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第33話:今の僕が出来る精一杯の事【中編】~アレホ視点~

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「昨日の夜会でトラブルですか?殿下がわざわざ私たちを呼びだすという事は、まさかリリアーナに何かあったのですか?でも、昨日の夜も今朝も変わった様子はありませんでしたが…」

公爵が困惑顔で話をしている。公爵は僕が魅了魔法に掛かり、リリアーナが深く傷ついてから、随分とリリアーナの事を気にかけている様だ。

「実は昨日、リリアーナに向かって、4人の令嬢たちが酷い暴言を吐いているところを目撃しまして。もちろん、令嬢たちにはその場で注意しましたが、内容があまりにも酷すぎるため、各家に抗議をしようと思いまして」

「何だって!リリアーナに暴言をですって!リリアーナはただでさえ、殿下やマルティ嬢に酷い暴言を受けてきて辛い思いをしていたのです。やっと暴言を吐く人間もいなくなったと思ったら、まだいただなんて」

公爵、今サラッと僕がリリアーナに暴言を吐いていたと言ったよな…事実だから言い返すことも出来ないが…第三者からはっきりと告げられると、やはり傷つく。

て、今は僕の事はどうでもいい。

「とにかく昨日の会話を録音しておりますので、お聞きください」

昨日の会話を再生させた。すると、みるみる顔が鬼の様になっていく公爵。隣で同じく、今にも爆発しそうな父上の姿も。もちろん僕も、何度聞いても胸糞悪い内容だ。

「何なんですか、これは!リリアーナは殿下が魅了魔法に掛かって、本当に傷ついたのですよ。その傷に塩を塗る様な暴言、許すことは出来ない!すぐに彼女たちの家に、猛抗議をしよう」

「公爵の言う通りだ。そもそも、あの時の話は貴族界では掘り返さないという事で、話しはまとまったはずだ。それなのにこの令嬢たちは。とにかく、近いうちに関係者を集めよう。公爵ももちろん参加してくれるよな」

「もちろんです!早速関係者を王宮に呼び出してください!私の可愛いリリアーナに、殿下やマルティ嬢以外にも暴言を吐く奴がいるだなんて!」

「公爵…あの…魅了魔法に掛かっていたとはいえ、本当に申し訳ありませんでした。公爵が今でも僕に対して怒りを感じていることがよくわかりました。それでも僕は、リリアーナを愛しています。もちろん、今までの事を水に流して欲しいとは考えておりません。ただ、これからの僕を見て行って下されは嬉しいです」

よほど僕がリリアーナを傷つけたことが気に入らないのだろう。2回も僕がリリアーナに暴言を吐いた事を持ち出してくるだなんて。

「殿下、私は別にその様な事は。ただ、確かに殿下が魅了魔法に掛かっていた時の、リリアーナに対する態度には腸が煮えくり返るほどの怒りを覚えました。いくら魅了魔法に掛かっていたからと言って、あれは酷すぎるでしょう」

「ええ、ごもっともです」

「大体殿下はリリアーナを愛しているのなら、どうして魅了魔法なんかに掛かるのですか?殿下の愛情がたりなかったから、その様な魔法に掛かったのではないのですか?」

ん?何だと!

公爵の言葉を黙って聞き入れていた僕も、今の言葉はさすがに容認できない!

「確かに僕は、魅了魔法などというものに掛かってしまいましたが、僕はリリアーナを心から愛しています。それだけは分かって頂きたい!」

「2人とも落ち着いてくれ。とにかく今は、リリアーナ嬢を傷つけた令嬢たちとその家族との話し合いを行うという事でいいな。それから公爵、お前の気持ちもわかるが、どうかあまりアレホを虐めないでやってくれ。こいつなりに、相当傷つき反省しているのだから」

「ええ…分かっていますよ。ただ…リリアーナの今にも命の灯が消えそうな姿を思い出すと、どうしても殿下に怒りを覚えてしまうのです。私だって、魔法のせいだという事も、あの魔法を防ぐことが出来ない事も知っています。それでも父親としてやるせないのです」

そうって唇を噛む公爵。

「公爵の言う通りです。僕はリリアーナに最低な事をしました。それは一生消える事のない事実。もう過去は変えられません。でも…未来は変えられると僕は信じています。とにかくこれ以上リリアーナを傷つける愚か者が現れない様に、徹底的に4人の令嬢を潰しましょう」

過去は変えられない。それならせめて、未来に託したい。我ながら自分本位な考えという事は分かっている。それでも僕は、出来る事をやりたいのだ。

そして数日後
リリアーナに暴言を吐いた令嬢たち4人と、その家族が王宮へとやっていた。既に娘たちから話しは聞いているのか、皆暗い顔をしている。令嬢たちは泣きはらしたのか、目が真っ赤だ。

「君たち、なぜ今日王宮に来てもらったか、わかるかい?」

父上が優しく話しかける。ただ、マレステーノ公爵は鬼の形相で彼女たちを睨んでいる。もちろん僕も、その横で彼女たちを睨んだ。

「本当に申し訳ございませんでした。私達、ほんの出来心で…」

「そうなのです。まさかあんな大事になるだなんて…」

ポロポロと涙を流しながら、必死に訴える令嬢たち。

「娘が本当に申し訳ございませんでした。娘はあの日以降、食事も喉を通らない状況でして…」

「うちの娘もです。どうかお許し願えないでしょうか?」

こいつら、何を言っているのだ?許せる訳がないだろう!

「君たち、僕は…」

「殿下、ここは私が!」
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