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第16話:寒い季節がやって来ました
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陛下の誕生日から、2ヶ月が過ぎた。あの後、私に暴言を吐いていた令嬢たちは、皆まとめて修道院に送られたらしい。
王太子でもあるエイダン様と王妃様から、厳しく注意を受けたのだ。さすがの各家も、そのままお咎めなしとはいかなかったらしい。
エイダン様は
「もう君を虐める貴族はいなくなったよ。でも、彼女たちだけが悪い訳ではないと思っている…もとはと言えば、僕の行いのせいだから…」
そう言っていた。結婚して以降、エイダン様は本当に人が変わった。常に自分の行いのせいだと、反省している様だ。
そしてこの2ヶ月の間に、一気に寒くなった。日課になっていた森も、今は行っていない。そう、ついに寒い寒い冬がやって来た。といっても、この国の冬は短く、2ヶ月程度で終わってしまう。それでも一気に冷えるため、防寒対策は必要だが…
「サーラ、さすがに離宮は寒すぎる。あそこは暖炉がない。このままだと君が凍え死んでしまう。どうか本宮で生活してくれないだろうか?」
すっかりエイダン様と食事をするのが日課になった私たち。パーティー後は、本宮で食事をする様になった。ただ、私の住む場所は離宮のままなのだ。
「私はあの離宮が好きなのです。あそこは私の居場所なので。それに、簡易の暖炉も作ってもらいましたし」
私の為に簡単ではあるが、暖炉も作ってもらった。そのせいで、部屋が随分狭くなってしまったが、それは仕方ない事。
「それはそうだが…あんな小さな部屋に、暖炉だなんて…」
まだ心配そうなエイダン様。彼が私の為に色々としてくれているのは知っている。いい加減エイダン様を受け入れるべきなのだろう。それでもやっぱり、私はまだ心のどこかで、エイダン様を許しきれていないのだ。
だから、どうしても本宮で生活する決断が出来ない。自分でも、こんなに頑固な性格だったかしら?と思うぐらい、頑なになっている。
それでも私が離宮で過ごすという事は、リサを含め護衛騎士たちも過酷な現場で仕事をさせてしまっている事も理解している。
分かってはいるが、どうしても離宮から出る事が出来ないのだ。
今日も夕食を本宮で食べた後、離宮へと戻る。
「エイダン様、外はかなり冷えます。私はここで大丈夫ですわ」
食後、いつも離宮まで送ってくれるエイダン様。今日もいつもの様に離宮まで送ってくれようとしているのだ。
「いいや、僕は少しでもサーラと一緒にいたいから。それにして、今日は特に冷える。本当に君が凍えないか、心配だよ。今日だけでも、こっちに泊まらないかい?」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、離宮に戻ります」
そう伝え、離宮に向かって歩き出した。頬を突き刺すような寒さ。ただ天気はいいので、綺麗な星が出ていた。それにしても寒い。
「サーラ、風邪をひくと大変だ。これを」
私の首に、エイダン様がストールを巻いてくれた。すっかり別人の様に優しくなったエイダン様。彼の優しさが、少しずつ私の心を溶かしていく。でも…
「ありがとうございます。でも、エイダン様が風邪をひいてしまっては大変ですわ」
そう言ってエイダン様に返してしまった。どうやら私は、まだ素直になれない様だ。離宮に着くと、私の為に既に暖炉に火が灯されていた。
「それじゃあサーラ、また明日の朝迎えに来るからね」
「自分で本宮まで行けますので、大丈夫ですわ。それでは、おやすみなさい」
そう伝え、扉を閉める。さっきのはさすがに感じが悪かったかしら…
その後、リサに手伝ってもらいながら湯あみを済ませ、ベッドに入った。
「サーラ様、それでは私はこれで失礼します」
「リサ、今日は恐ろしく冷える様だから、護衛騎士もあなたも、隣の離宮で休んで頂戴。エイダン様には話してあるから」
「ありがとうございます。殿下からも、そう指示を頂いておりますので、その様にさせていただきます。もし何かありましたら、この鐘を鳴らしていただきましたら、すぐに飛んで参りますので」
「ええ、ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ、サーラ様」
リサが出ていくのを見届け、眠りに付こうと思ったのだが…今日は一段と寒くて、眠れない。ダメだわ。やっぱり寒い…
寝るときは必ず暖炉の火を消すように言われている。実際、リサも消していった。でも…
「少しくらいならいいかしら?」
そんな思いから、暖炉の火をつける事にした。確かリサは、いつもこうやってつけていたわね。よし、上手く付いたわ。あぁ、温かい…
そのまま暖炉の近くにくるまり、眠りに付いたのだった。
「…様!サーラ様!」
どこかで私を呼ぶ声が…て、何か物凄く煙臭いのだが…
目を覚ますと、部屋中が煙で覆われていた。しまった…暖炉の火をつけたまま寝たから、燃え広がったんだわ…
この離宮は木材で出来ている為、きっと一気に燃え広がったのだろう…
「ゴホゴホ…ぐる…しい…」
煙が凄すぎて全く何も見えない。これじゃあ外に出られないわ…
こんな狭い部屋で暖炉なんてやっていたから悪いんだわ…
エイダン様のいう事を聞いておけば、こんな事にはならなかったのに…
気が付くと瞳から涙が溢れていた。私、このまま死ぬの?エイダン様、悲しむかしら?リサや護衛騎士が、罪に問われたりしないかしら?
