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第13話:魔石をお披露目します

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「さあ、食事も終わったし、早速中庭に行こうか?」

「はい!」

食事を終え、席を立とうとした時だった。

「ハリー殿下、陛下がお呼びです。至急執務室にいらしてください。カトリーナ殿もご一緒に」

声を掛けて来たのは、グラス様だ。きっと完成したばかりの魔石を、お披露目するのだろう。

「カトリーナもかい?わかったよ。すぐに行こう」

3人で向かった先は、執務室と呼ばれる場所だ。部屋に入ると、既に陛下と王妃様、王太子殿下、さらに見た事もない男性が数名ほどいた。あの人たちは誰かしら?すると、1人の若い男性が私たちの方にやって来た。

「この方がハリー殿下に魔力を提供している、カトリーナ王女ですね。お噂通り、お美しいお方だ。初めまして。私はドミューダ公爵家の嫡男、アーレと申します」

スッと手を伸ばしてきた男性は、公爵令息の様だ。きっとこの国を代表する貴族なのだろう。ここは私も挨拶をしないとね。

「お初にお目にかかります。アーレ様。私はカトリーナと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

軽くカーテシーを決めた後、彼の手を握ろうとしたのだが、なぜかハリー様に阻止された。

「アーレ、悪いが彼女に触らないでくれるかい?」

どうしてアーレ様に触れるとまずいのかしら?よくわからないが、何かあるのかもしれない。

「ごめんなさいね。ハリーは少し嫉妬深い様で…」

「いえ、僕がいけなかったので、気にしないでください。王妃様」

若干苦笑いのアーレ様。何とも言えない空気が流れる。その時だった。

「遅くなり申し訳ございません」

やって来たのは、ラクレス様だ。

「待っていたよ。それで、今日は一体どんな発明を見せてくれるんだい?」

なぜか嬉しそうな陛下。王妃様や王太子殿下、他の男性たちも興味津々でラクレス様を見つめている。ただ約1名、ジト目でラクレス様を睨んでいる人が…グラス様だ。そんなグラス様の視線など、全く感じていないラクレス様が、意気揚々と話し始めた。

「はい、実は今回、魔力を人間にも提供できる石を開発いたしました。こちらがこの石です」

すかさず陛下に石を渡すラクレス様。

「ほう、この石がか。この石は、エメラルドグリーンの色をしているが…」

「ここからは私が説明いたします。陛下!」

何を思ったのか、話しに入って来たのはグラス様だ。

「実はこの石は、ハリー殿下の為に、私とカトリーナ殿が発案し、ラクレス殿に開発を依頼したものでございます!この石を身につけていれば、たとえカトリーナ殿と一緒にいなくても、魔力が欠乏する事はありません。もちろん、他の人に触れても魔力を吸収してしまう心配もないのです」

「なるほど、確かにこの石があれば、常にハリーに魔力を提供する事が出来る。さらに、魔力欠乏症の患者の治療にも使えるな」

「はい、そうでございます。この魔石を量産すれば、我が国のみならず、他国で魔力欠乏症に苦しんでいる人をも、助ける事が出来るのです」

どうだ、すごいだろう!とでも言いたげな顔で、得意げに話しをするグラス様。

「陛下、確かに発案したのはグラス殿とカトリーナ殿ですが、開発したのは私でございます。それにしても、カトリーナ殿の魔力は底なしだ。いくら使っても、すぐに生成されるのです。この3ヶ月、彼女に協力してもらいこの石を開発しましたが、本当に彼女は素晴らしいです!彼女がいれば、いくらでも魔石を作る事が出来ます!」

「ちょっと待てくれ!ではこの3ヶ月間、カトリーナは君の元に通っていたのかい?」

「はい、毎日通われていましたよ!ね、カトリーナ殿」

満面の笑みで語り掛けるラクレス様。

「殿下…これには理由が…」

「グラスもその事を知っていたのかい?3ヶ月もの間、カトリーナを実験台にしていたラクレスを野放しにしていたのかい?」

笑顔だが目が笑っていないハリー様に、詰め寄られてるグラス様。まるで蛇に睨まれたカエルね。

「ハリー様、私がグラス様にお願いして、黙っていていただいたのです。この国に来て、私を1人の人間として大切に扱ってくださるハリー様を始め、王族の方たちに喜んでもらいたくて。私は魔力量が多いくらいしか取り柄がありません。それにこの3ヶ月、とても楽しかったですわ。自分の魔力について知る事も出来ましたし!ですから、どうかグラス様を責めないでください!」

グラス様に黙っていろと言われたが、今そんな事を言ったら大変な事になるだろう。嘘も方便と言う奴だ。それに、王族の皆様に喜んで貰いたかったのは本当だし。

「あぁ、カトリーナはなんて優しいんだ。わかったよ。でも、これからはラクレスの元に向かう時は、俺と一緒に向かってほしい。3ヶ月間も、別の男たちと行動していたと考えただけで、気が狂いそうだ。いいね、分かったね!」

「はい…わかりましたわ…」

ものすごい勢いで迫られたので、つい頷いてしまった。

「コホン、とにかく、この魔石はカトリーナ殿がいれば量産は簡単にできるという事だな?ただ、彼女の体に負担がかかるような事はしたくはないのだが…」

チラリと私たちの方を見る陛下。

「カトリーナの負担になるようなことは、俺は絶対に反対だ!そもそも、俺はカトリーナから直接魔力を貰った方がいいから、この石は魔力欠乏症に苦しむ他の人たちに使ってくれ!」

なんですって!この石は、ハリー様の為に開発したのだ。ハリー様が使ってくれなければ、意味がない。

「私への負担は全くありません。むしろ魔力を適度に放出できるので、逆に体調がいいくらいです。ですからハリー様も、ぜひ魔石を使ってくださいね」

そう、私は定期的に魔力を放出した方が、逆に体調がいいのだ。

「本当かい?本当に体への負担はないのかい?」

「はい、ありませんわ」

再びものすごい勢いで詰め寄って来るハリー様。なんだか今日のハリー様、怖いわね…

「カトリーナ殿もおっしゃっている通り、彼女への負担はほとんどありません。この3ヶ月、徹底的にカトリーナ殿の魔力を分析したこの私が言うのですから、間違いありません」

胸を叩いて言い切るラクレス様。

「そうか…お前は3ヶ月間もの間一緒にいた上に、カトリーナの事を徹底的に調べ上げたのか…」

「はい、彼女の魔力は素晴らしいので。カトリーナ殿、これからも毎日塔に通ってくださいね。そうだ、宜しければあなた様には、王宮魔術師になって頂いても宜しいですよ。ねえ、陛下!」

「そ…そうだな…考えておこう…」

言葉を濁す陛下。私が王宮魔術師か、さすがにそんな事は認められないのだろう。でも、魔術師長からそう提案してもらえるなんて、嬉しいわ。

「ラクレス様、ありがとうございます。出来る事は何でもします。どうか今後とも、よろしくお願いいたします」

深々とラクレス様に頭を下げた。

この時、私とラクレス様以外の全員が、なぜか凍り付いている事に気が付かずに…
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