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第2章
第22話:アーサー様が屋敷に戻ってきました
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アーサー様が巨大コブラの毒を受けてから、一ヶ月が過ぎようとしている。最初の数日は病院に寝泊まりして看病(と言ってただ側に付いているだけだが)していたが、さすがに長期入院になると体にも負担が掛かるという事で、病院に通うスタイルへと変わった。
ちなみに通院になってからは、私が一人で付き添っている。たまに他の人たちが、お見舞いに来てくれる感じだ。
毎朝病院に向かい、夕方近くまで病院で過ごすのが私のスタイルになった。公爵令息が泊まっている病室とあって、とても広い。ソファーや机も置かれているので、私はそこでぬいぐるみを作ったり、産まれて来る赤ちゃんの産着を縫ったりして過ごしている。
せっかくなら、この子が産まれた記念に何か残したいと思い、私とアーサー様に抱っこされた赤ちゃんのぬいぐるみを作ろうと思っている。まさか自分のぬいぐるみを作る事になるとはね。そう思いながら、自分の顔を鏡で見つつ図案を書いている。
正直アーサー様の元気な時の姿を思い浮かべると、胸が張り裂けそうになる事もある。ただそれと同時に、心の奥が温かいものに包まれる感じもするのだ。だから何度も、アーサー様の元気な時の姿を思い浮かべながら、図案を書いている。
そんな私の姿を見たお姉様が
「ローラ、あなた、随分と強くなったわね」
そう言っていた。お姉様はそう言ってくれたが、私はまだまだ弱い。アーサー様を思い、涙を流す日もしょっちゅうだ。お腹にいる子供の為にも、もっと強くならないと。
今日もアーサー様の病室で、三人のぬいぐるみを作成している。するといつもの様に、お医者様が訪ねて来た。
「失礼します。今日も診察をさせていただきますね」
そう言って診察をおこなうお医者様。
「今日も特に異常はないですね。奥様、旦那様ですが、これ以上病院にいても、特に治療する事はありません。一ヶ月様子を見ましたが、特に容体が急変する事はありませんでしたので、もしご希望されるのでしたら、自宅で療養する事も出来ますよ」
「まあ、それは本当ですか?それならば、夫が住み慣れた屋敷に連れて帰りたいですわ」
やっとアーサー様と一緒に屋敷に戻れるのね。そう思ったら、嬉しくてたまらない。
「それでは、退院の日をまた教えていただけますか?」
「分かりました、一度夫の両親とも相談して、またご連絡を致します」
話しが済むと、出て行ったお医者様。
「アーサー様、ちょっと出かけて参りますね。出来るだけ早く戻って来ますから」
眠るアーサー様の頬に口付けをして、一旦病室を出る。向かった先は、バーエンス公爵家の本家だ。
「まあ、ローラちゃん、いらっしゃい!」
急な訪問にも関わらず、お義父様とお義母様は笑顔で迎えてくれた。幸い今日はお義父様も登城していなかった様で、屋敷にいた。
「実はお医者様から、もういつアーサー様を退院させても構わないと言う許可を頂きましたの。それで、出来るだけ早く退院させたいのですが」
「まあ、それは本当?分かったわ、ローラちゃん。それなら、明日にでも退院させましょう。今からあなた達の屋敷に行き、早速準備を整えましょう」
その後、義両親の協力の元、アーサー様を迎える準備を急ピッチで整えた。そし病院側にも明日退院する旨を伝えた。
ちなみにメイソン様には、夕食の時に明日退院する事を伝えた。そう、メイソン様は今もうちの屋敷で生活をしている。もちろん、モカラ含め使用人たちが厳しく監視している。ただメイソン様も、アーサー様に気を使ってか、特に私に必要以上に絡んで来る事はない。
