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第20話:大嫌いだったあなたと未来に向かって
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「侯爵、僕の大切な妻に、なんて事をしようとしているのですか?」
この声は!
「エイダン様」
お父様の手を掴み、お父様を睨みつけているエイダン様。
「あの、サーラが生意気を申しましたので、それで…」
「何か勘違いしている様ですね、侯爵。サーラは王太子でもある僕の妻です。王太子妃でもあるサーラを傷つけようとするなんて、たとえ父親でも許される事ではない!」
お父様に強い口調で迫るエイダン様。どうやら貴族会議があった様で、ぞろぞろと貴族たちが集まって来た。さらに陛下と王妃様も。
「エイダン、一体何があったの?」
心配そうな顔で王妃様がやって来た。
「侯爵が、サーラを殴ろうとしたんだ」
「まあ、それは本当なの?リサ、何があったのか説明しなさい」
「はい、侯爵様がサーラ様に向かって、役立たずだの子供が出来ないなんてお前の価値がないなど、暴言を吐いただけでなく、サーラ様を殴ろうとしました」
「そんな酷い事を言ったのですか!侯爵、サーラはもう王家の人間なのですよ。あなたは王族を侮辱するのですか?」
「私はそんなつもりでは…」
すかさずエイダン様がお父様に詰め寄った。王妃様もお父様を睨んでいる。
「では、どんなつもりでいったのですか?そもそも、あなたは散々サーラを虐げて来たそうですね!我が王族も、随分と舐められたものだ」
「そんな…申し訳ございません、王太子殿下」
「謝るのは僕ではなく、サーラでは?」
「…サーラ…その、悪かったな」
「それが謝罪ですか?それにサーラは、僕に嫁いだ時点で、もうあなたの娘ではないんだ。その事は理解できているのですか?」
「…サーラ王太子妃殿下、この度は本当に申し訳ございませんでした…」
唇を噛み、悔しそうに私に謝罪したお父様。まさかお父様から謝罪を受けるなんて思わなかったわ。
「サーラ、どうする?この男は王太子妃でもある君に暴言を吐いただけでなく、暴力まで振るおうとした。サーラが望むなら、罪に問う事も出来るよ」
「私は…こんな男でも一応父親です。どうか、今回は見逃してあげて下さい」
「サーラは優しいね。侯爵、サーラの恩情により、今回は見逃します。ただし、今後万が一またサーラを傷つけるようなことがあれば、今度こそただじゃ置かないからな!」
私の肩を抱きながら、お父様にはっきりとそう言ってくれたエイダン様。
「はい、もちろんです。王太子殿下、王太子妃殿下、本当に申し訳ございませんでした」
必死に頭を下げるお父様。あんなに怖かったお父様が、随分小さくなっている。なんだか不思議ね。
その姿を見た時、心の中に残っていた蟠りが、スッととれたようなそんな感じがした。
「サーラ、また嫌な思いをさせてしまったね。本当に申し訳ない。さあ、部屋に戻ろう」
私の腰に手を当て、部屋へとエスコートしてくれるエイダン様。
「エイダン様、父から私を守っていただき、ありがとうございます」
「そんなの、当たり前だろう。それにしても、サーラを殴ろうとするなんて、本当にどうしようもない男だ。サーラ、君は役立たずでも価値のない人間でもない。僕にとっては誰よりも大切で、尊い存在なんだ。その事だけは、忘れないで欲しい」
「ありがとうございます。…私はずっと役立たずだと言われ、育ってまいりました。いつか両親が私を見てくれるのではと、淡い期待を抱いていました。でも…あの人は結局、私を政治の道具にしか見ていなかったのです」
本当は私もお兄様みたいに、お父様やお母様に愛されたかった。でも、その夢は決して叶う事はなかったのだ。
「サーラ、君が両親に愛されなかった分、僕が君を愛するよ。だから、どうかそんな悲しそうな顔をしないでくれ…君が悲しそうな顔をすると、僕まで悲しくなる」
「あら、散々私を虐めて泣かしたあなたが、それを言いますか?」
「それは…本当にすまない…」
「冗談です。確かにエイダン様にされた事は、今でも心の傷として残っています。でもそれ以上に、エイダン様からはたくさんの愛情を頂きましたので」
にっこり笑ってそう伝えた。そして、エイダン様の方を向き、そのままエイダン様の唇に自分の唇を重ねた。
「サーラ、君って子は…」
今度はエイダン様が私の唇を塞ぐ。それはどんどん深くなってきて…
「さすがに今は昼間だから、これで我慢しておくよ。でも、夜は…」
「はい、大丈夫ですわ」
その日の夜、夫婦の寝室で初めてエイダン様と結ばれた。壊れ物を扱う様に丁寧に私に触れるエイダン様の優しさに、つい笑みがこぼれる。
事が終わると、そのままエイダン様が腕枕をしてくれた。
「サーラ、体は大丈夫かい?」
「はい、まだ少し痛みはありますが、大丈夫ですわ」
ギューッとエイダン様に抱き着く。ダイレクトに感じる温もりが、心地いい。
