全てを失ったと思ったのですが…騎士団の隊長に拾われ溺愛されました

Karamimi

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第89話:村に帰って来てよかったです

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「そう、あなたがずっと、レアを支えてくれていたのね。ありがとう。レアの様子が聞けて良かったわ」

 クレアおばさんの話を聞き、またリースおばあさんとレティさんのお母さんが泣いていた。少しでも2人の心が軽くなってくれたら、私も嬉しい。

 そうだわ!忘れていた。

「夫人、あの時お借りしたお金を返させてください。あの時は助けて下さり、本当にありがとうございました」

 改めて村長夫人にお礼を言い、お金を返した。

「あら、そんな事気にしなくてもいいのに。リリアちゃん、もうあなたを縛り付ける奴らはいなくなったわ。大切な家族や大好きな男性に囲まれ、今度こそ幸せになるのよ。ゼルス様、どうかリリアちゃんを、よろしくお願いいたします」

 村長夫人が、ゼルス様に向かって頭を下げたのだ。

「夫人、頭を上げて下さい。リリアを助けて下さり、本当にありがとうございました。この命に代えても、必ずリリアを守ります」

 そう言ってゼルス様も、村長夫人に頭を下げたのだ。こんな風に恩人に再会が出来てお礼を言えるだなんて、マルモル村に帰って来られて本当によかったわ。

「それでは私たちは、両親のお墓参りに行ってきますね」

「気を付けて行ってらっしゃい」

 笑顔で手を振ってくれる村人に見守られながら、再び馬車に乗り込んだ。両親のお墓は、村の外れにあるのだ。

「ついにリリアの両親の墓に行けるのだな。なんだか緊張してきた」

「私も緊張してきましたわ。村にいた頃は、忙しくて全然両親のお墓参りに行けなかったので」

「そうか…両親の墓参りすら許されない環境にいたのだな…可哀そうに…過去に戻れるのなら戻って、俺があの酷い共から、リリアを救い出してやりたいのに…」

 辛そうな顔のゼルス様。

「そんな顔をなさらないで下さい。今はとても幸せですから。それに今日、ゼルス様はもちろん、お母さんの大切な人たちを連れてこられたのです。こんなにも嬉しい事はありませんわ」

 ずっと天涯孤独だと思っていたお母さんの大切な家族や友人が、わざわざ来てくれたのだ。きっとお母さんも、喜んでくれているだろう。

「あそこです、さあ、行きましょう」

 馬車を降りると、皆で両親のお墓へと向かった。

「ここが両親のお墓です。あら?誰かがお手入れをしてくれていたのね。とても綺麗だわ」

 もしかしたら、クロエおばさんがお手入れをしてくれていたのかもしれない。彼女ならやりそうだ。帰りに改めてお礼を言わないと。

「ここにレアが眠っているのね…レア、私のせいであなたにつらい決断をさせてしまってごめんなさい。あぁ…愛するレア」

「レア、ずっとあなたに謝りたかったの。あなたが辛いとき、寄り添えなくてごめんなさい。その上、あなたの大切な娘を、私の娘が傷つけてしまったの。どうお詫びしたらいいのか…」

 リースおばあさんとレティさんのお母さんが、声を上げて泣きだしたのだ。

「お2人とも、きっと母は怒ってなどいませんわ。今日は遠いところを来てくれてありがとう。それから、急にいなくなってごめんなさい。きっと母ならそう言いますわ。お母さん、私にも大切な人が出来ました。彼と必ず幸せになるから、天国でお父さんと一緒に見守っていてね」

 リースおばあさんとレティさんのお母さんの肩に手を置き、私も両親に語り掛ける。

「リリアのご両親、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。ゼルスと申します。リリアを2度も連れ去られる不甲斐ない男ですが、それでも誰よりもリリアを愛しています。どうか天国で見守っていてください」

 ゼルス様も両親に挨拶をしてくれた。その後、それぞれがお母さんとお父さんに伝えたい思いを伝えていく。

 こんなにも沢山の人たちが、両親を思い来てくれたのだ。きっと天国の両親も喜んでいる事だろう。

 今日は皆でマルモル村に来られて、本当によかったわ。


 ※次回、最終話です。
 よろしくお願いいたします。
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