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番外編

公爵領での生活が始まります

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※公爵領に移り住む時のお話です。
番外編2本公開した後、ダークとのIFストーリーを公開予定です。
よろしくお願いいたしますm(__)m



ダーク様に連れ去られそうになってから早1年。この1年で、色々な事があった。王太子殿下でもあるお義兄様が、正式にフレッキュリー王国の第二王女、ヴィーナお義姉様と婚約をした。それに伴い、ヴィーナお義姉様は今、王妃教育を受けるためこの国で一緒に生活している。

さすがお義兄様が選んだ人だけの事はある。とても優しくて、私の事を本当の妹の様に可愛がってくれるのだ。それが嬉しくてたまらない。

そして、2人の婚約のお披露目が先日行われた。幸せそうな2人を見ていたら、私まで幸せな気持ちになった。

2人が正式に婚約したという事で、ハリー様は家臣に降りるため、公爵の名を先日承った。それと同時に、私たちの結婚パーティーも盛大に行われた。たくさんの人たちに祝福され、人生で一番幸せと言っても過言ではない時間を過ごしたのだ。

そして今日は、ハリー様と一緒に、私たちの新居でもある公爵領に移る日。

「カトリーナ、準備は出来たかい?」

「ええ、出来ておりますわ」

私の部屋にあった荷物は、既に運び出されている。約1年半、お世話になったこの部屋とももうお別れ。そう思うと、なんだか寂しいわね。そんな気持ちを抱えつつ、自室を出た。

ハリー様と手を繋ぎ、王宮の外に出る。後ろからはルルたちメイドが付いてきている。彼女たちは、今後も私の専属メイドとして、公爵領で暮らしてくれるらしい。本当に有難い限りね。

外に出ると、義理両親、お義兄様、お義姉様、グラス様、ラクレス様が待っていてくれた。

「カトリーナちゃん、行ってしまうのね。寂しくなるわ」

ギュッと私を抱きしめてくれるのは、お義母様だ。この温もりも、しばらくはお別れなのね。そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。

「カトリーナちゃん、ここはあなたの家でもあるのよ。もしハリー様と喧嘩をしたら、いつでも帰っていらっしゃい。両手を広げて歓迎するわ」

「義姉上、変な事を言わないでくれ」

お義姉様にすかさず反論するハリー様。でも、お義姉様のお気持ちが、嬉しくてたまらない。

「ありがとうございます。もしハリー様と喧嘩をすることがあったら、その時は愚痴を聞いて下さいますか?」

「もちろんよ。いつでも待っているわよ、カトリーナちゃん」

そう言って、ウインクをしてくれたお義姉様。本当に頼もしい人ね。

「公爵、引き続き私はあなたの補佐を行うつもりです。どうぞよろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げたのは、グラス様だ。彼もハリー様を支えてくれるとの事。心強いわね。

「カトリーナ殿、君の魔力は素晴らしい。引き続き王宮に通って、魔力提供の方、よろしく頼みますね」

「ラクレス、どうしてカトリーナを通わせないといけないんだ。定期的に魔石を届けさせる。それでいいだろう」

「いいえ、ダメです。最低でも3日に1回は来てくださらないと」

「バカな事を言うな。公爵領からここまで、飛行船で1時間かかるんだぞ。そんなに頻繁に来られる訳がないだろう!」

すかさずラクレス様を怒鳴りつけるハリー様。

「それでしたら、1週間に1回でいいです」

「クソ、我が儘なやつめ。わかった。ただし、俺が一緒に登城できるタイミングでカトリーナを連れてくるから、1週間以上開く事もある。その点は理解しろよ」

やっぱりハリー様と一緒の様ね。不満そうな顔のラクレス様。相変わらずこの2人、あまり仲が良くない様だ。

「さあ、カトリーナ。そろそろ行こう」

「はい、それでは皆様、本当にお世話になりました。ありがとうございました」

皆に頭を下げ、飛行船に乗り込む。飛行船に乗ると、すかさず隣にハリー様が座った。飛行船がゆっくり空へと上って行く。

少しずつ離れていく王宮。それがなんだか寂しくてたまらない。マレッティア王国を去る時とは、また違った悲しさがあるものね。あの時は、独りぼっちだった。でも今は、見送ってくれる大切な家族や友人、さらに私の最愛の人、ハリー様がそばに居てくれる。

