしかして、これも何かの策略かしら?たとえそうであっても、別にいいわ。
早速リサが借りてきてくれた本を読む。きっとどれがいいのか分からなかったのだろう。10冊近く持ってきてくれている。
なるほど、平民はこうやって暮らしているのか。掃除や洗濯、何でもこなすのね。それにしても、色々な道具があるのね。宝石やドレスも売れるのか。しまった、こんな事なら宝石を持ってこればよかった。もし離縁した時に、宝石があればしばらくは生きていけたのに…
でも、全て侯爵家に置いて来てしまった。
ふと本を見ると、森には食べられる木の実があるらしい。へ~面白そうね。目の前には立派な森がある。早速散策に出掛けないと。
「サーラ様、いいえ、王太子妃様、おはようございます。昨日は数々のご無礼、お詫び申し上げます。本当に、申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げるメイド。
「いいのよ、私はずっとこんな扱いを受けていたから。気にしないで。それに、王太子妃様だなんて、柄でもないわ。どうかサーラと呼んで頂戴」
メイドに向かってそう伝えた。散々メイドたちからも雑に扱われていたのだ。今更どうって事はない。そう思って伝えたのだが、なぜか大きく目を見開き固まっていた。でもすぐに我に返ったのか
「申し訳ございません。サーラ様。早速お着替えを」
そう言ってクローゼットを開けたメイド。
「申し訳ございません。今すぐドレスを準備させていただきます。少々お待ちください」
「あっ、いいのよ。ある服を着るから。そうね、今日はこのワンピースを着ようかしら?ごめんなさい、両親の目を盗んで持ってきた洋服だから、量が少なくて。でも、2~3着あるし、なんとかなるでしょう」
私は王妃としての役割を果たすつもりはない、いわば厄介者だ。最低限生きていけるものだけあればいい。贅沢は出来なくても、暴言を吐かれたり暴力を振るわれないだけ幸せだ。
またもや固まっているメイド。
「サーラ様は、お噂と全然違うのですね…て、大変失礼いたしました」
「いいのよ。私は皆から嫌われているのは事実ですもの。気にしないで」
そう、私は嫌われ者だ。どこに行っても暴言を吐かれ、皆から嫌な顔をされる。でも、ここにいれば、もうそんな辛い思いをしなくてもいい。それだけで、今は幸せなのだ。
着替えが終わると、すぐに食事を持ってきてくれた。
「ありがとう、あなたはこのまま私のお世話をしてくれるの?」
「はい、その予定でございます」
「そう、ごめんなさいね。嫌な役を押し付けられたのね。そうだわ、あなたの手を煩わせないためにも、着替えや体を洗い方などを教えてくれないかしら?そうすれば、あなたもここに来る回数を減らすことが出来る。それから、平民の暮らしや女性の仕事に関する本を図書館から借りてきて欲しいの。私、本宮への立ち入りは禁止されているでしょう…だから…その…」
さすがに色々と教えろ、本を借りてこいだなんて、ちょっと図々しかったかしら?そう思ったが、誰かに頼まないと仕方がない事だ。どうせ私は皆から嫌われている。今更もうどう思われようと、問題ない。
「嫌な役だなんて、そのような事はありませんわ!わかりました…図書館から本を借りて参ります。でも、あなた様のお世話はさせていただきますわ。それが私の仕事ですので」
仕事か…
「分かったわ…でも、本当に私には気を遣わなくていいのよ…」
「気など使っておりません。どうか、サーラ様こそお気遣いなく。それでは、まずは朝食のご準備をさせていただきます。その後、本を借りてきますね」
そう言うと、手際よくテーブルの上に並べてくれた。とても美味しそうなお料理だ。嫌われ者の私にも、こんな美味しそうなお料理を準備してくれるなんて。
「それでは私は、本を借りて参ります。どうかごゆっくりお食事をお召し上がりください」
ペコリと頭を下げ、部屋から出て行った。でも、なぜか部屋の外が騒がしい。一体どうしたのかしら?気になって覗いてみると、なんとメイドを取り押さえようとしているエイダン様の姿が。本当に開いた口が塞がらないとは、このことだ。
すぐにエイダン様に彼女を放す様伝えた。本当にこの男は、どうしようもない男ね。もういっその事、離縁してくれないかしら?
でも、離縁したらこの離宮から追い出される。もちろん、実家にも帰れない。という事は、野垂れ死ぬのか。それはちょっと嫌だわ…そのためにも、色々と勉強をしないとね。
コンコン
「サーラ様、本を借りて参りました。この様な本でよろしいでしょうか?」
早速メイドが本を持ってきてくれた。
「ありがとう。こんなに沢山の本を持ってきてくれたのね。重かったでしょう?本当にありがとう」
「いいえ、これくらい大したことはありません」
「そういえば、まだあなたの名前を聞いていなかったわね。名前、教えてもらってもいいかしら?」
「はい、リサと申します。どうぞお見知りおきを」
「リサね。沢山の本をありがとう。もう下がっていいわよ」
「わかりました。何かありましたら、すぐにお呼びください」
そう言うと、リサは去って行った。彼女、とてもいい人ね。まさか王宮に来て、あんな素敵なメイドが付くなんて。もしかして、これも何かの策略かしら?たとえそうであっても、別にいいわ。
早速リサが借りてきてくれた本を読む。きっとどれがいいのか分からなかったのだろう。10冊近く持ってきてくれている。
なるほど、平民はこうやって暮らしているのか。掃除や洗濯、何でもこなすのね。それにしても、色々な道具があるのね。宝石やドレスも売れるのか。しまった、こんな事なら宝石を持ってこればよかった。もし離縁した時に、宝石があればしばらくは生きていけたのに…
でも、全て侯爵家に置いて来てしまった。
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