82 / 103
第82話:彼の存在を忘れていました
しおりを挟む
「本当に情けない息子で嫌になるわ。やはりこの子はダメね。ウレィシア伯爵家との取引が停止され、生活に苦しくなれば真面目に働くでしょう。リリアちゃん、バカな息子がごめんなさいね。そうそう、言い忘れていたのだけれど、後半年もすれば、元貴族でも親の許可なく結婚ができるようになるわ。
先日議会で可決されたのよ。頭の固い人間たちを説得するのに、本当に大変だったわ。いい加減民主主義になったのだから、元貴族という頭の固い人たちを、早く追い出さないとね」
「ばあさん、もしかして権力と金で言いなりにさせたのではないでしょうね。議長であるあなたが、その様な汚い手を使うだなんて…」
「あら、そんな事はしていないわ。ちょっとお願いしただけよ。私はね、少しでも皆が住みやすい国を作りたいだけなのよ。もう私も老い先短いでしょう?老いぼればばぁの最期の願いよ」
そう言って笑ったアロマおばあさん。ちょっと待って、議長って、この国の政治の世界で一番偉い人よね。もしかしておばあさんが!
「本当にアロマさんは素敵な方ね。リリアちゃんの存在を私たちに知らせて下さったのも、アロマさんだったのよ。アロマさんがいなかったら、私たちは一生リリアちゃんにあえなかったわ。なんとお礼を言ったらいいか」
「嫌だわ、急に改まっちゃって。私はただ、リリアちゃんの幸せを願って行動しただけよ。それに愛する娘が行方不明になり、ずっと後悔していたリースさんを見ているのも辛かったしね」
そう言っておばあさん2人が笑っていた。
「アロマおばあさん、私を家族の元に会わせてくれて、ありがとうございました。伯父さん、おばあさんに会えて、私も幸せですわ」
「リリアちゃん。その…図々しいかもしれないけれど、どうかこれからは、私達家族を頼ってね。私は娘のレアには何もしてあげられなかったから、せてもリリアちゃんにはレアに出来なかった事をしてあげたいの。それから私の事は、リースおばあさんと呼んでくれると嬉しいわ」
「ありがとうございます、リースおばあさん。もちろんですわ。ですが、私はこれからもこの地で、ゼルス様と生きていきたいと考えております。ですからその…クレシレス王国に行く事は…」
「もちろん分かっているわ。愛する人と一緒にいるのが、一番ですものね。落ち着いたらクレシレス王国にも遊びに来て頂戴。レアはね、友達もとても多かったの。レアの娘のリリアちゃんを、皆全力で歓迎するわ。もちろん、私たちもよ」
「クレシレス王国には、リリアちゃんの従姉弟たちもいるよ。ぜひ会ってやって欲しい。ゼルス殿、どうか姪をよろしくお願いいたします」
伯父さまがゼルス様に深々と頭を下げたのだ。
「もちろんです。リリアを必ず幸せにします。この命に代えても。近々クレシレス王国にも必ず遊びに行きます」
「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
ゼルス様が伯父さんと、ガッチリ握手を交わしている。その姿を見つめる2人のおばあさんと、ウレィシア伯爵夫妻。
「さあ、これで一件落着ね。それじゃあ、皆で食事でもしましょう…て、何か忘れている様な。そうだわ、あの人を連れてきて頂戴」
アロマおばあさんが、何かを思い出したかのように叫んだのだ。あの人?一体誰の事だったかしら?
使用人たちに連れられてやってきたのは、気まずそうな顔のクロードだ。そういえばクロードの存在を、すっかり忘れていたわ。
ゼルス様の顔を見るなり
「ゼルス隊長、本当に申し訳ございませんでした。俺はレティ様の指示に従っただけなんです。どうかお許しください」
床に頭をこすりつけ、必死に謝っている。
「お前がリリアの幼馴染か?」
「はい、そうです。ですがこの1週間、リリアには指一本触れておりません。そうだよな、リリア」
必死に私に訴えかけてくるクロード。彼ってこんなに情けない男だったかしら?
「ええ…確かに私には触れておりませんわ…」
「そうか、それじゃあクロード殿は、もうリリアを諦めるつもりなのかな?」
「はい、もちろんです。まさかリリアが他国の貴族だっただなんて。もう二度と、リリアの前に姿を現しません。ですので、どうかお命だけはお助けて下さい」
必死にクロードが許しを請いている。ゼルス様は、むやみやたらに人の命を奪うような人ではないのだが…
「わかった。それじゃあ、もう二度とリリアには近づかないでくれ」
「はい、もちろんです。それでは失礼いたしました」
ものすごいスピードで部屋から出て行ったクロード。一体何だったのかしら?
