大好きだった人には振られましたが、なぜかヤンデレ王太子に溺愛されました

Karamimi

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第37話:ワイアット様の卒業パーティーに私も参加します【後半】

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「ワイアット様!」

「アリア、大丈夫かい?」

後ろからギューッと抱きしめてくれるワイアット様。ふとモカの方を見てみると、アルフレッド様がモカを庇う様に立っていた。

「ディーズ嬢、俺の可愛いアリアを突き飛ばすとはどういう了見だい?」

今ディーズ嬢って言ったわよね。そうか、ディーズ公爵家のご令嬢だったのね。

「まあ、この女…失礼!令嬢は殿下の婚約者のアリア嬢でしたか?名前は聞いておりましたが、お顔は拝見した事がありませんでしたので存じ上げませんでしたわ。何分ずっと海外におりましたので。さっき帰国いたしましたの。そしたらアルフレッド様があろう事か、伯爵令嬢なんかと婚約したと聞いて驚きましたわ。アルフレッド様、何かのご冗談ですわよね!」

ディーズ嬢が真っすぐアルフレッド様の方を向いて聞き返している。

「いいや、本当だ。俺は彼女を心から愛している!そもそも君とは別に婚約していた訳ではない!それなのにモカに文句を言うなんて、お門違いもいいところだ!」

「何ですって!それではやっぱり、こんな伯爵令嬢と婚約したという事は本当なのね。それなら今すぐ婚約を解消して下さいませ!私はずっとあなた様が好きだったのです!」

「ふざけた事を言うな!この際だからはっきり言っておく!俺は子供の頃からお前が大嫌いだったんだ!傲慢で我が儘で!ずっと言っていただろう!お前とは結婚なんて死んでもしないと!」

珍しくアルフレッド様が怒っている。いつも穏やかな表情のアルフレッド様しか見た事が無かったから、なんだかびっくりだわ。

「何ですって!ふざけないでよ!そもそもあんたさえいなければ、アルフレッド様は私のものだったのに!」

ディーズ嬢が怒り狂って、モカに襲い掛かろうとした時だった!

「いい加減止めないか!今日は大切な卒業パーティーだ!そもそも、学院の人間でもないのに、どうやって入り込んだのだ!これはれっきとした不法侵入罪に値する。そして、王太子でもある俺の婚約者を突き飛ばした事、正式に公爵家に抗議させてもらうからそのつもりで!おい、この不法侵入者をつまみ出せ!」

ワイアット様の言葉で、護衛騎士たちがディーズ嬢を取り押さえ、連行していく。

「ちょっと、放しなさい!私は公爵令嬢なのよ!」

騎士たちに向かって叫んでいるが、王太子と公爵令嬢だったら、どう考えても王太子の方が上である。無事退場していった姿を見届けたところで

「皆、見苦しい場面を見せてしまってすまなかった。さあ、続きを始めよう!」

そう叫んだワイアット様。

「アリア、もう少しだけ待っていてね」

そう言ってアルフレッド様と壇上に戻って行った。そして何食わぬ顔で挨拶を済ませる2人。周りも先ほどの乱入が無かったかの様に振舞っている。さすがね…

「モカ、大丈夫だった?」

「ええ、私は大丈夫よ。さっきは庇ってくれてありがとう。あまりの令嬢の迫力に、怖くて動けなかったのよね。本当に情けないわ…」

「何言っているのよ。私がワイアット様と婚約してすぐに令嬢に絡まれた時、モカが助けてくれたじゃない。これでおあいこね!」

そう言って2人で笑っていると、ワイアット様とアルフレッド様が戻ってきた。

「アリア嬢、モカを守ってくれて本当にありがとう!今回の件は完全な俺の不手際だ!まさかあの女が帰国していたなんて知らなかった。モカ、君にも怖い思いをさせてしまってすまなかった。もう二度とあの女を君に近づけさせないから、安心して欲しい」

そう言ってモカを抱きしめているアルフレッド様。

「アルフレッド、大丈夫だよ。あの女はアリアに手を出したんだ!多分近いうちに再び留学と称してこの国から居なくなるよ!さすがに今回こんな騒ぎを起こしたし、公爵もバカではないからね」

悪そうな顔で笑っているワイアット様。ディーズ嬢、大丈夫かしら…

その後は4人で食事をしたり、それぞれのパートナーと一緒にダンスをしたりして過ごした。ワイアット様の友人にもご挨拶をした。楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。

「それじゃあアリア、また新学期に会いましょう」

「ええ、モカも元気でね」

モカとアルフレッド様と別れた後、ワイアット様と一緒に馬車に乗り込む。そう、明日から2週間程度のお休みに入る。ただ私は王妃教育、ワイアット様は王太子としての仕事があるので、他の貴族みたいに旅行に行ったりする事は出来ない。

「アリア、せっかく明日から長期休みなのに、どこにも連れて行ってあげられずにごめんね」

申し訳なさそうに謝るワイアット様。

「私はワイアット様と一緒にいられれば、どこにも行かなくても問題ありませんわ。そうだ、明日は久しぶりにケーキを焼いてきますね!そして一緒にバラ園で食べましょう」

「それは楽しみだな!アリアの作ったケーキは、とても美味しいからね!それじゃあ俺は海外から取り寄せた珍しいお茶を準備しておくよ!」

「まあ、それは楽しみですわ!そうそう、すっかり忘れていました!ワイアット様、改めて貴族学院ご卒業おめでとうございます」

奇麗にラッピングしたハンカチ10枚を、ワイアット様に渡した。

「これを俺にかい?開けてもいいかな?」

「もちろんです!」

ゆっくりラッピングを外すワイアット様。

「ハンカチだ!それも1つ1つ丁寧に刺繍が入れてあるものが10枚も!まさかこの刺繍も、アリアが全部入れてくれたのかい?」

「はい、さすがに10枚は多かったですかね?」

ちょっと張り切りすぎたかもしれない…そう思ったのだが…

「アリア!本当に君は最高だ!アリアが俺の為に入れてくれた刺繍だ!全て額に入れて飾っておくよ!」

「せっかくなので使ってください!それにハンカチに刺繍を入れるくらい、いつでもできます!もしまた必要になったら、すぐに入れますので!」

とにかく普段使いで使って欲しいと伝え、何とか納得してくれた様だ。

結局伯爵家に着くまで、ずっと嬉しそうにハンカチを眺めていたワイアット様。この程度の刺繍でそこまで喜んでもらえるなんて…やっぱりワイアット様は最高ね!



~あとがき~
いつもお読みいただき、ありがとうございますm(__)m
今回で比較的ほのぼのとした話は一旦終わりになります。

次回からシリアスな話に入って行く予定です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
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