私が変な意地を張っていたからいけないのね…
もっと素直になっていれば…
そんな事を考えながら、そのまま私は意識を手放したのであった。
王太子でもあるエイダン様と王妃様から、厳しく注意を受けたのだ。さすがの各家も、そのままお咎めなしとはいかなかったらしい。
エイダン様は
「もう君を虐める貴族はいなくなったよ。でも、彼女たちだけが悪い訳ではないと思っている…もとはと言えば、僕の行いのせいだから…」
そう言っていた。結婚して以降、エイダン様は本当に人が変わった。常に自分の行いのせいだと、反省している様だ。
そしてこの2ヶ月の間に、一気に寒くなった。日課になっていた森も、今は行っていない。そう、ついに寒い寒い冬がやって来た。といっても、この国の冬は短く、2ヶ月程度で終わってしまう。それでも一気に冷えるため、防寒対策は必要だが…
「サーラ、さすがに離宮は寒すぎる。あそこは暖炉がない。このままだと君が凍え死んでしまう。どうか本宮で生活してくれないだろうか?」
すっかりエイダン様と食事をするのが日課になった私たち。パーティー後は、本宮で食事をする様になった。ただ、私の住む場所は離宮のままなのだ。
「私はあの離宮が好きなのです。あそこは私の居場所なので。それに、簡易の暖炉も作ってもらいましたし」
私の為に簡単ではあるが、暖炉も作ってもらった。そのせいで、部屋が随分狭くなってしまったが、それは仕方ない事。
「それはそうだが…あんな小さな部屋に、暖炉だなんて…」
まだ心配そうなエイダン様。彼が私の為に色々としてくれているのは知っている。いい加減エイダン様を受け入れるべきなのだろう。それでもやっぱり、私はまだ心のどこかで、エイダン様を許しきれていないのだ。
だから、どうしても本宮で生活する決断が出来ない。自分でも、こんなに頑固な性格だったかしら?と思うぐらい、頑なになっている。
それでも私が離宮で過ごすという事は、リサを含め護衛騎士たちも過酷な現場で仕事をさせてしまっている事も理解している。
分かってはいるが、どうしても離宮から出る事が出来ないのだ。
今日も夕食を本宮で食べた後、離宮へと戻る。
「エイダン様、外はかなり冷えます。私はここで大丈夫ですわ」
食後、いつも離宮まで送ってくれるエイダン様。今日もいつもの様に離宮まで送ってくれようとしているのだ。
「いいや、僕は少しでもサーラと一緒にいたいから。それにして、今日は特に冷える。本当に君が凍えないか、心配だよ。今日だけでも、こっちに泊まらないかい?」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、離宮に戻ります」
そう伝え、離宮に向かって歩き出した。頬を突き刺すような寒さ。ただ天気はいいので、綺麗な星が出ていた。それにしても寒い。
「サーラ、風邪をひくと大変だ。これを」
私の首に、エイダン様がストールを巻いてくれた。すっかり別人の様に優しくなったエイダン様。彼の優しさが、少しずつ私の心を溶かしていく。でも…
「ありがとうございます。でも、エイダン様が風邪をひいてしまっては大変ですわ」
そう言ってエイダン様に返してしまった。どうやら私は、まだ素直になれない様だ。離宮に着くと、私の為に既に暖炉に火が灯されていた。
「それじゃあサーラ、また明日の朝迎えに来るからね」
「自分で本宮まで行けますので、大丈夫ですわ。それでは、おやすみなさい」
そう伝え、扉を閉める。さっきのはさすがに感じが悪かったかしら…
その後、リサに手伝ってもらいながら湯あみを済ませ、ベッドに入った。
「サーラ様、それでは私はこれで失礼します」
「リサ、今日は恐ろしく冷える様だから、護衛騎士もあなたも、隣の離宮で休んで頂戴。エイダン様には話してあるから」
「ありがとうございます。殿下からも、そう指示を頂いておりますので、その様にさせていただきます。もし何かありましたら、この鐘を鳴らしていただきましたら、すぐに飛んで参りますので」
「ええ、ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ、サーラ様」
リサが出ていくのを見届け、眠りに付こうと思ったのだが…今日は一段と寒くて、眠れない。ダメだわ。やっぱり寒い…
寝るときは必ず暖炉の火を消すように言われている。実際、リサも消していった。でも…
「少しくらいならいいかしら?」
そんな思いから、暖炉の火をつける事にした。確かリサは、いつもこうやってつけていたわね。よし、上手く付いたわ。あぁ、温かい…
そのまま暖炉の近くにくるまり、眠りに付いたのだった。
「…様!サーラ様!」
どこかで私を呼ぶ声が…て、何か物凄く煙臭いのだが…
目を覚ますと、部屋中が煙で覆われていた。しまった…暖炉の火をつけたまま寝たから、燃え広がったんだわ…
この離宮は木材で出来ている為、きっと一気に燃え広がったのだろう…
「ゴホゴホ…ぐる…しい…」
煙が凄すぎて全く何も見えない。これじゃあ外に出られないわ…
こんな狭い部屋で暖炉なんてやっていたから悪いんだわ…
エイダン様のいう事を聞いておけば、こんな事にはならなかったのに…
気が付くと瞳から涙が溢れていた。私、このまま死ぬの?エイダン様、悲しむかしら?リサや護衛騎士が、罪に問われたりしないかしら?
私が変な意地を張っていたからいけないのね…
もっと素直になっていれば…
そんな事を考えながら、そのまま私は意識を手放したのであった。
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