「エイダン様、私はあなた様が大嫌いでした。でも、今は…」
「今は?」
「とても大切でかけがえのない存在です…」
「僕も、サーラを愛しているよ。実はね、母上から1年たってサーラが心を開かなければ、諦めろと言われていたんだよ」
「まあ、そうだったのですね。もし1年経って、私が心を開かなかったら、本当に諦めていたのですか?」
「いいや…その時は王太子を辞めるつもりだった。僕は君以外の人を愛する事なんて出来ないからね。でも、サーラは心を開いてくれた。それが何よりも嬉しいんだ」
「私の為に王太子を辞めるだなんて…そこまで私を愛してくれていたのですね…」
「当たり前だろう。君は僕が唯一愛した女性なんだから」
唯一愛した女性か…
顔を見るだけで嫌悪感を抱き、声を聞くだけで吐き気がするほど大嫌いだったエイダン様。でも今は、そんなエイダン様が愛おしくてたまらない。彼が私に与えてくれた愛情が、温もりがとても心地いい。
これからは私がエイダン様を支えていきたい。そしていつか、エイダン様の子供を授かれたらいいな…そう思っている。
~1年半後~
「サーラ、準備は出来たかい?」
「はい、イーダンも準備万端ですわ」
今日は1ヶ月前に産まれた息子、イーダンのお披露目の日だ。イーダンが産まれた時、エイダン様は、泣きながら「サーラ、可愛い息子を産んでくれてありがとう…本当にかわいい子だ」そう何度もお礼を言ってくれた。
本当にエイダン様は変わった。
「イーダンは本当にいい子だね。さあ、サーラ。皆が待っているよ。行こう」
「はい」
イーダンを抱いたエイダン様と一緒に、バルコニーに向かう。私たちが顔を出すと、大きな歓声が。
「エイダン殿下、サーラ妃、おめでとうございます!」
「イーダン様、ご誕生、おめでとうございます」
沢山の貴族や民たちが、私たちを祝福してくれている。私たちの隣には、陛下と王妃様が微笑んでいた。
つい2年ほど前までは、皆から嫌われていた私。大嫌いだった人たちが、今は大好きな人たちへと変わった。本当に人生何が起こるか分からない。
エイダン様に触れられるくらいなら、死んだほうがましだと思った事もあった。でも、今は居なくてはならないかけがえのない存在になった。
そして私たちの宝物、イーダンが産まれた。私が欲しかった家族の形を、エイダン様が与えてくれたのだ。
エイダン様、私と結婚してくださり、ありがとうございます。私は今、幸せです!
おしまい
~あとがき~
これにてIFストーリーは完結です。
中盤からかなり駆け足になってしまいまいましたが
なんとかハッピーエンドで終わらせることが出来ました!
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
この声は!
「エイダン様」
お父様の手を掴み、お父様を睨みつけているエイダン様。
「あの、サーラが生意気を申しましたので、それで…」
「何か勘違いしている様ですね、侯爵。サーラは王太子でもある僕の妻です。王太子妃でもあるサーラを傷つけようとするなんて、たとえ父親でも許される事ではない!」
お父様に強い口調で迫るエイダン様。どうやら貴族会議があった様で、ぞろぞろと貴族たちが集まって来た。さらに陛下と王妃様も。
「エイダン、一体何があったの?」
心配そうな顔で王妃様がやって来た。
「侯爵が、サーラを殴ろうとしたんだ」
「まあ、それは本当なの?リサ、何があったのか説明しなさい」
「はい、侯爵様がサーラ様に向かって、役立たずだの子供が出来ないなんてお前の価値がないなど、暴言を吐いただけでなく、サーラ様を殴ろうとしました」
「そんな酷い事を言ったのですか!侯爵、サーラはもう王家の人間なのですよ。あなたは王族を侮辱するのですか?」
「私はそんなつもりでは…」
すかさずエイダン様がお父様に詰め寄った。王妃様もお父様を睨んでいる。
「では、どんなつもりでいったのですか?そもそも、あなたは散々サーラを虐げて来たそうですね!我が王族も、随分と舐められたものだ」
「そんな…申し訳ございません、王太子殿下」
「謝るのは僕ではなく、サーラでは?」
「…サーラ…その、悪かったな」
「それが謝罪ですか?それにサーラは、僕に嫁いだ時点で、もうあなたの娘ではないんだ。その事は理解できているのですか?」
「…サーラ王太子妃殿下、この度は本当に申し訳ございませんでした…」
唇を噛み、悔しそうに私に謝罪したお父様。まさかお父様から謝罪を受けるなんて思わなかったわ。
「サーラ、どうする?この男は王太子妃でもある君に暴言を吐いただけでなく、暴力まで振るおうとした。サーラが望むなら、罪に問う事も出来るよ」
「私は…こんな男でも一応父親です。どうか、今回は見逃してあげて下さい」
「サーラは優しいね。侯爵、サーラの恩情により、今回は見逃します。ただし、今後万が一またサーラを傷つけるようなことがあれば、今度こそただじゃ置かないからな!」
私の肩を抱きながら、お父様にはっきりとそう言ってくれたエイダン様。