そう、もう私は昔の孤独な私ではない。改めてそう実感した。

その後はお茶を飲んだり、景色を見て過ごす。飛行船に乗るのはこれが2回目。つい興奮して、周りを見てしまう。

「カトリーナ、あそこが公爵領だ」

ハリー様が指さした方を見ると、確かに街が見える。さらに奥の方には、大きな森もある。自然豊かな場所だとは聞いていたけれど、本当に自然に囲まれているのね。

しばらく進むと、小さな丘の上にそびえたつ、大きなお屋敷が見えて来た。ゆっくりとおりていく飛行船。

「着いたよ。ここが今日から俺たちが暮らす公爵家だ」

飛行船から降りると、使用人一同が待っていた。

「「「「「おかえりなさいませ。旦那様、奥様」」」」」

よく見ると、王宮で働いていた使用人たちも何人かいた。どうやらルルたち以外にも、私たちの為に公爵家で働く事を決めてくれた人たちがいた様だ。

「皆、出迎えありがとう。さあ、カトリーナ、早速屋敷に向かおう」

ふと周りを見ると、大きな桜の木が2本も植えられていた。魔力のお陰で、とても綺麗なピンク色の花を咲かせている。なんて綺麗なのかしら…

「中庭には君の好きな野菜や果物、ラベンダー畑もあるんだ。後で見に行こうね」

「はい、是非見たいですわ」

なんだかワクワクしてきた。

ハリー様と手を繋いで、屋敷の中に入って行く。さすが公爵家、王宮に負けず劣らず立派な造りね。そしてあちこちに、ラベンダーの花が飾られていた。きっとハリー様が私の為に準備してくれたのだろう。

そう思ったら、なんだか嬉しくて、つい頬が緩む。

「さあ、ここがカトリーナの部屋だ。この扉を開けると、俺たちの寝室に繋がっているんだ」

寝室…
そういえば、初夜はまだだったわ。ハリー様が、せっかくなら初夜は公爵領に移り住んでから済ませたいと言ったためだ。という事は…

急に恥ずかしくなってきた。

「カトリーナ、そんなに恥ずかしそうな顔をしないでくれ。俺たちは夫婦なんだ。それに、今までだって一緒に寝ていただろう?」

確かに私たちは今までも一緒に寝ていたけれど、ただ一緒に寝るのと、そういった事をするのとでは、全然違うのよ。さらに顔が赤くなる。

そんな私をよそに涼しい顔のハリー様が、部屋の案内をしてくれた。部屋の次は屋敷内、さらに中庭も一緒に見て回る。とにかく公爵家は広くて、全て見終わった頃には、夕方になっていた。

「本当は公爵領も案内したいのだけれど、もう時間がない。また今度紹介するね」

そう言ってくれたハリー様。後日公爵領も案内してくれるのね。楽しみだわ。

そして夕食時は、私たちの為に使用人たちがちょっとした宴を準備してくれた。

元々知っている使用人たちはもちろん、今日初めて会う使用人たちも、皆いい人ばかりでホッとした。

宴の後は、ルルたちに手伝ってもらいながら湯あみを済ませる。そしていよいよ、夫婦の寝室へ。

恐る恐る部屋を開けると、そこにはガウンを羽織ったハリー様の姿が。キャーー、ダメだわ、緊張する!

とっさにドアを閉めてしまった。とにかく、深呼吸をして落ち着かないと。そう思っていたのだが…

「カトリーナ、どうしてドアを閉めてしまうんだい?こっちにおいで」

寝室へと繋がるドアから顔を出したハリー様に捕まり、そのまま抱っこされベッドに寝かされた。

「ハリー様、お待ちください。心の準備が…」

「俺は十分すぎるほど待ったよ。これ以上は待てないかな」

にっこり笑ったハリー様。そして、ゆっくりと顔が近づいてきて…

その日の晩は、今まで体験したことがない事ばかりで、戸惑いも大きかった。それでも、優しく触れてくれるハリー様と一つになれた事が、嬉しくてたまらない。

ハリー様、これから公爵領での生活が始まります。まだまだ未熟な私ですが、どうかこれからも、よろしくお願いします。大好きなハリー様。
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