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第6話:やっぱり我が家は最高です
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王宮での辛い生活を思い出したら、自然と涙が込みあげてきた。ダメよ、人前で泣いてはいけないと、あれほど強く言われたじゃない。必死に涙をこらえる。
無意識に、自分の手をつねっていた。
「フランソア、何をしているのだい?君の可愛い手が赤くなっているではないか?もしかして、涙を堪えているのかい?どうしたんだい?何か辛い事や気に入らないことがあったのかい?」
心配そうにデイズお兄様が私の顔を覗き込んできた。
「ごめんなさい…大丈夫ですわ。ただ…こうやって誰かと食事が出来るのが嬉しくて。王宮ではずっと1人だったので」
「そうだったのか。可哀そうに…もう二度と君を1人で食事させるような事はさせないから、安心して欲しい」
「ありがとうございます」
必死に涙を堪える。
「だから、どうして自分の手を傷つけるのだい?そんな事をしたら、痛いだろう?」
無意識に自分の手をつねっていた様で、デイズお兄様が私の手を握り、無理やり止めさせた。
「あの…お取込み中失礼いたします。お嬢様は人前で泣くなと、厳しく言われておりました。人前で泣いてしまった時は、酷く叱責を受けておりまして…それでお嬢様は、涙が流れそうになると、そのようにご自分の手を傷つけ、泣かない様に必死に耐えておられるのです。きっと人前で泣こうとしてしまったご自分に、罰を与えていらっしゃるのでしょう…」
「何だって!王宮ではその様な酷い扱いを受けていたのか!なんて酷い事を!フランソア、人前で泣く事はダメな事じゃない。もう君はお妃候補でも何でもないんだ。好きなだけ泣いてもいい。もう君を虐める意地悪な奴も、君を大切にしない酷い王太子も、君に嫌味を吐く腹黒のお妃候補たちもいない。だからどうか、何も我慢しないでくれ!泣きたいだけないてもいい。それでも泣き顔を見られたくないというのなら、僕の胸で泣いて」
そう言うと、私を抱きしめてくれたデイズお兄様。
お兄様の優しい温もりに包まれた瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出した。そんな私の頭を、デイズお兄様が優しく撫でてくれる。さらにお父様とお母様が、デイズお兄様事包む様に、抱きしめてくれていた。
「可哀そうに…フランソアから感情を奪ってしまうだなんて…何が王妃教育よ…フランソアをここまで壊したあの人たちが許せないわ」
お母様もいつの間にか泣いていた。
「とにかくフランソアはお妃候補を辞退したんだ。もう二度と、ジェーン殿下や王族たちと関わらせるのは辞めよう。あいつらに関わると碌なことにならない。とにかく、王族とは付かず離れずで距離を保ちながら生活をすればいい。やはり第一王子の…いいや、何でもない」
第一王子?
よくわからないが、やっぱり家族は最高だ。でも、元はと言えば私がお妃候補になりたいと言ったばかりに、家族を傷つける結果になってしまった。本当に申し訳ない…
あの時の自分の浅はかさが、心底嫌になる。
「デイズお兄様、お父様、お母様、ありがとうございます。少し落ち着きましたわ。なんだか泣いたらすっきりして、お腹が空いてきました。食事の続きをしてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。さあ、フランソア、沢山食べて」
デイズお兄様が嬉しそうに食事をすすめてくれた。両親も私を見て笑っている。これからはずっと、皆で暮らせる。そう思ったら、なんだか嬉しくてたまらない。
デザートには美味しそうな苺のタルトが出て来た。私の大好物、苺がこれでもかというくらい乗っている。美味しそうね。
「フランソアは苺が大好きだったね。はい、僕のもあげるよ。たくさん食べて」
デイズお兄様が、すかさず苺のタルトをくれた。
「お母様のも食べなさい」
「お父様のも食べてもいいぞ」
すかさず両親もタルトを差し出してくれた。
「でも…こんなに沢山デザートを食べたら、太ってしまうから…1日小さなデザート1つと…王宮では…」
「何だと!食事まで制限していたのか!フランソアにどこに太る要素があるというのだ!逆に痩せすぎなくらいだ!」
「義父上の言う通りです!フランソア、王宮では随分意地悪をされた様だが、ここでは好きなだけ食べていいのだよ。大体1日くらい、タルトを沢山食べたところで、そんなに太る訳がない。さあ、好きなだけ食べて」
「ありがとうございます。でも、さすがにこんなにはたくさん食べられませんわ。せっかくなので、1つだけ頂きます」
既にお腹もいっぱいだ。タルトも1つで十分。
「そうか…それは残念だな。でも、今まで王宮で虐げられてきたのだから、急に生活を変えろと言われても無理だろう。少しづつ、昔の生活を取り戻していこう」
そう言って、デイズお兄様が再び抱きしめてくれた。
昔の生活か…
お父様がいてお母様がいて、毎日とても幸せだったな…
それに今は、デイズお兄様もいてくれるのだ。それが嬉しくてたまらない。
食後が終わると自室に戻って来て、久しぶりに湯あみをする。カルア以外のメイドたちと久しぶりに会話をしながらの湯あみは、最高に気持ちよかった。
王宮には、メイドを1名しか連れて行けなかったものね…私にはカルア以外にも、私の事を大切に思ってくれている使用人が、こんなに沢山いるのだ。こんな幸せな事はないわ。
そしてフカフカのベッドに入った。懐かしいわ、我が家の匂いがする。私、このベッドの匂いが一番好き。
