全てを失ったと思ったのですが…騎士団の隊長に拾われ溺愛されました

Karamimi

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第36話:ゼルス様はお忙しい様です

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「リリア、すまない。今日も帰りが遅くなると思うから、先に休んでいてくれ。もしかしたら昨日の様に、夕食だけは食べに来るかもしれないが。それから、戸締りはしっかりすること!買い物は昼間の人通りの多い場所で行ってくれ。あまり遠くには行ってはいけないよ。分かったね」

「はい、分かっておりますわ。昨日多めに食材を買っておきましたので、今日は家で過ごす予定です。これ、お弁当です。どうかゼルス様も、お体には十分気を付けて下さいね」

「ありがとう。リリアの弁当を食べると、力がみなぎるよ。それじゃあ行ってくる。見送りはここでいいから」

 急ぎ足でゼルス様が家から出て行った。ゼルス様と街にでて、ルルと仲良くなってから、3ヶ月が過ぎた。ルルとはすっかり仲良くなり、よく家を行き来している。最近では時間があるときは、ルルのお店を手伝ったりもしていたのだが…

 ここ1ヶ月で、この街の治安が一気に悪くなったとの事。特に若い女性と子供の人さらいが急増し、今ゼルス様を中心に、騎士団の方たちが調査をしているらしい。既に何人かの人さらいを捕まえて尋問を行っている様だが、かなり大きな組織が動いている様で、捜査は難航しているらしい。

 そのせいでこの1ヶ月、私も最低限の外出以外は、外に出る事を禁止されている。もちろん、ルルにも会えていないのだ。ルーク様もかなり警戒している様で、ルルもこの1ヶ月、お店を閉めているらしい。

 とはいえ、私やルルが住んでいる地域は、比較的治安もよいそうなのだが…何分ゼルス様もルーク様も心配性なので、私とルルの外出を極力制限している様だ。

「ゼルス様、今日もお帰りが遅いのだろうな…ルルにも会えないし…」

 ついため息が出る。とはいえ、私がこうやって安心して暮らせるのも、ゼルス様が頑張って街を守ってくれているからなのだ。私が我が儘をいうわけにはいかない。私が出来る事は、ゼルス様に美味しくて栄養のある料理を食べてもらう事だけだ。

 そんな思いで、お昼は帰ってこられないゼルス様の為に、お弁当を作っている。有難い事に、ゼルス様がお弁当をとても喜んでくれるので、つい張り切って作ってしまうのだ。

「さて、落ち込んでいても仕方がないわね。家事を終わらせて、この絵を完成させてしまいましょう」

 この1ヶ月、する事がないためずっと絵を描いている。そのお陰で、家には私が描いた絵が、沢山飾られているのだ。

 さすがに飾るのは恥ずかしいと言ったのだが、ゼルス様が“こんなにも素敵な絵を飾らないのは勿体ない”と言ってくれて、自ら飾って下さったのだ。こんな風に私の描いた絵を飾って下さるゼルス様の優しさに、つい甘えている。

 ちなみに今描いている絵は、ゼルス様だ。もちろん、ゼルス様には内緒で。さすがに自分の絵を描かれていると気が付いたら、気持ち悪がられるだろう。それでも会えない寂しさから、気が付いたらゼルス様を描いていた。

 とはいえ、本人が不在の事が多いため、頭の中でゼルス様を思い浮かべながら描いている。

「ゼルス様はいつも、こうやって私に笑いかけて下さるのよね」


 ゼルス様を思い浮かべながら描けるこの時間が、一番幸せだ。私ったら、重症ね。絵に描くほど、ゼルス様を好きになってしまったのだから…

 でも、あんなにも素敵な男性を好きになるなという方が無理だろう。そもそも私は、ゼルス様とどうにかなりたいだなんて、おこがましい事は考えてない。せめて、ひっそりと彼を思い続ける事くらいは、許して欲しいと思っている。

「ゼルス様の瞳の色は、金色だったわよね。そして髪は、美しい銀色…」

 ゼルス様の絵に、色をつけていく。自分で言うのも何だが、私は絵を描くのが上手な方だ。きっとお父さんに似たのだろう。お父さんの絵も、とても上手だったから。

 ゼルス様を思いながら、丁寧に色付けを進めていく。

 そして

「完成したわ。ゼルス様の絵」

 やっと完成したのだ。嬉しくてつい笑みがこぼれる。ただ、気が付くともうあたりは薄暗い。

 いけない、つい絵を描く事に熱心になりすぎて、お昼ご飯すら食べるのを忘れてしまった。ゼルス様に知られたら、怒られてしまう。とにかく晩御飯はしっかり食べないと。

 それにゼルス様の晩御飯の準備もしないと!

 急いで片づけ、台所に立って料理を作っていく。今日は魚と野菜のクリームスープと、ローストビーフ。サラダも作っていく。

 その時だった。

 誰かがものすごい勢いで、誰かがドアをガンガンたたき出したのだ。

 一体何事なの?

 次の瞬間、ドアがけやぶられたと思ったら、外から男性が数名は行って来たのだ。

「あなた達は一体誰なのですか?どうして我が家を?」

「この女です。間違いありません。この国では珍しい桃色の髪をしておりましたので」

「そうか、連れて行け」

「えっ?連れていくとは一体…きゃぁ…」

 男性たちが話をしていると思ったら、急に口元を覆われた。これは一体…

 何かを嗅がされた私は、そのまま意識を飛ばしたのだった。


 ※次回、ゼルス視点です。
 よろしくお願いいたします。
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