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第47話:ライアンが世話を焼いてくれます

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「う~ん…」

ゆっくり目を開けると、見覚えのある天井が目に入った。

「マリア、目を覚ましたんだな。よかった」

ライアンにギューッと抱きしめられる。

「ライアン、あなた、なんで私の部屋にいるの?」

そう、ここは私の部屋だ。令嬢の部屋に勝手に入るだなんて。

そういえば私、クラシエ様に飲まされた毒のせいで、大変な事になっていたところを、ライアンに助けられたのよね。それから…

「ライアン、私、どれくらい眠っていたの?」

「丸3日だ。本当に全然目覚めないから、このまま目を覚まさないのかと心配したんだぞ。本当によかった」

再びライアンに抱きしめられた。ちょっと、そんなにギューギュー抱きしめないでよ。恥ずかしいじゃない。

その時だった。

「「マリア」」

「姉上!」

部屋に入って来たのは、両親とヴァンだ。そのままライアンを押しのけ、3人に抱きしめられた。

「お父様、お母様、ヴァン、心配させてごめんなさい」

「なんでマリアが謝るんだ。可哀そうに、毒を盛られるなんて。大丈夫だ、犯人のディースティン元男爵令嬢は、先日処刑された。もちろん、男爵家も取り潰されたよ」

「えっ?クラシエ様が…」

お父様の言葉があまりにも衝撃的で、言葉を失う。

「本当に恐ろしい女だ。まさかお前を殺そうとするなんて。マリア、お前が今首に下げているネックレス、そのお陰で犯人が捕まったんだ。そのネックレスは、会話を録音できるらしい」

「録音機能だけじゃなくて、お前の居場所もわかる様になっていたんだ。だから俺はあの日、お前の居場所を突き止める事が出来たんだよ」

「えっ、このネックレスに、そんな機能があるの?ちょっとライアン、なんでそんな機能が付いているものを私に渡したのよ」

ちょっと待って、という事は、もしかして…
毒を盛られて閉じ込められている時に発した、私がライアンに愛の告白をしているシーンも、皆に聞かれたって事?

そんな…恥ずかしすぎるわ…

あまりの恥ずかしさにベッドに潜り込んだ。

「マリア、どうしたんだ?このネックレスのお陰でお前の居場所も特定できたし、犯人も捕まったんだぞ。そんなに怒らなくてもいいだろう?」

「そうだぞ、マリア。ライアンがいなかったら、お前は今頃この世にいなかったんだ。ライアンに感謝しなさい」

ライアンだけでなくお父様まで…

「それで…その…誰が録音を聞いたのですか?」

「伯爵以上の貴族や王族、騎士団のメンバーも聞いていたぞ。本当にあの女、酷い女だと皆引いていた。マリア、助けるのが遅くなってすまなかったな。これからはお前を守れる様、もっともっと頑張るから」

そんなにたくさんの人が…
ダメだ、めまいがして来た。でも、助けてくれたのだから、お礼だけは言っておかないと。

「こちらこそ、命を助けてくれてありがとう。ライアン…それで、その…」

「俺たちが音声を聞いたのは、あの女がマリアを閉じ込めるまでだが、それが何かまずかったか?」

えっ?閉じ込められるまでしか聞いてないの?よかった、それじゃあ、私の愛の囁きは聞いていないのね。

「何でもないよの、気にしないで」

「さあ、せっかく目覚めたんだ。腹が減っただろう?飯にしよう」

そう言うと、私を抱きかかえたライアン。

「ちょっと、私は1人で歩けるわ」

そう訴えたものの

「何を言っているんだ。お前は死にかけたんだぞ。それにしてもこうやってマリアを運ぶと、あの日の事を思い出すな。本当に、生きた心地がしなかったんだからな…」

悲しそうにライアンがそう言った。あの日の記憶が蘇る。私を抱きかかえ、泣きながら何度も謝ってくれたライアンの姿が…

「ライアン、改めて私を助けてくれてありがとう。あなたの姿を見た時、本当に嬉しかったのよ。誘拐された時に助けてくれた騎士様そのものだったわ」

「騎士様か…お前にそう言ってもらえると、なんだか報われるよ」

ライアンが少し恥ずかしそうに笑った。

そしてライアンも含め、皆で食事をした。どうやら私は昼前に目覚めた様だ。

「マリア、腹が空いているだろう。俺の肉を分けてやろう」

そう言って私にお肉をくれたライアン。

「食いしん坊のライアンが、私にお肉をくれるなんて」

「おい、誰が食いしん坊だ。とにかく食え」

そう言って私の口にお肉を放り込んだ。

「美味しいわ、でも、なんだかあまりお腹が空いていなくて…」

「そうか、そうだよな、マリアは病み上がりなんだ。それなら、果物は食べられるか?」

ライアンが近くにいた使用人に、果物を持ってくるように指示を出している。

「ほらマリア、果物なら食べられるだろう」

そう言ってイチゴを口に放り込んでくれた。甘くておいしいわ。

「ありがとう、これなら食べられそうよ」

「そうか、それなら一杯食え」

調子に乗ったライアンが、次々と口に放り込んでいく。

「もうライアンったら、そんなに食べられないわ」

「もう食べないのか。そうか、それならケーキなら食べられるか?お前、お菓子大好きだろう」

「ありがとう、でも、もう本当にお腹いっぱいだから」

なぜか今日のライアンは、ものすごく世話を焼いてくれる。私にとってはとても嬉しいのだが、特にお母様が生暖かい視線を送って来るのが気になるのよね…さらにヴァンが

「ライアンと姉上、本当の夫婦みたいですね」

何て言うから、つい顔が赤くなってしまった。もう、ヴァンったら。

でも、こうやってまた家族で食事が出来るなんて、幸せな事よね。改めてそう実感したのだった。
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