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第2章
第23話:カサブランカ様が来てくれました
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アーサー様が屋敷に帰って来た翌日、新たにアーサー様のお世話をしてくれる使用人達がやって来た。もちろん、全員男性だ。女嫌いのアーサー様が、女性に世話をされたと聞いたらきっと怒り狂うだろうと言う事と、そもそも意識の無いアーサー様のお世話は重労働だ。
男性でないと厳しいだろうという事で、男性が雇われた。
さらに
「ローラ様、初めまして。ダリアと申します。嫁や娘たちの出産が重なり、長い間留守にしておりましたが、やっと戻って来る事が出来ました。今日から、モカラと共にローラ様のお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
そう、以前この屋敷で働いていたダリアが戻ってきてくれたのだ。と言っても、もちろん私は初対面だが。
「あなたがダリアね。アーサー様やモカラから、話は聞いているわ。これから色々迷惑かける事も多いと思うけれど、どうぞよろしくね」
「はい、もちろんです。それにしてもあのアーサー様が、女性と結婚生活を送っていただけでなく、子供まで作るだなんて。本当に信じられませんわ。せっかくアーサー様の幸せな姿が見られると思っておりましたのに、こんな事になってしまって…」
そう言って涙を流すダリア。ダリアもモカラと一緒で、アーサー様を小さい時からお世話していたと聞く。きっとこんな姿を見て、ショックを受けているのだろう。
とにかく新しい使用人も加わったし、ダリアも戻ってきてくれた。これからも、しっかりこの家を支えて行かないと。
今日もアーサー様の眠る寝室で、ぬいぐるみを作る。何だかんだで、ぬいぐるみを作っている時間が一番落ち着く。幸いな事に、アーサー様のお世話係の使用人たちは、随分とよく働いてくれる。本当に助かっている。
その時だった、ビクッとお腹が動いた気がした。これはもしかして、胎動ってやつ?早速アーサー様に駆け寄り
「アーサー様、今赤ちゃんが動きましたわ。ほら」
そう言ってアーサー様の手を持ち上げ、お腹に当てた。でも、全然動かない。
「おかしいですわね。全く動きませんわ。でも、さっきは確かに動いた様な気がしたのですが…」
こてんと首を傾げていると
「ローラ様、まだまだ赤ちゃんは小さいので、中々胎動を感じる事は少ないですわ。そのうち、痛いぐらいに動きますので」
そう言ってクスクス笑っているダリア。
「あら、そうなのね。それじゃあもっとしっかり動くようになったら、またアーサー様に報告するわ」
早くもっと動くようにならないかしら…
「ローラ様、お手紙が届いております」
その時だった。モカラが手紙を持ってきてくれたのだ。宛名は、カールズ王国の王女、カサブランカ様だ。
「まあ、カサブランカ様だわ」
早速中を開けると、来週、急遽ペルソナ王国に来ることになった事が書かれていた。今回は王女としてではなく、私の友人としてお忍びで来るらしい。
「カサブランカ様が来てくれるのね。でも急にどうしたのかしら?もしかして、ルルに何かあったのかしら?」
カサブランカ様の元には、私があげたぬいぐるみに入った妖精のルルがいる。アーサー様が生きている限り、ルルはぬいぐるみと妖精界を行き来できると言っていた。まさか…
すぐに旦那様の胸に耳を当てる。
よかった、生きているわ…
ホッと胸をなでおろす。
もしかしたら、別の要件で来るのかもしれないわね。とにかく、来週カサブランカ様とルルに会えるのね。
ワクワクした気持ちの中、ついにカサブランカ様がやって来た。
「ローラお姉ちゃん、お久しぶりですわ」
「ローラ!」
嬉しそうにこちらにやって来るカサブランカ様。さらにフワフワと浮いたぬいぐるみも、私も方にやって来た。
「カサブランカ様、ルル、お久しぶりですわ。元気そうでよかったです」
「ローラお姉ちゃん、お腹が大きいわ。もしかして、アーサー様のお子様が?」