メイソン様も明日の退院の時は、騎士団を休んで手伝ってくれるとの事。やっぱり男手は多い方がいいものね。他にも、アルフィーお義兄様とお兄様も手伝いに来てくれる事になっている。
翌日
早速皆で病院へと向かう。一ヶ月お世話になったこの病室ともお別れだ。お世話になったお医者様や看護師さんにお礼を言い、無事退院した。
意識の無い旦那様を連れて帰るのは重労働。使用人も含め、メイソン様やお義兄様、お兄様たちにも手伝ってもらい、なんとか屋敷まで連れて帰って来た。もちろん、寝かせる場所は夫婦の寝室だ。やっぱりアーサー様には、この場所にいて欲しい!そんな思いから、この場所にしたのだ。
「皆様、今日は色々とありがとうございました。せっかくなので、アーサー様の退院祝いを行いますので、ぜひ参加していってください」
まだアーサー様の意識は戻らない。それでも、せめて屋敷に無事に帰って来たお祝いがしたいのだ。
その後、騎士団から帰って来たレオナルド様も、退院祝いの席に参加してくれた。
「退院の時に何も出来なかった俺が参加するのは、なんだか申し訳ないな」
そう言ったレオナルド様。
「何をおっしゃっているのですか!レオナルド様には、アーサー様の代わりに騎士団長の仕事までこなして頂いているのです。本当に感謝しているのですよ。ありがとうございます」
新たに騎士団長をたてるという話が出た時、レオナルド様が
「アーサーが目覚めた時、騎士団長の席が埋まっていたらショックを受けるかもしれません。俺がアーサーの分も働きます。ですから、どうかこの部隊の騎士団長の席は開けておいてください」
そう他の騎士団長の懇願してくれたらしい。本当にレオナルド様には、感謝してもしきれない程の恩があるのだ。
皆との束の間の楽しい時間を過ごした後は、アーサー様の待つ夫婦の寝室へと向かう。
「アーサー様、お待たせしてごめんなさい。今日からまた一緒に眠る事が出来ますね。ずっとこの日を待っていたのですよ。随分と時間が掛かってしまいましたが、この日を迎えられた事、とても嬉しく思いますわ。そして改めて”お帰りなさい、アーサー様”」
まだ目覚めないアーサー様にそっと寄り添い、眠りに付いたのだった。
ちなみに通院になってからは、私が一人で付き添っている。たまに他の人たちが、お見舞いに来てくれる感じだ。
毎朝病院に向かい、夕方近くまで病院で過ごすのが私のスタイルになった。公爵令息が泊まっている病室とあって、とても広い。ソファーや机も置かれているので、私はそこでぬいぐるみを作ったり、産まれて来る赤ちゃんの産着を縫ったりして過ごしている。
せっかくなら、この子が産まれた記念に何か残したいと思い、私とアーサー様に抱っこされた赤ちゃんのぬいぐるみを作ろうと思っている。まさか自分のぬいぐるみを作る事になるとはね。そう思いながら、自分の顔を鏡で見つつ図案を書いている。
正直アーサー様の元気な時の姿を思い浮かべると、胸が張り裂けそうになる事もある。ただそれと同時に、心の奥が温かいものに包まれる感じもするのだ。だから何度も、アーサー様の元気な時の姿を思い浮かべながら、図案を書いている。
そんな私の姿を見たお姉様が
「ローラ、あなた、随分と強くなったわね」
そう言っていた。お姉様はそう言ってくれたが、私はまだまだ弱い。アーサー様を思い、涙を流す日もしょっちゅうだ。お腹にいる子供の為にも、もっと強くならないと。
今日もアーサー様の病室で、三人のぬいぐるみを作成している。するといつもの様に、お医者様が訪ねて来た。
「失礼します。今日も診察をさせていただきますね」
そう言って診察をおこなうお医者様。
「今日も特に異常はないですね。奥様、旦那様ですが、これ以上病院にいても、特に治療する事はありません。一ヶ月様子を見ましたが、特に容体が急変する事はありませんでしたので、もしご希望されるのでしたら、自宅で療養する事も出来ますよ」
