30 / 100
第30話:ソラ様がいらっしゃいます
しおりを挟む
「お菓子はこれとこれを。お茶は数種類準備して頂戴。それから、お花はここに飾りましょう」
「お嬢様、そんなに張り切らなくてもよろしいかと」
「でも今日は、ソラ様がわざわざ私に会いに来てくださる大切な日なのよ。精一杯おもてなしをしないと!」
あの後すぐにお父様がソラ様のお父様に連絡してくれ、3日後に我が家にソラ様がいらっしゃることになったのだ。この3日、私はソラ様が来てくださるのを、首を長くして待っていた。もちろん、少しでも快適に過ごしていただけるように、お菓子やお茶も入念に選んだ。
お花も庭師お勧めの一番きれいな物を選んだのだ。
「ソフィーナ、そんなに張り切らなくても…万が一ソラ嬢が、ソフィーナを傷つけるような事をしたら…ソフィーナが傷つかないといいのだが…」
私の隣で、不安そうな顔でよくわからない事を呟いているお兄様。一体何をそんなに心配をしているのだろう。全く理解できない。
「お兄様の心配性は、かなりの重症ですね。大丈夫ですよ、お兄様。私、ソラ様に無礼を働く事はありませんから。それでは私は、着替えてきますね」
嬉しくてついスキップをしてしまう。もうすぐ我が家に令嬢が来る、そう思うだけでワクワクするのだ。
着替えを済ませ、玄関でソラ様の到着を待つ。
「ソフィーナったら、そんなにソラ嬢が来るのが待ち遠しいのね。あなたにも、令嬢のお友達が出来るといいわね」
お母様も私を微笑ましく見てくれている。ただ、その横で相変わらずお兄様が、不安そうな顔をしているが…
その時だった。ソラ様の家の馬車が、我が家に入って来たのだ。
ついにいらしたわ。
馬車が停まり、ゆっくりとソラ様が下りてきたのだ。
「ソラ様、今日は我が家にお越しいただき、ありがとうございます。さあ、こちらへどうぞ」
降りてきたソラ様を捕まえ、早速屋敷に案内しようとしたのだが。
「ソフィーナ、落ち着いて。ソラ嬢、今日はよく来てくれたね。妹が暴走してすまない。実は君が来るのを、妹はとても楽しみにしていたんだよ」
「まあ、そうでしたのね。私の急な訪問にも承諾して下さり、ありがとうございます。私も今日、ソフィーナ様にお会いするのを、楽しみにしておりました。リレイスト公爵夫人、リレイスト公爵令息様も、わざわざお出迎え頂き、ありがとうございます」
穏やかな表情で挨拶をするソラ様。なんて可愛らしい方なのかしら?この方とお友達になれたら嬉しいわ。
「こちらこそ、我が家に来てくださりとても嬉しいですわ。我が家に令嬢が訪問してくださる事なんて、今までなかったので。さあ、こちらです。どうぞ、足元にお気を付けくださいね」
改めてソラ様の手をしっかり握り、彼女をエスコートしていく。ソラ様の手、温かくて柔らかいわ。私と同じくらいの手ね。いつも握っている殿方の手とは、また違う感触だ。
「こちらですわ。ソラ様はどんなお茶がお好みですか?こちらからお選びください。すぐにお菓子も準備しますね」
「何から何までありがとうございます。それでは、このローズヒップティを頂きますわ」
「それじゃあ私も、同じお茶を入れて頂戴」
「かしこまりました」
使用人たちが、手際よくお茶とお菓子を準備してくれた。目の前にはソラ様がいらっしゃる。初めての経験に、つい顔がほころんでしまう。
「夜会の時も思ったのですが、ソフィーナ様はいつも楽しそうにニコニコしていらっしゃいますね。その…昔はあまり笑顔が見られませんでしたので、なんだか不思議で…申し訳ございません。悪い意味ではなくて、その…」
「謝罪いただかなくても大丈夫ですわ。確かに昔の私は、癇癪もちで我が儘で、どうしようもないクズだったので。本当にあの時は、申し訳ございませんでした。今思い出しただけでも、顔から火が出るくらい恥ずかしいですわ…」
「そんな、もうよろしいのです。ただ、本当にソフィーナ様は変わられたのだと思ったら、何だか嬉しくて。これでやっと、いいえ、何でもありませんわ」
何かを言いかけたソラ様。何が言いたかったのかしら?
