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第52話:気が狂いそうだ~ラドル視点~
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“アントアーネ、待ってくれ。行かないでくれ。僕は君を愛している”
真っ暗な中、光の先に向かって嬉しそうに歩いていくアントアーネ。その隣には、にっくきブラッド殿の姿が。必死に叫び、彼女の元に向かおうとするが、足が鉛の様に重く、全く動かないのだ。
“待って、お願いだ。僕を置いていかないでくれ。僕が悪かったから”
頼む、置いていかないでくれ。僕はアントアーネがいないと、生きていけないのだ。瞳から涙がポロポロと溢れだす。
その瞬間、ぱちりと目が覚めた。
またこの悪夢を見てしまった。ここ数日、毎日同じ悪夢を見る。
アイーナ嬢を使って、ブラッド殿とアントアーネの仲を拗らせようとしたのだが、その作戦も失敗に終わった。まさかアイーナ嬢が、あんなに愚かだなんて思わなかった。
ラウレス子爵令息もアイーナ嬢も、本当に使えない。とはいえ、彼らを裏で操っていたのが、僕だという事は誰にもバレていない。
それにもうすぐ、ブラッド殿はリューズ王国に帰国する。今のところまだ、ブラッド殿とアントアーネの婚約の話も出ていない。大丈夫だ、きっと大丈夫。ブラッド殿がリューズ王国に帰ってしまえば、こちらのものだ。
僕にはまだ、時間がたっぷりあるのだから。
ただ…
アントアーネがブラッド殿に向けるまなざしが、どうしても気になるのだ。ブラッド殿がアントアーネに気がある事は分かっている。確か貴族学院のパーティの時、アントアーネもブラッドを慕っていると…
嫌な記憶が一気に蘇る。
嫌だ、そんなのは絶対に嫌だ。
いつも当たり前に傍にいてくれたアントアーネ。僕だけに見せてくれていた可愛い笑顔は、いつの間にかあの男に向けられる様になった。
どうしてこんな事になったのだろう。ずっとアントアーネは、僕の傍にいてくれていたのに…
婚約を解消してから、アントアーネから向けられる視線は、冷たく険しい顔ばかり。口から出るのは、僕に対する否定的な言葉ばかり。そんな言葉を聞くたびに、僕の心は引き裂かれる様な激痛が走るのだ。
確かに僕は、アントアーネを傷つけてしまった。でも僕は、アントアーネ以上に十分傷ついている。そろそろ許してもらえても、罰は当たらないのに…
そんな思いを抱えながらも、必死に学院に通っていた。それもこれも、少しでもアントアーネの姿を見たいからだ。
相変わらずアントアーネは、僕に冷たい。きっとまだ怒っているのだろう。
どうしたらアントアーネは僕の事を、許してくれるだろう。そんな事を考えながら、アントアーネを見つめる。でも彼女の目には、あのにっくき男、ブラッドがうつっている。どうしてあんな男を、嬉しそうに見つめているのだろう。
辛くて苦しくて、胸が押しつぶされそうになる。それにしても、一体何の話をしているのだろう。
ゆっくり彼らに近づくと…
「早くリューズ王国に行きたいです。その為にも、卒業まではとにかく静かに目立たず過ごさないといけませんね。特にブラッディ伯爵令息様に知られたら大変です。リューズ王国の話は学院では控えましょう」
アントアーネの声が、はっきりと聞こえたのだ。
リューズ王国に早く行きたい?一体どういうことだ?アントアーネは、リューズ王国に行くのか?あり得ない…だってアントアーネは…
いてもたってもいられず、アントアーネに声をかけた。いつも僕が話しかけると、怪訝そうな顔をするのに。今日は珍しく普通に対応してくれている。ただ、明らかに動揺しているのだ。僕はアントアーネの事なら、何でも知っている。都合が悪くなると、目が泳ぐのだ。
もしかしてアントアーネは、本当にリューズ王国に行くのか?いいや、もしかしたら、一時的に遊びに行くだけかもしれない。それにブラッド殿とアントアーネが婚約したという話も、出てきていない。
とにかく、落ち着いて調べないと。
屋敷に戻ると、すぐに専属執事にアントアーネの件を調べる様に依頼した。
「もうアントアーネ様の事は、お忘れくださいませ。これ以上アントアーネ様に執着しても、あなた様が辛いだけですよ」
そう言われたが、とにかく調べて欲しいと必死に頼んだら、しぶしぶ執事も引き受けてくれたのだった。
真っ暗な中、光の先に向かって嬉しそうに歩いていくアントアーネ。その隣には、にっくきブラッド殿の姿が。必死に叫び、彼女の元に向かおうとするが、足が鉛の様に重く、全く動かないのだ。
“待って、お願いだ。僕を置いていかないでくれ。僕が悪かったから”
頼む、置いていかないでくれ。僕はアントアーネがいないと、生きていけないのだ。瞳から涙がポロポロと溢れだす。
その瞬間、ぱちりと目が覚めた。
またこの悪夢を見てしまった。ここ数日、毎日同じ悪夢を見る。
アイーナ嬢を使って、ブラッド殿とアントアーネの仲を拗らせようとしたのだが、その作戦も失敗に終わった。まさかアイーナ嬢が、あんなに愚かだなんて思わなかった。
ラウレス子爵令息もアイーナ嬢も、本当に使えない。とはいえ、彼らを裏で操っていたのが、僕だという事は誰にもバレていない。
それにもうすぐ、ブラッド殿はリューズ王国に帰国する。今のところまだ、ブラッド殿とアントアーネの婚約の話も出ていない。大丈夫だ、きっと大丈夫。ブラッド殿がリューズ王国に帰ってしまえば、こちらのものだ。
僕にはまだ、時間がたっぷりあるのだから。
ただ…
アントアーネがブラッド殿に向けるまなざしが、どうしても気になるのだ。ブラッド殿がアントアーネに気がある事は分かっている。確か貴族学院のパーティの時、アントアーネもブラッドを慕っていると…
嫌な記憶が一気に蘇る。
嫌だ、そんなのは絶対に嫌だ。
いつも当たり前に傍にいてくれたアントアーネ。僕だけに見せてくれていた可愛い笑顔は、いつの間にかあの男に向けられる様になった。
どうしてこんな事になったのだろう。ずっとアントアーネは、僕の傍にいてくれていたのに…
婚約を解消してから、アントアーネから向けられる視線は、冷たく険しい顔ばかり。口から出るのは、僕に対する否定的な言葉ばかり。そんな言葉を聞くたびに、僕の心は引き裂かれる様な激痛が走るのだ。
確かに僕は、アントアーネを傷つけてしまった。でも僕は、アントアーネ以上に十分傷ついている。そろそろ許してもらえても、罰は当たらないのに…
そんな思いを抱えながらも、必死に学院に通っていた。それもこれも、少しでもアントアーネの姿を見たいからだ。
相変わらずアントアーネは、僕に冷たい。きっとまだ怒っているのだろう。
どうしたらアントアーネは僕の事を、許してくれるだろう。そんな事を考えながら、アントアーネを見つめる。でも彼女の目には、あのにっくき男、ブラッドがうつっている。どうしてあんな男を、嬉しそうに見つめているのだろう。
辛くて苦しくて、胸が押しつぶされそうになる。それにしても、一体何の話をしているのだろう。
ゆっくり彼らに近づくと…
「早くリューズ王国に行きたいです。その為にも、卒業まではとにかく静かに目立たず過ごさないといけませんね。特にブラッディ伯爵令息様に知られたら大変です。リューズ王国の話は学院では控えましょう」
アントアーネの声が、はっきりと聞こえたのだ。
リューズ王国に早く行きたい?一体どういうことだ?アントアーネは、リューズ王国に行くのか?あり得ない…だってアントアーネは…
いてもたってもいられず、アントアーネに声をかけた。いつも僕が話しかけると、怪訝そうな顔をするのに。今日は珍しく普通に対応してくれている。ただ、明らかに動揺しているのだ。僕はアントアーネの事なら、何でも知っている。都合が悪くなると、目が泳ぐのだ。
もしかしてアントアーネは、本当にリューズ王国に行くのか?いいや、もしかしたら、一時的に遊びに行くだけかもしれない。それにブラッド殿とアントアーネが婚約したという話も、出てきていない。
とにかく、落ち着いて調べないと。
屋敷に戻ると、すぐに専属執事にアントアーネの件を調べる様に依頼した。
「もうアントアーネ様の事は、お忘れくださいませ。これ以上アントアーネ様に執着しても、あなた様が辛いだけですよ」
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