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第10話:僕に与えられた時間~エイダン視点~
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そんなある日、元気のない僕を母上が訪ねて来た。隣には、サーラの専属メイドもいる。
「エイダン、サーラさんの事を色々と調べたの。あの子、家でも相当冷遇されていた様ね」
「ええ、知っています。サーラの父親は、サーラの事を道具としてしか見ていませんでしたから」
「食事もろくに与えられていなかったそうよ。だからあの子、食が細いんですって。それにとても謙虚で、少しリサが優しくしただけで、とても嬉しそうにするらしいわ。ねえ、リサ」
「はい、サーラ様は家族からはもちろん、全ての人から虐げられてきたそうです。サーラ様はいつも“嫌われ者の私に優しくしてくれてありがとう。イヤな事があったら、すぐに教えてね”と、私に伝えてきます。いつも人の顔色を伺って生活されてきたのでしょう。私にも娘がおります。サーラ様の姿を見ていると、どうしても娘と重なってしまい…胸が苦しくて…」
そう言うと、泣き崩れてしまったメイド。
「侯爵が娘を利用しようとしている事は知っていたわ。でもね、まさかここまで酷かったなんて。エイダン、サーラさんはあなたと出会った時、既に孤独だった。それなのに、婚約者でもあるあなたから酷い仕打ちをされたら、彼女はどう思うかしら?て、私が言える立場ではないわね。私も、散々あなた可愛さに、彼女を虐めていたのだから…」
そう言うと、悲しそうに笑った母上。
「エイダン、私たちはサーラさんに、謝っても謝り切れない程、酷い事をした。ただでさえ孤独だった彼女を、さらに孤独に追いやった。私たちはサーラさんの心を、完全に壊してしまったのよ。私ね、この前、こっそりとサーラさんの様子を見に行ったの。あの子、嬉しそうに笑っていたわ。いつも無表情で、何を考えている分からなかったあの子が。その笑顔を見た瞬間、自分がどれほど酷い事をして来たのか、改めて自分の行いを悔いた。でも、悔いたところで過去には戻れないの」
そう言うと、母上は僕の方を真っすぐに見つめた。
「エイダン、サーラさんの事は諦めなさい。リサの話しを聞いている限り、サーラさんにとってあなたは、苦痛以外何物でもないの。あなたが7年ものあいだ、彼女にして来たことを考えれば、当然の事よね。それでも、あなたは王太子なの。いつまでも令嬢の事だけを考えている訳には行かないわ。あなたは自分の子供をつくらないといけないの。わかるわよね。それに、王妃はこう見えて、色々と忙しいの。王宮主催のパーティーには、参加してもらわないといけないし」
「そんな事は分かっています。でも僕は…」
「あなたがサーラさんに依存している事は知っています。私も一人息子でもあるエイダンが可愛いわ。でもね、可愛いだけではどうしようもないの。ずっと王太子妃が表舞台に出てこないという訳にもいかないのよ。とにかく、1年待ちます。1年の間に、サーラさんにきちんと謝罪し、彼女自身がこのままあなたと共に歩んでいってもいいと言ってくれたら、エイダンとサーラさんの婚姻継続を認めましょう。でも、サーラさんがあなたを拒否した時は、後妻または側室を招き入れます」
「母上、後妻や側室なんか招き入れても、僕はそんな女、絶対に抱きません」
「エイダン、あなたは王太子なのよ。そんな我が儘は通用しないの。私だって、あなたには好きな令嬢と幸せになって欲しい。でも…私たちが彼女にした仕打ちを考えると…これ以上、サーラさんに負担はかけられないわ。どうかわかって頂戴」
母上のいう事は最もだ…1年か…
「分かりました…でも、僕はサーラ以外を愛する事なんてできません。もし1年後、サーラの許しを得る事が出来なければ、僕を廃嫡してください…」
「エイダン、あなたって人は…」
「だって僕は、サーラ以外抱く事なんて出来ないのだから。王太子が子を成せないのなら、別の人間が王太子になるべきでしょう?ただ、僕が廃嫡した後も、どうかサーラは離宮においてあげて下さい。彼女はきっと、行く場所がないだろうから」
「…わかったわ…陛下には、そう伝えておきましょう」
「母上、そんな悲しそうな顔をしないで下さい。僕は、サーラを諦めるつもりはありません。この1年、やれる事をやってみますから…」
もちろん、サーラが許してくれるかどうかは分からない。僕に触れられるくらいなら、死を選ぶとまで言ったのだから。でも…どうしても諦めきれないんだ。
