殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi

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第13話:私の前に現れた1人の女性~カイ視点~

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母親と弟を殺めてしまった私は、それでも必死に国を守る事に専念した。騎士たちの教育はもちろん、隣国と積極的に貿易をする事にしたのだ。

この国には幸い資源が豊富だ。その資源を求めて、戦争を仕掛けてくる隣国。そこで貿易で資源を提供する事にした。もちろん、相手国からの特産品も手に入る。また、隣国が干ばつや洪水で被害を受けた時は、自ら援助を申し出た。

家臣たちからは

“戦争を仕掛けてくる隣国に援助など!”

という声もあったが、援助する事で相手国も恩を感じる様になり、より良い関係を築けるようになったのだ。もちろん国内にも目を向けた。戦争で両親を亡くした子供たちの為に、孤児院を設立し、深い心の傷を負った子供たちの為に、心の治療にも取り組んだ。

少しずつ国がいい方向へと向かっている。

ただ、1つだけうまく行かない事がある。それは…そう、妻選びだ。

母上から受けた顔の傷痕が、より私への恐怖を助長させてしまう様で、令嬢たちは私の顔を見ると震えあがるのだ。それでもなんとか私と結婚しようとしてくれた令嬢もいたが、陰で

“あのような恐ろしい顔の人と結婚なんて…”

と泣いている姿を見てしまい、その話も流れた。私はとにかく、嫌がる令嬢を無理やり妻に何てしたくないのだ。

もしかしたら、母上が“お前の血を後世には残すな!”と言っているのかもしれない。それならいっその事、養子を迎えた方が。そう考えているのだが、何分家臣たちがそれを許さない。

“陛下、きっとどこかに、あなた様の顔を怖がらない猛者がいるはずです。30歳を過ぎて、それでも猛者が現れなければ、養子を考えましょう”

と言っているのだ。30歳か…まだまだ先だが、でも私にはそんな猛者が現れるなんて思えない…

そんな日々を送っているうちに、気が付けば戦争から5年が過ぎていた。その日私は、毎日の日課でもある海を散歩していた。実は私は、綺麗な海が大好きなのだ。海を見ていると、少しだけ心が落ち着く。

すると、海岸に人の様なものを見つけた。ここは王宮内の海岸だ。もしかして、スパイか?一気に緊張が走る。

ゆっくり近づくと、どうやら女性の様で、意識を失いぐったりとしている。全身泥にまみれているが、それでも美しい水色の髪が見える。

家臣が急いで女に近づく。

「陛下、かすかに呼吸があります」

「すぐに治療をしてやれ」

「でも、スパイかもしれません」

「構わん、もしどこかの国のスパイなら、情報を聞き出すまでだ。それに、命を無下にはしたくない」

今まで沢山の人間が無残にも死んでいった。だからせめて、助けられる命は助けたい、そう思ったのだ。すぐにメイド長でもあるクロハに、彼女の世話を依頼した。それと同時に医者も呼び、治療も受けさせた。

「陛下、先ほど助けられた令嬢ですが、今治療が終わりました。一命は取り留められましたが、目覚められる可能性はかなり低いかと…」

「そうか、とにかく引き続き治療と世話を頼む」

「承知いたしました」

どうやら一命は取り留めた様だ。クロハには引き続き、世話をする様に指示を出した。それにしても、どうしてあんなところにいたのだろう。とにかく、目が覚めるまで待つしかないな。

そして女を海岸で見つけてから5日後、意識が戻ったとの連絡が入った。

「まだ熱がかなり高いので、お薬を飲んだ後、すぐにお休みになられました。見た感じ、スパイの様ではなさそうですわ。念のため医者に見せたところ、熱は高いがもう心配ないとの事です」

「そうか、だが、まだ信用は出来ない。意識が戻り次第、女性から話を聞きだしてくれ」

「かしこまりました」

引き続きクロハに女の世話を依頼する。そして2日後、女が目覚めたとの事。

「陛下、どうやらあの女性は、アナスタシア様とおっしゃる様です。自国で誘拐され、船で連れて行かれる途中、嵐で難破したとの事。あまりご自分の事はお話されませんが、動きなどから見て、かなり身分の高い貴族の様ですわ。ただ、国には二度と帰れないので、この国で雇って欲しいとの事でして…」

「国に帰れないだと?誘拐されてきたのにか?どうして国に帰れないのだ?」

「さあ…それは私にも…」

「怪しいな、もしかしたら、どこかの国のスパイかもしれない。今までも美しい女を送りこんできては、私の寝首を掻こうとしたり、王宮内を探ったりする女がいたからな。今は平和だからと言っても、油断は出来ない。いいか、クロハ。しばらくはあの女を監視しろ。わかったな。それから、至急あの女の事を調べさせよう」

「お言葉ですが陛下、アナスタシア様は悪い事をするような令嬢には見えませんわ」

「悪い事をしそうなスパイを送ってくるほど、他国はバカではない。とにかく、客人としてもてなすふりをして、女の行動を監視しろ。いいな」

「はぁ~、陛下はまったく…承知いたしました。でも私は、アナスタシア様が悪い人の様には見えないですが…」

そう言って私の元を去って行った。クロハはああ言っていたが、やはりスパイの可能性がゼロではない限り、油断は出来ないからな。
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