殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi

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第12話:私の過去~カイ視点~

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私の名前は、カイ・グレィム・バーイン。私が生まれた時、ちょうど隣国との小競り合いが勃発しており、王妃であった母上は戦火を逃れるため、王都の外れの街で密かに私を出産したとの事。

物心ついた時から、父上は自ら指揮をとり、戦場へと足を運んでいた。多忙な中、父上は私に自ら剣を教えてくれた。そして

“カイ、私の夢はこの国が戦争をしなくてもいい、平和な国にする事だ。お前も私の様に強くなれ。国王が強くないと、平和な国は作れない”

そう言って自ら私に厳しい稽古を付けてくれたのだ。父上はとても厳しい人だったが、それでも私にたっぷりの愛情を注いでくれた。一方母上は

“カイ、あなたは本当に目つきが悪いわね。あなたを見ていると、意地悪だったあなたのおばあ様を思い出すわ!あの人、本当に意地悪だったのよ!いい、あまり私の前に現れないで頂戴。それに比べ、ルカは本当に美しくて優しい子だわ。やっぱり次期国王は、カイではなくルカがいいわね”

それが口癖だった。どうやら私は、父方の祖母によく似ていると言う理由から、母上に嫌われていた。一方2歳下の弟のルカは、母上に似た美しい金色の髪をした美少年だ。そんな美しいルカを、母上は溺愛していたのだ。

それでも幼い頃は、母上に好かれたくて必死に勉学も武術にも励んだ。でも、母上は一切私を見てはくれなかった。いつしか私は、母親に愛されることを諦める様になった。そして父上の力になりたくて、7歳で騎士団に入り、10歳では実際に戦場へ赴くようになった。

そんな中、事件は起きた。私が14歳の時、隣国が仕掛けてきた戦争で、父上は戦死してしまったのだ。それでも敵国に致命的なダメージを与えたことで、一旦戦争は終結した。そして、急遽私が国王に就任する事になったのだ。

この時、母上は“ルカが国王にふさわしい”と訴えていたが、父上が遺言書を準備していた様で、無事私が国王の座につく事が出来た。だが、14歳で国王に就任した私には、どう国をまとめていいのか分からず、苦労した。

騎士団長たちも、皆私より年上。明らかに私を舐めてかかる者もいた。それでも私は、父上が夢見た“平和な国”を作るべく、また隣国が攻めて来ても跳ね返せる、屈強の騎士団を作るため、それこそ寝る間も惜しんで血の滲む様な努力を重ねた。

そして2年後、再び隣国が攻めてきたのだ。もちろん、自ら剣を取り、最前線で戦った。激しい戦いのさなか、なんと隣国の国王が病死。戦争好きの国王が亡くなった事で、何とか和平条約を結ぶことに成功。

これでやっと平和な国を作れる。父上が夢見た、平和な国が…

だが、油断は出来ない。和平条約を結んだ後も、国境付近には騎士たちを配備し、おかしな動きがないかを見張った。そして、今まで以上に騎士団の稽古にも力を入れた。

やっと平和を手に入れたと思ったのも束の間、なんと弟のルカが一部の貴族をしたがえ、謀反を起こそうとしたのだ。ただ、ルカと貴族はその場で取り押さえられたため、大事にはならなかった。

ホッとしたのも束の間、王族による謀反が隣国に知れるのを恐れた他の家臣たちが、ルカと一部の貴族への厳罰を求めたのだ。万が一王族同士で争いを起こしている事がバレたら、また昔の様に責められるのではないと考えたのだろう。

ただ、ルカは血を分けた弟だ。何とか命だけは…そう思ったのだが…

「陛下、ここでルカ殿下に情けを掛ければ、またいずれ、必ず陛下の首を狙いにやって参ります。そもそもルカ殿下は、陛下が死に物狂いで隣国と戦っている間、王宮で令嬢たちを呼びよせ、夜な夜な遊んでいたのですよ。どうかご決断を!」

そう迫られたのだ。命を懸けて私を支えてくれた貴族たちの言葉を無下にする事も出来ず、ルカとルカに加担した貴族たちはみな処刑となった。

ルカを寵愛していた母上は泣き叫び

「お前なんか産まなければよかった。この人殺し。実の弟を殺すなんて…血も涙もない怪物よ!」

そう言って私をののしった。血も涙もない怪物か…
分かっている、この人にとって可愛い子供はルカ一人だけ。この人にはもう、諦めている。分かってはいるが、さすがに面と向かって言われると辛い。それでも私は、母上が少しでも快適に暮らせるよう手配した。これが私の、母上への唯一の償いだと思ったからだ。それにルカがいなくなった今、もしかしたら少しでも私に愛情を向けてくれるかも、何て淡い期待も抱いていた。でも…

事件は起こった。

夜、私が就寝していると、突如誰かに襲われたのだ。幸い間一髪のところでかわしたが、よけきれずに顔に深い傷を負ってしまった。それでもすぐに近くにあった短刀を取り、襲った人間を切り倒す。

「陛下、何の騒ぎですか?」

騒ぎを聞きつけた家臣たちが飛んできて、部屋に灯りを付けた。すると…

「母上、どうして?」

そう、私に切られ倒れていたのは、母上だったのだ。

「よくも…ルカを…」

そう言い残し、息を引き取った母上。まさか私を殺したいほど憎んでいただなんて…

「陛下、顔から大量に血が出ております。すぐに手当てを」

正直切られた傷の痛みなんて感じない。ただ…どうしようもないほど、心が痛かった。私は母親に殺したいほど憎まれていた…そしてそんな母親を…

それでも私は国王だ。家臣の為、この国に生きる国民の為、泣いてなんていられない。父上が夢見た、平和な国をつくるためにも。
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