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第17話:サーラが…~エイダン視点~
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「王太子殿下、大変です。サーラ様のいらっしゃる離宮が…」
深夜、血相を変えた護衛騎士が僕の部屋へとやって来た。
「サーラがいる離宮がどうしたんだ?一体何があった?」
「私にもよく分からないのですが、サーラ様付きの騎士が血相を変えてやって来まして。今医師が向かっております」
「何だって。医師だと!」
きっとサーラの身に何かあったんだ。とにかく急いで離宮に向かわないと!そのままベッドから飛び起き、離宮へと向かう。
「王太子殿下、羽織物を…」
後ろで護衛騎士が叫んでいるが、そんな事どうでもいい。とにかく、サーラの元に向かわないと。医師が向かったという事は、サーラの身に何かあったのか?今日は一段と冷える。もしかして、熱でも出したのか?クソ、こんな事なら、やっぱり今日は本宮に泊まらせるんだった!
とにかく、早く離宮に向かわないと。
凍てつく寒さの中、必死に走った。寒さからか、思う様に足が動かない。こんな時に、僕の足はどうなっているんだ。
それでもなんとか走り、離宮が見えてきた。
「殿下!サーラ様が…」
血相を変えてやって来た護衛騎士。顔や服が汚れている。それに、焼け焦げた臭いもする。
「一体何があったんだ!サーラはどこにいるんだ。それにこの臭い…もしかして、火事か?」
「どうやらサーラ様は寒さから、自分で暖炉に火をつけた様でして…ただうまく換気が出来ていなかった様で、部屋中煙に包まれました。今隣の建屋で、治療を受けております。こちらです。
護衛騎士に連れられ、隣の建屋に向かう。
そこにはぐったりとしたサーラを治療する医師たちと、隣で泣き崩れているサーラの専属メイドの姿が。
「サーラ!」
急いでサーラの元に向かい抱きかかえるが、意識がないのかぐったりしている。顔も真っ青だ…ところどころ、服や顔が汚れている。
どうしてこんな事に…
「殿下、今治療中です。どうかサーラ様から離れて下さい!非常に危険な状態です。とにかく、治療に専念させて下さい」
僕からサーラを引き離すと、再び治療を始めた医師たち。
今非常に危険な状態と言ったよな…
そんな…
目の前が真っ暗になる。もしかしたら僕は、本当の意味でサーラを失うかもしれないのだ。鈍器で殴られたような衝撃が僕を襲う。
「殿下、ここは非常に冷えます。どうか羽織物を…」
僕に羽織物を掛けようとする護衛騎士。そんな護衛騎士を振り払い、サーラに近づく。
そして、そっと手を握った。
その手は、とても冷たかった。
「サーラ、ごめんね。僕があのまま君を返したばかりに…寒かったんだよね…だから、暖炉に火をつけたのだろう?そもそも僕が、君を大切にしていれば…あんな狭くて薄暗い場所で生活する事もなかったのに…サーラ、頼む。僕の事を好きになってくれなくてもいい。ただ君が生きているだけで、僕は幸せなんだ。たとえ一生結ばれなくても…君が生きていてくれたら…だから頼む。目を覚ましてくれ…お願いだ…」
気が付くと、ポロポロと涙が溢れ出ていた。僕の隣で、必死に医師たちが治療を続けている。ふとサーラの顔を見ると、ススで汚れていた。可哀そうに…
僕の寝間着の裾で、汚れを取ってあげた。こうやって見ると、サーラはまだ幼いな。サーラの寝顔、初めて見た…
やっぱり君は、誰よりも綺麗だ…
「サーラ、お願いだ。目を覚まして…」
何度も何度もサーラに話しかける。
その時だった。
握っていた手が、動いた気がした。
「サーラ!サーラ」
何度も名前を呼ぶ。すると、ゆっくりと瞼が上がり、赤い瞳と目が合った。
「エイダン…さま…」
「サーラ、よかった。本当によかった」
そのままサーラを強く抱きしめた。よかった、生きている。サーラ!サーラ!再び溢れ出す涙を、抑える事が出来なかった。
その時だった。
サーラが僕に向かって、ほほ笑んでくれたのだ。その微笑は、今まで見たどんな微笑よりも美しかった。そして、ゆっくりと瞳を閉じたのだ。
「サーラ?どうして瞳を閉じるんだい?頼む、目を開けてくれ」
必死に訴えるが、瞼が持ち上がる事はない。
「サーラ!サーラ、嫌だ。僕を残して逝かないでくれ。頼む!サーラ」
嫌だ!頼む、目を開けてくれ!サーラ!!
「殿下、落ち着いて下さい。きっと薬が効いてきたのでしょう。もう大丈夫ですよ」
「大丈夫という事は、助かったという事か?」
「はい、もちろんです」
にっこり笑った医者。
よかった。でも、それならそれで、もっと早く教えて欲しかった。今ので僕の寿命は、10年は縮まった。
ホッとしたところで、急に寒さが襲って来た。この部屋、めちゃくちゃ寒いな。
「この部屋は寒すぎる。こんなところにサーラを寝かしていくなんて可哀そうだ。今すぐ本宮にあるサーラの部屋に運ぼう」
「それでしたら、私がお運びいたします」
護衛騎士が近づいてきたのだが…
「いいや、僕が運ぶよ。サーラは僕の大切な妻だからね」
毛布でサーラをくるむと、そのまま抱きかかえた。サーラに出来るだけ寒い思いをして欲しくなくて、速足で歩く。
サーラ、君が生きていてくれて本当によかった。もう二度とこんな事が起こらないように、あの離宮は取り壊そう。
でも…もしどうしても離宮で生活したいと訴えたら、その時は…サーラの思う通りにさせてあげよう。僕はサーラが元気に生きていてくれるだけで、幸せなのだから…
深夜、血相を変えた護衛騎士が僕の部屋へとやって来た。
「サーラがいる離宮がどうしたんだ?一体何があった?」
「私にもよく分からないのですが、サーラ様付きの騎士が血相を変えてやって来まして。今医師が向かっております」
「何だって。医師だと!」
きっとサーラの身に何かあったんだ。とにかく急いで離宮に向かわないと!そのままベッドから飛び起き、離宮へと向かう。
「王太子殿下、羽織物を…」
後ろで護衛騎士が叫んでいるが、そんな事どうでもいい。とにかく、サーラの元に向かわないと。医師が向かったという事は、サーラの身に何かあったのか?今日は一段と冷える。もしかして、熱でも出したのか?クソ、こんな事なら、やっぱり今日は本宮に泊まらせるんだった!