やっぱり我が家が一番ね。
このままずっと、この家で皆で暮らせたら…
そんな事を考えながら、眠りについたのだった。
無意識に、自分の手をつねっていた。
「フランソア、何をしているのだい?君の可愛い手が赤くなっているではないか?もしかして、涙を堪えているのかい?どうしたんだい?何か辛い事や気に入らないことがあったのかい?」
心配そうにデイズお兄様が私の顔を覗き込んできた。
「ごめんなさい…大丈夫ですわ。ただ…こうやって誰かと食事が出来るのが嬉しくて。王宮ではずっと1人だったので」
「そうだったのか。可哀そうに…もう二度と君を1人で食事させるような事はさせないから、安心して欲しい」
「ありがとうございます」
必死に涙を堪える。
「だから、どうして自分の手を傷つけるのだい?そんな事をしたら、痛いだろう?」
無意識に自分の手をつねっていた様で、デイズお兄様が私の手を握り、無理やり止めさせた。
「あの…お取込み中失礼いたします。お嬢様は人前で泣くなと、厳しく言われておりました。人前で泣いてしまった時は、酷く叱責を受けておりまして…それでお嬢様は、涙が流れそうになると、そのようにご自分の手を傷つけ、泣かない様に必死に耐えておられるのです。きっと人前で泣こうとしてしまったご自分に、罰を与えていらっしゃるのでしょう…」
「何だって!王宮ではその様な酷い扱いを受けていたのか!なんて酷い事を!フランソア、人前で泣く事はダメな事じゃない。もう君はお妃候補でも何でもないんだ。好きなだけ泣いてもいい。もう君を虐める意地悪な奴も、君を大切にしない酷い王太子も、君に嫌味を吐く腹黒のお妃候補たちもいない。だからどうか、何も我慢しないでくれ!泣きたいだけないてもいい。それでも泣き顔を見られたくないというのなら、僕の胸で泣いて」
そう言うと、私を抱きしめてくれたデイズお兄様。
お兄様の優しい温もりに包まれた瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出した。そんな私の頭を、デイズお兄様が優しく撫でてくれる。さらにお父様とお母様が、デイズお兄様事包む様に、抱きしめてくれていた。
「可哀そうに…フランソアから感情を奪ってしまうだなんて…何が王妃教育よ…フランソアをここまで壊したあの人たちが許せないわ」
お母様もいつの間にか泣いていた。
「とにかくフランソアはお妃候補を辞退したんだ。もう二度と、ジェーン殿下や王族たちと関わらせるのは辞めよう。あいつらに関わると碌なことにならない。とにかく、王族とは付かず離れずで距離を保ちながら生活をすればいい。やはり第一王子の…いいや、何でもない」
第一王子?
よくわからないが、やっぱり家族は最高だ。でも、元はと言えば私がお妃候補になりたいと言ったばかりに、家族を傷つける結果になってしまった。本当に申し訳ない…
あの時の自分の浅はかさが、心底嫌になる。
「デイズお兄様、お父様、お母様、ありがとうございます。少し落ち着きましたわ。なんだか泣いたらすっきりして、お腹が空いてきました。食事の続きをしてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。さあ、フランソア、沢山食べて」
デイズお兄様が嬉しそうに食事をすすめてくれた。両親も私を見て笑っている。これからはずっと、皆で暮らせる。そう思ったら、なんだか嬉しくてたまらない。
デザートには美味しそうな苺のタルトが出て来た。私の大好物、苺がこれでもかというくらい乗っている。美味しそうね。
「フランソアは苺が大好きだったね。はい、僕のもあげるよ。たくさん食べて」
デイズお兄様が、すかさず苺のタルトをくれた。
「お母様のも食べなさい」
「お父様のも食べてもいいぞ」
すかさず両親もタルトを差し出してくれた。
「でも…こんなに沢山デザートを食べたら、太ってしまうから…1日小さなデザート1つと…王宮では…」
「何だと!食事まで制限していたのか!フランソアにどこに太る要素があるというのだ!逆に痩せすぎなくらいだ!」
「義父上の言う通りです!フランソア、王宮では随分意地悪をされた様だが、ここでは好きなだけ食べていいのだよ。大体1日くらい、タルトを沢山食べたところで、そんなに太る訳がない。さあ、好きなだけ食べて」
「ありがとうございます。でも、さすがにこんなにはたくさん食べられませんわ。せっかくなので、1つだけ頂きます」
既にお腹もいっぱいだ。タルトも1つで十分。
「そうか…それは残念だな。でも、今まで王宮で虐げられてきたのだから、急に生活を変えろと言われても無理だろう。少しづつ、昔の生活を取り戻していこう」
そう言って、デイズお兄様が再び抱きしめてくれた。
昔の生活か…
お父様がいてお母様がいて、毎日とても幸せだったな…
それに今は、デイズお兄様もいてくれるのだ。それが嬉しくてたまらない。
食後が終わると自室に戻って来て、久しぶりに湯あみをする。カルア以外のメイドたちと久しぶりに会話をしながらの湯あみは、最高に気持ちよかった。
王宮には、メイドを1名しか連れて行けなかったものね…私にはカルア以外にも、私の事を大切に思ってくれている使用人が、こんなに沢山いるのだ。こんな幸せな事はないわ。
そしてフカフカのベッドに入った。懐かしいわ、我が家の匂いがする。私、このベッドの匂いが一番好き。
やっぱり我が家が一番ね。
このままずっと、この家で皆で暮らせたら…
そんな事を考えながら、眠りについたのだった。
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