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第2章
第8話:メイソン様に懐かれた様です
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「よし、出来た」
完成したばかりの大きな犬のぬいぐるみをチェックする。ほつれなどは見当たらないわね。よかった、なんとか間に合った。
ここ最近ずっとメイソン様につきっきりだったため、中々ぬいぐるみ作りがはかどらなかった。さらに夜は旦那様にぬいぐるみ作りを禁止されている。旦那様と一緒に寝ている為、夜中に隠れて作る事も出来ない。
騎士団長をしている旦那様は、眠りも比較的浅い。ぐっすり寝ているように見えて、少しでも私が旦那様の腕から抜け出ようとすると、すぐに起きてしまうのだ。その為、こっそり寝室を抜け出すことも出来なかった。
それでもなんとか期限までに完成出来てよかったわ。
「おい、ローラ。最近部屋に閉じこもって全然出てこないと思ったら、ぬいぐるみを作っていたのか。それにしても、大きなぬいぐるみだな」
私の元にやって来たのは、メイソン様だ。
「メイソン様、女性の部屋に勝手に入ってくるものではありませんわ」
そう注意したが、なぜか無視してずかずかと入って来る。この人、私の事を女性と理解しているのかしら?
「このぬいぐるみ、大きいな。こんな大きなぬいぐるみは初めて見た。それに、触り心地もいいし」
出来たばかりのぬいぐるみを、メイソン様が抱きしめている。最近のメイソン様は、すっかり毒が抜け、私や使用人たちに暴言を吐かなくなったのだ。それもこれも、私が頑張った賜物だ。
本当にここまで来るのに大変だったのだから…
「ローラ、何をボーっとしているんだ。相変わらずどんくさい女だな」
何ですって!ちょっと心の中で褒めてあげたら、すぐにこれなんだから。
「誰がどんくさいですか。失礼な。このぬいぐるみは大切な贈り物なのです。梱包しますので、お返しください」
メイソン様からぬいぐるみを奪い取り、大きな袋に入れる。そして、これまた大きなリボンを付ければ完成だ。
さすがに今日は疲れたわ。本当なら少し横になりたいが、なぜかメイソン様が私の部屋から出て行こうとしないのだ。
ジト目でメイソン様を見つめるが、何を思ったのか…
「なんだ、俺の事を見つめて。そうか、俺とお茶がしたいのか。仕方ないな、中庭にでも行くか」
なぜそんな発想になるのよ!
「メイソン様、そうではなくて…」
「ほら、行くぞ」
私の言葉を遮り手を掴むと、さっさと中庭へと連れていかれた。仕方ない、お茶に付き合ってあげるか。
「ローラ、見てみろ。この花、とても綺麗だぞ。ローラは何の花が好きなんだ?」
「私はポピーとパンジーが好きですわ。あと、キンモクセイも」
「キンモクセイ?聞いたことがない花だな。俺も見たい、どこにあるんだ?」
「中庭の奥にあります。ただ、今は時期ではないので、今は咲いておりません。オレンジの可愛らしいお花から、とてもいい香りがするのです。年に二回咲くとの事なので、もうすぐ咲くと思いますよ」
「そんな花があるのか。それは楽しみだな。ローラ、次に咲いたら一緒に見に行こう」
なぜかメイソン様が嬉しそうにそう言ったのだ。
「メイソン様は、キンモクセイがそんなに気になるのですね。わかりましたわ、マテオに咲いたら知らせてもらう様に頼んでおきますね」
まさかメイソン様がお花に興味があるなんて、知らなかったわ。女性が好きな物は嫌いと言っていたのに。
「さあ、そろそろお屋敷に戻りましょう。旦那様も帰って来るでしょうし」
「そうだね…残念だが、もう戻ろうか」
残念?そうか、きっと花を見たりなかったのね。
「メイソン様、お花は明日も咲いておりますよ。そんなに寂しそうな顔をしなくても大丈夫ですわ」
「…ローラは鈍いよね…まあ、そこも君の魅力なのかもしれないが…」
何やらメイソン様がブツブツ言っている。一体どうしたのかしら?
「ローラ様、メイソン様、旦那様がお帰りになられました」
「まあ、それは大変。早くお屋敷に戻らないと。メイソン様、急ぎましょう」
「そうだね、戻ろうか」
そう言うと、メイソン様がなぜか私の手を握ったのだ。その時だった。
「メイソン、なぜローラの手を握っているんだ?」
後ろからものすごく低い声が聞こえる。この声は…
「旦那様、おかえりなさい。お出迎えが遅くなり、申し訳ございません」
「アーサー兄さん、おかえり。今からローラと一緒に、兄さんのお出迎えをしに行こうと思っていたんだ。ねっ、ローラ」
「…ええ」
「だからと言って、なぜ手を繋がないといけないんだ。今すぐ放せ」
すかさず私の手を取る旦那様。
「アーサー兄さん、嫉妬は見苦しいよ。別に手ぐらい、いいじゃないか。減るものでもあるまいし。俺もうお腹ペコペコだ。さあ、ローラ、一緒に戻ろう。兄さん、先に食堂に行っているね」
私の手を掴むと、メイソン様が走り出した。
「コラ、メイソン。待て!」
後ろから追いかけてくるアーサー様。
なぜだろう…
あんなに私の事を嫌っていたのに、なぜかこの一ヶ月半程度で、すっかりメイソン様に懐かれている気がするのだが…
でも、こうやって懐かれるのも悪くない。なんだか弟が出来たみたいね。
そう思うと、なんだか心がほっこりとしたのであった。
完成したばかりの大きな犬のぬいぐるみをチェックする。ほつれなどは見当たらないわね。よかった、なんとか間に合った。
ここ最近ずっとメイソン様につきっきりだったため、中々ぬいぐるみ作りがはかどらなかった。さらに夜は旦那様にぬいぐるみ作りを禁止されている。旦那様と一緒に寝ている為、夜中に隠れて作る事も出来ない。
騎士団長をしている旦那様は、眠りも比較的浅い。ぐっすり寝ているように見えて、少しでも私が旦那様の腕から抜け出ようとすると、すぐに起きてしまうのだ。その為、こっそり寝室を抜け出すことも出来なかった。
それでもなんとか期限までに完成出来てよかったわ。
「おい、ローラ。最近部屋に閉じこもって全然出てこないと思ったら、ぬいぐるみを作っていたのか。それにしても、大きなぬいぐるみだな」
私の元にやって来たのは、メイソン様だ。
「メイソン様、女性の部屋に勝手に入ってくるものではありませんわ」
そう注意したが、なぜか無視してずかずかと入って来る。この人、私の事を女性と理解しているのかしら?