先日議会で可決されたのよ。頭の固い人間たちを説得するのに、本当に大変だったわ。いい加減民主主義になったのだから、元貴族という頭の固い人たちを、早く追い出さないとね」
「ばあさん、もしかして権力と金で言いなりにさせたのではないでしょうね。議長であるあなたが、その様な汚い手を使うだなんて…」
「あら、そんな事はしていないわ。ちょっとお願いしただけよ。私はね、少しでも皆が住みやすい国を作りたいだけなのよ。もう私も老い先短いでしょう?老いぼればばぁの最期の願いよ」
そう言って笑ったアロマおばあさん。ちょっと待って、議長って、この国の政治の世界で一番偉い人よね。もしかしておばあさんが!
「本当にアロマさんは素敵な方ね。リリアちゃんの存在を私たちに知らせて下さったのも、アロマさんだったのよ。アロマさんがいなかったら、私たちは一生リリアちゃんにあえなかったわ。なんとお礼を言ったらいいか」
「嫌だわ、急に改まっちゃって。私はただ、リリアちゃんの幸せを願って行動しただけよ。それに愛する娘が行方不明になり、ずっと後悔していたリースさんを見ているのも辛かったしね」
そう言っておばあさん2人が笑っていた。
「アロマおばあさん、私を家族の元に会わせてくれて、ありがとうございました。伯父さん、おばあさんに会えて、私も幸せですわ」
「リリアちゃん。その…図々しいかもしれないけれど、どうかこれからは、私達家族を頼ってね。私は娘のレアには何もしてあげられなかったから、せてもリリアちゃんにはレアに出来なかった事をしてあげたいの。それから私の事は、リースおばあさんと呼んでくれると嬉しいわ」
「ありがとうございます、リースおばあさん。もちろんですわ。ですが、私はこれからもこの地で、ゼルス様と生きていきたいと考えております。ですからその…クレシレス王国に行く事は…」
「もちろん分かっているわ。愛する人と一緒にいるのが、一番ですものね。落ち着いたらクレシレス王国にも遊びに来て頂戴。レアはね、友達もとても多かったの。レアの娘のリリアちゃんを、皆全力で歓迎するわ。もちろん、私たちもよ」
「クレシレス王国には、リリアちゃんの従姉弟たちもいるよ。ぜひ会ってやって欲しい。ゼルス殿、どうか姪をよろしくお願いいたします」
伯父さまがゼルス様に深々と頭を下げたのだ。
「もちろんです。リリアを必ず幸せにします。この命に代えても。近々クレシレス王国にも必ず遊びに行きます」
「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
ゼルス様が伯父さんと、ガッチリ握手を交わしている。その姿を見つめる2人のおばあさんと、ウレィシア伯爵夫妻。
「さあ、これで一件落着ね。それじゃあ、皆で食事でもしましょう…て、何か忘れている様な。そうだわ、あの人を連れてきて頂戴」
アロマおばあさんが、何かを思い出したかのように叫んだのだ。あの人?一体誰の事だったかしら?
使用人たちに連れられてやってきたのは、気まずそうな顔のクロードだ。そういえばクロードの存在を、すっかり忘れていたわ。
ゼルス様の顔を見るなり
「ゼルス隊長、本当に申し訳ございませんでした。俺はレティ様の指示に従っただけなんです。どうかお許しください」
床に頭をこすりつけ、必死に謝っている。
「お前がリリアの幼馴染か?」
「はい、そうです。ですがこの1週間、リリアには指一本触れておりません。そうだよな、リリア」
必死に私に訴えかけてくるクロード。彼ってこんなに情けない男だったかしら?
「ええ…確かに私には触れておりませんわ…」
「そうか、それじゃあクロード殿は、もうリリアを諦めるつもりなのかな?」
「はい、もちろんです。まさかリリアが他国の貴族だっただなんて。もう二度と、リリアの前に姿を現しません。ですので、どうかお命だけはお助けて下さい」
必死にクロードが許しを請いている。ゼルス様は、むやみやたらに人の命を奪うような人ではないのだが…
「わかった。それじゃあ、もう二度とリリアには近づかないでくれ」
「はい、もちろんです。それでは失礼いたしました」
ものすごいスピードで部屋から出て行ったクロード。一体何だったのかしら?
810
あなたにおすすめの小説
【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
Mimi
恋愛
若様がお戻りになる……
イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。
王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。
リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。
次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。
婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。
再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……
* 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました
そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです
【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません
Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。
家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに
“お飾りの妻が必要だ”
という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。
ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。
そんなミルフィの嫁ぎ先は、
社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。
……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。
更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない!
そんな覚悟で嫁いだのに、
旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───……
一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……
この度、青帝陛下の運命の番に選ばれまして
四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる