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第21話:いざ、アペルピスィ王国へ

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アペルピスィ王国から使者が来てから、半月以上が過ぎた。私たちの結婚式も1ヶ月後に迫った頃、ようやくアペルピスィ王国から使いの者がやって来た。

「お待たせして大変申し訳ございませんでした。調べれば調べる程、フェザー公爵の悪事が出て来まして…フローラ嬢、あなたのお父様はあなたがおっしゃった通り、悪い事など何もしておりませんでした。その証拠もしっかり揃えましたから!」

そう言って分厚い資料を見せてくれた。そもそもフェザー公爵が行っていた悪事を、あろう事かお父様がやっていたという事にすり替えたらしい。ちなみにお父様の行っていたとされる悪事は、人身売買、横領、さらに謀反の容疑まで掛けられていたのだ。

でもこの資料には、お父様ではなくフェザー公爵が行っていた証拠の数々が残されていた。フェザー公爵は娘のダリア嬢をまず王妃にし、ダリア嬢の産んだ子供を使い、実質的権力を握ろうとしていたらしい。

もちろん、ダリア嬢の夫となる予定のアダム様(又はハリソン様)が王になったのを見計らい、殺害する計画まで考えていた様だ。見れば見る程恐ろしい内容だ。さらに決定的証拠にもなる音声まで入手したとの事。

ものの半月でここまで調べ上げるなんて…この人は本当に凄いわ!

「さあ、とにかく国に戻りましょう。王妃様も殿下のお帰りを待っております!」

「ああ、そうだな」

急いで国を出る準備をする。街の人にもしばらく留守にすると伝えておいた。いよいよ馬車に乗って出発だ。

雪も解け始めた道を進む。ここに来た時は、お腹がずっと空いていて寒くて寒くて凍えそうだった。それでもお姉様と肩を寄せ合い、必死に生きていた。あの時と同じ道を通っているのだろう…

お姉様…
寒さと飢えの中、それでも私を気に掛けてくれたお姉様を思い出し、自然と涙が流れていた。

「フローラ、大丈夫かい?君にとっては辛い道のりだろう。すまない、こんな事に巻き込んでしまって…」

申し訳なさそうにそう呟いたアダム様。

「私の方こそごめんなさい。ここに来た時の事を思い出してしまったのです。でも、大丈夫ですわ」

涙を拭い、笑顔を作る。その後休憩を挟みつつ、アペルピスィ王国の王都を目指す。ちなみにアダム様を迎えに来た男性は、侯爵で大臣の1人、ワードレィズ侯爵との事。ワードレィズ侯爵家は代々スパイ一家で、調べる事に関するスペシャリストらしい。

さらに、ワードレィズ侯爵はなんと、王妃様の実のお兄様らしい。悲しむ妹の為に、人肌脱いだという訳だ。

ちなみに王妃様と陛下は従兄妹同士らしい。今まで全く知らなかった情報が、次から次へと入って来くる。

「今の王宮の状況ですが、ダリア嬢の極刑が決まりました。ただ父親でもあるフェザー公爵が裏で動いている様で、執行までに時間を要している様です。フェザー公爵の娘はダリア嬢ただ1人。何が何でも王妃にしたいのでしょう」

「なるほど。でもいくらフェザー公爵でも、そんな事が出来るのか?」

確かに王妃様を毒殺しようとしたのだ。本来なら、一族全員処分されてもおかしくはないはず。

「それが、フェザー公爵は陛下に随分気に入られておりまして…陛下は公爵の言いなりなのです…さすがの王妃様も呆れ果てております…とにかく殿下が戻られたら、陛下を王の座から引きずり下ろす予定でございます。王妃様もそれを望んでおります」

確かに話を聞いている限り、陛下は本当に駄目みたいね。そもそもきちんと陛下が調査さえしてくれれば、私の家族も死ななかったのだから。そう思ったら、陛下に対する怒りが沸きあがって来た。とにかくフェザー公爵や陛下の行く末をしっかり見届けないと。

そしてドミスティナ王国を出てから3日目、ようやく王都が見えて来た。6歳まで過ごした王都、薄暗いせいかあまりピンとこない。

「殿下、とりあえず今日はもう日が沈んでおります。王宮には入らず、ホテルでお過ごし下さい。既に手配しておりますので。そして明日の朝、王宮に入りましょう。その事は王妃様にも話をしてあります。もちろん貴族たちにも招集をかけておりますので、そこで全てを明らかにしましょう!」

「わかった。明日だな!伯父上、色々とありがとう。あなたが居てくれたから、ここまでこれた。本当に感謝しているよ!」

「いいえ、私は自分の職務を全うしただけです。それに、そのセリフは明日全てが片付いたら、改めて聞かせて頂けますか?」

「そうだな…とにかく今日は明日に備えてゆっくり休むよ。フローラ、それじゃあ行こうか」

アダム様と一緒に、部屋へと向かう。ちなみに私たちの側には、護衛騎士が4人もいる。さすがこの国の王太子、アダム様だ。かなり警護も厳重なのね!

ちなみにこのホテルは王都で一番有名なホテルだ。さらにスィートルームを準備してもらった。今までに泊まったどのホテルよりも豪華だ。

晩ご飯も部屋に準備され、部屋から王都の夜景を見ながら食べる。でも…なぜだろう…超高級なお料理を頂いているはずなのに…あまり美味しいと感じない。それにあまり食欲もないわ…

そんな私の様子を見たアダム様が

「どうしたんだい?あまり食べていないじゃないか」

そう言って心配そうに顔を覗き込んできた。

「少し緊張しているだけですわ。こんなに豪華な食事を頂いたのは、10年ぶりなので…」

きっと自分でも気が付かないくらい緊張しているのだろう。明日、全てが明らかになるのだから…

「確かに俺も緊張しているかも。とにかく早く食事を済ませて、早めに休もう」

その後は急いで食事を済ませ、明日に備えて早めに眠る事にした。でも、正直眠れない。どうか明日、全てがうまく行きます様に…
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