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第25話:街に出ます【1】
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「リリア、今日も絵をかいていたのかい?」
「おかえりなさいませ、ゼルス様。ごめんなさい、お帰りになっていたことに気が付かなくて。すぐに食事の準備をいたしますわ」
「慌てなくてもいいよ。それにしても、とても綺麗な絵だね。これはこの家から見える庭かい?」
「はい、そうです。このお部屋から見えるお庭がとても素敵なので。つい夢中になってしまって…」
急いで晩御飯をテーブルに並べていく。
「君が夢中になれるものが見つかって、よかったよ。リリアはずっと辛い思いをして、生きてきたのだろう?これからは好きな事を好きなだけやればいい」
「ありがとうございます。はい、好き勝手させていただいておりますわ。こんなに自由に過ごしてもいいのかと、不安になるくらいに」
「リリアが不安がる必要はない。それにしても、今日も美味しそうな料理ばかりだね。俺の好きな肉と野菜の煮込みもあるし。せっかくリリアが作ってくれたんだ。冷めないうちに頂こう」
2人向かい合わせで、いつもの様にイスに座った。この家でお世話になってから、早2ヶ月。最初は恐怖心を抱いていたゼルス様だったけれど、今では恐怖心もすっかりなくなった。というよりも、あれ以来恐ろしい顔をしなくなったのだ。
いつもにこやかにほほ笑んでくださるゼルス様を見ていると、なんだか私も心が温かくなる。そして彼は、今まで苦労した私をねぎらい、色々な物を与えて下さるのだ。高額なお給料までもらっているのに、本当に申し訳ない。
それでも私が素直に受け取ると、嬉しそうな顔をして下さるので、ご厚意に甘えて頂いている。今夢中で絵を描けているのも、ゼルス様が画材セットを一式準備してくださったからだ。
「今日もリリアの料理は美味しいな。いつも家中を綺麗にし、美味しい料理を作ってくれてありがとう。それでその…実は明後日、休みをもらったんだ。せっかくだから、シャールン市を案内しがてら、観光なんてどうかなっと思って。君はシャールン市の事を全然知らないだろう?とはいえ、1日ではとても全てを回れるような街ではないが」
「シャールン市の街を案内して頂けるのですか?それはとても有難いのですが、せっかくゼルス様のお休みを、私の為に使って頂くのは申し訳ないですわ」
「俺はいつも休みの日は、暇を持て余しているのだよ。だからその…リリアさえよければどうかなって思って」
確かに私はシャールン市どころか、家の周辺の事しかよくわからない。こんなに立派な街に来たのなら、もう少しこの街の事を知りたい。
「それでは、ぜひお願いします。私、この街の事を全く知らないので、とても楽しみです」
「それは本当かい?それじゃあ、明後日はあけておいてくれ」
今までどこか不安そうだったゼルス様の顔が、ぱぁっと明るくなったのだ。もしかしたらゼルス様も、シャールン市の街を観光するのが楽しみなのかしら?それならよかったわ。
私も今から楽しみね。
2日後
「リリア、準備は出来たかい?早速行こうか?」
「はい、今日は天気もいいですし、絶好のおでかけ日和ですね。私、今日をとても楽しみにしていたのです」
「俺もその…リリアと出掛けられることを、楽しみにしていたんだ。さあ、行こう」
クルリと反対側を向いたゼルス様。なんだか耳が赤い様な気がするが、きっと気のせいだろう。
2人で馬車に乗り込む。前から思っていたが、ゼルス様はお金持ちの様だ。ゼルス様専用の馬車が準備されているのだから。よく考えたら、この街を守る騎士隊長をなさっているのだから、お金には困っていないのだろう。
私にもたくさんのお給料を払って下さるし。改めて私は、立派な方の下で働かせていただいている。つくづく自分がいかに恵まれているか、実感する。
「リリア、今日は西の街に行こうと思っている。あそこは色々な店があるから。画材道具が沢山売っている店もあるし」
「まあ、そうなのですね。それは楽しみですわ」
窓の外には、大きな建物が立ち並んでいる。大きな建物を見ていると、この街に初めて来た時にとても親切にして下さったアロマおばあさんを思い出すわ。おばあさん、元気にしているかしら?
