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第85話:国に帰ります

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翌朝、アデル様の家の馬車に荷物を詰め込んだ。

「それじゃあおばあ様、お兄様、アリサお義姉様、お世話になりました。また再来月来ますから」

「ローズ、くれぐれもアデル様のご両親によろしく伝えておくれ。アデル様、どうかローズの事、よろしくお願いいたします」

深々と頭を下げるおばあ様。

「大丈夫ですよ、おばあ様。僕が責任をもって、ローズを幸せにしますから。それでは、また再来月」

「ローズちゃん、アデル様と幸せにね。アデル様、ローズちゃんの事、よろしくお願いします。ほら、ローランドも!」

「アデル殿、ローズの事、お願いします…」

アリサお義姉様に促され、しぶしぶアデル様にお願いしているお兄様。なんだかんだ言って、お兄様はアリサお義姉様に弱い様だ。

「アリサお義姉様こそ、どうかお兄様をよろしくお願いしますね」

「ええ、任せえておいて」

胸を叩い手得意そうな顔を知るアリサお義姉様。その姿を見て、なんだか笑いがこみ上げてきた。

「ローズ、そろそろ行こうか」

アデル様に促され、馬車に乗り込んだ。やっぱり別れは辛いもの。ゆっくりは走り出す馬車から身を乗り出し、3人に手を振る。そんな私を見て、3人も手を振り返してくれた。

「さあ、ローズ、そろそろ座ろうか。あまり身を乗り出していると危ないよ」

アデル様に腰を引っ張られ、そのまま座らされた。

「ローズ、またすぐに会えるから。そんな悲しそうな顔をしないで」

「ええ、分かっていますわ。そうそう、アデル様。私はアデル様のお家でお世話になるのですよね」

「ああ、そうだよ。君の家の使用人たちも、何人かは家で雇う事になったよ。希望を募ったら、結構来てくれると言ってくれてね。料理長や専属メイドたちも、君の帰りを待っているよ」

「まあ、それは本当ですか?それは嬉しいですわ。でも、そんなことをして、アデル様のご両親は大丈夫ですの?私、受け入れられるかしら?」

「問題ないよ。特に母上は、君とお茶をするのを楽しみにしているらしい。ただ…結構強引な母上だから、無理をして付き合う必要は無いからね。基本的に、勝手に離れには来ない様に、きつく言ってあるから大丈夫だと思うけれど…」

そう言って苦笑いをしている。

アデル様のご両親は、お優しい方だという事は私も知っている。きっと大丈夫だろう。

行きと同じように、休憩を挟みつつ進んでいく。ただ、行きと違う点は、大好きなアデル様が傍にいるという事だ。アデル様が傍にいるだけで、時間があっという間に過ぎていくのだ。結局3日とも、退屈することなくあっという間に母国に戻ってきた。

そして、アデル様の屋敷が見えてきた。なんだか緊張してきたわ。

屋敷に着くと、アデル様のご両親とグラス様、ティーナ様とディーオン様、ご両親、さらに我が家にいた使用人たちも待っていてくれた。

「別に出迎えはいらないと言っておいたのに…」

なぜかアデル様が不満そうな顔をしている。

「さあ、ローズ、さっさとあいつらをあしらって、離れに行こう。今日はもう疲れているだろう。それじゃあ、行こうか」

せっかく私の為に集まって下さっているのに、あしらうだなんて。そう思いつつ、馬車から降りると。

「ローズ様、おかえりなさい。寂しかったですわ!」

ティーナ様が飛びついて来た。相変わらず可愛らしいティーナ様。それに、いい香りもする。

「ティーナ様、お出迎えありがとうございます。私もティーナ様に会いたかったですわ」

ギューッとティーナ様を抱きしめようとしたのだが、後ろからアデル様に腕を引っ張られ、引き離されてしまった。

「ティーナ、ローズに抱き着くのは止めてくれ。そもそもローズは疲れているんだよ」

「あら、少しくらい…」

「アデルの言う通りだ。いくら友人が帰ってきたからって、抱き着くのは良くないよ」

後ろからティーナ様を抱きしめながら、グラス様が呟いた。相変わらずグラス様の嫉妬深さは健在のようだ。

「グラスだけでなく、アデルまで嫉妬深いとは。これはローズ嬢も大変だね」

ハハハハハと笑っているのは、ティーナ様のお兄様、ディーオン様だ。なぜかディーオン様から私を隠すようなそぶりを見せているアデル様。一体どうしたのかしら?

「ローズちゃん、ようこそ我が家へ。あなたが来るのを、心待ちにしていたのよ。さあ、疲れたでしょう。入って。今日はちょっとした宴を準備してあるの。あなたが我が家に来てくれたお祝いよ」

アデル様のお母様が、にっこり笑ってそう言ってくれた。

「今日からお世話になります。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」

アデル様のご両親に向かって、深々と頭を下げた。

「ローズ嬢、もう私たちは君の事を娘だと思っている。遠慮はいらないよ。ほら、中に入ろう」

アデル様のご両親は、本当に優しくていい人だ。この人たちと、いずれ家族に…
そう思ったら、温かい気持ちで包まれたのだった。
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