「はい、もちろんです。王太子殿下、王太子妃殿下、本当に申し訳ございませんでした」
必死に頭を下げるお父様。あんなに怖かったお父様が、随分小さくなっている。なんだか不思議ね。
その姿を見た時、心の中に残っていた蟠りが、スッととれたようなそんな感じがした。
「サーラ、また嫌な思いをさせてしまったね。本当に申し訳ない。さあ、部屋に戻ろう」
私の腰に手を当て、部屋へとエスコートしてくれるエイダン様。
「エイダン様、父から私を守っていただき、ありがとうございます」
「そんなの、当たり前だろう。それにしても、サーラを殴ろうとするなんて、本当にどうしようもない男だ。サーラ、君は役立たずでも価値のない人間でもない。僕にとっては誰よりも大切で、尊い存在なんだ。その事だけは、忘れないで欲しい」
「ありがとうございます。…私はずっと役立たずだと言われ、育ってまいりました。いつか両親が私を見てくれるのではと、淡い期待を抱いていました。でも…あの人は結局、私を政治の道具にしか見ていなかったのです」
本当は私もお兄様みたいに、お父様やお母様に愛されたかった。でも、その夢は決して叶う事はなかったのだ。
「サーラ、君が両親に愛されなかった分、僕が君を愛するよ。だから、どうかそんな悲しそうな顔をしないでくれ…君が悲しそうな顔をすると、僕まで悲しくなる」
「あら、散々私を虐めて泣かしたあなたが、それを言いますか?」
「それは…本当にすまない…」
「冗談です。確かにエイダン様にされた事は、今でも心の傷として残っています。でもそれ以上に、エイダン様からはたくさんの愛情を頂きましたので」
にっこり笑ってそう伝えた。そして、エイダン様の方を向き、そのままエイダン様の唇に自分の唇を重ねた。
「サーラ、君って子は…」
今度はエイダン様が私の唇を塞ぐ。それはどんどん深くなってきて…
「さすがに今は昼間だから、これで我慢しておくよ。でも、夜は…」
「はい、大丈夫ですわ」
その日の夜、夫婦の寝室で初めてエイダン様と結ばれた。壊れ物を扱う様に丁寧に私に触れるエイダン様の優しさに、つい笑みがこぼれる。
事が終わると、そのままエイダン様が腕枕をしてくれた。
「サーラ、体は大丈夫かい?」
「はい、まだ少し痛みはありますが、大丈夫ですわ」
ギューッとエイダン様に抱き着く。ダイレクトに感じる温もりが、心地いい。
「エイダン様、私はあなた様が大嫌いでした。でも、今は…」
「今は?」
「とても大切でかけがえのない存在です…」
「僕も、サーラを愛しているよ。実はね、母上から1年たってサーラが心を開かなければ、諦めろと言われていたんだよ」
「まあ、そうだったのですね。もし1年経って、私が心を開かなかったら、本当に諦めていたのですか?」
「いいや…その時は王太子を辞めるつもりだった。僕は君以外の人を愛する事なんて出来ないからね。でも、サーラは心を開いてくれた。それが何よりも嬉しいんだ」
「私の為に王太子を辞めるだなんて…そこまで私を愛してくれていたのですね…」
「当たり前だろう。君は僕が唯一愛した女性なんだから」
唯一愛した女性か…
顔を見るだけで嫌悪感を抱き、声を聞くだけで吐き気がするほど大嫌いだったエイダン様。でも今は、そんなエイダン様が愛おしくてたまらない。彼が私に与えてくれた愛情が、温もりがとても心地いい。
これからは私がエイダン様を支えていきたい。そしていつか、エイダン様の子供を授かれたらいいな…そう思っている。
~1年半後~
「サーラ、準備は出来たかい?」
「はい、イーダンも準備万端ですわ」
今日は1ヶ月前に産まれた息子、イーダンのお披露目の日だ。イーダンが産まれた時、エイダン様は、泣きながら「サーラ、可愛い息子を産んでくれてありがとう…本当にかわいい子だ」そう何度もお礼を言ってくれた。
本当にエイダン様は変わった。
「イーダンは本当にいい子だね。さあ、サーラ。皆が待っているよ。行こう」
「はい」
イーダンを抱いたエイダン様と一緒に、バルコニーに向かう。私たちが顔を出すと、大きな歓声が。
「エイダン殿下、サーラ妃、おめでとうございます!」
「イーダン様、ご誕生、おめでとうございます」
沢山の貴族や民たちが、私たちを祝福してくれている。私たちの隣には、陛下と王妃様が微笑んでいた。
つい2年ほど前までは、皆から嫌われていた私。大嫌いだった人たちが、今は大好きな人たちへと変わった。本当に人生何が起こるか分からない。
エイダン様に触れられるくらいなら、死んだほうがましだと思った事もあった。でも、今は居なくてはならないかけがえのない存在になった。
そして私たちの宝物、イーダンが産まれた。私が欲しかった家族の形を、エイダン様が与えてくれたのだ。
エイダン様、私と結婚してくださり、ありがとうございます。私は今、幸せです!
おしまい
~あとがき~
これにてIFストーリーは完結です。
中盤からかなり駆け足になってしまいまいましたが
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