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第21話:俺がアントアーネを大切に思う理由【2】~ブラッド視点~
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「こら、アントアーネ。ごめんね、アントアーネはまだ令嬢としての礼儀がなってなくて。俺はアントニオ・ディーストンだよ。ほら、アントアーネ、彼の手を離して」
僕たちより少し大きな体をした男の子が、こちらにやって来たのだ。どうやら彼女のお兄さんの様だ。
「あら、お兄様。この手を離したら、この子、部屋に戻ってしまうわ。だから私、絶対にこの手を離さないわ。さあ、ブラッド様、一緒に遊びましょう」
そう言って手を引っ張るアントアーネ。
「こら、アントアーネ。本当にアントアーネは、自由なのだから。仕方ないな、ブラッド殿、アントアーネに付き合ってやってくれるかい?」
はぁっとため息をつくアントニオ殿の後ろで、母上と彼らの母親と思われる女性がクスクスと笑っていた。
「ああ、わかったよ。それじゃあ、中庭でお茶でもしようか」
「ええ、お茶にしましょう。私、綺麗なお花を見ながらお茶を飲むのが大好きなの。早速行きましょう。お庭はどこかしら?」
僕の手をがっちり握り、歩き出したアントアーネ。目を輝かせ歩く姿がなんだか可笑しくて、つい微笑んでしまった。
「ねえ、ブレッド様はリューズ王国に住んでいるのでしょう?リューズ王国は、一体どんなところなの?」
目を輝かせて聞いてくるアントアーネ。
「リューズ王国は…」
異国民を嫌い、人を見た目だけで判断するろくでもない人間が多いところだよ…なんて事は言えず、俯く。
「アントアーネ、リューズ王国はここよりもずっと暖かくて、果物が美味しい国なのだよ。先日一緒に勉強しただろう?」
すかさずアントニオ殿が、話しに入って来た。
「そうだったわ、お兄様、よく覚えているのね。私はダメね、すぐに忘れてしまうから」
そう言って笑ったアントアーネ。なんだか彼女の笑顔を見ていると、僕の心まで温かくなる。その後もアントアーネとアントニオ殿と一緒に、楽しい時間を過ごした。
この日を境に、僕は2人との時間を楽しむ様になった。アントニオ殿が用事があるときも、アントアーネは毎日僕の家を訪ねてきてくれる。それが嬉しかった。
いつも楽しそうにしているアントアーネに、僕は次第に惹かれて行った。でも…僕はリューズ王国では皆に嫌われている、情けない男だ。こんな僕と、笑顔が素敵なアントアーネが釣り合う訳がない。
ついそんな事を考えてしまう。それでもアントアーネと過ごせる時間は、幸せ以外何物でもなかった。こんな日が、ずっと続くといいな。そう思っていた。
でも…幸せは長くは続かなかった。この国に来て3ヶ月後、僕は再びリューズ王国に替える事になったのだ。
帰国の時、アントアーネとアントニオ殿がお見送りに来てくれた。本当はリューズ王国になんて、帰りたくはない。ずっとここにいて、アントアーネの傍にいたい。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、なぜかアントアーネは
「ブレッド様、この3ヶ月、とても楽しかたっわ。どうか国に帰っても、私の事を忘れないでね。また必ず会いましょうね」
そう笑顔を向けたのだ。僕は悲しくて寂しくてたまらないのに、彼女は別れの時まで笑顔なのだな。そう思うと、なんだか彼女の笑顔が、憎らしくなってきた。
だからつい
「そうだね、また会えるといいね。それじゃあ」
そう言うと、そのまま僕は船に乗り込んでしまった。本当はもっと言いたい事が沢山あったのに。僕はどこまで弱虫なのだろう…
結局僕は、後悔したままリューズ王国に帰って来てしまったのだ。帰国してからも、思い出すのはアントアーネの事ばかり。今頃アントアーネは、一体どうしているのだろう。明るくて魅力的な彼女の事だ。
もしかしたらもう、僕の事なんて忘れてしまったのかもしれない。そう思うと、涙が溢れてくる。
リューズ王国に帰ってからは、相変わらず引きこもる日々が続いていた。だが、ずっと引きこもっている訳にもいかなかった。
僕の6歳の誕生日、僕の為にパーティーが開かれたのだ。正直パーティーになんて参加したくなかった。でも、主役の僕が参加しない訳にはいかないと、無理やり両親に参加させられた。
きっとまた、貴族たちから嫌な事を言われるのだろうな。そう思っていた。
案の定…
「サルビア王国から帰ってきたのかい?ずっといればよかったのに」
