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番外編1

旦那様の誕生日パーティーを開きます~その3~

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「よし、アーサーへの誕生日プレゼントも決まったし、せっかくだからローラちゃんも一緒に晩御飯を食べて行ってくれ。きっと子供たちも喜ぶよ」

「ありがとうございます。お義兄様。でも、旦那様より帰りが遅くなるわけにはいきませんので、私はもう帰りますわ」

「あら、たまにはいいじゃない。今公爵家に使いの者を出すわ」

そう言うと、近くに控えていた使用人を捕まえたお姉様。

「待って下さい、お姉様。今日は旦那様に内緒で来ました。きっと旦那様より帰りが遅くなったら、怒られますわ。また改めて遊びに来ますから」

最近はあまり見かけなくなったが、きっと眉間にたっぷりシワを寄せて、仁王立ちで立って待っている姿が目に浮かぶ。

「…わかったわ。それじゃあ、気を付けて帰るのよ。玄関まで送るわ」

お姉様とお義兄様と一緒に部屋から出ると、リアムが待っていた。

「おはなしおわった?ローラおねえちゃん、いっしょにごはんたべよう」

嬉しそうに私に飛びついてくるリアム。こんなかわいい顔を見たら、断り辛いじゃない。でも、早く帰らないと、旦那様が帰って来てしまうわ。

「ごめんね、リアム。今日はもう帰らないといけないの。また今度、一緒に晩御飯を食べましょうね」

「え~、アーサーなんか、ほうっておけばいいじゃん」

「こら、リアム。どこでそんな言葉使いを覚えたの?ローラはまた今度来るそうだから、その時一緒に食事をしましょう」

お姉様がリアムをなだめている。それでもリアムは、私からくっ付いて離れない。何なの、この可愛い生き物は!リアムとご飯を食べたい。でも…

「リアム、ごめんなさい。そうだわ、今度はあなたが好きなマドレーヌを料理長に作ってもらってくるわ。はちみつがたっぷり入っていて、とても美味しいのよ」

「ほんとう?ぜったいだよ」

「ええ、約束」

リアムと約束を交わして、帰ろうとした時だった。

「ローラ様、アーサー様がいらしております」

「えっ…旦那様が?」

使用人の言葉に、お姉様と顔を見合わせた。今日は旦那様は会議で遅くなるはずなのに…

「ローラ!!」

スタスタとこちらにやって来た旦那様に、そのまま抱きしめられたのだった。

「会議が早く終わったら急いで家に帰ってきたのに、ローラはいないし。モカラの話しでは、義姉上の家に行ったっていうじゃないか。夜勝手に出歩いてはいけないと言っただろう!」

久しぶりに眉間に皺を寄せて怒っている。そんな旦那様が怖いのか、リアムがお姉様にしがみついている。

「ごめんなさい。旦那様が帰るまでには、戻るつもりだったのです。でも、まさか早く帰って来るなんて思わなくて…」

「俺が戻る前に帰ればいいという訳ではない。第一、出掛ける時は必ず報告しろと言っただろう」

さらに旦那様が怒っている。でも、出掛ける時は必ず報告しろだなんて、言われた記憶がないのだが…

「おい、アーサー。ギャーギャー怒るな。リアムが怯えているだろう。お前はすぐに怒鳴る癖、なんとかならないのか?」

「うるさい。とにかくローラは連れて帰るからな。ほら、ローラ。帰るぞ」

私の手を引き、そのまま玄関へと向かう旦那様。これはマズイ展開だわ。かなりご機嫌が悪い旦那様に、明日お姉様と一緒に出掛けるなんて口が裂けても言えない。どうしよう…

「アーサー様。ローラを怒らないであげて下さい。実は我が家でちょっとトラブルが起きてしまいまして、急遽ローラに来てもらったのです。急だったので、アーサー様にお伝えする事が出来なかったのでしょう」

そう言って私を庇ってくれるお姉様。さらに

「それから明日なのですが、ローラにぬいぐるみの件で相談したい事がありまして。一緒に街に出たいと考えております。どうか、許可を頂けないでしょうか?お願いします」

何度も旦那様に頭を下げるお姉様。そんなお姉様を見た旦那様が、珍しく焦っている。

「義姉上、頭をあげてくれ。義姉上には今まで散々お世話になったんだ。それに、義姉上と出かけるなら安心だ。ローラ、明日は義姉上と出かけてきたらいい。姉妹水入らずで、楽しんでこい」

「「ありがとうございます、旦那様(アーサー様)」」

絶妙なタイミングで、言葉がお姉様と被った。それにしても、お姉様ったらさすがね。旦那様をうまく丸め込んでくれるなんて。明日、改めてお礼を言わないと。

「それじゃあ、俺たちはこれで」

「アルフィーお義兄様、お姉様、ありがとうございます。リアムもありがとう、また今度ね」

「どうしてお前が礼を言うんだ?義姉上に呼び出されたのではないのか?」

怪訝そうな顔の旦那様。しまった、ついお礼を言ってしまったわ。

「えっと…いろいろとご馳走になったので。それで…」

チラリとお姉様の方を見ると、頭を抱えていた。

「お前は嘘が下手だな。どうせローラが義姉上を訪ねたのだろう。だが…今回は義姉上に免じて許してやる。いいか、見逃すのは今回だけだからな。次は必ず俺に許可を取ってから出かけるんだぞ」

「はい、分かりましたわ…」

どうやら今回は許してもらえる様だ。よかった。

改めて旦那様と手を繋ぎ、馬車へと乗り込む。そのまま旦那様の隣に座ろうとしたのだが、なぜか膝の上に座らされた。

「朝は起きてこないし、夕方は出迎えに来ないし、お前は一体何をしているんだ」

耳元で小言を言う旦那様。

「夕方はごめんなさい。でも、朝は旦那様が悪いのですわ。明け方近くまで、その…」

恥ずかしくてこれ以上は言えない。

「その、何だ?」

もう、意地悪なんだから!

「なんでもありませんわ。とにかく、これからはどんなに寝るのが遅くなっても、私を起こしてくださいね。私は旦那様の妻なのです。朝はしっかりお見送りしたいので」

「わかった。明け方近くまで愛し合ったとしても、俺が出かける時はローラを起こそう。俺もやっぱりローラに見送ってもらえないと、なんだかやる気が起きないしな」

そう言って笑った旦那様。どうやらご機嫌は直った様だ。

その後公爵家に戻ると、2人仲良く夕食を楽しんだのであった。
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