会いに行くと約束したのに、まだ会いに行けていない。近いうちにまた、おばあさんに会いに行けたらいいな…
「おかえりなさいませ、ゼルス様。ごめんなさい、お帰りになっていたことに気が付かなくて。すぐに食事の準備をいたしますわ」
「慌てなくてもいいよ。それにしても、とても綺麗な絵だね。これはこの家から見える庭かい?」
「はい、そうです。このお部屋から見えるお庭がとても素敵なので。つい夢中になってしまって…」
急いで晩御飯をテーブルに並べていく。
「君が夢中になれるものが見つかって、よかったよ。リリアはずっと辛い思いをして、生きてきたのだろう?これからは好きな事を好きなだけやればいい」
「ありがとうございます。はい、好き勝手させていただいておりますわ。こんなに自由に過ごしてもいいのかと、不安になるくらいに」
「リリアが不安がる必要はない。それにしても、今日も美味しそうな料理ばかりだね。俺の好きな肉と野菜の煮込みもあるし。せっかくリリアが作ってくれたんだ。冷めないうちに頂こう」
2人向かい合わせで、いつもの様にイスに座った。この家でお世話になってから、早2ヶ月。最初は恐怖心を抱いていたゼルス様だったけれど、今では恐怖心もすっかりなくなった。というよりも、あれ以来恐ろしい顔をしなくなったのだ。
いつもにこやかにほほ笑んでくださるゼルス様を見ていると、なんだか私も心が温かくなる。そして彼は、今まで苦労した私をねぎらい、色々な物を与えて下さるのだ。高額なお給料までもらっているのに、本当に申し訳ない。
それでも私が素直に受け取ると、嬉しそうな顔をして下さるので、ご厚意に甘えて頂いている。今夢中で絵を描けているのも、ゼルス様が画材セットを一式準備してくださったからだ。
「今日もリリアの料理は美味しいな。いつも家中を綺麗にし、美味しい料理を作ってくれてありがとう。それでその…実は明後日、休みをもらったんだ。せっかくだから、シャールン市を案内しがてら、観光なんてどうかなっと思って。君はシャールン市の事を全然知らないだろう?とはいえ、1日ではとても全てを回れるような街ではないが」
「シャールン市の街を案内して頂けるのですか?それはとても有難いのですが、せっかくゼルス様のお休みを、私の為に使って頂くのは申し訳ないですわ」
「俺はいつも休みの日は、暇を持て余しているのだよ。だからその…リリアさえよければどうかなって思って」
確かに私はシャールン市どころか、家の周辺の事しかよくわからない。こんなに立派な街に来たのなら、もう少しこの街の事を知りたい。
「それでは、ぜひお願いします。私、この街の事を全く知らないので、とても楽しみです」
「それは本当かい?それじゃあ、明後日はあけておいてくれ」
今までどこか不安そうだったゼルス様の顔が、ぱぁっと明るくなったのだ。もしかしたらゼルス様も、シャールン市の街を観光するのが楽しみなのかしら?それならよかったわ。
私も今から楽しみね。
2日後
「リリア、準備は出来たかい?早速行こうか?」
「はい、今日は天気もいいですし、絶好のおでかけ日和ですね。私、今日をとても楽しみにしていたのです」
「俺もその…リリアと出掛けられることを、楽しみにしていたんだ。さあ、行こう」
クルリと反対側を向いたゼルス様。なんだか耳が赤い様な気がするが、きっと気のせいだろう。
2人で馬車に乗り込む。前から思っていたが、ゼルス様はお金持ちの様だ。ゼルス様専用の馬車が準備されているのだから。よく考えたら、この街を守る騎士隊長をなさっているのだから、お金には困っていないのだろう。
私にもたくさんのお給料を払って下さるし。改めて私は、立派な方の下で働かせていただいている。つくづく自分がいかに恵まれているか、実感する。
「リリア、今日は西の街に行こうと思っている。あそこは色々な店があるから。画材道具が沢山売っている店もあるし」
「まあ、そうなのですね。それは楽しみですわ」
窓の外には、大きな建物が立ち並んでいる。大きな建物を見ていると、この街に初めて来た時にとても親切にして下さったアロマおばあさんを思い出すわ。おばあさん、元気にしているかしら?
会いに行くと約束したのに、まだ会いに行けていない。近いうちにまた、おばあさんに会いに行けたらいいな…
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