「まあ、それは本当ですか?それならば、夫が住み慣れた屋敷に連れて帰りたいですわ」
やっとアーサー様と一緒に屋敷に戻れるのね。そう思ったら、嬉しくてたまらない。
「それでは、退院の日をまた教えていただけますか?」
「分かりました、一度夫の両親とも相談して、またご連絡を致します」
話しが済むと、出て行ったお医者様。
「アーサー様、ちょっと出かけて参りますね。出来るだけ早く戻って来ますから」
眠るアーサー様の頬に口付けをして、一旦病室を出る。向かった先は、バーエンス公爵家の本家だ。
「まあ、ローラちゃん、いらっしゃい!」
急な訪問にも関わらず、お義父様とお義母様は笑顔で迎えてくれた。幸い今日はお義父様も登城していなかった様で、屋敷にいた。
「実はお医者様から、もういつアーサー様を退院させても構わないと言う許可を頂きましたの。それで、出来るだけ早く退院させたいのですが」
「まあ、それは本当?分かったわ、ローラちゃん。それなら、明日にでも退院させましょう。今からあなた達の屋敷に行き、早速準備を整えましょう」
その後、義両親の協力の元、アーサー様を迎える準備を急ピッチで整えた。そし病院側にも明日退院する旨を伝えた。
ちなみにメイソン様には、夕食の時に明日退院する事を伝えた。そう、メイソン様は今もうちの屋敷で生活をしている。もちろん、モカラ含め使用人たちが厳しく監視している。ただメイソン様も、アーサー様に気を使ってか、特に私に必要以上に絡んで来る事はない。
メイソン様も明日の退院の時は、騎士団を休んで手伝ってくれるとの事。やっぱり男手は多い方がいいものね。他にも、アルフィーお義兄様とお兄様も手伝いに来てくれる事になっている。
翌日
早速皆で病院へと向かう。一ヶ月お世話になったこの病室ともお別れだ。お世話になったお医者様や看護師さんにお礼を言い、無事退院した。
意識の無い旦那様を連れて帰るのは重労働。使用人も含め、メイソン様やお義兄様、お兄様たちにも手伝ってもらい、なんとか屋敷まで連れて帰って来た。もちろん、寝かせる場所は夫婦の寝室だ。やっぱりアーサー様には、この場所にいて欲しい!そんな思いから、この場所にしたのだ。
「皆様、今日は色々とありがとうございました。せっかくなので、アーサー様の退院祝いを行いますので、ぜひ参加していってください」
まだアーサー様の意識は戻らない。それでも、せめて屋敷に無事に帰って来たお祝いがしたいのだ。
その後、騎士団から帰って来たレオナルド様も、退院祝いの席に参加してくれた。
「退院の時に何も出来なかった俺が参加するのは、なんだか申し訳ないな」
そう言ったレオナルド様。
「何をおっしゃっているのですか!レオナルド様には、アーサー様の代わりに騎士団長の仕事までこなして頂いているのです。本当に感謝しているのですよ。ありがとうございます」
新たに騎士団長をたてるという話が出た時、レオナルド様が
「アーサーが目覚めた時、騎士団長の席が埋まっていたらショックを受けるかもしれません。俺がアーサーの分も働きます。ですから、どうかこの部隊の騎士団長の席は開けておいてください」
そう他の騎士団長の懇願してくれたらしい。本当にレオナルド様には、感謝してもしきれない程の恩があるのだ。
皆との束の間の楽しい時間を過ごした後は、アーサー様の待つ夫婦の寝室へと向かう。
「アーサー様、お待たせしてごめんなさい。今日からまた一緒に眠る事が出来ますね。ずっとこの日を待っていたのですよ。随分と時間が掛かってしまいましたが、この日を迎えられた事、とても嬉しく思いますわ。そして改めて”お帰りなさい、アーサー様”」
まだ目覚めないアーサー様にそっと寄り添い、眠りに付いたのだった。
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