「はい…ですが…」
「ローラお姉ちゃん、話しは全てルルに聞いたわ。だから、無理して話さなくても大丈夫よ」
泣きそうな私の顔を見たカサブランカ様が、私の話しを制止した。
「ルルから聞いたのですね…」
そっとルルの入っているぬいぐるみを手に取った。
カサブランカ様を喜ばせたい一心で作ったこのぬいぐるみ、アーサー様が自分の信念を曲げてまで、ルルにぬいぐるみに入ってくれる様に、頼んでくれたのよね。
アーサー様…
気が付くと涙が溢れて来た。
「ローラ、泣かないで。そうだわ、ちょっと待っていてね」
今まで軽く浮いていたぬいぐるみが、急に重くなった。まるでルルがぬいぐるみから出て行った様な感覚だ。
その時だった。
「ローラ!」
この声は…
「キーキ、キーキなの?」
ふわりと浮いたぬいぐるみから、キーキの声が聞こえる。
「そうよ、キーキよ。ルルが私をここに呼んでくれたの。ローラ、会いたかったわ」
私にすり寄って来るキーキが入ったぬいぐるみ。私も強く抱きしめた。
「キーキ、私も会いたかったわ。アーサー様の意識が戻らないの…」
「ええ、知っているわ。アーサーったら、コブラの毒を受ける寸前、一瞬魔力を使おうとしたのよ。でも…結局使わずに毒をくらったの。本当に、変に頑固なんだから嫌になるわ!魔力を使っていれば助かったのに…」
「そうだったのね…でも、アーサー様らしいわ。キーキ、アーサー様の様子を教えてくれてありがとう」
キーキの入ったぬいぐるみを再び抱きしめた。
「それにしても、アーサーはいつまで寝ているつもりなのかしら?ローラのお腹に赤ちゃんがいるっていうのに。いい加減起きなさいよ!」
何を思ったのか、ふわりと浮かんだキーキ入りのぬいぐるみが、部屋から出ていく。そして私たちの寝室に入ったかと思うと、眠るアーサー様に向かって、体当たりをしているのだ。
「キーキ、ダメよ。アーサー様にそんな事をしては」
「だってアーサーの奴、ローラを散々泣かせたのよ。許せないわ。アーサー、早く起きなさいよ!」
そう言って再びアーサー様に体当たりをしているキーキ。
その時だった。ポロポロとぬいぐるみの瞳から、涙が流れているではないか。どうやらキーキが泣いている様だ。その姿を見たら、私も涙がこみ上げてきた。
そして、キーキと一緒に、抱き合って泣いたのだった。
男性でないと厳しいだろうという事で、男性が雇われた。
さらに
「ローラ様、初めまして。ダリアと申します。嫁や娘たちの出産が重なり、長い間留守にしておりましたが、やっと戻って来る事が出来ました。今日から、モカラと共にローラ様のお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
そう、以前この屋敷で働いていたダリアが戻ってきてくれたのだ。と言っても、もちろん私は初対面だが。
「あなたがダリアね。アーサー様やモカラから、話は聞いているわ。これから色々迷惑かける事も多いと思うけれど、どうぞよろしくね」
「はい、もちろんです。それにしてもあのアーサー様が、女性と結婚生活を送っていただけでなく、子供まで作るだなんて。本当に信じられませんわ。せっかくアーサー様の幸せな姿が見られると思っておりましたのに、こんな事になってしまって…」
そう言って涙を流すダリア。ダリアもモカラと一緒で、アーサー様を小さい時からお世話していたと聞く。きっとこんな姿を見て、ショックを受けているのだろう。
とにかく新しい使用人も加わったし、ダリアも戻ってきてくれた。これからも、しっかりこの家を支えて行かないと。
今日もアーサー様の眠る寝室で、ぬいぐるみを作る。何だかんだで、ぬいぐるみを作っている時間が一番落ち着く。幸いな事に、アーサー様のお世話係の使用人たちは、随分とよく働いてくれる。本当に助かっている。
その時だった、ビクッとお腹が動いた気がした。これはもしかして、胎動ってやつ?早速アーサー様に駆け寄り
「アーサー様、今赤ちゃんが動きましたわ。ほら」
そう言ってアーサー様の手を持ち上げ、お腹に当てた。でも、全然動かない。
「おかしいですわね。全く動きませんわ。でも、さっきは確かに動いた様な気がしたのですが…」
こてんと首を傾げていると
「ローラ様、まだまだ赤ちゃんは小さいので、中々胎動を感じる事は少ないですわ。そのうち、痛いぐらいに動きますので」
そう言ってクスクス笑っているダリア。
「あら、そうなのね。それじゃあもっとしっかり動くようになったら、またアーサー様に報告するわ」
早くもっと動くようにならないかしら…
「ローラ様、お手紙が届いております」
その時だった。モカラが手紙を持ってきてくれたのだ。宛名は、カールズ王国の王女、カサブランカ様だ。
「まあ、カサブランカ様だわ」
早速中を開けると、来週、急遽ペルソナ王国に来ることになった事が書かれていた。今回は王女としてではなく、私の友人としてお忍びで来るらしい。
「カサブランカ様が来てくれるのね。でも急にどうしたのかしら?もしかして、ルルに何かあったのかしら?」
カサブランカ様の元には、私があげたぬいぐるみに入った妖精のルルがいる。アーサー様が生きている限り、ルルはぬいぐるみと妖精界を行き来できると言っていた。まさか…
すぐに旦那様の胸に耳を当てる。
よかった、生きているわ…
ホッと胸をなでおろす。
もしかしたら、別の要件で来るのかもしれないわね。とにかく、来週カサブランカ様とルルに会えるのね。
ワクワクした気持ちの中、ついにカサブランカ様がやって来た。
「ローラお姉ちゃん、お久しぶりですわ」
「ローラ!」
嬉しそうにこちらにやって来るカサブランカ様。さらにフワフワと浮いたぬいぐるみも、私も方にやって来た。
「カサブランカ様、ルル、お久しぶりですわ。元気そうでよかったです」
「ローラお姉ちゃん、お腹が大きいわ。もしかして、アーサー様のお子様が?」
「はい…ですが…」
「ローラお姉ちゃん、話しは全てルルに聞いたわ。だから、無理して話さなくても大丈夫よ」
泣きそうな私の顔を見たカサブランカ様が、私の話しを制止した。
「ルルから聞いたのですね…」
そっとルルの入っているぬいぐるみを手に取った。
カサブランカ様を喜ばせたい一心で作ったこのぬいぐるみ、アーサー様が自分の信念を曲げてまで、ルルにぬいぐるみに入ってくれる様に、頼んでくれたのよね。
アーサー様…
気が付くと涙が溢れて来た。
「ローラ、泣かないで。そうだわ、ちょっと待っていてね」
今まで軽く浮いていたぬいぐるみが、急に重くなった。まるでルルがぬいぐるみから出て行った様な感覚だ。
その時だった。
「ローラ!」
この声は…
「キーキ、キーキなの?」
ふわりと浮いたぬいぐるみから、キーキの声が聞こえる。
「そうよ、キーキよ。ルルが私をここに呼んでくれたの。ローラ、会いたかったわ」
私にすり寄って来るキーキが入ったぬいぐるみ。私も強く抱きしめた。
「キーキ、私も会いたかったわ。アーサー様の意識が戻らないの…」
「ええ、知っているわ。アーサーったら、コブラの毒を受ける寸前、一瞬魔力を使おうとしたのよ。でも…結局使わずに毒をくらったの。本当に、変に頑固なんだから嫌になるわ!魔力を使っていれば助かったのに…」
「そうだったのね…でも、アーサー様らしいわ。キーキ、アーサー様の様子を教えてくれてありがとう」
キーキの入ったぬいぐるみを再び抱きしめた。
「それにしても、アーサーはいつまで寝ているつもりなのかしら?ローラのお腹に赤ちゃんがいるっていうのに。いい加減起きなさいよ!」
何を思ったのか、ふわりと浮かんだキーキ入りのぬいぐるみが、部屋から出ていく。そして私たちの寝室に入ったかと思うと、眠るアーサー様に向かって、体当たりをしているのだ。
「キーキ、ダメよ。アーサー様にそんな事をしては」
「だってアーサーの奴、ローラを散々泣かせたのよ。許せないわ。アーサー、早く起きなさいよ!」
そう言って再びアーサー様に体当たりをしているキーキ。
その時だった。ポロポロとぬいぐるみの瞳から、涙が流れているではないか。どうやらキーキが泣いている様だ。その姿を見たら、私も涙がこみ上げてきた。
そして、キーキと一緒に、抱き合って泣いたのだった。
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