とにかく、早く離宮に向かわないと。
凍てつく寒さの中、必死に走った。寒さからか、思う様に足が動かない。こんな時に、僕の足はどうなっているんだ。
それでもなんとか走り、離宮が見えてきた。
「殿下!サーラ様が…」
血相を変えてやって来た護衛騎士。顔や服が汚れている。それに、焼け焦げた臭いもする。
「一体何があったんだ!サーラはどこにいるんだ。それにこの臭い…もしかして、火事か?」
「どうやらサーラ様は寒さから、自分で暖炉に火をつけた様でして…ただうまく換気が出来ていなかった様で、部屋中煙に包まれました。今隣の建屋で、治療を受けております。こちらです。
護衛騎士に連れられ、隣の建屋に向かう。
そこにはぐったりとしたサーラを治療する医師たちと、隣で泣き崩れているサーラの専属メイドの姿が。
「サーラ!」
急いでサーラの元に向かい抱きかかえるが、意識がないのかぐったりしている。顔も真っ青だ…ところどころ、服や顔が汚れている。
どうしてこんな事に…
「殿下、今治療中です。どうかサーラ様から離れて下さい!非常に危険な状態です。とにかく、治療に専念させて下さい」
僕からサーラを引き離すと、再び治療を始めた医師たち。
今非常に危険な状態と言ったよな…
そんな…
目の前が真っ暗になる。もしかしたら僕は、本当の意味でサーラを失うかもしれないのだ。鈍器で殴られたような衝撃が僕を襲う。
「殿下、ここは非常に冷えます。どうか羽織物を…」
僕に羽織物を掛けようとする護衛騎士。そんな護衛騎士を振り払い、サーラに近づく。
そして、そっと手を握った。
その手は、とても冷たかった。
「サーラ、ごめんね。僕があのまま君を返したばかりに…寒かったんだよね…だから、暖炉に火をつけたのだろう?そもそも僕が、君を大切にしていれば…あんな狭くて薄暗い場所で生活する事もなかったのに…サーラ、頼む。僕の事を好きになってくれなくてもいい。ただ君が生きているだけで、僕は幸せなんだ。たとえ一生結ばれなくても…君が生きていてくれたら…だから頼む。目を覚ましてくれ…お願いだ…」
気が付くと、ポロポロと涙が溢れ出ていた。僕の隣で、必死に医師たちが治療を続けている。ふとサーラの顔を見ると、ススで汚れていた。可哀そうに…
僕の寝間着の裾で、汚れを取ってあげた。こうやって見ると、サーラはまだ幼いな。サーラの寝顔、初めて見た…
やっぱり君は、誰よりも綺麗だ…
「サーラ、お願いだ。目を覚まして…」
何度も何度もサーラに話しかける。
その時だった。
握っていた手が、動いた気がした。
「サーラ!サーラ」
何度も名前を呼ぶ。すると、ゆっくりと瞼が上がり、赤い瞳と目が合った。
「エイダン…さま…」
「サーラ、よかった。本当によかった」
そのままサーラを強く抱きしめた。よかった、生きている。サーラ!サーラ!再び溢れ出す涙を、抑える事が出来なかった。
その時だった。
サーラが僕に向かって、ほほ笑んでくれたのだ。その微笑は、今まで見たどんな微笑よりも美しかった。そして、ゆっくりと瞳を閉じたのだ。
「サーラ?どうして瞳を閉じるんだい?頼む、目を開けてくれ」
必死に訴えるが、瞼が持ち上がる事はない。
「サーラ!サーラ、嫌だ。僕を残して逝かないでくれ。頼む!サーラ」
嫌だ!頼む、目を開けてくれ!サーラ!!
「殿下、落ち着いて下さい。きっと薬が効いてきたのでしょう。もう大丈夫ですよ」
「大丈夫という事は、助かったという事か?」
「はい、もちろんです」
にっこり笑った医者。
よかった。でも、それならそれで、もっと早く教えて欲しかった。今ので僕の寿命は、10年は縮まった。
ホッとしたところで、急に寒さが襲って来た。この部屋、めちゃくちゃ寒いな。
「この部屋は寒すぎる。こんなところにサーラを寝かしていくなんて可哀そうだ。今すぐ本宮にあるサーラの部屋に運ぼう」
「それでしたら、私がお運びいたします」
護衛騎士が近づいてきたのだが…
「いいや、僕が運ぶよ。サーラは僕の大切な妻だからね」
毛布でサーラをくるむと、そのまま抱きかかえた。サーラに出来るだけ寒い思いをして欲しくなくて、速足で歩く。
サーラ、君が生きていてくれて本当によかった。もう二度とこんな事が起こらないように、あの離宮は取り壊そう。
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