「このぬいぐるみ、大きいな。こんな大きなぬいぐるみは初めて見た。それに、触り心地もいいし」
出来たばかりのぬいぐるみを、メイソン様が抱きしめている。最近のメイソン様は、すっかり毒が抜け、私や使用人たちに暴言を吐かなくなったのだ。それもこれも、私が頑張った賜物だ。
本当にここまで来るのに大変だったのだから…
「ローラ、何をボーっとしているんだ。相変わらずどんくさい女だな」
何ですって!ちょっと心の中で褒めてあげたら、すぐにこれなんだから。
「誰がどんくさいですか。失礼な。このぬいぐるみは大切な贈り物なのです。梱包しますので、お返しください」
メイソン様からぬいぐるみを奪い取り、大きな袋に入れる。そして、これまた大きなリボンを付ければ完成だ。
さすがに今日は疲れたわ。本当なら少し横になりたいが、なぜかメイソン様が私の部屋から出て行こうとしないのだ。
ジト目でメイソン様を見つめるが、何を思ったのか…
「なんだ、俺の事を見つめて。そうか、俺とお茶がしたいのか。仕方ないな、中庭にでも行くか」
なぜそんな発想になるのよ!
「メイソン様、そうではなくて…」
「ほら、行くぞ」
私の言葉を遮り手を掴むと、さっさと中庭へと連れていかれた。仕方ない、お茶に付き合ってあげるか。
「ローラ、見てみろ。この花、とても綺麗だぞ。ローラは何の花が好きなんだ?」
「私はポピーとパンジーが好きですわ。あと、キンモクセイも」
「キンモクセイ?聞いたことがない花だな。俺も見たい、どこにあるんだ?」
「中庭の奥にあります。ただ、今は時期ではないので、今は咲いておりません。オレンジの可愛らしいお花から、とてもいい香りがするのです。年に二回咲くとの事なので、もうすぐ咲くと思いますよ」
「そんな花があるのか。それは楽しみだな。ローラ、次に咲いたら一緒に見に行こう」
なぜかメイソン様が嬉しそうにそう言ったのだ。
「メイソン様は、キンモクセイがそんなに気になるのですね。わかりましたわ、マテオに咲いたら知らせてもらう様に頼んでおきますね」
まさかメイソン様がお花に興味があるなんて、知らなかったわ。女性が好きな物は嫌いと言っていたのに。
「さあ、そろそろお屋敷に戻りましょう。旦那様も帰って来るでしょうし」
「そうだね…残念だが、もう戻ろうか」
残念?そうか、きっと花を見たりなかったのね。
「メイソン様、お花は明日も咲いておりますよ。そんなに寂しそうな顔をしなくても大丈夫ですわ」
「…ローラは鈍いよね…まあ、そこも君の魅力なのかもしれないが…」
何やらメイソン様がブツブツ言っている。一体どうしたのかしら?
「ローラ様、メイソン様、旦那様がお帰りになられました」
「まあ、それは大変。早くお屋敷に戻らないと。メイソン様、急ぎましょう」
「そうだね、戻ろうか」
そう言うと、メイソン様がなぜか私の手を握ったのだ。その時だった。
「メイソン、なぜローラの手を握っているんだ?」
後ろからものすごく低い声が聞こえる。この声は…
「旦那様、おかえりなさい。お出迎えが遅くなり、申し訳ございません」
「アーサー兄さん、おかえり。今からローラと一緒に、兄さんのお出迎えをしに行こうと思っていたんだ。ねっ、ローラ」
「…ええ」
「だからと言って、なぜ手を繋がないといけないんだ。今すぐ放せ」
すかさず私の手を取る旦那様。
「アーサー兄さん、嫉妬は見苦しいよ。別に手ぐらい、いいじゃないか。減るものでもあるまいし。俺もうお腹ペコペコだ。さあ、ローラ、一緒に戻ろう。兄さん、先に食堂に行っているね」
私の手を掴むと、メイソン様が走り出した。
「コラ、メイソン。待て!」
後ろから追いかけてくるアーサー様。
なぜだろう…
あんなに私の事を嫌っていたのに、なぜかこの一ヶ月半程度で、すっかりメイソン様に懐かれている気がするのだが…
でも、こうやって懐かれるのも悪くない。なんだか弟が出来たみたいね。
そう思うと、なんだか心がほっこりとしたのであった。
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