「相変わらず真っ白で血色が悪いね。何か病気なのではないのかい?皆、病気が移ると大変だ、近づかない様にしないと」
そう言って笑った貴族たち。悔しくて悲しくて、涙が溢れそうになった。
僕たちより少し大きな体をした男の子が、こちらにやって来たのだ。どうやら彼女のお兄さんの様だ。
「あら、お兄様。この手を離したら、この子、部屋に戻ってしまうわ。だから私、絶対にこの手を離さないわ。さあ、ブラッド様、一緒に遊びましょう」
そう言って手を引っ張るアントアーネ。
「こら、アントアーネ。本当にアントアーネは、自由なのだから。仕方ないな、ブラッド殿、アントアーネに付き合ってやってくれるかい?」
はぁっとため息をつくアントニオ殿の後ろで、母上と彼らの母親と思われる女性がクスクスと笑っていた。
「ああ、わかったよ。それじゃあ、中庭でお茶でもしようか」
「ええ、お茶にしましょう。私、綺麗なお花を見ながらお茶を飲むのが大好きなの。早速行きましょう。お庭はどこかしら?」
僕の手をがっちり握り、歩き出したアントアーネ。目を輝かせ歩く姿がなんだか可笑しくて、つい微笑んでしまった。
「ねえ、ブレッド様はリューズ王国に住んでいるのでしょう?リューズ王国は、一体どんなところなの?」
目を輝かせて聞いてくるアントアーネ。
「リューズ王国は…」
異国民を嫌い、人を見た目だけで判断するろくでもない人間が多いところだよ…なんて事は言えず、俯く。
「アントアーネ、リューズ王国はここよりもずっと暖かくて、果物が美味しい国なのだよ。先日一緒に勉強しただろう?」
すかさずアントニオ殿が、話しに入って来た。
「そうだったわ、お兄様、よく覚えているのね。私はダメね、すぐに忘れてしまうから」
そう言って笑ったアントアーネ。なんだか彼女の笑顔を見ていると、僕の心まで温かくなる。その後もアントアーネとアントニオ殿と一緒に、楽しい時間を過ごした。
この日を境に、僕は2人との時間を楽しむ様になった。アントニオ殿が用事があるときも、アントアーネは毎日僕の家を訪ねてきてくれる。それが嬉しかった。
いつも楽しそうにしているアントアーネに、僕は次第に惹かれて行った。でも…僕はリューズ王国では皆に嫌われている、情けない男だ。こんな僕と、笑顔が素敵なアントアーネが釣り合う訳がない。
ついそんな事を考えてしまう。それでもアントアーネと過ごせる時間は、幸せ以外何物でもなかった。こんな日が、ずっと続くといいな。そう思っていた。
でも…幸せは長くは続かなかった。この国に来て3ヶ月後、僕は再びリューズ王国に替える事になったのだ。
帰国の時、アントアーネとアントニオ殿がお見送りに来てくれた。本当はリューズ王国になんて、帰りたくはない。ずっとここにいて、アントアーネの傍にいたい。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、なぜかアントアーネは
「ブレッド様、この3ヶ月、とても楽しかたっわ。どうか国に帰っても、私の事を忘れないでね。また必ず会いましょうね」
そう笑顔を向けたのだ。僕は悲しくて寂しくてたまらないのに、彼女は別れの時まで笑顔なのだな。そう思うと、なんだか彼女の笑顔が、憎らしくなってきた。
だからつい
「そうだね、また会えるといいね。それじゃあ」
そう言うと、そのまま僕は船に乗り込んでしまった。本当はもっと言いたい事が沢山あったのに。僕はどこまで弱虫なのだろう…
結局僕は、後悔したままリューズ王国に帰って来てしまったのだ。帰国してからも、思い出すのはアントアーネの事ばかり。今頃アントアーネは、一体どうしているのだろう。明るくて魅力的な彼女の事だ。
もしかしたらもう、僕の事なんて忘れてしまったのかもしれない。そう思うと、涙が溢れてくる。
リューズ王国に帰ってからは、相変わらず引きこもる日々が続いていた。だが、ずっと引きこもっている訳にもいかなかった。
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きっとまた、貴族たちから嫌な事を言われるのだろうな。そう思っていた。
案の定…
「サルビア王国から帰ってきたのかい?ずっといればよかったのに」
「相変わらず真っ白で血色が悪いね。何か病気なのではないのかい?皆、病気が移ると大変だ、近づかない様にしないと」
そう言って笑った貴族たち。悔しくて悲しくて、涙が溢れそうになった。
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