だから僕はこの1年、出来る事は何でもしようと思っている。
たとえ僕の気持ちが叶う事がなかったとしても…
「エイダン、サーラさんの事を色々と調べたの。あの子、家でも相当冷遇されていた様ね」
「ええ、知っています。サーラの父親は、サーラの事を道具としてしか見ていませんでしたから」
「食事もろくに与えられていなかったそうよ。だからあの子、食が細いんですって。それにとても謙虚で、少しリサが優しくしただけで、とても嬉しそうにするらしいわ。ねえ、リサ」
「はい、サーラ様は家族からはもちろん、全ての人から虐げられてきたそうです。サーラ様はいつも“嫌われ者の私に優しくしてくれてありがとう。イヤな事があったら、すぐに教えてね”と、私に伝えてきます。いつも人の顔色を伺って生活されてきたのでしょう。私にも娘がおります。サーラ様の姿を見ていると、どうしても娘と重なってしまい…胸が苦しくて…」
そう言うと、泣き崩れてしまったメイド。
「侯爵が娘を利用しようとしている事は知っていたわ。でもね、まさかここまで酷かったなんて。エイダン、サーラさんはあなたと出会った時、既に孤独だった。それなのに、婚約者でもあるあなたから酷い仕打ちをされたら、彼女はどう思うかしら?て、私が言える立場ではないわね。私も、散々あなた可愛さに、彼女を虐めていたのだから…」
そう言うと、悲しそうに笑った母上。
「エイダン、私たちはサーラさんに、謝っても謝り切れない程、酷い事をした。ただでさえ孤独だった彼女を、さらに孤独に追いやった。私たちはサーラさんの心を、完全に壊してしまったのよ。私ね、この前、こっそりとサーラさんの様子を見に行ったの。あの子、嬉しそうに笑っていたわ。いつも無表情で、何を考えている分からなかったあの子が。その笑顔を見た瞬間、自分がどれほど酷い事をして来たのか、改めて自分の行いを悔いた。でも、悔いたところで過去には戻れないの」
そう言うと、母上は僕の方を真っすぐに見つめた。
「エイダン、サーラさんの事は諦めなさい。リサの話しを聞いている限り、サーラさんにとってあなたは、苦痛以外何物でもないの。あなたが7年ものあいだ、彼女にして来たことを考えれば、当然の事よね。それでも、あなたは王太子なの。いつまでも令嬢の事だけを考えている訳には行かないわ。あなたは自分の子供をつくらないといけないの。わかるわよね。それに、王妃はこう見えて、色々と忙しいの。王宮主催のパーティーには、参加してもらわないといけないし」
「そんな事は分かっています。でも僕は…」
「あなたがサーラさんに依存している事は知っています。私も一人息子でもあるエイダンが可愛いわ。でもね、可愛いだけではどうしようもないの。ずっと王太子妃が表舞台に出てこないという訳にもいかないのよ。とにかく、1年待ちます。1年の間に、サーラさんにきちんと謝罪し、彼女自身がこのままあなたと共に歩んでいってもいいと言ってくれたら、エイダンとサーラさんの婚姻継続を認めましょう。でも、サーラさんがあなたを拒否した時は、後妻または側室を招き入れます」
「母上、後妻や側室なんか招き入れても、僕はそんな女、絶対に抱きません」
「エイダン、あなたは王太子なのよ。そんな我が儘は通用しないの。私だって、あなたには好きな令嬢と幸せになって欲しい。でも…私たちが彼女にした仕打ちを考えると…これ以上、サーラさんに負担はかけられないわ。どうかわかって頂戴」
母上のいう事は最もだ…1年か…
「分かりました…でも、僕はサーラ以外を愛する事なんてできません。もし1年後、サーラの許しを得る事が出来なければ、僕を廃嫡してください…」
「エイダン、あなたって人は…」
「だって僕は、サーラ以外抱く事なんて出来ないのだから。王太子が子を成せないのなら、別の人間が王太子になるべきでしょう?ただ、僕が廃嫡した後も、どうかサーラは離宮においてあげて下さい。彼女はきっと、行く場所がないだろうから」
「…わかったわ…陛下には、そう伝えておきましょう」
「母上、そんな悲しそうな顔をしないで下さい。僕は、サーラを諦めるつもりはありません。この1年、やれる事をやってみますから…」
もちろん、サーラが許してくれるかどうかは分からない。僕に触れられるくらいなら、死を選ぶとまで言ったのだから。でも…どうしても諦めきれないんだ。
だから僕はこの1年、出来る事は何でもしようと思っている。
たとえ僕の気持ちが叶う事がなかったとしても…
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