「そうそう、今日お屋敷に伺ったのは、ソフィーナ様にお礼を言いたくて」
「私にお礼ですか?」
「お嬢様、そんなに張り切らなくてもよろしいかと」
「でも今日は、ソラ様がわざわざ私に会いに来てくださる大切な日なのよ。精一杯おもてなしをしないと!」
あの後すぐにお父様がソラ様のお父様に連絡してくれ、3日後に我が家にソラ様がいらっしゃることになったのだ。この3日、私はソラ様が来てくださるのを、首を長くして待っていた。もちろん、少しでも快適に過ごしていただけるように、お菓子やお茶も入念に選んだ。
お花も庭師お勧めの一番きれいな物を選んだのだ。
「ソフィーナ、そんなに張り切らなくても…万が一ソラ嬢が、ソフィーナを傷つけるような事をしたら…ソフィーナが傷つかないといいのだが…」
私の隣で、不安そうな顔でよくわからない事を呟いているお兄様。一体何をそんなに心配をしているのだろう。全く理解できない。
「お兄様の心配性は、かなりの重症ですね。大丈夫ですよ、お兄様。私、ソラ様に無礼を働く事はありませんから。それでは私は、着替えてきますね」
嬉しくてついスキップをしてしまう。もうすぐ我が家に令嬢が来る、そう思うだけでワクワクするのだ。
着替えを済ませ、玄関でソラ様の到着を待つ。
「ソフィーナったら、そんなにソラ嬢が来るのが待ち遠しいのね。あなたにも、令嬢のお友達が出来るといいわね」
お母様も私を微笑ましく見てくれている。ただ、その横で相変わらずお兄様が、不安そうな顔をしているが…
その時だった。ソラ様の家の馬車が、我が家に入って来たのだ。
ついにいらしたわ。
馬車が停まり、ゆっくりとソラ様が下りてきたのだ。
「ソラ様、今日は我が家にお越しいただき、ありがとうございます。さあ、こちらへどうぞ」
降りてきたソラ様を捕まえ、早速屋敷に案内しようとしたのだが。
「ソフィーナ、落ち着いて。ソラ嬢、今日はよく来てくれたね。妹が暴走してすまない。実は君が来るのを、妹はとても楽しみにしていたんだよ」
「まあ、そうでしたのね。私の急な訪問にも承諾して下さり、ありがとうございます。私も今日、ソフィーナ様にお会いするのを、楽しみにしておりました。リレイスト公爵夫人、リレイスト公爵令息様も、わざわざお出迎え頂き、ありがとうございます」
穏やかな表情で挨拶をするソラ様。なんて可愛らしい方なのかしら?この方とお友達になれたら嬉しいわ。
「こちらこそ、我が家に来てくださりとても嬉しいですわ。我が家に令嬢が訪問してくださる事なんて、今までなかったので。さあ、こちらです。どうぞ、足元にお気を付けくださいね」
改めてソラ様の手をしっかり握り、彼女をエスコートしていく。ソラ様の手、温かくて柔らかいわ。私と同じくらいの手ね。いつも握っている殿方の手とは、また違う感触だ。
「こちらですわ。ソラ様はどんなお茶がお好みですか?こちらからお選びください。すぐにお菓子も準備しますね」
「何から何までありがとうございます。それでは、このローズヒップティを頂きますわ」
「それじゃあ私も、同じお茶を入れて頂戴」
「かしこまりました」
使用人たちが、手際よくお茶とお菓子を準備してくれた。目の前にはソラ様がいらっしゃる。初めての経験に、つい顔がほころんでしまう。
「夜会の時も思ったのですが、ソフィーナ様はいつも楽しそうにニコニコしていらっしゃいますね。その…昔はあまり笑顔が見られませんでしたので、なんだか不思議で…申し訳ございません。悪い意味ではなくて、その…」
「謝罪いただかなくても大丈夫ですわ。確かに昔の私は、癇癪もちで我が儘で、どうしようもないクズだったので。本当にあの時は、申し訳ございませんでした。今思い出しただけでも、顔から火が出るくらい恥ずかしいですわ…」
「そんな、もうよろしいのです。ただ、本当にソフィーナ様は変わられたのだと思ったら、何だか嬉しくて。これでやっと、いいえ、何でもありませんわ」
何かを言いかけたソラ様。何が言いたかったのかしら?
「そうそう、今日お屋敷に伺ったのは、ソフィーナ様にお礼を言いたくて」
「私にお礼ですか?」
872
あなたにおすすめの小説
『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』
ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。
現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?
ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。
イケメン達を翻弄するも無自覚。
ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。
そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ…
剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。
御脱字、申し訳ございません。
1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる